712 / 854
日常
第六百六十六話 チョコレートケーキ
しおりを挟む
朝、少し時間があったので、ソファに座ってスマホを見る。とりあえず、ニュースサイトを開く。
「お、これは……」
今週新発売の商品特集か。コンビニスイーツ編。
コンビニのスイーツって、どうしてあんなに心惹かれるんだろうなあ。スイーツコーナ―を見ているとすごくワクワクしてくる。定番のラインナップから、季節を感じるスイーツまで、結構バリエーション豊かである。
バレンタインの時期は、チョコレート系のスイーツが多くてなあ……
さて、今回はいったいどんなものがあるだろう。
コラボスイーツが多いみたいだ。最近はやりのアニメに漫画、それに、ゲーム。キャラクターを模したスイーツとか、パッケージが華やかなのとか、おまけ付きとか。
あっ、これ。不動の人気を誇るゲームのキャラクター。へえ、回転焼きみたいなものか。顔が焼き印されてあるが……かわいいな。このゲーム、好きなんだよな。小さい頃は暇さえあればずっとやってたし。久々にやりたくなってきたな。今週末、やろうかな。
もちもちの甘い生地に、コクのあるカスタードクリーム、か。
「うまそうだな」
帰りに寄ってみようか。帰り道からはちょっと離れるが、探しに行ってみよう。
あ、やべ、もうこんな時間。
「じゃ、行ってくるな、うめず」
「わうっ」
楽しみがあると、足取りも軽くなるものである。
「なるほどねー、それで、帰り道がいつもと違ったわけだ」
ぼちぼち歩いて、学校から少し離れたところにあるコンビニに向かう道すがら、隣を歩く咲良が楽しげに言った。
「なんでお前もついてくる」
「だって気になるじゃん。春都が行くとこ」
「コンビニって言っただろ」
まったく、こいつはどうしてこう……まあ、今更か。
咲良は「コンビニっつってもさー」と、頭の後ろで手を組んで、視線だけこちらに向け、にやっと笑って続けた。
「そもそも寄り道が少ないお前が、わざわざコンビニに行くなんて、気になるじゃん」
「そうか?」
「そうだよ」
「まあ、いつも帰りに寄るとこといえば、スーパーだもんなあ……」
「だろー?」
それにしても、ずいぶん日が長くなったものだ。つい最近まで、この時間になると薄暗かったものだが、今はそれほどでもない。
日は短いより、長い方がいい。その分、さみしい時間が少なくなるから。
「そんでさー、聞いてよ。今日さあ……」
ま、どんな時でも、こいつがいりゃあ、寂しいと思う暇はないのだろうが。
ていうか咲良、俺の行き先が気になるとか言っといて、本当は自分の話がしたかっただけじゃないか? 別にいいけどさ。
おかげでコンビニまでの道のりがあっという間だった。
さて、人気だからなあ、あれ。残ってるといいけど。
「で、春都のお目当ては何なわけ?」
「これだ、これ」
今朝撮ったスクショを見せると、咲良は「ああ、それね」と頷いた。
「そのスイーツ、いろんなのとコラボしてるもんな~。プレーンなのはいつも売ってるぞ」
「そうなのか。あんまこっち来ないから」
「ここのコンビニ、スイーツめっちゃ充実してるからなあ」
やっぱコンビニによって、充実しているジャンルとか、得意なジャンルがあるのかな。なにかとコラボしてることが多いコンビニもあるし。色々あるんだなあ。
「あれ、ないなー」
一足先に商品棚を眺めていた咲良が言う。
えっ、ない? まさか。人気商品だぞ? あっ、だからないのか。
しかし咲良は、俺の予想とは違うことを言った。
「そもそも売ってない?」
「うそだろ。お前が見つけきれないだけじゃないのか、咲良」
「俺、こういうのは見つけるの得意なんだって」
「えー、まじかあ……」
田舎だからか? 需要がないからと勝手に入荷しなかったのか? そんなまさか。ここは西高の生徒のたまり場。需要がないわけなかろうよ。
「ちょ、調べてみてよ、それ」
「あ、ああ」
公式サイトに繋ぎ、商品一覧を見る。ちゃんとあるんだけどなあ……
「あっ、やっぱり」
と、一緒に画面をのぞき込んでいた咲良が声を上げる。
「何がやっぱりなんだ?」
「ほら、これ。販売地域見てみなよ」
「販売地域?」
……あ、ほんとだ。田舎だからというわけではなく、そもそもこっちの方は圏外だったのか。販売されてる地域の方が少ないじゃないか。
なんだ、ちょっと残念。いつか発売されるといいけどなあ。
結局、通常販売の分もなかったので、チョコレートケーキが二つ入ってるやつを買うことにした。スーパーとかでも売ってる、見慣れたものである。
晩飯の後、さっそく食う。
「いただきます」
