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はじまりの樹
第15話 調達へ
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胡桃の馬車で向かうのは連絡樹だ。
「経費で落とす。なんなら、世界樹管理局に領収書を突き付けてもいい」
というアネッサの言葉にクーウォンが同意したものだから、連絡樹を使うことにしたのだ。最近は利用する者も少ないので、予約はすぐに取れたのだそうだ。
「アネッサさんの扉じゃダメなの?」
音羽が聞けば、アネッサは頷いて答える。
「一般的な扉は、扉にしかつながらない。でも、連絡樹の扉は、たいていのところにつながる。特別な鍵を使えば、普通の扉から連絡樹につなぐこともできるんだ」
「便利ねえ……あ、だから利用料金が高いのね?」
音羽の言葉に、クーウォンがしみじみと頷いた。それを見て、胡桃は少し笑ってしまった。
「公共交通機関で行ってもいいが、時間が惜しい」
昨日は連絡樹の大きさに気を取られて気付かなかったが、扉はいくつもあるらしいことに音羽は気が付いた。
各々、扉の前に立つ。
「では、健闘を祈る!」
アネッサの力強い言葉に、胡桃は親指を立てて返し、クーウォンも頷いた。
「それじゃあ、またあとで。お互い、いい知らせを持って帰れるように頑張りましょう」
音羽が笑って言えば、風観は少し微笑んで頷き、天は「おー!」とこぶしを突き上げたのだった。
「うわ、ホントだ」
音羽は扉をくぐり、後ろを振り返る。
「壁も何も無いのに、扉がある」
開け放った扉の向こうには、確かに連絡樹周辺の景色がある。一方、扉の周りは全く違う。うっそうと茂る森が広がるばかりである。
「空気が壁みたいなものなんだよ」
アネッサが扉を閉じると、扉はやがて透明になって消えた。その様子を見て音羽は尋ねた。
「帰りはどうするの?」
「鍵さえ持っていれば、帰りたいと思った時に扉が現れるのさ」
「すごいわ、連絡樹って……」
音羽は周辺を見渡す。どうやらここはどこかの森のど真ん中らしい。どこを見ても木、木、木……葉がこすれる音と風の音にまぎれて、聞きなれない何かの音も聞こえてくる。
「すっごく、賑やかな森」
「おや、さすが音羽。よく聞こえるね」
アネッサはくすっと笑って言った。
「この森は『静かな森』として有名なのさ」
「へ? こんなにうるさ……賑やかなのに?」
音羽のきょとんとした顔を見てアネッサは頷くと説明した。
「妖精たちは姿と気配を隠すのが上手なんだ。でも、耳のいい者相手にはそうもいかないようだね。ところで、一番騒がしいのはどっちだい?」
音羽は耳に意識を集中させる。
鳥のような鳴き声、木々のざわめき、地下を流れる水、森を磨く風――その中に、まるで鈴を転がすような、風鈴にも似た音が聞こえる。
「こっち、こっちよ」
音羽はまぶたを伏せたまま指をさす。
「アネッサさん、お願いがあるんだけど」
「なんだい」
「こうやって目をつむっていた方が音がよく聞こえるの。方向は言うから、手を引いてくれるかしら」
「ああ、喜んで」
アネッサは右手で音羽の左手をとる。
「エスコートさせてもらおう」
「あら、頼もしいわ」
二人は、ゆっくりとした足取りで歩きだした。
風観は、目の前にそびえたつ山を見上げた。でかい。想像の何倍、何十倍もでかい。とてつもなくでかい……そして山頂はつややかな茶色、山肌は濃い黄色である。
「プリンかよ」
「なるほど、君にはそう見えるんだね」
クーウォンは風観の隣に立つと、同じように山を見上げた。風観は山からクーウォンに視線を移す。
「え、君には、って?」
「この山は人によって見える姿が違うんだ。ちなみに僕には、ただの砂糖の山に見える」
「へえ~……」
風観は再び山に視線を移す。どう見てもプリンにしか見えない。さすがにプルプル震えてはいないが、かぶりついたらおいしそうだ。
クーウォンは鍵をローブにしまいながら言った。
「その人にとっての甘味は何か、っていうのに引っ張られるみたいなんだ。僕が育った村はなかなか甘いものがなくてね。砂糖があるだけでぜいたくなものだったよ」
「その人の深層心理に影響される……なるほど、興味深いです」
この山は日に何度も噴火するらしい。それを待って、霧を回収しようという作戦だ。
「霧に届く場所までは登る必要があるけど、大丈夫?」
「はい。体力には自信があります」
「よし、いいね。それじゃあ行こうか」
山は美しく、登山道もきちんと整備されていた。どことなく甘い香りがするのは、音羽が言っていたように、甘味の材料になる植物がいろいろ群生しているからか、あるいは霧が回収されることなく何度も溶け込むからか。
風観は前を行くクーウォンに聞いた。
「クーウォンさんはここに来たことあるんですよね。やっぱり、お菓子の材料が必要で?」
「ん? いや、僕はただ、霧が見たくて来たことがあったんだ」
クーウォンは山頂を見上げながら言う。
「糸のような霧って、どんなものなんだろうって思ってね。それで布を織ったらどうなるだろうと思ったんだ」
「ああ、なるほど」
「まあそもそも回収できなかったから、織ることはできなかったんだけどね」
登山道はたまに道が分かれていて、それぞれ、いろいろな植物の群生地につながっているようだった。しかしそのいくつかは閉鎖されている。設けられた看板には「現在調査中」の文字が並んでいる。
「甘いもの材料になる植物の群生地なら、甘い霧はあるだけいいようにも思いますけど……」
それを横目で見ながら発された風観の言葉に、クーウォンは「そうだねえ」と相槌を打つ。
「それがそうもいかないんだよ。過ぎたるは及ばざるがごとし、っていうだろう」
「なるほど」
「君に回収してもらえたら、しばらくは安心だろうけどね」
風観は「そんなんでいいんですか?」と驚いたように聞く。クーウォンは頷いた。
「どうにかして霧を回収する技術は発展しつつあるんだ。正直、人頼りの回収も追いついていなかったからね。今必要なのは、時間なんだ」
だから、とクーウォンは風観を振り返り、穏やかに笑って続けた。
「君がいくらか回収してくれることで、時間稼ぎができるというわけだ」
「……頑張ります」
神妙な面持ちになった風観を見て、クーウォンは頼もしく笑うと風観の頭を乱暴に撫でた。
「そう気負わなくていい。君の肩には、世界樹の三柱の機嫌を取るという責任しか乗っていないんだからな」
「それはそれで重いですよ」
「なに、それはみんなで分けられるものだろう。一人で背負い込むな」
その言葉に、風観は小さく頷いた。クーウォンが垣間見た風観の頬は、少し緩んでいた。
「おおー! 温かい!」
天は例の生地でできた上着を羽織って、その性能に感動していた。胡桃も自分の上着をまとっている。
胡桃は得意げに笑って胸を張った。
「そう、それ、すごく温かい」
「薄っぺらいのに、すごいなあ」
「氷水に入っても、大丈夫」
「それはすごい!」
ひとしきり盛り上がった後、二人は雪山に向かった。
そびえたつその山はまるで巨大な生物が眠っている姿のようにも見えた。これを登るのは至難の業のように思えたが、胡桃は天に言った。
「こっち、来い」
「おー?」
胡桃が連れてきたのは、村の人々が使っているという登山道だった。
「この山、資源、たくさんある。だから、作業のための道、作った。結構上まで続いてる。山頂近くまで、この道、続いてる」
「誰も山頂には行かなかったんだね」
「行く必要、あまりない。そこまでで、資源、足りるから」
「そうだよねえ。必要ないと、行かないよねえ」
これから険しい雪山を行くとは到底思えない、のんびりとした会話を交わすと、二人はさっそく足を踏み出す。
ざくり、ざくりと雪を踏み固めながら着実に登って行く。雪が積もっているものの、凍らないように工夫が施された道は歩きやすい。
「この山で取れる資源って、やっぱ、この布を織るための花?」
天が聞くと、胡桃は指を折りつつ答える。
「それもある。他にも、雪の下にしかない果物、薪にするための木、水がなくなったときのために溶かすきれいな雪、いろいろある」
「雪山の麓で暮らすって、大変なんだね」
「大変。でも、嫌いじゃない」
胡桃は生き生きと道を進む。
「ずっと聞こうと思ってた。天、向こう側の人間。でも、こっち側の人間の気配、する」
その胡桃の言葉に、天はひんやりとした空気を吸い込んで相槌を打った。
「あー、まあ、半々って感じだなあ」
胡桃は周囲を見回す。整備し直された登山道は歩きやすく、ところどころ木に巻き付けられた目印のリボンは、最後に胡桃が見た時よりもずいぶんきれいになっていた。途中の休憩小屋は立て直されている。
里帰りしたのは最近のことだと思っていたが、それからずいぶん時間が経っているのだ、と胡桃はぼんやり想いながら言った。
「生きる時間、永い。人と違う」
「こっち側の魔法使いほど長生きはしないけどね。まあ、永いなあ。身長もなかなか伸びないし」
はは、とおどけたように天が笑うと、胡桃は、ほうっと白い息を吐いて言った。
「永い時を生きる魔法使い、成長、ゆっくり。仕方ない。私もそう。やっとこの身長になった」
胡桃は天を振り返り、後ろ向きに歩く。
「お前、さみしい思い、する。私も、した。クーウォン、もっとした。アネッサ、もっともっとした。でも、楽しいこともいっぱい」
チラチラと雪が降る中で胡桃は再び前を向く。木に隠れるようにしていた真っ白な毛並みに真っ青な瞳のウサギは、一羽ぽっちではなく子どもを連れていた。ウサギたちはじっと胡桃を見つめた後、スキップをするような足取りで山頂へと向かっていく。胡桃は微笑んでそれを見送った。
「せっかく、長生きする。楽しんだもん勝ち」
「そうだねえ」
天はきらきらと輝きながら舞う氷の粒を見上げ、ゆっくりと笑い、そのまぶしさに目を細めた。
「経費で落とす。なんなら、世界樹管理局に領収書を突き付けてもいい」
というアネッサの言葉にクーウォンが同意したものだから、連絡樹を使うことにしたのだ。最近は利用する者も少ないので、予約はすぐに取れたのだそうだ。
「アネッサさんの扉じゃダメなの?」
音羽が聞けば、アネッサは頷いて答える。
「一般的な扉は、扉にしかつながらない。でも、連絡樹の扉は、たいていのところにつながる。特別な鍵を使えば、普通の扉から連絡樹につなぐこともできるんだ」
「便利ねえ……あ、だから利用料金が高いのね?」
音羽の言葉に、クーウォンがしみじみと頷いた。それを見て、胡桃は少し笑ってしまった。
「公共交通機関で行ってもいいが、時間が惜しい」
昨日は連絡樹の大きさに気を取られて気付かなかったが、扉はいくつもあるらしいことに音羽は気が付いた。
各々、扉の前に立つ。
「では、健闘を祈る!」
アネッサの力強い言葉に、胡桃は親指を立てて返し、クーウォンも頷いた。
「それじゃあ、またあとで。お互い、いい知らせを持って帰れるように頑張りましょう」
音羽が笑って言えば、風観は少し微笑んで頷き、天は「おー!」とこぶしを突き上げたのだった。
「うわ、ホントだ」
音羽は扉をくぐり、後ろを振り返る。
「壁も何も無いのに、扉がある」
開け放った扉の向こうには、確かに連絡樹周辺の景色がある。一方、扉の周りは全く違う。うっそうと茂る森が広がるばかりである。
「空気が壁みたいなものなんだよ」
アネッサが扉を閉じると、扉はやがて透明になって消えた。その様子を見て音羽は尋ねた。
「帰りはどうするの?」
「鍵さえ持っていれば、帰りたいと思った時に扉が現れるのさ」
「すごいわ、連絡樹って……」
音羽は周辺を見渡す。どうやらここはどこかの森のど真ん中らしい。どこを見ても木、木、木……葉がこすれる音と風の音にまぎれて、聞きなれない何かの音も聞こえてくる。
「すっごく、賑やかな森」
「おや、さすが音羽。よく聞こえるね」
アネッサはくすっと笑って言った。
「この森は『静かな森』として有名なのさ」
「へ? こんなにうるさ……賑やかなのに?」
音羽のきょとんとした顔を見てアネッサは頷くと説明した。
「妖精たちは姿と気配を隠すのが上手なんだ。でも、耳のいい者相手にはそうもいかないようだね。ところで、一番騒がしいのはどっちだい?」
音羽は耳に意識を集中させる。
鳥のような鳴き声、木々のざわめき、地下を流れる水、森を磨く風――その中に、まるで鈴を転がすような、風鈴にも似た音が聞こえる。
「こっち、こっちよ」
音羽はまぶたを伏せたまま指をさす。
「アネッサさん、お願いがあるんだけど」
「なんだい」
「こうやって目をつむっていた方が音がよく聞こえるの。方向は言うから、手を引いてくれるかしら」
「ああ、喜んで」
アネッサは右手で音羽の左手をとる。
「エスコートさせてもらおう」
「あら、頼もしいわ」
二人は、ゆっくりとした足取りで歩きだした。
風観は、目の前にそびえたつ山を見上げた。でかい。想像の何倍、何十倍もでかい。とてつもなくでかい……そして山頂はつややかな茶色、山肌は濃い黄色である。
「プリンかよ」
「なるほど、君にはそう見えるんだね」
クーウォンは風観の隣に立つと、同じように山を見上げた。風観は山からクーウォンに視線を移す。
「え、君には、って?」
「この山は人によって見える姿が違うんだ。ちなみに僕には、ただの砂糖の山に見える」
「へえ~……」
風観は再び山に視線を移す。どう見てもプリンにしか見えない。さすがにプルプル震えてはいないが、かぶりついたらおいしそうだ。
クーウォンは鍵をローブにしまいながら言った。
「その人にとっての甘味は何か、っていうのに引っ張られるみたいなんだ。僕が育った村はなかなか甘いものがなくてね。砂糖があるだけでぜいたくなものだったよ」
「その人の深層心理に影響される……なるほど、興味深いです」
この山は日に何度も噴火するらしい。それを待って、霧を回収しようという作戦だ。
「霧に届く場所までは登る必要があるけど、大丈夫?」
「はい。体力には自信があります」
「よし、いいね。それじゃあ行こうか」
山は美しく、登山道もきちんと整備されていた。どことなく甘い香りがするのは、音羽が言っていたように、甘味の材料になる植物がいろいろ群生しているからか、あるいは霧が回収されることなく何度も溶け込むからか。
風観は前を行くクーウォンに聞いた。
「クーウォンさんはここに来たことあるんですよね。やっぱり、お菓子の材料が必要で?」
「ん? いや、僕はただ、霧が見たくて来たことがあったんだ」
クーウォンは山頂を見上げながら言う。
「糸のような霧って、どんなものなんだろうって思ってね。それで布を織ったらどうなるだろうと思ったんだ」
「ああ、なるほど」
「まあそもそも回収できなかったから、織ることはできなかったんだけどね」
登山道はたまに道が分かれていて、それぞれ、いろいろな植物の群生地につながっているようだった。しかしそのいくつかは閉鎖されている。設けられた看板には「現在調査中」の文字が並んでいる。
「甘いもの材料になる植物の群生地なら、甘い霧はあるだけいいようにも思いますけど……」
それを横目で見ながら発された風観の言葉に、クーウォンは「そうだねえ」と相槌を打つ。
「それがそうもいかないんだよ。過ぎたるは及ばざるがごとし、っていうだろう」
「なるほど」
「君に回収してもらえたら、しばらくは安心だろうけどね」
風観は「そんなんでいいんですか?」と驚いたように聞く。クーウォンは頷いた。
「どうにかして霧を回収する技術は発展しつつあるんだ。正直、人頼りの回収も追いついていなかったからね。今必要なのは、時間なんだ」
だから、とクーウォンは風観を振り返り、穏やかに笑って続けた。
「君がいくらか回収してくれることで、時間稼ぎができるというわけだ」
「……頑張ります」
神妙な面持ちになった風観を見て、クーウォンは頼もしく笑うと風観の頭を乱暴に撫でた。
「そう気負わなくていい。君の肩には、世界樹の三柱の機嫌を取るという責任しか乗っていないんだからな」
「それはそれで重いですよ」
「なに、それはみんなで分けられるものだろう。一人で背負い込むな」
その言葉に、風観は小さく頷いた。クーウォンが垣間見た風観の頬は、少し緩んでいた。
「おおー! 温かい!」
天は例の生地でできた上着を羽織って、その性能に感動していた。胡桃も自分の上着をまとっている。
胡桃は得意げに笑って胸を張った。
「そう、それ、すごく温かい」
「薄っぺらいのに、すごいなあ」
「氷水に入っても、大丈夫」
「それはすごい!」
ひとしきり盛り上がった後、二人は雪山に向かった。
そびえたつその山はまるで巨大な生物が眠っている姿のようにも見えた。これを登るのは至難の業のように思えたが、胡桃は天に言った。
「こっち、来い」
「おー?」
胡桃が連れてきたのは、村の人々が使っているという登山道だった。
「この山、資源、たくさんある。だから、作業のための道、作った。結構上まで続いてる。山頂近くまで、この道、続いてる」
「誰も山頂には行かなかったんだね」
「行く必要、あまりない。そこまでで、資源、足りるから」
「そうだよねえ。必要ないと、行かないよねえ」
これから険しい雪山を行くとは到底思えない、のんびりとした会話を交わすと、二人はさっそく足を踏み出す。
ざくり、ざくりと雪を踏み固めながら着実に登って行く。雪が積もっているものの、凍らないように工夫が施された道は歩きやすい。
「この山で取れる資源って、やっぱ、この布を織るための花?」
天が聞くと、胡桃は指を折りつつ答える。
「それもある。他にも、雪の下にしかない果物、薪にするための木、水がなくなったときのために溶かすきれいな雪、いろいろある」
「雪山の麓で暮らすって、大変なんだね」
「大変。でも、嫌いじゃない」
胡桃は生き生きと道を進む。
「ずっと聞こうと思ってた。天、向こう側の人間。でも、こっち側の人間の気配、する」
その胡桃の言葉に、天はひんやりとした空気を吸い込んで相槌を打った。
「あー、まあ、半々って感じだなあ」
胡桃は周囲を見回す。整備し直された登山道は歩きやすく、ところどころ木に巻き付けられた目印のリボンは、最後に胡桃が見た時よりもずいぶんきれいになっていた。途中の休憩小屋は立て直されている。
里帰りしたのは最近のことだと思っていたが、それからずいぶん時間が経っているのだ、と胡桃はぼんやり想いながら言った。
「生きる時間、永い。人と違う」
「こっち側の魔法使いほど長生きはしないけどね。まあ、永いなあ。身長もなかなか伸びないし」
はは、とおどけたように天が笑うと、胡桃は、ほうっと白い息を吐いて言った。
「永い時を生きる魔法使い、成長、ゆっくり。仕方ない。私もそう。やっとこの身長になった」
胡桃は天を振り返り、後ろ向きに歩く。
「お前、さみしい思い、する。私も、した。クーウォン、もっとした。アネッサ、もっともっとした。でも、楽しいこともいっぱい」
チラチラと雪が降る中で胡桃は再び前を向く。木に隠れるようにしていた真っ白な毛並みに真っ青な瞳のウサギは、一羽ぽっちではなく子どもを連れていた。ウサギたちはじっと胡桃を見つめた後、スキップをするような足取りで山頂へと向かっていく。胡桃は微笑んでそれを見送った。
「せっかく、長生きする。楽しんだもん勝ち」
「そうだねえ」
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