ゆうれいのぼく

早乙女純章

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 ゆうれいのぼくは、家を見つけた。

 まどガラスがわれていたり、かべやはしらもひびがはいったりしていて、強い風でもふいたら、あっというまにくずれてしまいそうな家だった。

 もうだれも住んでいなくて、売りに出されているけれど買い手もつかないようだった。だれからも忘れられていた。

 なんだかぼくは、この家が、すこしなつかしく思えた。

 この家がぼくの帰る場所だったりして。

 よし、この家に宿ってみよう。

 ぼくが宿ると、かべやはしらがもとどおりがんじょうなものになった。まどガラスもぴっかぴか。

 家が新築同然しんちくどうぜんになると、「すごいりっぱな家!」とすぐさま買い手がついて、人が住むようになった。

 こんなかいてきな家に住むことができるなんて、とみんな大喜び。にぎやかな家になった。

 そうか、ここがぼくの帰る場所だったんだ。なりたい自分はこれだったんだ。

 そう思ったのもつかのま、ぼくは家からぬけ出てしまった。

 もとのゆうれいにもどってしまった。

 もうその家には宿れなかったけれど、家はどっしりと建っていて、みんな大切にしてくれている。

 そうか、ぼくの出番はもうないのか。ぼくのいる場所はここじゃなかったんだ。

 何でもないぼくは、別の場所に飛んでいった。
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