織田戦国伝

ソータ

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尾張平定への道

第捌章 第二の父

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織田弾正忠家当主織田信秀が死に当主争いとなった弾正忠家、そこに清須城主織田大和守信友が信長の弟信長織田勘十郎信勝を唆し謀反を起こさせる。
信長は1時押されるも弟である織田安房守信時が参戦したことで窮地を脱し信勝軍を撃退した


「殿」
「なんじゃ?」
「美濃の斎藤道三より文が」
「ほう」
その文には面会の申し出が認めてあった
「ほう、マムシが俺に会うか」
「なんと!誠にお会いになるのですか?」
「今となっては1人の父じゃ」
「なりませぬ!」
帰蝶がいきなり入ってくる
「なぜじゃ、そなたの父であろう」
「殺さねかねませぬ!」
「汚名を被ることはせぬであろう」
「しかし...」

美濃国稲葉山城
「信長に会ってくる」
「討ち取るのですか」
「討ち取りなどせぬ」
「ではなぜ」
「義理の息子の顔を見ねば失礼であろう」
「しかし...」
「まぁいざとなれば切ればよかろう」
「は、はっ」

2週間後濃尾国境聖徳寺近くの民家
「来ましたぞ」
「ん、」
目の前には織田瓜の家紋の旗を掲げた足軽歩兵や騎馬が往来している
つまり信長が率いる軍である
「あれか」
「あれは柴田権六にござる、その後ろにおりますのが織田上総介信長にござる」
「あれか...随分と凛々しいが...なんじゃあの格好」
「干し柿を食うておりますな」
「腰に綱など聞いたことがないわ...」
「やはりうつけにございます」
「そのようじゃな、戻るか」
「はっ」

濃尾国境聖徳寺
「織田信長様御一行ご到着でございます」
「通せ」
道三は先程のいつも通りの信長を想像していた
しかし入ってきたのは正装を身に纏った凛々しい少年であった
「ん?」
「初めてお目にかかり申す
織田上総介信長にござります」
「美濃国主斎藤山城守利政である」
2人はしばらく話した
「信長よ」
「はっ」
「このままでは美濃国はお主に攻め滅ぼされるであろう」
「何を仰せられます、攻めるなどありえませぬ」
「ここだけの話であるが我が息子、義龍は同盟をよく思っておらぬ、当主となれば必ずお主の敵となろう」
「....」
「信長」
「はっ」
「美濃はお主に譲る」
「...なんと...」
「じゃが、今すぐでは無い、わしが死んだ後
自ら力で攻め取るが良い」
「自ら同盟を破ることなどできませぬ」
「義龍は必ず儂を殺す、それが手切れの合図じゃ...わかったな」
「...承知仕った」
「うむ、ではお開きといたそう、良き時間であった帰蝶はお頼み申す」
「はっ」

尾張国名古屋城
「父は如何でございました?」
「美濃を譲ってくれるとの事じゃ」
「...はい?」
「いつか必ず義龍が親父殿を殺すからそれが手切れの合図と」
「なんと...」
「しかしそうはさせん、必ず戦となれば援軍を出し親父殿は保護致す」
「殿....」

それから2年が経ち織田家中の混乱は激化していた。
隣同士の清洲城と名古屋城は常に睨み合いが続いており、庄内川で東西に敵味方別れる形となった所で少し落ち着きを見せた
そこである情報が飛び込んできた

斎藤義龍挙兵

「で、あるか...」
「殿...」
「何をしておる」
「...は?」
「早く出立の準備を致せ出陣だ」
「は、はっ!」

美濃国稲葉山城下、御手洗
「とうとうこの時が参ったな」
「我らが手勢は約2700...」
「光安」
「はっ」
「戦って死ねるならまだ良いでは無いか」
「殿...」
「申し上げます!」
「なんじゃ」
「織田信長様、木曽川を超え既に美濃に入っていると!」
(なぜ来た!)
信長の援軍を知った道三は驚きが隠せなかった
「数は!」
「その数およそ5000!」
「5000!?殿!」
「いや、義龍軍はまだ陣が完成していない、
間に合うやもしれませぬ!」
「光安...陣を整えろ...開戦じゃ」
「殿!信長殿を待っても遅くはありませぬ!」
「馬鹿者!あやつは家中に混乱を抱えておる!ここで無駄に兵を失ってはならぬのだ!」
明智光安は久々に覚悟を決めた道三を見て数々の思い出が蘇る
「殿...お願いです、どうか、どうか落ち延びられませ」
「光安...」
「申し上げます!織田信長様が騎馬隊先着してございます!」
そうこうしている内に先行していた柴田勝家率いる200の騎馬隊が先着した
「なっ...」
道三は言葉を失ってしまうが心のどこかで助かるやもしれぬと思った
「道三殿、織田信長が家臣柴田権六勝家遅ればせながら参陣仕った」
「ご苦労である...」
「柴田殿...事態は急を要しておる、軍容をお教え願いたい」
「はっ先行隊である我ら柴田隊は騎馬200、
続いて名古屋城、信長様率いる4000、末森城、信広様率いる1300、守山城、信時様率いる約2000、犬山城、信清様率いる約2500の総勢1万にござる」
「なっ...」
「我らと足せば約1万3000であるぞ...」
「しかし相手は1万7000...」
「我が軍の鉄砲、弓があれば2000は削れまする」
「しかしそれでも2000の劣勢...」
「2000なれば何とかなるであろう」
「恐れながら我が殿の軍はあの今川軍ですら撃退しておりまする」
「そうであったな、我らも何度足元を救われたものか」
この間にも各軍の先発隊が続々と入っていた
この時点で斎藤軍の総数は既に5000
そして道三軍の本陣に織田瓜の旗が掲げられると来ないとタカをくくっていた義龍軍は動揺していた
「申し上げます!敵陣に織田瓜!」
「なんと!織田軍が来たのか!?」
「はっ!」
「数は」
「5000はくだらぬやもと!」
「5000来たところで7500、大した数では無い」
しかし両軍揃った時動揺は最高潮に達する
「なんだ...敵は少数ではなかったのか...」
「1万はくだらぬぞ...」
足軽や足軽大将クラスの者たちは聞いていた数との違いに混乱し始めていた
「申し上げます!」
「今度はなんじゃ!」
「敵勢、増えに増え、約1万3000と」
「なっ...」
「織田には鉄砲も多く油断すれば我らの負けもございますぞ」
「ふっ...」
「殿?」
「面白くなってきたでは無いか」
義龍が本陣より出て兵達に檄を飛ばす
「我は土岐義龍なり!報告よりも数は4倍近くとなっておるがこちらの有利に変わりはない!
必ずやこの戦勝利を掴もうぞ!」
その声は対岸にいる信長たちにも聞こえた

「あやつにしてはやるのう」
「我らも檄を飛ばしましょうぞ」
「婿殿に託そう」
「おまかせ下され」
信長は自軍の兵を一通り見渡す
「我は織田信長である!
皆の者よう聞け!正義は我らにあり!
賊軍一色義龍が軍勢など恐るるに足らぬ!織田の兵は斎藤、今川を幾度となく退けた強者なり!斎藤の兵も我ら織田と対等に戦い抜いた強者なり!
うぬらが日ノ本一の軍勢ぞ!」
信長の声は驚くほどよく通った
足軽の中には感動し泣く者もいた

そして遂に開戦の火蓋が切って落とされる
先にしかけたのは義龍軍長井道利率いる約2500
対するは明智光秀、佐々成政の連合隊約2000
佐々成政率いる鉄砲隊200は2列にて敵を迎え撃ち、装填の間は明智光秀の弓隊150が繋ぐそれでも突破してくるものは両隊の槍兵が突き崩す
「構えぇ!放てぇ!」
「弓隊!放て!次!放て!」
義龍軍は勢いを失い次鋒の竹腰尚光を出す
「斎藤、織田の軍勢を血祭りにあげよ!」
竹腰の軍勢は勢いのままに突進してくる
長井隊も竹腰隊に乗り突撃を再開する
「鉄砲隊と弓隊は引け!槍隊前へ!突き崩せ!」
光秀の判断により鉄砲隊と弓隊は後方へ下がる
弓隊は槍兵の後ろから弓で援護する
「内蔵助!助けはいるか!」
利家が後ろから声をかける
「まだ要らぬ!だが準備はしておけ!」
「あい承知!」
利家は自分の持ち場に下がる
「仲がよろしいですな!」
「馬廻り役の時からの腐れ縁にござる!今は目の前の敵に集中されよ!」
「そうでござった!」
そのまま30分ほど持ち堪えた明智・佐々連合隊だったがとうとう押され始める
「又左!今だ!」
成政が利家に合図を送りそこに利家の隊が突撃していく
「我は前田又左衛門利家なり!竹腰尚光!長井道利!両軍まとめてお相手いたぁす!」
「おい又左!我らが居ることを忘れるな!」
「内蔵助と十兵衛殿はそこで休んでおれ!がはははは!」
「佐々殿少し兵を休ませよう、どの道このままでは兵の体力も、我々も持たぬ」
「あい承知」
「皆の者!暫し休め!少し経ったらまた戦列に加わる!」
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