5 / 16
5
しおりを挟む
ゆうれいのぼくは、犬を見つけた。
だれも来ない林の中、やせてたおれている犬だった。
よごれた体をふるわせて、起き上がろうとしても、起き上がれないらしかった。ワンという鳴き声も出せないらしかった。だれからも忘れられていた。
なんだかぼくは、この犬が、すこしなつかしく思えた。
この犬がぼくの帰る場所だったりして。
よし、この犬に宿ってみよう。
ぼくが宿ると、犬はすっくと起き上がった。ワンと力強くほえると、走り出した。
それまでたおれていたのがうそのように、夕ぐれ時の中を走った。走って走って、大きなまちまでたどりついた。
駅の前で止まると、すわりこんで、ずっとだれかを待っているようだった。
駅前でずっとだれかを待っている犬は、大きなわだいになった。
「よし、この犬はうちで飼おう!」と言った家族がいて、その家族に抱きしめられた犬は、クウ~ンと甘えるように鳴いた。
そうか、この犬がぼくの帰る場所だったんだ。なりたい自分はこれだったんだ。
そう思ったのもつかのま、ぼくは犬からぬけ出てしまった。
もとのゆうれいにもどってしまった。
もうその犬には宿れなかったけれど、犬はごはんをたくさんたべて、ゆっくりねむることもできた。みんな大切にしてくれている。
そうか、ぼくの出番はもうないのか。ぼくのいる場所は見つけられなかった。
何でもないぼくは、別の場所に飛んでいった。
だれも来ない林の中、やせてたおれている犬だった。
よごれた体をふるわせて、起き上がろうとしても、起き上がれないらしかった。ワンという鳴き声も出せないらしかった。だれからも忘れられていた。
なんだかぼくは、この犬が、すこしなつかしく思えた。
この犬がぼくの帰る場所だったりして。
よし、この犬に宿ってみよう。
ぼくが宿ると、犬はすっくと起き上がった。ワンと力強くほえると、走り出した。
それまでたおれていたのがうそのように、夕ぐれ時の中を走った。走って走って、大きなまちまでたどりついた。
駅の前で止まると、すわりこんで、ずっとだれかを待っているようだった。
駅前でずっとだれかを待っている犬は、大きなわだいになった。
「よし、この犬はうちで飼おう!」と言った家族がいて、その家族に抱きしめられた犬は、クウ~ンと甘えるように鳴いた。
そうか、この犬がぼくの帰る場所だったんだ。なりたい自分はこれだったんだ。
そう思ったのもつかのま、ぼくは犬からぬけ出てしまった。
もとのゆうれいにもどってしまった。
もうその犬には宿れなかったけれど、犬はごはんをたくさんたべて、ゆっくりねむることもできた。みんな大切にしてくれている。
そうか、ぼくの出番はもうないのか。ぼくのいる場所は見つけられなかった。
何でもないぼくは、別の場所に飛んでいった。
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる