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日常
第五百九十九話 購買のパン
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一週間の時間割りというのは一年を通して決まっているものだが、変更があるのも珍しくない。順番が入れ替わることが主だが、授業時間が足りない教科は余裕のある教科と置き換わることもある。
だから、数学が連続で二時間あることもある。今日がまさしくそうだ。
数学は嫌いじゃないが、長いこと数字と向き合っているととても疲れる。でも因数分解はなんか好きだ。理由はよくわかんないけど、数学の中でもそれなりに好きだな。式の展開は……ミスしないように気を付けるのが疲れる。
「はい、それじゃあ次のページ開いて」
数学の先生は、サクサク授業を進めていく。たまに追いつけなくなりそうになるが、色々言っても止まらないから、頑張って追いつくしかない。
「公式ですね、簡単。黒板に書く時間ももったいないくらいです。はい、覚えて」
いつもは丁寧に板書する先生だが、自分が無駄だとかどうでもいいとか思っていることはすげぇ雑だし興味なさそうにする。先生はそりゃ、さんざん勉強してるし覚えてるんだろうからそうなるのも無理ないんだろうけど、俺らは初見なんだから、ちょっとくらい丁寧に教えてくれたっていいじゃないか、とも思う。
でも、評判いいんだよなあ、この先生。まあ、単に俺とは合わないってだけだろう。そもそも俺は数学と相性が良くないのかもしれない。
「問三、六問ね。少ないなあ。よし、追加分含めて十二問、解いてください。先生が作るんでね」
うへえ、マジか。倍になった。いや、いいんだけど、先生妙に小難しい問題作るからなあ。それに、そろそろ当てられそうだ。
できれば、簡単なうちに当てられておきたいなあ。
問題を解いている間、先生は板書を終えると教室内を歩き回る。そして、お気に入りの……というか、特定の生徒のところに行ってちょっかいをかける。そんでまた教室内を歩き回る。寝ている生徒は無視か、容赦なく机をたたいて起こすかする。
難しい問題は、基本、いつもいじり倒している生徒か寝ていた生徒、成績のいい奴が当てられる。
俺は、数学の成績は可もなく不可もなくなんだよなあ。だから、難しい問題に当たることは少ない。たまーに当てられるけど。
「そろそろいいね? はい、じゃあ、前に出席番号書いてるので答え書いてー」
えー……っと、ああ、俺当てられてる。この問題は……大丈夫、いけるいける。
チョークは極力触りたくない。かぶれるんだ、あれ。確か直接触らずに済むケースみたいなのなかったかな。あれ欲しい。
上の方を書いている人を待っている間は、手持無沙汰だ。
「ねえ、これあってるかな」
「あってるんじゃない? ていうか、あたしのとこ難しすぎるんだけど。どうなった?」
「えー、解けてない~。合ってるよ、きっと」
「誰か解いてる人いない? 不安なんだけど」
板書の時は、普段絶対に話さないような人でも話しかけてくる。自分の解答見られて、それを信じて黒板に書かれたら困るから、そっと隠れる。責任持ち切れねえ。
さっと板書したら、最後の一人になる前に席に戻る。つくづく思うが、俺って、板書へただなあ。
「うん……うん」
先生はざっと目を通すと、全問まとめて大きな丸を付けた。
「はい結構です。ね、簡単だったでしょ。ここで間違う人はやばいですよ。かなり。次いきまーす」
なんか、今日の先生とげがいつもより多いなあ。俺らのクラスの進みが悪いからだろうか。
早く授業終わんねえかなあ。
何とか二時間の数学を乗り越えたら、昼休みだ。今日は、学食に行かないといけないが、終わるのが遅くなったからきっと混んでいるだろうなあ。パンでも買って、教室で食べるか。
「お、割と残ってんな」
いつもこの時間だとほとんど売り切れてるが、ラッキーだったな。どれにしようか。まずはナポリタンのパンと、チキンカツ、それともう一つは……
なんだか今日は、甘いパンに心惹かれる。メロンパンを半分にして、クリームと缶詰の果物がのったやつ。絶対甘いよな。食いたいなあ。
……よし、買おう。
飲み物は牛乳にするかコーヒー牛乳にするか。コーヒー牛乳にしよう。