何気に、このチョコレートケーキ好きなんだよなあ。
薄いスポンジに、思ったよりもクリームがたっぷりと。ケーキ屋さんで買うケーキよりも少し小さめだが、ちょうどいいんだ、これが。二つ食べるし。
うっすらとかかったココアパウダーがワクワクする。
すっきりとした甘さのクリームは、チョコレートのコクと風味がよく感じられる。口いっぱいにクリームをほおばる幸せたるや、計り知れない。
スポンジはほろ苦いココア味。
プレーンな生地もいいんだけど、ココア味の生地にチョコレートのクリームって、合うんだよなあ。リッチな味わいになるというか。
あ、チョコチップがまぎれている。間に挟まってんのかな。少し溶けるような口当たりだが、しっかりと食感もある。チョコチップが入ったケーキって、なんか好きだ。スポンジの食感との違いが面白い。
そりゃあ、専門店のケーキはおいしいと思う。でも、このケーキが食いたい時があるんだ。
目当てのものが売ってなかったのは残念だったが、回りまわってうまいチョコレートケーキが食えたから、良しとしよう。
……でもやっぱ、一回は食べてみたいなあ。販売されることを切に願うとしよう。
「ごちそうさまでした」
「お、これは……」
今週新発売の商品特集か。コンビニスイーツ編。
コンビニのスイーツって、どうしてあんなに心惹かれるんだろうなあ。スイーツコーナ―を見ているとすごくワクワクしてくる。定番のラインナップから、季節を感じるスイーツまで、結構バリエーション豊かである。
バレンタインの時期は、チョコレート系のスイーツが多くてなあ……
さて、今回はいったいどんなものがあるだろう。
コラボスイーツが多いみたいだ。最近はやりのアニメに漫画、それに、ゲーム。キャラクターを模したスイーツとか、パッケージが華やかなのとか、おまけ付きとか。
あっ、これ。不動の人気を誇るゲームのキャラクター。へえ、回転焼きみたいなものか。顔が焼き印されてあるが……かわいいな。このゲーム、好きなんだよな。小さい頃は暇さえあればずっとやってたし。久々にやりたくなってきたな。今週末、やろうかな。
もちもちの甘い生地に、コクのあるカスタードクリーム、か。
「うまそうだな」
帰りに寄ってみようか。帰り道からはちょっと離れるが、探しに行ってみよう。
あ、やべ、もうこんな時間。
「じゃ、行ってくるな、うめず」
「わうっ」
楽しみがあると、足取りも軽くなるものである。
「なるほどねー、それで、帰り道がいつもと違ったわけだ」
ぼちぼち歩いて、学校から少し離れたところにあるコンビニに向かう道すがら、隣を歩く咲良が楽しげに言った。
「なんでお前もついてくる」
「だって気になるじゃん。春都が行くとこ」
「コンビニって言っただろ」
まったく、こいつはどうしてこう……まあ、今更か。
咲良は「コンビニっつってもさー」と、頭の後ろで手を組んで、視線だけこちらに向け、にやっと笑って続けた。
「そもそも寄り道が少ないお前が、わざわざコンビニに行くなんて、気になるじゃん」
「そうか?」
「そうだよ」
「まあ、いつも帰りに寄るとこといえば、スーパーだもんなあ……」
「だろー?」
それにしても、ずいぶん日が長くなったものだ。つい最近まで、この時間になると薄暗かったものだが、今はそれほどでもない。
日は短いより、長い方がいい。その分、さみしい時間が少なくなるから。
「そんでさー、聞いてよ。今日さあ……」
ま、どんな時でも、こいつがいりゃあ、寂しいと思う暇はないのだろうが。
ていうか咲良、俺の行き先が気になるとか言っといて、本当は自分の話がしたかっただけじゃないか? 別にいいけどさ。
おかげでコンビニまでの道のりがあっという間だった。
さて、人気だからなあ、あれ。残ってるといいけど。
「で、春都のお目当ては何なわけ?」
「これだ、これ」
今朝撮ったスクショを見せると、咲良は「ああ、それね」と頷いた。
「そのスイーツ、いろんなのとコラボしてるもんな~。プレーンなのはいつも売ってるぞ」
「そうなのか。あんまこっち来ないから」
「ここのコンビニ、スイーツめっちゃ充実してるからなあ」
やっぱコンビニによって、充実しているジャンルとか、得意なジャンルがあるのかな。なにかとコラボしてることが多いコンビニもあるし。色々あるんだなあ。
「あれ、ないなー」
一足先に商品棚を眺めていた咲良が言う。
えっ、ない? まさか。人気商品だぞ? あっ、だからないのか。
しかし咲良は、俺の予想とは違うことを言った。
「そもそも売ってない?」
「うそだろ。お前が見つけきれないだけじゃないのか、咲良」
