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日常
第784話 おでん
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「こないだコンビニ行ったら、おでんの品数増えててさー」
休み時間、教室にやってきた咲良は言った。
「冬になったなーって思った」
「品数が増える?」
おでんはずいぶん前から出ていたように思うが……品数とは何だろう。新商品が増えるとかだろうか。
「どういうことだ?」
「あれ、春都知らない? コンビニのおでんってさ、出始めはあんま品数ないんだよ」
「へーそうなん」
それは知らなかった。あまりコンビニに行かないからなあ。気づかなかった。
咲良は楽しそうに言った。
「コンビニのおでんってさー、無性に食いたくなる時があるんだよ」
まあ、それは分からないでもない。出汁とか、うちのとはまた違う味がするもんな。あと何より手軽だし。
でもやっぱ、うちのおでんが一番と思ってしまうんだ。もちろん、コンビニもうまいけどな。
「なあ、春都はさ、おでんの具で何が好き?」
「コンビニ縛りか?」
「いや、何でもあり」
そっかあ……え、何が好きって、決められないだろ。
こんにゃくは昔から好きだし……あ、白たきもいいよなあ。卵に厚揚げ、大根、餅巾着。練り物はあまり入っていた記憶がないが……ちくわとか、かまぼこもいい。餃子巻、チーズ巻、牛すじ、つくね……
すべてがあってこそのおでんだよなあ……当然、品数は限られるわけだけど、その時、その鍋の中にあるものひっくるめておでん……だとすると……
「……出汁?」
「そうきたかあ~」
うまいけども、と咲良は笑う。
「なんか固形物で答えてよ」
「固形物て」
うーん……何かなあ。
「厚揚げかなあ、大根も」
「おっ、いいねえ」
「そういう咲良は何が好きなんだ?」
「俺? 俺はねえ~」
咲良は迷うことなく言った。
「つくね!」
「肉かあ」
「うまいっしょ」
そんなこんなと話をしていたら、勇樹が話に入って来た。
「二人とも正反対って感じだな」
「肉と野菜ってことか? まーな」
「でもさー、つくねもいろいろあんじゃん? 軟骨入りとか、野菜入りとか。そういうこだわりはあるわけ?」
勇樹の問いに、咲良は腕を組む。
「コンビニのは軟骨入りでうまいし、野菜入ってるのもいいけど。俺が思いつくのはうちのつくねだな」
「へー、手作り?」
「そう。うちでおでん作るときはいつも入ってんの。うまいんだよな~」
「あ、それなら分かる」
うちでもつくね、手作りのやつが入ることがある。市販のもうまいけど、うちで作ったのって口になじむんだよなあ。
「なー、やっぱ食べ慣れた味ってあるよなー」
「ふーん」
好きな具かあ、と勇樹はつぶやくと、ひらめいた、というように言った。
「俺、たこが好き」
「たこ」
確かに聞くが、この辺じゃそういやあまり見ないな、たこ。勇樹は続けた。
「じいちゃんがよく行く居酒屋のおでんに入ってんの。寒くなるとしょっちゅうお土産で持って帰って来てくれんだけど、それがうまくてさー」
「へえ、食ってみたいな」
たこ串、ちょっとした憧れなんだよな。
おでんって、カレー以上に家ごとの差とか地域差が出るよなあ。いろいろ食ってみたい。真っ黒なおでんもあるんだっけ。
あ、おでんの出汁でカレーとかも聞いたことがあるような……
食べ物の可能性って、無限大だよなあ。
家に帰りついて、温かい出汁の香りがすると妙にうれしい。どうやら、今日の晩ご飯はおでんのようだ。
テーブルの上に新聞紙、その上に金色の大きなおでん鍋。なかなか一人の時は使わないからちょっとワクワクする。
卵に大根、厚揚げ、つくね。お、餃子巻もある。
「いただきます」
まずは大根かなあ。
ほくっと箸でほぐれる大根。わあ、中心まで出汁がよく染みてる。やけどしないようにそっと噛むと、ジュワッと水分があふれ出す。とろけるような、ほろほろと崩れるような心地よい食感の大根は、あっという間に食べ終わってしまった。
さて、次は厚揚げだ。
ぷわぷわ、ジュワジュワの表面、プルプルの中身。そうそう、これこれ。大豆の風味と香ばしさが出汁で際立つ。あー、出汁うまぁ。そして、厚揚げには柚子胡椒が合うのだ。辛さとさわやかさそして塩気。うま味が引き立つ。
空だし日本のちょっとオイスターソース入れるとうま味が倍増するんだ。
そしておでんの時は小さなおにぎり。少し塩がきつめだが、これを出汁につけて食うのがうまい。ほろほろっとほどけて、口当たりもたまらないのだ。米の甘味もよく分かる。
卵は噛み応えが増すようで、黄身が出汁に溶けていく。おでんの卵は腹いっぱいになるものの一つである。からしが合う。ピリッとした辛さが、卵のまろやかさに合うんだ。
餃子巻は不思議な食感だ。周りはちくわとかかまぼこっぽくて、中身は当然、餃子だ。ちゅるんとした皮、ジュワジュワのほろほろになった中身。ほどける感じとしっかり歯ごたえがある感じが共存してるし、餃子の濃い風味と出汁と、魚の味がいっぺんに来るし。でもそれが妙にマッチしているのだ。
つくねにはしょうがが入っている。シャキッと爽やかで、出汁によく合う。来れのスープもうまいんだよなあ。飲み物みたいだ。いくらでも食べられる。
寒い外から帰って来て、暖かな部屋で温かいおでんを食べられる。なんと幸せなのだろう。
明日の朝、味が染みに染みたおでんも楽しみだなあ。
「ごちそうさまでした」
休み時間、教室にやってきた咲良は言った。
「冬になったなーって思った」
「品数が増える?」
おでんはずいぶん前から出ていたように思うが……品数とは何だろう。新商品が増えるとかだろうか。
「どういうことだ?」
「あれ、春都知らない? コンビニのおでんってさ、出始めはあんま品数ないんだよ」
「へーそうなん」
それは知らなかった。あまりコンビニに行かないからなあ。気づかなかった。
咲良は楽しそうに言った。
「コンビニのおでんってさー、無性に食いたくなる時があるんだよ」
まあ、それは分からないでもない。出汁とか、うちのとはまた違う味がするもんな。あと何より手軽だし。
でもやっぱ、うちのおでんが一番と思ってしまうんだ。もちろん、コンビニもうまいけどな。
「なあ、春都はさ、おでんの具で何が好き?」
「コンビニ縛りか?」
「いや、何でもあり」
そっかあ……え、何が好きって、決められないだろ。
こんにゃくは昔から好きだし……あ、白たきもいいよなあ。卵に厚揚げ、大根、餅巾着。練り物はあまり入っていた記憶がないが……ちくわとか、かまぼこもいい。餃子巻、チーズ巻、牛すじ、つくね……
すべてがあってこそのおでんだよなあ……当然、品数は限られるわけだけど、その時、その鍋の中にあるものひっくるめておでん……だとすると……
「……出汁?」
「そうきたかあ~」
うまいけども、と咲良は笑う。
「なんか固形物で答えてよ」
「固形物て」
うーん……何かなあ。
「厚揚げかなあ、大根も」
「おっ、いいねえ」
「そういう咲良は何が好きなんだ?」
「俺? 俺はねえ~」
咲良は迷うことなく言った。
「つくね!」
「肉かあ」
「うまいっしょ」
そんなこんなと話をしていたら、勇樹が話に入って来た。
「二人とも正反対って感じだな」
「肉と野菜ってことか? まーな」
「でもさー、つくねもいろいろあんじゃん? 軟骨入りとか、野菜入りとか。そういうこだわりはあるわけ?」
勇樹の問いに、咲良は腕を組む。
「コンビニのは軟骨入りでうまいし、野菜入ってるのもいいけど。俺が思いつくのはうちのつくねだな」
「へー、手作り?」
「そう。うちでおでん作るときはいつも入ってんの。うまいんだよな~」
「あ、それなら分かる」
うちでもつくね、手作りのやつが入ることがある。市販のもうまいけど、うちで作ったのって口になじむんだよなあ。
「なー、やっぱ食べ慣れた味ってあるよなー」
「ふーん」
好きな具かあ、と勇樹はつぶやくと、ひらめいた、というように言った。
「俺、たこが好き」
「たこ」
確かに聞くが、この辺じゃそういやあまり見ないな、たこ。勇樹は続けた。
「じいちゃんがよく行く居酒屋のおでんに入ってんの。寒くなるとしょっちゅうお土産で持って帰って来てくれんだけど、それがうまくてさー」
「へえ、食ってみたいな」
たこ串、ちょっとした憧れなんだよな。
おでんって、カレー以上に家ごとの差とか地域差が出るよなあ。いろいろ食ってみたい。真っ黒なおでんもあるんだっけ。
あ、おでんの出汁でカレーとかも聞いたことがあるような……
食べ物の可能性って、無限大だよなあ。
家に帰りついて、温かい出汁の香りがすると妙にうれしい。どうやら、今日の晩ご飯はおでんのようだ。
テーブルの上に新聞紙、その上に金色の大きなおでん鍋。なかなか一人の時は使わないからちょっとワクワクする。
卵に大根、厚揚げ、つくね。お、餃子巻もある。
「いただきます」
まずは大根かなあ。
ほくっと箸でほぐれる大根。わあ、中心まで出汁がよく染みてる。やけどしないようにそっと噛むと、ジュワッと水分があふれ出す。とろけるような、ほろほろと崩れるような心地よい食感の大根は、あっという間に食べ終わってしまった。
さて、次は厚揚げだ。
ぷわぷわ、ジュワジュワの表面、プルプルの中身。そうそう、これこれ。大豆の風味と香ばしさが出汁で際立つ。あー、出汁うまぁ。そして、厚揚げには柚子胡椒が合うのだ。辛さとさわやかさそして塩気。うま味が引き立つ。
空だし日本のちょっとオイスターソース入れるとうま味が倍増するんだ。
そしておでんの時は小さなおにぎり。少し塩がきつめだが、これを出汁につけて食うのがうまい。ほろほろっとほどけて、口当たりもたまらないのだ。米の甘味もよく分かる。
卵は噛み応えが増すようで、黄身が出汁に溶けていく。おでんの卵は腹いっぱいになるものの一つである。からしが合う。ピリッとした辛さが、卵のまろやかさに合うんだ。
餃子巻は不思議な食感だ。周りはちくわとかかまぼこっぽくて、中身は当然、餃子だ。ちゅるんとした皮、ジュワジュワのほろほろになった中身。ほどける感じとしっかり歯ごたえがある感じが共存してるし、餃子の濃い風味と出汁と、魚の味がいっぺんに来るし。でもそれが妙にマッチしているのだ。
つくねにはしょうがが入っている。シャキッと爽やかで、出汁によく合う。来れのスープもうまいんだよなあ。飲み物みたいだ。いくらでも食べられる。
寒い外から帰って来て、暖かな部屋で温かいおでんを食べられる。なんと幸せなのだろう。
明日の朝、味が染みに染みたおでんも楽しみだなあ。
「ごちそうさまでした」
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