人波をぬって外に出る。陽の当たるところは確かに暖かいが、日陰は冷える。室内だと余計に寒い。まだまだ暖房の暖かさが恋しい……というほどではないが、夏服になるにはまだ早いかな。
幸いにも俺の席はとられていなかった。窓際だから居心地がいいんだ。
「ふー……」
手は洗ったが、かさかさしてひりひりする。皮がちょっとむけてんなあ。ひどくならないようにしないと。
「いただきます」
コーヒー牛乳のパックをよく振ってからストローを突き刺す。ちょっと泡立ったが、ほろ苦さとコーヒーの風味、甘い牛乳の味がうまい。疲れた頭に染みるわぁ……
さて、まずはナポリタンから食おう。炭水化物に炭水化物。ソースもたっぷりでうまそう。ふわっと軽めのパンにどっしり食べ応えのあるナポリタン。甘みのあるトマトケチャップとパンって、そして少し伸びた麺って、どうしてこんなに合うのだろう。
少し混ざっている具材もいい。細かいウインナー、黄色がまぶしいとうもろこし。ウインナーはどこかスパイシーで、とうもろこしはプチッと甘い。
次はチキンカツのやつを。サクッと揚がっていて、油っぽくない。ソースは甘みと酸味のバランスがよく、淡白な味のチキンカツによく合う。香ばしくて、パンと一緒に食うのがうまい。噛み応えがあるチキンカツ、にじみ出るうま味、たまらんなあ。
野菜が一緒になっている、ってのもいいよな。レタスとキャベツがほんの少しあるだけだけど、それがないと味わいが変わるんだよなあ。
しょっぱいパンには、甘いコーヒー牛乳が合う。
それじゃあ最後、メロンパンを食おう。めっちゃ食いごたえがありそうだ。
サクッとしたクッキー生地にはザラッと砂糖がついていて、とても甘い。パンの生地もしっかり甘いなあ。クリームは惜しげもなく盛られている。これにかぶりつくって、幸せだ。果物はみかんとさくらんぼか。
うんうん、こっちもしっかり甘いが、みかんは爽やかだな。サクランボはなんか、濃い。
普段だったらきっと食べきれないだろうけど、今日は食えるな。サクサク入っていく。もこもこのクリーム、少しパサッとした甘いパン生地、サクサクのクッキー生地、砂糖の塊。
コーヒー牛乳が合わさると、また味が変わってうまいなあ。
それにしても……疲れた。午後からの授業に備えて、ひと眠りしようかな。甘いもん食って寝れば、今日は乗り切れるだろう。
「ごちそうさまでした」
だから、数学が連続で二時間あることもある。今日がまさしくそうだ。
数学は嫌いじゃないが、長いこと数字と向き合っているととても疲れる。でも因数分解はなんか好きだ。理由はよくわかんないけど、数学の中でもそれなりに好きだな。式の展開は……ミスしないように気を付けるのが疲れる。
「はい、それじゃあ次のページ開いて」
数学の先生は、サクサク授業を進めていく。たまに追いつけなくなりそうになるが、色々言っても止まらないから、頑張って追いつくしかない。
「公式ですね、簡単。黒板に書く時間ももったいないくらいです。はい、覚えて」
いつもは丁寧に板書する先生だが、自分が無駄だとかどうでもいいとか思っていることはすげぇ雑だし興味なさそうにする。先生はそりゃ、さんざん勉強してるし覚えてるんだろうからそうなるのも無理ないんだろうけど、俺らは初見なんだから、ちょっとくらい丁寧に教えてくれたっていいじゃないか、とも思う。
でも、評判いいんだよなあ、この先生。まあ、単に俺とは合わないってだけだろう。そもそも俺は数学と相性が良くないのかもしれない。
「問三、六問ね。少ないなあ。よし、追加分含めて十二問、解いてください。先生が作るんでね」
うへえ、マジか。倍になった。いや、いいんだけど、先生妙に小難しい問題作るからなあ。それに、そろそろ当てられそうだ。
できれば、簡単なうちに当てられておきたいなあ。
問題を解いている間、先生は板書を終えると教室内を歩き回る。そして、お気に入りの……というか、特定の生徒のところに行ってちょっかいをかける。そんでまた教室内を歩き回る。寝ている生徒は無視か、容赦なく机をたたいて起こすかする。
難しい問題は、基本、いつもいじり倒している生徒か寝ていた生徒、成績のいい奴が当てられる。
俺は、数学の成績は可もなく不可もなくなんだよなあ。だから、難しい問題に当たることは少ない。たまーに当てられるけど。
「そろそろいいね? はい、じゃあ、前に出席番号書いてるので答え書いてー」
えー……っと、ああ、俺当てられてる。この問題は……大丈夫、いけるいける。
チョークは極力触りたくない。かぶれるんだ、あれ。確か直接触らずに済むケースみたいなのなかったかな。あれ欲しい。
上の方を書いている人を待っている間は、手持無沙汰だ。
「ねえ、これあってるかな」
「あってるんじゃない? ていうか、あたしのとこ難しすぎるんだけど。どうなった?」
「えー、解けてない~。合ってるよ、きっと」
「誰か解いてる人いない? 不安なんだけど」
板書の時は、普段絶対に話さないような人でも話しかけてくる。自分の解答見られて、それを信じて黒板に書かれたら困るから、そっと隠れる。責任持ち切れねえ。
さっと板書したら、最後の一人になる前に席に戻る。つくづく思うが、俺って、板書へただなあ。
「うん……うん」
先生はざっと目を通すと、全問まとめて大きな丸を付けた。
「はい結構です。ね、簡単だったでしょ。ここで間違う人はやばいですよ。かなり。次いきまーす」
なんか、今日の先生とげがいつもより多いなあ。俺らのクラスの進みが悪いからだろうか。
早く授業終わんねえかなあ。
何とか二時間の数学を乗り越えたら、昼休みだ。今日は、学食に行かないといけないが、終わるのが遅くなったからきっと混んでいるだろうなあ。パンでも買って、教室で食べるか。
「お、割と残ってんな」
いつもこの時間だとほとんど売り切れてるが、ラッキーだったな。どれにしようか。まずはナポリタンのパンと、チキンカツ、それともう一つは……
なんだか今日は、甘いパンに心惹かれる。メロンパンを半分にして、クリームと缶詰の果物がのったやつ。絶対甘いよな。食いたいなあ。
……よし、買おう。
飲み物は牛乳にするかコーヒー牛乳にするか。コーヒー牛乳にしよう。
人波をぬって外に出る。陽の当たるところは確かに暖かいが、日陰は冷える。室内だと余計に寒い。まだまだ暖房の暖かさが恋しい……というほどではないが、夏服になるにはまだ早いかな。
幸いにも俺の席はとられていなかった。窓際だから居心地がいいんだ。
「ふー……」
手は洗ったが、かさかさしてひりひりする。皮がちょっとむけてんなあ。ひどくならないようにしないと。
「いただきます」
コーヒー牛乳のパックをよく振ってからストローを突き刺す。ちょっと泡立ったが、ほろ苦さとコーヒーの風味、甘い牛乳の味がうまい。疲れた頭に染みるわぁ……
さて、まずはナポリタンから食おう。炭水化物に炭水化物。ソースもたっぷりでうまそう。ふわっと軽めのパンにどっしり食べ応えのあるナポリタン。甘みのあるトマトケチャップとパンって、そして少し伸びた麺って、どうしてこんなに合うのだろう。
少し混ざっている具材もいい。細かいウインナー、黄色がまぶしいとうもろこし。ウインナーはどこかスパイシーで、とうもろこしはプチッと甘い。
次はチキンカツのやつを。サクッと揚がっていて、油っぽくない。ソースは甘みと酸味のバランスがよく、淡白な味のチキンカツによく合う。香ばしくて、パンと一緒に食うのがうまい。噛み応えがあるチキンカツ、にじみ出るうま味、たまらんなあ。
野菜が一緒になっている、ってのもいいよな。レタスとキャベツがほんの少しあるだけだけど、それがないと味わいが変わるんだよなあ。
しょっぱいパンには、甘いコーヒー牛乳が合う。
それじゃあ最後、メロンパンを食おう。めっちゃ食いごたえがありそうだ。
サクッとしたクッキー生地にはザラッと砂糖がついていて、とても甘い。パンの生地もしっかり甘いなあ。クリームは惜しげもなく盛られている。これにかぶりつくって、幸せだ。果物はみかんとさくらんぼか。
うんうん、こっちもしっかり甘いが、みかんは爽やかだな。サクランボはなんか、濃い。
普段だったらきっと食べきれないだろうけど、今日は食えるな。サクサク入っていく。もこもこのクリーム、少しパサッとした甘いパン生地、サクサクのクッキー生地、砂糖の塊。
コーヒー牛乳が合わさると、また味が変わってうまいなあ。
それにしても……疲れた。午後からの授業に備えて、ひと眠りしようかな。甘いもん食って寝れば、今日は乗り切れるだろう。
「ごちそうさまでした」
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