「俺、こういうのは見つけるの得意なんだって」
「えー、まじかあ……」
田舎だからか? 需要がないからと勝手に入荷しなかったのか? そんなまさか。ここは西高の生徒のたまり場。需要がないわけなかろうよ。
「ちょ、調べてみてよ、それ」
「あ、ああ」
公式サイトに繋ぎ、商品一覧を見る。ちゃんとあるんだけどなあ……
「あっ、やっぱり」
と、一緒に画面をのぞき込んでいた咲良が声を上げる。
「何がやっぱりなんだ?」
「ほら、これ。販売地域見てみなよ」
「販売地域?」
……あ、ほんとだ。田舎だからというわけではなく、そもそもこっちの方は圏外だったのか。販売されてる地域の方が少ないじゃないか。
なんだ、ちょっと残念。いつか発売されるといいけどなあ。
結局、通常販売の分もなかったので、チョコレートケーキが二つ入ってるやつを買うことにした。スーパーとかでも売ってる、見慣れたものである。
晩飯の後、さっそく食う。
「いただきます」
何気に、このチョコレートケーキ好きなんだよなあ。
薄いスポンジに、思ったよりもクリームがたっぷりと。ケーキ屋さんで買うケーキよりも少し小さめだが、ちょうどいいんだ、これが。二つ食べるし。
うっすらとかかったココアパウダーがワクワクする。
すっきりとした甘さのクリームは、チョコレートのコクと風味がよく感じられる。口いっぱいにクリームをほおばる幸せたるや、計り知れない。
スポンジはほろ苦いココア味。
プレーンな生地もいいんだけど、ココア味の生地にチョコレートのクリームって、合うんだよなあ。リッチな味わいになるというか。
あ、チョコチップがまぎれている。間に挟まってんのかな。少し溶けるような口当たりだが、しっかりと食感もある。チョコチップが入ったケーキって、なんか好きだ。スポンジの食感との違いが面白い。
そりゃあ、専門店のケーキはおいしいと思う。でも、このケーキが食いたい時があるんだ。
目当てのものが売ってなかったのは残念だったが、回りまわってうまいチョコレートケーキが食えたから、良しとしよう。
……でもやっぱ、一回は食べてみたいなあ。販売されることを切に願うとしよう。
「ごちそうさまでした」
33
お気に入りに追加
253
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!


妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
「一晩一緒に過ごしただけで彼女面とかやめてくれないか」とあなたが言うから
キムラましゅろう
恋愛
長い間片想いをしていた相手、同期のディランが同じ部署の女性に「一晩共にすごしただけで彼女面とかやめてくれないか」と言っているのを聞いてしまったステラ。
「はいぃ勘違いしてごめんなさいぃ!」と思わず心の中で謝るステラ。
何故なら彼女も一週間前にディランと熱い夜をすごした後だったから……。
一話完結の読み切りです。
ご都合主義というか中身はありません。
軽い気持ちでサクッとお読み下さいませ。
誤字脱字、ごめんなさい!←最初に謝っておく。
小説家になろうさんにも時差投稿します。
サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜
野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」
「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」
この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。
半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。
別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。
そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。
学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー
⭐︎毎日朝7時に最新話を投稿します。
⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。
※表紙絵、挿絵はAI作成です。
※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる