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美濃侵攻
第弐拾壱章 道三の死
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織田軍は墨俣城から始まり途中犬山城の謀反などがあったが順調に稲葉山城に取り掛かり、城主、斎藤龍興の逃亡により稲葉山城を陥落させた
そして信長は稲葉山城一帯を岐阜と命名、稲葉山城は岐阜城となった
美濃国明智城址
「十兵衛」
「半兵衛...」
「光安様は如何された」
「昨年病に伏した」
「そうか....」
「義龍挙兵から5年余り、ようやっとここに戻って参った」
「5年...か」
「この地を治めよと御館様より下知を賜った」
「ではここに城を構えるのか」
「あぁ、明智城の再興じゃ」
「私は菩提山城主を賜った」
「元々竹中の城であろう?」
「あぁ、だが敗戦しながらも領地を没収されなかったのは驚いた」
「使える者は使うのが御館様じゃ」
「そうか。では私は城に戻る、人はいくらでも手配する、なんならできるまで私の城に居ると良い」
「言葉に甘えさせてもらおう」
「うむ、では参ろう」
「わ、儂が清洲城主!?」
「うむ、儂は岐阜に居城を移す故お主にここを任せる」
「いや、しかし私には荒子がございます!」
「慶次郎に任すが良い、のぉ慶次郎」
「そうじゃ兄者、出世ではないか」
「はぁ...断ることは?」
「許すと思うたか?」
「承知仕った。」
清洲城主には前田利家が抜擢された
そして利家が清洲城になったと同時に前田利益が荒子城主になり、
信清逃亡により空席となった犬山城主には池田恒興。
墨俣城主にはそのまま木下藤吉郎改めて、羽柴秀吉。
美濃侵攻に際して築城した小牧山城主には、柴田勝家。
大垣城主には斎藤龍重、堂洞城主には岸信周が続投、久々利城主には斎藤龍之、金山城主には長井道勝改め井上道勝などが着いた
美濃国岐阜城
「久々にこの景色を見まする。」
帰蝶が天守から見る景色に涙を流す
「よく堪えた」
「殿....」
「申し上げます、斎藤道三様がお目通りを願っております」
「通せ」
「はっ」
信長はそのまま道三を天守閣へ通した
「お目通り、恐悦至極に存じ上げまする」
道三は深々と頭を下げる
「如何致した?」
「この道三、そろそろ隠居を考えております」
「なんと。」
「まだ早うございますぞ父上」
「いや、もう体が動かぬ、先の戦で痛感した。」
「しかし名古屋はどうされる」
「はっ、そこで長益様をご推薦仕る」
「長益を?」
「先の戦では初陣ながら軍を指揮し誰か手助けできるものがあらばその器を発揮致しましょう」
「ほう。」
「その辺の補佐はこの道三が承る」
「それは隠居か?」
「形はどうであれ一線退くということにござる」
「で、あるか...」
「何もまだ死ぬ訳ではござらん、ご安心召されよ」
「うむ、あいわかった、名古屋城主は織田長益とし、前任斎藤道三を長益の補佐に命ずる」
「ありがたき幸せ」
道三は天守閣の眺めを見てほぉーと声を出す
「信長よ」
「はぁ」
「言った通りになったであろう」
「は?」
「義龍が謀反を起こし、お主が美濃を取ると」
「面会の時のことにござるか」
「そうじゃ、良き国としてくれ」
「必ず」
道三はウンウンと頷いて城をそのまま後にした
しかし事態は急変する
「申し上げます!名古屋城より使者!」
「急用か」
「はっ!」
「通せ」
すぐに使者が入ってくる
「申し上げます。斎藤道三様危篤にございます」
「なに!?」
信長は護衛数名をつけ帰蝶と共に名古屋へ走った
尾張国名古屋城
「道三様...まもなく兄上と姉上が参ります...どうか耐えてくだされ...」
長益が一生懸命声をかける
道三がうっすらと目を開ける
誰もいない方を向きブツブツと喋り出す
「義龍....」
「道三、俺から逃げた割には死ぬのが早くはないか?」
「まだ死んでなどおらぬわ」
「儂が見えておるなら最早長くはなかろう」
「ふっ、そうかもしれぬな....」
「儂は土岐義龍でも、一色義龍でも無かった」
「ん?」
「儂は斎藤道三の嫡男斎藤新九郎義龍であったと申した」
「はっは、だから申したであろう」
「せめて信長と帰蝶と話してからこちらへ来い」
「あぁ」
「申し上げます!御館様、奥方様まいられました!」
「兄上...姉上....」
「長益、よう知らせた、親父殿...」
「父上...?」
「信長に帰蝶か....」
「まだ早いぞ親父殿!」
「はっは、新九郎と同じことを言いおった...」
「新九郎...?兄上がどうされたのです?」
「さっきまでそこにおったのだ」
道三の言葉に帰蝶が泣き出してしまった
「泣くな帰蝶....」
「親父殿....」
「信長....岐阜と倅....帰蝶はお頼み申す....」
「親父殿!逝くな...逝くな!」
「なんじゃ、もう来たのか」
「流石に疲れた」
「儂のせいか」
「やもしれぬな」
斎藤道三入道利政、永禄8年名古屋城にて病死
そして信長は稲葉山城一帯を岐阜と命名、稲葉山城は岐阜城となった
美濃国明智城址
「十兵衛」
「半兵衛...」
「光安様は如何された」
「昨年病に伏した」
「そうか....」
「義龍挙兵から5年余り、ようやっとここに戻って参った」
「5年...か」
「この地を治めよと御館様より下知を賜った」
「ではここに城を構えるのか」
「あぁ、明智城の再興じゃ」
「私は菩提山城主を賜った」
「元々竹中の城であろう?」
「あぁ、だが敗戦しながらも領地を没収されなかったのは驚いた」
「使える者は使うのが御館様じゃ」
「そうか。では私は城に戻る、人はいくらでも手配する、なんならできるまで私の城に居ると良い」
「言葉に甘えさせてもらおう」
「うむ、では参ろう」
「わ、儂が清洲城主!?」
「うむ、儂は岐阜に居城を移す故お主にここを任せる」
「いや、しかし私には荒子がございます!」
「慶次郎に任すが良い、のぉ慶次郎」
「そうじゃ兄者、出世ではないか」
「はぁ...断ることは?」
「許すと思うたか?」
「承知仕った。」
清洲城主には前田利家が抜擢された
そして利家が清洲城になったと同時に前田利益が荒子城主になり、
信清逃亡により空席となった犬山城主には池田恒興。
墨俣城主にはそのまま木下藤吉郎改めて、羽柴秀吉。
美濃侵攻に際して築城した小牧山城主には、柴田勝家。
大垣城主には斎藤龍重、堂洞城主には岸信周が続投、久々利城主には斎藤龍之、金山城主には長井道勝改め井上道勝などが着いた
美濃国岐阜城
「久々にこの景色を見まする。」
帰蝶が天守から見る景色に涙を流す
「よく堪えた」
「殿....」
「申し上げます、斎藤道三様がお目通りを願っております」
「通せ」
「はっ」
信長はそのまま道三を天守閣へ通した
「お目通り、恐悦至極に存じ上げまする」
道三は深々と頭を下げる
「如何致した?」
「この道三、そろそろ隠居を考えております」
「なんと。」
「まだ早うございますぞ父上」
「いや、もう体が動かぬ、先の戦で痛感した。」
「しかし名古屋はどうされる」
「はっ、そこで長益様をご推薦仕る」
「長益を?」
「先の戦では初陣ながら軍を指揮し誰か手助けできるものがあらばその器を発揮致しましょう」
「ほう。」
「その辺の補佐はこの道三が承る」
「それは隠居か?」
「形はどうであれ一線退くということにござる」
「で、あるか...」
「何もまだ死ぬ訳ではござらん、ご安心召されよ」
「うむ、あいわかった、名古屋城主は織田長益とし、前任斎藤道三を長益の補佐に命ずる」
「ありがたき幸せ」
道三は天守閣の眺めを見てほぉーと声を出す
「信長よ」
「はぁ」
「言った通りになったであろう」
「は?」
「義龍が謀反を起こし、お主が美濃を取ると」
「面会の時のことにござるか」
「そうじゃ、良き国としてくれ」
「必ず」
道三はウンウンと頷いて城をそのまま後にした
しかし事態は急変する
「申し上げます!名古屋城より使者!」
「急用か」
「はっ!」
「通せ」
すぐに使者が入ってくる
「申し上げます。斎藤道三様危篤にございます」
「なに!?」
信長は護衛数名をつけ帰蝶と共に名古屋へ走った
尾張国名古屋城
「道三様...まもなく兄上と姉上が参ります...どうか耐えてくだされ...」
長益が一生懸命声をかける
道三がうっすらと目を開ける
誰もいない方を向きブツブツと喋り出す
「義龍....」
「道三、俺から逃げた割には死ぬのが早くはないか?」
「まだ死んでなどおらぬわ」
「儂が見えておるなら最早長くはなかろう」
「ふっ、そうかもしれぬな....」
「儂は土岐義龍でも、一色義龍でも無かった」
「ん?」
「儂は斎藤道三の嫡男斎藤新九郎義龍であったと申した」
「はっは、だから申したであろう」
「せめて信長と帰蝶と話してからこちらへ来い」
「あぁ」
「申し上げます!御館様、奥方様まいられました!」
「兄上...姉上....」
「長益、よう知らせた、親父殿...」
「父上...?」
「信長に帰蝶か....」
「まだ早いぞ親父殿!」
「はっは、新九郎と同じことを言いおった...」
「新九郎...?兄上がどうされたのです?」
「さっきまでそこにおったのだ」
道三の言葉に帰蝶が泣き出してしまった
「泣くな帰蝶....」
「親父殿....」
「信長....岐阜と倅....帰蝶はお頼み申す....」
「親父殿!逝くな...逝くな!」
「なんじゃ、もう来たのか」
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「やもしれぬな」
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