772 / 854
日常
番外編 山下晃のつまみ食い④
しおりを挟む
「は~、今日も一日よく働いたーっと……」
きちんとしたバイト用の恰好は息苦しい。ベストを脱ぎ、シャツのボタンをはずし、靴下を脱ぐ。はあ、くたびれた。
「あ~……風呂、と飯……は、いいのか」
なんかもう、全部放り出して寝てしまいたい。
しかしそういうわけにもいかない。ずっと外にいたから風呂には入りたいし。まあ、晩飯は済ませてきといてよかった。
「……うーん」
ソファに吸い込まれそうになる体に鞭打って、風呂場に向かう。このまま座り込んだが最後、動き出すのは数時間後だ。
湯船に湯を張る間だけのんびりする。といっても、すぐに立ち上がれる背もたれの無い足の長い椅子に腰かけてスマホ見てるだけだ。座り込んではいけない。
「あ、クーラー」
自分の部屋のクーラーを入れておく。蒸し暑いし、布団がぬくいとどうにも心地が悪い。
間もなくして風呂場からアラームが聞こえてくる。よし、入っちまおう。
シャンプーをしながら、ぼんやり明日のことを考える。明日は特にやることないな。バイトも休み、授業もない、レポートはそう急がなくてもいいし、テスト前ってわけでもない。人と会う予定も、出かける予定もない。
だいぶ傷んだ髪をかきあげる。んー、髪染めよっかなあ。まだ大丈夫か。だるいし。
「ふーっ」
あ、そういやなんかイベントやってるんだっけ。さっき見たニュースを思い出す。都会って、いつも何かやってる気がする。
興味はあるけど、わざわざ行くほどでもない。
そろそろ長風呂するのもしんどい季節だ。まあ、年中、烏の行水みたいなもんだけど。だからといって、シャワーだけで済ませるのはちょっと違うんだよなあ。
風呂上がりには、冷たいものが飲みたくなる。
ロング缶か否かで迷ったが、結局、普通のやつを買った、レモンサワー。度数はちょっと高めだ。自室に持って行って飲む。
「ふーっ」
やっと腰を落ち着ける。ゲーミングチェアに座り、プルタブを押し開けながらパソコンの電源を入れる。動画をぼんやり見ながらこうやって過ごす時間が、何気に体が緩んでいいんだ。
寝酒とか、寝る前のブルーライトはよくないというが、そんなのは知ったうえでのことである。
「何見っかなあ……」
本編無料公開中の公式アニメサイト、音楽、実況系に飯テロ系……うーん、ま、いいや、これにしよ。
「あ~……ねむい」
眠いなら寝ればいいものを。動画をBGMにスマホを見る。とりあえずニュースサイトいって、それからゲームの確認。公式サイト、SNS、情報源は無限にある。
「あー、もう周年イベかあ。今年も限定カードあんじゃん」
なにげに周回が大変なんだよなあ、でも、確定報酬だし、推しだし、やるしかないなあ。あー、こっちはイベント復刻。忙しいな。
「ログボもらっとこ……」
んぁ、酒なくなった。歯ぁ磨いて寝るか。もう目が限界だ。
ログアウトして、デイリー消化しながら歯を磨く。眠くてもこれだけはやっとかないと落ち着かないのだ。
明日は何時に起きよう。
「ま、目が覚めた時でいいか」
冷えた布団に寝そべり、ほんのりまだ暖かさの残る、畳まれたブランケットを羽織った。これこれ、夏の楽しみよ。
これで昼寝すんの、最高なんだよなあ……
ん……もう朝か。夏の朝は明るくなるのが早い……
「げ、もうこんな時間かよ」
はー……もう朝飯っていうより、昼飯の方が近いじゃねーか。ま、いっか。目覚ましつけてなかったのは自分だし。
眠気覚ましに、少し歩くか。
「ふぁ……あ」
あー、もうあっつい。でもなんか、変な天気だ。黒い雲と青空が共存している。梅雨らしいっちゃ梅雨らしいが、湿気で体が重くだるい。
なんか冷たいもん食いたいな。
コンビニに入ると、幾分涼しい。お、夏の商品増えてる。夏こそ激辛……いや、今はいいかな。
トロピカルなスイーツ、塩が入ったお菓子、熱中症予防の商品、かき氷……おでんはいつもあるよなあ。
あ、冷やし中華だ。もうそんな季節かあ。買って帰ろ。
少し歩いただけなのに、すっかり汗をかいてしまった。着替えて、飯にしよう。
「飲み物は……」
うん、麦茶にしよう。
透明のコップに注ぐと、少しばかり涼しげだ。
「いただきます」
黄色い麺に、別のせの具材。まずはスープを入れて、麺をほぐす。いっつもほぐすときに麺がちぎれるんだよなあ。あ、からしもう入れちゃおう。
キュウリの細切り、ハムも細め、トマトに茹で卵に紅しょうが、錦糸卵、きくらげ。いやあ、豪華だ。
少し酸味のあるスープは爽やかだ。麺にもよく絡んでいていい。そうそう、このつるっとした感じ、歯ごたえ、これこそ冷やし中華にしかないものである。あっ、からし、ちょっと辛いぞ。からしだからそうか。
きくらげはごま油で和えてあるんだな。ごまも入ってる。この食感、大好きなんだ。
キュウリがみずみずしい。七月に入ったらしばらく食べらんないからなあ、山笠終わるまで。今のうちに食っとかないと。あ、でも食べ過ぎないくらいにな。
ハムは肉っぽさが際立つ。他の具材とかがさっぱりしているからかな。錦糸卵は、スープを吸ってジュワッとする。
んー、トマト。シャクッとして、酸っぱい。ちょっとかためなんだなあ。
ゆで卵の茹で加減もカチカチだ。でも、これが好きなんだ。スープにつけて、少し水分を足すようにして食うのがうまい。
ああ、それにしても、もう冷やし中華の季節なんだなあ。こないだまでおでんフェアとかやってたのに。早いなあ。この調子で年末になっちゃうんだろうなあ。
今年の夏は、いったい何回、冷やし中華を食うことになるだろう。
少しぬるくなった麦茶をあおる。セミの鳴き声はないが、遠くで夏の匂いがした。
「ごちそうさまでした」
きちんとしたバイト用の恰好は息苦しい。ベストを脱ぎ、シャツのボタンをはずし、靴下を脱ぐ。はあ、くたびれた。
「あ~……風呂、と飯……は、いいのか」
なんかもう、全部放り出して寝てしまいたい。
しかしそういうわけにもいかない。ずっと外にいたから風呂には入りたいし。まあ、晩飯は済ませてきといてよかった。
「……うーん」
ソファに吸い込まれそうになる体に鞭打って、風呂場に向かう。このまま座り込んだが最後、動き出すのは数時間後だ。
湯船に湯を張る間だけのんびりする。といっても、すぐに立ち上がれる背もたれの無い足の長い椅子に腰かけてスマホ見てるだけだ。座り込んではいけない。
「あ、クーラー」
自分の部屋のクーラーを入れておく。蒸し暑いし、布団がぬくいとどうにも心地が悪い。
間もなくして風呂場からアラームが聞こえてくる。よし、入っちまおう。
シャンプーをしながら、ぼんやり明日のことを考える。明日は特にやることないな。バイトも休み、授業もない、レポートはそう急がなくてもいいし、テスト前ってわけでもない。人と会う予定も、出かける予定もない。
だいぶ傷んだ髪をかきあげる。んー、髪染めよっかなあ。まだ大丈夫か。だるいし。
「ふーっ」
あ、そういやなんかイベントやってるんだっけ。さっき見たニュースを思い出す。都会って、いつも何かやってる気がする。
興味はあるけど、わざわざ行くほどでもない。
そろそろ長風呂するのもしんどい季節だ。まあ、年中、烏の行水みたいなもんだけど。だからといって、シャワーだけで済ませるのはちょっと違うんだよなあ。
風呂上がりには、冷たいものが飲みたくなる。
ロング缶か否かで迷ったが、結局、普通のやつを買った、レモンサワー。度数はちょっと高めだ。自室に持って行って飲む。
「ふーっ」
やっと腰を落ち着ける。ゲーミングチェアに座り、プルタブを押し開けながらパソコンの電源を入れる。動画をぼんやり見ながらこうやって過ごす時間が、何気に体が緩んでいいんだ。
寝酒とか、寝る前のブルーライトはよくないというが、そんなのは知ったうえでのことである。
「何見っかなあ……」
本編無料公開中の公式アニメサイト、音楽、実況系に飯テロ系……うーん、ま、いいや、これにしよ。
「あ~……ねむい」
眠いなら寝ればいいものを。動画をBGMにスマホを見る。とりあえずニュースサイトいって、それからゲームの確認。公式サイト、SNS、情報源は無限にある。
「あー、もう周年イベかあ。今年も限定カードあんじゃん」
なにげに周回が大変なんだよなあ、でも、確定報酬だし、推しだし、やるしかないなあ。あー、こっちはイベント復刻。忙しいな。
「ログボもらっとこ……」
んぁ、酒なくなった。歯ぁ磨いて寝るか。もう目が限界だ。
ログアウトして、デイリー消化しながら歯を磨く。眠くてもこれだけはやっとかないと落ち着かないのだ。
明日は何時に起きよう。
「ま、目が覚めた時でいいか」
冷えた布団に寝そべり、ほんのりまだ暖かさの残る、畳まれたブランケットを羽織った。これこれ、夏の楽しみよ。
これで昼寝すんの、最高なんだよなあ……
ん……もう朝か。夏の朝は明るくなるのが早い……
「げ、もうこんな時間かよ」
はー……もう朝飯っていうより、昼飯の方が近いじゃねーか。ま、いっか。目覚ましつけてなかったのは自分だし。
眠気覚ましに、少し歩くか。
「ふぁ……あ」
あー、もうあっつい。でもなんか、変な天気だ。黒い雲と青空が共存している。梅雨らしいっちゃ梅雨らしいが、湿気で体が重くだるい。
なんか冷たいもん食いたいな。
コンビニに入ると、幾分涼しい。お、夏の商品増えてる。夏こそ激辛……いや、今はいいかな。
トロピカルなスイーツ、塩が入ったお菓子、熱中症予防の商品、かき氷……おでんはいつもあるよなあ。
あ、冷やし中華だ。もうそんな季節かあ。買って帰ろ。
少し歩いただけなのに、すっかり汗をかいてしまった。着替えて、飯にしよう。
「飲み物は……」
うん、麦茶にしよう。
透明のコップに注ぐと、少しばかり涼しげだ。
「いただきます」
黄色い麺に、別のせの具材。まずはスープを入れて、麺をほぐす。いっつもほぐすときに麺がちぎれるんだよなあ。あ、からしもう入れちゃおう。
キュウリの細切り、ハムも細め、トマトに茹で卵に紅しょうが、錦糸卵、きくらげ。いやあ、豪華だ。
少し酸味のあるスープは爽やかだ。麺にもよく絡んでいていい。そうそう、このつるっとした感じ、歯ごたえ、これこそ冷やし中華にしかないものである。あっ、からし、ちょっと辛いぞ。からしだからそうか。
きくらげはごま油で和えてあるんだな。ごまも入ってる。この食感、大好きなんだ。
キュウリがみずみずしい。七月に入ったらしばらく食べらんないからなあ、山笠終わるまで。今のうちに食っとかないと。あ、でも食べ過ぎないくらいにな。
ハムは肉っぽさが際立つ。他の具材とかがさっぱりしているからかな。錦糸卵は、スープを吸ってジュワッとする。
んー、トマト。シャクッとして、酸っぱい。ちょっとかためなんだなあ。
ゆで卵の茹で加減もカチカチだ。でも、これが好きなんだ。スープにつけて、少し水分を足すようにして食うのがうまい。
ああ、それにしても、もう冷やし中華の季節なんだなあ。こないだまでおでんフェアとかやってたのに。早いなあ。この調子で年末になっちゃうんだろうなあ。
今年の夏は、いったい何回、冷やし中華を食うことになるだろう。
少しぬるくなった麦茶をあおる。セミの鳴き声はないが、遠くで夏の匂いがした。
「ごちそうさまでした」
24
お気に入りに追加
253
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!


妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
「一晩一緒に過ごしただけで彼女面とかやめてくれないか」とあなたが言うから
キムラましゅろう
恋愛
長い間片想いをしていた相手、同期のディランが同じ部署の女性に「一晩共にすごしただけで彼女面とかやめてくれないか」と言っているのを聞いてしまったステラ。
「はいぃ勘違いしてごめんなさいぃ!」と思わず心の中で謝るステラ。
何故なら彼女も一週間前にディランと熱い夜をすごした後だったから……。
一話完結の読み切りです。
ご都合主義というか中身はありません。
軽い気持ちでサクッとお読み下さいませ。
誤字脱字、ごめんなさい!←最初に謝っておく。
小説家になろうさんにも時差投稿します。
サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜
野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」
「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」
この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。
半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。
別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。
そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。
学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー
⭐︎毎日朝7時に最新話を投稿します。
⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。
※表紙絵、挿絵はAI作成です。
※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる