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日常
第769話 チーズインハンバーグ
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休みの日にやることといえば色々ある。
ゲーム、読書、課題にアニメ鑑賞……咲良に引きずられて外出とか、うめずと散歩とか。最近は気候もいいから、うめずの散歩が絶好調で、いつもより少しばかり長く歩いている。おかげで、帰ってきたら疲れてしまっている。
そんな時はのんびりと横になって、スマホを見ている。
見るのはもっぱら、色んな飲食店のメニューだ。何なら、お気に入りにいくつか登録しているくらいである。
「餃子かあ……」
中華料理屋のメニュー、餃子にもいろいろな種類があって面白い。シュウマイとか、春巻きとか……自分一人じゃなかなか作らないものも多いからな。今度、冷凍餃子買ってこようか。炒飯とか、ラーメンと一緒に食べたい。
ああ、ラーメン屋さんもいい。豚骨ラーメン。チャーシューににきくらげ、ホルモン、白米に甘いたくあん。
最近行ってないなあ。
うどんとかそばはよく食べている気がする。肉そばはちょっと贅沢で、ごぼう天うどんは安定の味。
スイーツもいいよな。なかなか行かない店のやつとか、目の保養になる。何だこれ、どうやって食うんだ、みたいなのもある。そういうのって、ちょっと高いんだよな。芸術点か何かか? あ、技術料か?
アイスの新味も出るようだ。これもハロウィン仕様。真っ黒なやつ、チョコレートかと思いきやイチゴ味、紫は芋か? 違う、栗だ。へー、面白い。一回くらい食えるといいな。
ファミレスのメニューもいろいろあって飽きない。店によって違うし、季節によって変化が目まぐるしい。
ファミレスといえば、そういや、咲良がなんか言ってたなあ。
「俺さー、ちょいちょいファミレス行くんだけど」
昼休みの教室、そこはかとなく騒がしい中で、咲良が教科書をめくりながら言う。どうやら小テストがあるらしく、仕方なく読んでいる、というような感じだった。
「てかこないだも行ったんだけど」
「そうか」
「チーズインハンバーグ、好きなんだよね」
あー、なんか好きそう、と納得すると同時に最近食べてないな、と思う。
咲良は教科書から顔を上げる。
「ああ、うまいよな」
「デミグラスソースでさ、普通だったら端から切って食うんだけど、チーズインハンバーグは真ん中切っちゃうんだよ」
「CMみたいに?」
「そう、CMみたいに」
あんなふうに、トローッと出てくるのだろうか。
「ま、あんなに上手に切れはしないんだけどさ」
咲良は笑って言った。
「ハンバーグだ! って思って切ったら、チーズもある! ってなるのがうれしいんだよなー」
「自分で頼んどいて?」
「まー、そこはな、分かってんだけどさ。嬉しいんだよ」
チーズインハンバーグだと分かっていて真ん中から切る、そんで、チーズもある! と驚けるし嬉しく思える。なんともまあ、幸せなことである。
俺も似たようなものだから、何も言えんが。
「春都は何が好き?」
「ファミレスかー……あんま行かねえもんな」
そっかあ、と咲良が言う。
「でも、チーズインハンバーグって、ファミレスの代名詞みたいなとこあるよな」
そう言えば咲良は笑った。
「そうそう! 鉄板にのってジュウジュウいってんの!」
「あれ、いいよな」
ファミレスのハンバーグって、なんとなく特別な感じするんだよなあ。
「チーズインハンバーグか……」
なんか、思い出したら急に食いたくなってきた。
よし、作るか。ひき肉と卵と玉ねぎと……パン粉かな。たぶんあるはず。ばあちゃんが勝って来てくれてた。
まずは玉ねぎをみじん切りにして、あめ色になるまで炒める。ハンバーグって休みの日くらいにしか作れないよなあ。
玉ねぎを冷ましている間に、肉の準備をする。あ、ソースも。
缶に入ったデミグラスソースを鍋に移して、分量通り水を入れて温める。うーん、いい香り。これだけで高級レストランっぽいな。
ひき肉に卵と、冷えた玉ねぎと入れる。これ混ぜるの楽しいけど冷たくてしょうがないんだ。パン粉も入れて混ぜる。まるで粘土遊びをしているみたいだ。
うちで作ると中に入れるチーズの量を調整できるのがいい。いっぱい入れちゃおうかな。入れすぎてもバランスがな。よし、これくらいか。
丁寧に整形して、空気を抜いて……焼く。
しっかり芯まで焼けるように、フライパンで焼いた後はオーブンで。なんだか本当に、洋食屋さんみたいな気分がしてきたぞ。
焼けるのを待つ間にポテトも揚げてしまった。
ハンバーグを皿にのせ、デミグラスソ―スをたっぷりと。ふっくらこんがり焼けたハンバーグに、こっくり茶色のソース……たまらないなあ。
ご飯もちゃんと準備して、と。
「いただきます」
やっぱり、真ん中から割ってしまう。箸をそっと……
おお、しっかりとした肉の感じの後、スッと箸が入る。いい感じにとろけてるなあ。最高だ。デミグラスソースにチーズが広がる。
ソースをたっぷりつけて、ご飯にバウンドさせて食べる。
ん~、熱い! 焼きたて熱い! でもうまい!
デミグラスソースのコクのある味わいに、うま味。肉汁もあっていい。そしてチーズがもっちりとしつつもとろけるようで、肉となじんでうまい。
ほろほろとほどける肉の感じ。うん、うまくできたようだ。玉ねぎもなじんでいい。
そしてご飯で追いかける。くぅ、これこれ。これが食いたかった。パンもいいけど、白米にデミグラスソース、チーズ、合うんだよなあ。ドリアっぽくなる。
ポテトはあまり塩をふっていない。ソースにつけるから。
ジャガイモとデミグラスソースって、最高だ。ちょっと高級感が出る。
自分ちで作るチーズインハンバーグって、ファミレスとはまた違った良さがある。チーズの量を好きなようにできるのもだけど、味わいというか、何というか。ほっと落ち着くような感じ。特別感。
少しチーズがかたまったら、ほろほろした食感になる。これもまたいい。
口いっぱいに肉の味が広がって、そこにチーズの塩気とまろやかさ、デミグラスソースのコク……
思わず笑っちゃうくらいうまいな。
また作ろう。今度はうずらの卵とか入れたいな。あれ、それじゃあ違う料理になっちゃうか。
まあいいか、おいしければ。
最後のひとかけらをしっかり味わう。ああ、うまかった。
「ごちそうさまでした」
ゲーム、読書、課題にアニメ鑑賞……咲良に引きずられて外出とか、うめずと散歩とか。最近は気候もいいから、うめずの散歩が絶好調で、いつもより少しばかり長く歩いている。おかげで、帰ってきたら疲れてしまっている。
そんな時はのんびりと横になって、スマホを見ている。
見るのはもっぱら、色んな飲食店のメニューだ。何なら、お気に入りにいくつか登録しているくらいである。
「餃子かあ……」
中華料理屋のメニュー、餃子にもいろいろな種類があって面白い。シュウマイとか、春巻きとか……自分一人じゃなかなか作らないものも多いからな。今度、冷凍餃子買ってこようか。炒飯とか、ラーメンと一緒に食べたい。
ああ、ラーメン屋さんもいい。豚骨ラーメン。チャーシューににきくらげ、ホルモン、白米に甘いたくあん。
最近行ってないなあ。
うどんとかそばはよく食べている気がする。肉そばはちょっと贅沢で、ごぼう天うどんは安定の味。
スイーツもいいよな。なかなか行かない店のやつとか、目の保養になる。何だこれ、どうやって食うんだ、みたいなのもある。そういうのって、ちょっと高いんだよな。芸術点か何かか? あ、技術料か?
アイスの新味も出るようだ。これもハロウィン仕様。真っ黒なやつ、チョコレートかと思いきやイチゴ味、紫は芋か? 違う、栗だ。へー、面白い。一回くらい食えるといいな。
ファミレスのメニューもいろいろあって飽きない。店によって違うし、季節によって変化が目まぐるしい。
ファミレスといえば、そういや、咲良がなんか言ってたなあ。
「俺さー、ちょいちょいファミレス行くんだけど」
昼休みの教室、そこはかとなく騒がしい中で、咲良が教科書をめくりながら言う。どうやら小テストがあるらしく、仕方なく読んでいる、というような感じだった。
「てかこないだも行ったんだけど」
「そうか」
「チーズインハンバーグ、好きなんだよね」
あー、なんか好きそう、と納得すると同時に最近食べてないな、と思う。
咲良は教科書から顔を上げる。
「ああ、うまいよな」
「デミグラスソースでさ、普通だったら端から切って食うんだけど、チーズインハンバーグは真ん中切っちゃうんだよ」
「CMみたいに?」
「そう、CMみたいに」
あんなふうに、トローッと出てくるのだろうか。
「ま、あんなに上手に切れはしないんだけどさ」
咲良は笑って言った。
「ハンバーグだ! って思って切ったら、チーズもある! ってなるのがうれしいんだよなー」
「自分で頼んどいて?」
「まー、そこはな、分かってんだけどさ。嬉しいんだよ」
チーズインハンバーグだと分かっていて真ん中から切る、そんで、チーズもある! と驚けるし嬉しく思える。なんともまあ、幸せなことである。
俺も似たようなものだから、何も言えんが。
「春都は何が好き?」
「ファミレスかー……あんま行かねえもんな」
そっかあ、と咲良が言う。
「でも、チーズインハンバーグって、ファミレスの代名詞みたいなとこあるよな」
そう言えば咲良は笑った。
「そうそう! 鉄板にのってジュウジュウいってんの!」
「あれ、いいよな」
ファミレスのハンバーグって、なんとなく特別な感じするんだよなあ。
「チーズインハンバーグか……」
なんか、思い出したら急に食いたくなってきた。
よし、作るか。ひき肉と卵と玉ねぎと……パン粉かな。たぶんあるはず。ばあちゃんが勝って来てくれてた。
まずは玉ねぎをみじん切りにして、あめ色になるまで炒める。ハンバーグって休みの日くらいにしか作れないよなあ。
玉ねぎを冷ましている間に、肉の準備をする。あ、ソースも。
缶に入ったデミグラスソースを鍋に移して、分量通り水を入れて温める。うーん、いい香り。これだけで高級レストランっぽいな。
ひき肉に卵と、冷えた玉ねぎと入れる。これ混ぜるの楽しいけど冷たくてしょうがないんだ。パン粉も入れて混ぜる。まるで粘土遊びをしているみたいだ。
うちで作ると中に入れるチーズの量を調整できるのがいい。いっぱい入れちゃおうかな。入れすぎてもバランスがな。よし、これくらいか。
丁寧に整形して、空気を抜いて……焼く。
しっかり芯まで焼けるように、フライパンで焼いた後はオーブンで。なんだか本当に、洋食屋さんみたいな気分がしてきたぞ。
焼けるのを待つ間にポテトも揚げてしまった。
ハンバーグを皿にのせ、デミグラスソ―スをたっぷりと。ふっくらこんがり焼けたハンバーグに、こっくり茶色のソース……たまらないなあ。
ご飯もちゃんと準備して、と。
「いただきます」
やっぱり、真ん中から割ってしまう。箸をそっと……
おお、しっかりとした肉の感じの後、スッと箸が入る。いい感じにとろけてるなあ。最高だ。デミグラスソースにチーズが広がる。
ソースをたっぷりつけて、ご飯にバウンドさせて食べる。
ん~、熱い! 焼きたて熱い! でもうまい!
デミグラスソースのコクのある味わいに、うま味。肉汁もあっていい。そしてチーズがもっちりとしつつもとろけるようで、肉となじんでうまい。
ほろほろとほどける肉の感じ。うん、うまくできたようだ。玉ねぎもなじんでいい。
そしてご飯で追いかける。くぅ、これこれ。これが食いたかった。パンもいいけど、白米にデミグラスソース、チーズ、合うんだよなあ。ドリアっぽくなる。
ポテトはあまり塩をふっていない。ソースにつけるから。
ジャガイモとデミグラスソースって、最高だ。ちょっと高級感が出る。
自分ちで作るチーズインハンバーグって、ファミレスとはまた違った良さがある。チーズの量を好きなようにできるのもだけど、味わいというか、何というか。ほっと落ち着くような感じ。特別感。
少しチーズがかたまったら、ほろほろした食感になる。これもまたいい。
口いっぱいに肉の味が広がって、そこにチーズの塩気とまろやかさ、デミグラスソースのコク……
思わず笑っちゃうくらいうまいな。
また作ろう。今度はうずらの卵とか入れたいな。あれ、それじゃあ違う料理になっちゃうか。
まあいいか、おいしければ。
最後のひとかけらをしっかり味わう。ああ、うまかった。
「ごちそうさまでした」
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