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日常
第781話 生春巻き
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学園祭も終わり、昼休みの教室には賑やかさが戻っていた。しかし、俺のもとにやってくる奴というのは、いつでも変わらないもので。
向かいには咲良が座り、今日は自分で持ってきたらしい弁当を広げていた。
「……ん~」
咲良は、半分に切られた春巻きを箸でつまみ上げ、じっと凝視していた。
「どうした」
そう聞きながら、自分の弁当に向き合う。お、シュウマイが入っている。冷凍のえびシュウマイを揚げたやつは、俺的にはおなじみの弁当のおかずである。
「いや、ちょっと思ってさ」
と、咲良は春巻きを口にする。
揚げたシュウマイはカリカリのパリパリで、口の中をけがしてしまいそうである。でも、うまい。えびのすり身がほんのり甘くて、もちもちした食感もある。
揚げ餃子も、似たような鋭利さがあるよなあ。
「何を?」
「生春巻きってあるよなーって」
「ああ」
スーパーの片隅とか、おしゃれなお店とか、そういうところで売っているイメージがあるやつだ。なんだっけ、スイートチリソースとかいうのをつけるんだったか。花丸スーパーのやつはドレッシングだったような……
咲良は梅干しを器用に箸で分け、白米にのせ、口にした。酸っぱかったのか、少し顔が縮こまる。
「あれ結構好きなんだよなーと思って」
「揚げたのよりはさっぱりしてるもんな」
「そーそー、手持ちサラダって感じ?」
「確かに」
野菜たっぷりで、肉っ気はわずかばかり。ローストビーフが一枚二枚、とか。あ、でもえびとかサーモンの方が多いイメージあるな。
咲良は言った。
「あれ、外側剥がすもんだって、小さい頃は思ってた。ビニールかなんかなのかと」
「はは、春巻きっつってんのに?」
「うん。だって食いもんに見えなかったし」
確かに、ライスペーパーは初めて見た時、ほんとに食いもんなのか? って思ったなあ。
「でも、生春巻きって家で作ることなかなかないよな。ライスペーパーとかは売ってるけどさあ」
「そうだな、作ったことない」
「だろー? 一回作ってみたいんだよな~」
「難しそうだな」
巻くって作業は、なかなかコツがいる。巻きずしにしても、普通の春巻きにしても、結構難しい。
でも、作れないことはないよなあ、生春巻き。
「生春巻きか……」
どんな野菜が入ってたかなあ。
というわけで、準備してみた。生春巻きの材料。
こういうのは休みの日くらいしか作れないよな~。思ったよりライスペーパーが高かったが……まあ、いいだろう。
中身はエビとサーモン。野菜はキャベツに水菜、豆苗、レタス。それっぽいものを集めてみた。にんじんもいいかな、と思ったけど、今日はまずこれで様子見だ。
えーっと、何から準備しようかな。とりあえず、野菜を全部皿に出そう。キャベツも千切りにされているものを買ってきたし、レタスも洗わずに使えるやつだ。水菜と豆苗はレンジでチンして、水気を搾り取る。
えびは背ワタを取って、塩と酒で揉んで、水で洗い流す。塩ゆでしたら殻をむき、粗熱を取る。
思ったよりえびが大きいな。よし、半分にしよう。薄くスライスするような感じで切った方が見栄えがいいかな。
サーモンは刺身パックである。
そして、ライスペーパー。ぬるま湯か水に浸して、やわらかくなったところに具材をのせて巻くのか。うーん、やってみよう。
大きめの皿に常温の水を注ぎ入れ、ライスペーパーを一枚浸す……どれくらい浸せばいいんだろう。分からん。
柔らかいかなーってなったら、まな板の上にのせて、その上に野菜をのせる。そしたら一回巻いて、両側を折って、えびを置いてきゅっと巻く。
お、初めてにしては上出来なのでは?
えびの赤色が映えるなあ。よし、次はサーモンだ。これも同じ要領で。
うん、サーモンのオレンジ色も鮮やかである。それだけで、それっぽく見えるからすごいな。
ソースは試しに、スイートチリソースを買ってきた。それと、サルサソース。妙にうまそうだったし。あとはドレッシングだな。
スイーツ系のレシピもあったけど、それはまた今度。
生春巻きは酒のあてにもなる、と父さんと母さんも喜んでくれた。
「半分に……は、やめておこう」
上手に切れる気がしない。そのまま食っったほうがよさそうだ。
「いただきます」
まずはえびから。
最初は……ドレッシングで食べてみよう。慣れた味だし。
ん、思いのほか歯ごたえのある外側。もっちりとしていてふわっと香るのは米の香り。こんな形だけど、やっぱりちゃんと米なんだなあ。でも、炊いた米とはまた違うんだよなあ。おいしい。
野菜がいっぱいでみずみずしい。……豆苗が噛み切れない。
あ、えび。プリプリしていて、程よい風味。ドレッシングが合うなあ。
スイートチリソースは……お、思ったより甘いんだな。もっと辛いんだと思ってた。んー、この甘さは初めてなような、食べたことがあるような……
あ、エビチリだ。エビチリに似てる。というか、あれもチリソースか? そりゃ同じ味か。えびにも合うわけだ。
サルサソースは、めっちゃトマトって感じ。こっちの方が辛いかも。タバスコにも似た辛さ。みずみずしくておいしい。
サーモンはドレッシングが合いそうだ。
うん、マリネみたいな感じだな。ほのかに甘くとろけるサーモンの味わいは、生春巻きにぴったりである。
生春巻きって意外と家でできるもんなんだなあ。
中身を色々変えても面白そうだ。野菜だけでもなんかいけそうな気がする。ローストビーフもやってみたいな。
ふふ、今度咲良に自慢してやろう。
「ごちそうさまでした」
向かいには咲良が座り、今日は自分で持ってきたらしい弁当を広げていた。
「……ん~」
咲良は、半分に切られた春巻きを箸でつまみ上げ、じっと凝視していた。
「どうした」
そう聞きながら、自分の弁当に向き合う。お、シュウマイが入っている。冷凍のえびシュウマイを揚げたやつは、俺的にはおなじみの弁当のおかずである。
「いや、ちょっと思ってさ」
と、咲良は春巻きを口にする。
揚げたシュウマイはカリカリのパリパリで、口の中をけがしてしまいそうである。でも、うまい。えびのすり身がほんのり甘くて、もちもちした食感もある。
揚げ餃子も、似たような鋭利さがあるよなあ。
「何を?」
「生春巻きってあるよなーって」
「ああ」
スーパーの片隅とか、おしゃれなお店とか、そういうところで売っているイメージがあるやつだ。なんだっけ、スイートチリソースとかいうのをつけるんだったか。花丸スーパーのやつはドレッシングだったような……
咲良は梅干しを器用に箸で分け、白米にのせ、口にした。酸っぱかったのか、少し顔が縮こまる。
「あれ結構好きなんだよなーと思って」
「揚げたのよりはさっぱりしてるもんな」
「そーそー、手持ちサラダって感じ?」
「確かに」
野菜たっぷりで、肉っ気はわずかばかり。ローストビーフが一枚二枚、とか。あ、でもえびとかサーモンの方が多いイメージあるな。
咲良は言った。
「あれ、外側剥がすもんだって、小さい頃は思ってた。ビニールかなんかなのかと」
「はは、春巻きっつってんのに?」
「うん。だって食いもんに見えなかったし」
確かに、ライスペーパーは初めて見た時、ほんとに食いもんなのか? って思ったなあ。
「でも、生春巻きって家で作ることなかなかないよな。ライスペーパーとかは売ってるけどさあ」
「そうだな、作ったことない」
「だろー? 一回作ってみたいんだよな~」
「難しそうだな」
巻くって作業は、なかなかコツがいる。巻きずしにしても、普通の春巻きにしても、結構難しい。
でも、作れないことはないよなあ、生春巻き。
「生春巻きか……」
どんな野菜が入ってたかなあ。
というわけで、準備してみた。生春巻きの材料。
こういうのは休みの日くらいしか作れないよな~。思ったよりライスペーパーが高かったが……まあ、いいだろう。
中身はエビとサーモン。野菜はキャベツに水菜、豆苗、レタス。それっぽいものを集めてみた。にんじんもいいかな、と思ったけど、今日はまずこれで様子見だ。
えーっと、何から準備しようかな。とりあえず、野菜を全部皿に出そう。キャベツも千切りにされているものを買ってきたし、レタスも洗わずに使えるやつだ。水菜と豆苗はレンジでチンして、水気を搾り取る。
えびは背ワタを取って、塩と酒で揉んで、水で洗い流す。塩ゆでしたら殻をむき、粗熱を取る。
思ったよりえびが大きいな。よし、半分にしよう。薄くスライスするような感じで切った方が見栄えがいいかな。
サーモンは刺身パックである。
そして、ライスペーパー。ぬるま湯か水に浸して、やわらかくなったところに具材をのせて巻くのか。うーん、やってみよう。
大きめの皿に常温の水を注ぎ入れ、ライスペーパーを一枚浸す……どれくらい浸せばいいんだろう。分からん。
柔らかいかなーってなったら、まな板の上にのせて、その上に野菜をのせる。そしたら一回巻いて、両側を折って、えびを置いてきゅっと巻く。
お、初めてにしては上出来なのでは?
えびの赤色が映えるなあ。よし、次はサーモンだ。これも同じ要領で。
うん、サーモンのオレンジ色も鮮やかである。それだけで、それっぽく見えるからすごいな。
ソースは試しに、スイートチリソースを買ってきた。それと、サルサソース。妙にうまそうだったし。あとはドレッシングだな。
スイーツ系のレシピもあったけど、それはまた今度。
生春巻きは酒のあてにもなる、と父さんと母さんも喜んでくれた。
「半分に……は、やめておこう」
上手に切れる気がしない。そのまま食っったほうがよさそうだ。
「いただきます」
まずはえびから。
最初は……ドレッシングで食べてみよう。慣れた味だし。
ん、思いのほか歯ごたえのある外側。もっちりとしていてふわっと香るのは米の香り。こんな形だけど、やっぱりちゃんと米なんだなあ。でも、炊いた米とはまた違うんだよなあ。おいしい。
野菜がいっぱいでみずみずしい。……豆苗が噛み切れない。
あ、えび。プリプリしていて、程よい風味。ドレッシングが合うなあ。
スイートチリソースは……お、思ったより甘いんだな。もっと辛いんだと思ってた。んー、この甘さは初めてなような、食べたことがあるような……
あ、エビチリだ。エビチリに似てる。というか、あれもチリソースか? そりゃ同じ味か。えびにも合うわけだ。
サルサソースは、めっちゃトマトって感じ。こっちの方が辛いかも。タバスコにも似た辛さ。みずみずしくておいしい。
サーモンはドレッシングが合いそうだ。
うん、マリネみたいな感じだな。ほのかに甘くとろけるサーモンの味わいは、生春巻きにぴったりである。
生春巻きって意外と家でできるもんなんだなあ。
中身を色々変えても面白そうだ。野菜だけでもなんかいけそうな気がする。ローストビーフもやってみたいな。
ふふ、今度咲良に自慢してやろう。
「ごちそうさまでした」
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