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日常
第743話 ソフトクリーム
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部活も課外もない夏休みにすることといえば、家でゲーム三昧、これに限る。
小学生の頃のように十二時間もできない……こともないか。集中するとあっという間だからな。
「よしっ」
と、気合を入れた時、スマホが鳴った。また公式アカウントか。
いや、違う。今度こそ咲良だ。『ここ行こう』というメッセージの後にURLが送られてきた。市民プール……ほう、科学館の近くの。ああ、そういやあったかなあ、あそこ。
まあ、行ってもいいな。泳ぎたいし。
「オッケーっと」
スタンプを送ると、さっそく返事が来た。
『じゃあ、今から家出る! 電車の駅で待ち合せな』
「うそだろ」
今日行くんかい。
「お前は、いつも唐突なんだよ。咲良」
「まーまー、いいじゃん。それでうまくいってんだし」
連絡が来て一時間もしないうちに、電車に揺られている。水着の入ったバッグを持っているだけでなんとなく非日常な感じがする。ビニール特有の匂いが鼻につく。
電車から降りたら、バスに乗る。
「今日は晴れてるし、気持ちよさそうだよなー。あ、ウォータースライダーもあるんだって」
「へー、そんなんあるんだな」
市民プールって、そういうイメージないから少しびっくりする。
たどり着いた先は、科学館や動物園もほど近い場所だった。すでに賑やかな声が聞こえてくる。
入場券は……券売機で買うのか、なるほど。そして、更衣室に向かう。
「俺もう、水着、下に着てきたんだ」
と、咲良が得意げに言う。
「俺も」
「だよなー」
ロッカーに鍵をかけて、その鍵は手にはめる。これもプールならではだな。
シャワーを浴びて、外に出る。おお、日差しがまぶしい。
日に目が慣れたところで、辺りを見回す。へえ、結構広いんだなあ。流れるプールに、あ、あれか、ウォータースライダー。結構でかいな。幼児用プールもある。人がたくさんだが、アトラクションがたくさんあるようなプールよりは少ない。
「あ、浮き輪貸し出し中だって」
と、咲良がある場所を指さす。プールサイドの片隅で、いろいろと浮き輪やビートバンを貸しているようだった。
「でけえの一個借りねえ?」
「いいんじゃないか」
おっ、シャチの形のとかある。バナナも。シンプルなのもあるし、めっちゃ可愛い感じのもある。
「じゃ、これ借ります!」
「はーい、お気をつけてー」
咲良が選んだのは、青のでかい浮き輪だった。咲良はさっそくそれを装着し、ゴーグルも万全に、仁王立ちした。
「じゃあ、行くぞ」
「おー」
人の少ない場所を選んで入る。
「おっ、冷た!」
日に当たってぬるいかと思ったが、思ったより冷たい。はじめこそその冷たさに慣れなかったが、徐々に気持ちよくなってきた。
「いやー気持ちいいなあ……」
浮き輪でぷかぷかと浮く咲良が、水流に任せゆらゆらと移動している。あ、何だろう、すっげえちょっかい出したい。うずうずしてきた。
浮き輪の端をつかみ、ちょっと右に回してみる。
「おおー、回るー」
ゆるーく回る咲良は、ケラケラと笑ってその状況を甘んじて受け入れた。よっしゃ、じゃあ、どんどん回してやろう。
「あー、あー。ちょ、春都、めっちゃ回すじゃん」
「あっはっは!」
なんだこれ、面白れぇ。
「おい、ちょっと、春都交代」
「あ? なんでだよ。お前見てたら面白いんだけど」
「こっち側も面白いって」
「え、じゃあ交代」
日に照らされた浮き輪は少し熱い。すっぽりとハマると、なんだか懐かしい感じがした。あー、浮き輪ってこんな安心感あったっけ、浮遊感が変な感じだ。
「じゃ、いくぜー」
咲良が嬉々として回し始める。
ふっへっへ、なんだこりゃ。ゆらーっと視界が回る。そんで、水流で少しずつ進んでいるから、何ともいえない。
「あっはは、なんだこれ」
「なー? また次代われよ」
「おう」
結局、そんなしょうもない遊びをしていたら、あっという間に時間が過ぎたのだった。
しこたま遊び倒して、いったん休憩する。パラソルのある席が空いていたのでラッキーだった。
「おーっす、おまたせー」
咲良は両手にソフトクリームを持ってやってきた。
「みて、期間限定ラムネ味~」
「めっちゃ水色」
「それな。はい、春都はバニラな~」
「ありがとう」
ラムネ味も気になるが、なんとなく、冒険しきれない。
「いただきます」
暑さで瞬く間に溶けそうな、やわらかい真っ白なアイス。パラソルの色が少しうつって、赤くも見える。
んー、シンプルなバニラ味。ひんやりとした口当たりが気持ちいい。暑い中、外で食う冷たいアイスって、うまいなあ。うまさが増すような気がする。もちろん、涼しいところで食べるアイスも贅沢なものだが。
でもやっぱり、暑い中だからこそ、冷たさが際立つよな。
「ん、一口いる?」
と、咲良がラムネ味を差し出す。
「いる」
「じゃ、バニラ一口ちょうだい」
ラムネ味は甘さが爽やかで、すっきりとしている。どことなくシュワッとした爽快感があるなあ。ちょっとシャーベットっぽさもある。
そしてバニラに戻ると、なんか、クリームソーダみたいになる。面白い。
「次はウォータースライダーに行こうぜ」
「おう」
まだまだ夏は始まったばかり。
少しぬるくなったアイスと一緒に、コーンを口に放り込んだ。
「ごちそうさまでした」
小学生の頃のように十二時間もできない……こともないか。集中するとあっという間だからな。
「よしっ」
と、気合を入れた時、スマホが鳴った。また公式アカウントか。
いや、違う。今度こそ咲良だ。『ここ行こう』というメッセージの後にURLが送られてきた。市民プール……ほう、科学館の近くの。ああ、そういやあったかなあ、あそこ。
まあ、行ってもいいな。泳ぎたいし。
「オッケーっと」
スタンプを送ると、さっそく返事が来た。
『じゃあ、今から家出る! 電車の駅で待ち合せな』
「うそだろ」
今日行くんかい。
「お前は、いつも唐突なんだよ。咲良」
「まーまー、いいじゃん。それでうまくいってんだし」
連絡が来て一時間もしないうちに、電車に揺られている。水着の入ったバッグを持っているだけでなんとなく非日常な感じがする。ビニール特有の匂いが鼻につく。
電車から降りたら、バスに乗る。
「今日は晴れてるし、気持ちよさそうだよなー。あ、ウォータースライダーもあるんだって」
「へー、そんなんあるんだな」
市民プールって、そういうイメージないから少しびっくりする。
たどり着いた先は、科学館や動物園もほど近い場所だった。すでに賑やかな声が聞こえてくる。
入場券は……券売機で買うのか、なるほど。そして、更衣室に向かう。
「俺もう、水着、下に着てきたんだ」
と、咲良が得意げに言う。
「俺も」
「だよなー」
ロッカーに鍵をかけて、その鍵は手にはめる。これもプールならではだな。
シャワーを浴びて、外に出る。おお、日差しがまぶしい。
日に目が慣れたところで、辺りを見回す。へえ、結構広いんだなあ。流れるプールに、あ、あれか、ウォータースライダー。結構でかいな。幼児用プールもある。人がたくさんだが、アトラクションがたくさんあるようなプールよりは少ない。
「あ、浮き輪貸し出し中だって」
と、咲良がある場所を指さす。プールサイドの片隅で、いろいろと浮き輪やビートバンを貸しているようだった。
「でけえの一個借りねえ?」
「いいんじゃないか」
おっ、シャチの形のとかある。バナナも。シンプルなのもあるし、めっちゃ可愛い感じのもある。
「じゃ、これ借ります!」
「はーい、お気をつけてー」
咲良が選んだのは、青のでかい浮き輪だった。咲良はさっそくそれを装着し、ゴーグルも万全に、仁王立ちした。
「じゃあ、行くぞ」
「おー」
人の少ない場所を選んで入る。
「おっ、冷た!」
日に当たってぬるいかと思ったが、思ったより冷たい。はじめこそその冷たさに慣れなかったが、徐々に気持ちよくなってきた。
「いやー気持ちいいなあ……」
浮き輪でぷかぷかと浮く咲良が、水流に任せゆらゆらと移動している。あ、何だろう、すっげえちょっかい出したい。うずうずしてきた。
浮き輪の端をつかみ、ちょっと右に回してみる。
「おおー、回るー」
ゆるーく回る咲良は、ケラケラと笑ってその状況を甘んじて受け入れた。よっしゃ、じゃあ、どんどん回してやろう。
「あー、あー。ちょ、春都、めっちゃ回すじゃん」
「あっはっは!」
なんだこれ、面白れぇ。
「おい、ちょっと、春都交代」
「あ? なんでだよ。お前見てたら面白いんだけど」
「こっち側も面白いって」
「え、じゃあ交代」
日に照らされた浮き輪は少し熱い。すっぽりとハマると、なんだか懐かしい感じがした。あー、浮き輪ってこんな安心感あったっけ、浮遊感が変な感じだ。
「じゃ、いくぜー」
咲良が嬉々として回し始める。
ふっへっへ、なんだこりゃ。ゆらーっと視界が回る。そんで、水流で少しずつ進んでいるから、何ともいえない。
「あっはは、なんだこれ」
「なー? また次代われよ」
「おう」
結局、そんなしょうもない遊びをしていたら、あっという間に時間が過ぎたのだった。
しこたま遊び倒して、いったん休憩する。パラソルのある席が空いていたのでラッキーだった。
「おーっす、おまたせー」
咲良は両手にソフトクリームを持ってやってきた。
「みて、期間限定ラムネ味~」
「めっちゃ水色」
「それな。はい、春都はバニラな~」
「ありがとう」
ラムネ味も気になるが、なんとなく、冒険しきれない。
「いただきます」
暑さで瞬く間に溶けそうな、やわらかい真っ白なアイス。パラソルの色が少しうつって、赤くも見える。
んー、シンプルなバニラ味。ひんやりとした口当たりが気持ちいい。暑い中、外で食う冷たいアイスって、うまいなあ。うまさが増すような気がする。もちろん、涼しいところで食べるアイスも贅沢なものだが。
でもやっぱり、暑い中だからこそ、冷たさが際立つよな。
「ん、一口いる?」
と、咲良がラムネ味を差し出す。
「いる」
「じゃ、バニラ一口ちょうだい」
ラムネ味は甘さが爽やかで、すっきりとしている。どことなくシュワッとした爽快感があるなあ。ちょっとシャーベットっぽさもある。
そしてバニラに戻ると、なんか、クリームソーダみたいになる。面白い。
「次はウォータースライダーに行こうぜ」
「おう」
まだまだ夏は始まったばかり。
少しぬるくなったアイスと一緒に、コーンを口に放り込んだ。
「ごちそうさまでした」
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