大東亜架空戦記

ソータ

文字の大きさ
上 下
54 / 84
東太平洋海戦

第54話 龍電

しおりを挟む
日本軍は圧倒的な強さを誇り無敗であったが、遂にアメリカ軍の新鋭重爆撃機B-29により零戦が海の藻屑とされた。

隆雄達は真珠湾の飛行場に帰ってきてから全く言葉を発せず、夕食も喉を通らなかった
(俺たちが負けた...爆撃機に...?)
出撃したパイロット全員の頭にはそれしか無かった
撃ち落とせなかった18機のB-29は真珠湾に空襲を敢行したものの高高度からの爆撃だったため駆逐艦数隻、巡洋艦数隻、その他陸上施設破損の損害しか日本軍に与えられなかった。
しかし日本軍にとっては戦闘機隊が多大な被害を出して帰ってきたことが問題だった。
出撃せず待機していた部隊のパイロットは出撃したパイロット達にかける言葉が見つからず話しかけられずにいる。
中には兄弟を失ったものもいる
隆雄達の宿舎のある区画に1人の将校が数人の共を連れて訪ねてきた
「ご苦労さん」
「や、や、山本司令長官閣下!?」
「一○六空に用があるんだ通してくれるか?」
「はっ!どうぞ!」
門兵は山本にしか触れなかったが横にいたのも大層な人物である
右には山口多聞、左には源田実であった
「失礼するよ」
山本が隆雄達の部屋に入る
「...」
誰も気づいていないのか誰も山本の方を見ない
「はぁ、おい、隆雄」
「!おじ...山本司令長官閣下!」
隆雄の大きな声で皆が立ち上がり敬礼する
「今日は残念だった。」
「多くの兵士と貴重な戦闘機を失ってしまう結果となってしまい申し訳ありません!」
まだ飛行服姿の隆雄が深々と頭を下げる
空戦の時の記憶が蘇ってきたのか頭を下げながら隆雄は泣き始める。
「例の爆撃機の見た限りの詳細を教えろ」
隆雄達は見たもの全てを説明した
「防護機銃が全方向にあるのか...死角は?」
「ほぼありません」
「零戦での迎撃はほぼ不可能です」
「烈風や紫電ならどうだ」
「やってみないことには分かりません」
「そうだな...予め新型の龍電もだしておこう」
「り、龍電...?」
龍電は日本海軍が開発した新型戦闘機であり、ドイツ製エンジンを日本式に改良しやっと安定した六式噴式発動機を組み込み六式試製噴式戦闘機として開発、量産機化したものが六式対重爆用噴式戦闘機、通称龍電である
武装は機首に20ミリ機関砲4門という重火力である。
龍電は10月1日付けで真珠湾基地に足をつけた
そしてすぐに整備を進め対B-29専用機として作戦機に組み込まれた
隆雄達は2日に初めて龍電と対面した
「これが...龍電」
「対重爆用噴式戦闘機だ。対戦闘機には向かん」
「俺に乗らせてください」
「元よりそのつもりだよ」
「えっ」
「一○六空にこれを配備する、存分に暴れて来い」
ただこの龍電には問題がひとつあった
それはB-29を想定して作られた訳では無いということであった
龍電は従来のB-17を想定して作られており、B-29を撃墜できる確実な保証は無く、全てをパイロットの腕に託した形になっていることが龍電の欠点であり弱点であった
もちろんジェット戦闘機であることから速度は引けを取らない。武装も大して問題にはならない火力がある
しかしB-29との対戦記録は前回の一回しかないためどこに弱点があるのかなど、あくまで予想できる範囲でしかわかっていない。

しかし時は待ってくれない
龍電配備からわずか3日後の10月5日
「伊号潜水艦より入電!B-29がこちらに向けて飛行中!」
「おいでなすったな。一○六空に出撃命令を出せ。」
B-29接近の報を聞いて一○六空が直ぐに龍電に乗り込む
龍電の初陣である
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】風天の虎 ――車丹波、北の関ヶ原

糸冬
歴史・時代
車丹波守斯忠。「猛虎」の諱で知られる戦国武将である。 慶長五年(一六〇〇年)二月、徳川家康が上杉征伐に向けて策動する中、斯忠は反徳川派の急先鋒として、主君・佐竹義宣から追放の憂き目に遭う。 しかし一念発起した斯忠は、異母弟にして養子の車善七郎と共に数百の手勢を集めて会津に乗り込み、上杉家の筆頭家老・直江兼続が指揮する「組外衆」に加わり働くことになる。 目指すは徳川家康の首級ただ一つ。 しかし、その思いとは裏腹に、最初に与えられた役目は神指城の普請場での土運びであった……。 その名と生き様から、「国民的映画の主人公のモデル」とも噂される男が身を投じた、「もう一つの関ヶ原」の物語。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

1333

干支ピリカ
歴史・時代
 鎌倉幕府末期のエンターテイメントです。 (現在の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』から、100年ちょい後の話です)  鎌倉や京都が舞台となります。心躍る激しい合戦や、ぞくぞくするようなオドロオドロしい話を目指そうと思いましたが、結局政治や謀略の話が多くなりました。  主役は足利尊氏の弟、直義です。エキセントリックな兄と、サイケデリックな執事に振り回される、苦労性のイケメンです。  ご興味を持たれた方は是非どうぞ!

大航海時代 日本語版

藤瀬 慶久
歴史・時代
日本にも大航海時代があった――― 関ケ原合戦に勝利した徳川家康は、香木『伽羅』を求めて朱印船と呼ばれる交易船を東南アジア各地に派遣した それはあたかも、香辛料を求めてアジア航路を開拓したヨーロッパ諸国の後を追うが如くであった ―――鎖国前夜の1631年 坂本龍馬に先駆けること200年以上前 東の果てから世界の海へと漕ぎ出した、角屋七郎兵衛栄吉の人生を描く海洋冒険ロマン 『小説家になろう』で掲載中の拙稿「近江の轍」のサイドストーリーシリーズです ※この小説は『小説家になろう』『カクヨム』『アルファポリス』で掲載します

生残の秀吉

Dr. CUTE
歴史・時代
秀吉が本能寺の変の知らせを受ける。秀吉は身の危険を感じ、急ぎ光秀を討つことを決意する。

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

音速雷撃隊

黒いテレキャス
歴史・時代
アメリカ海軍戦闘機パイロットと日本海軍航空隊桜花搭乗員が沖縄の空で見た物は…

新・大東亜戦争改

みたろ
歴史・時代
前作の「新・大東亜戦争」の内容をさらに深く彫り込んだ話となっています。第二次世界大戦のifの話となっております。

処理中です...