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日常
第五百二十五話 ハンバーガー
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つい昨日、冬休みが終わったばかりなのに、また休みだ。なんか調子狂うなあ。だからといって休みということに異論はない。いやあ、土曜課外がなくてよかった。
いい天気の中、家の中に引きこもってゲームをする贅沢。やらなければいけないことをやって、それからするゲームというのは、格別だ。スマホゲームもいいもんだが、カセットを入れて、セーブデータを選んでやるゲームもまた、良いのである。
「コントローラーが……」
今のところ少々……いや、だいぶ支障があるというか、不満というか、ゲームをするうえで気が散るのは、コントローラーの誤作動だろうか。勝手にキャラクターが動くんだよなあ。おかげでパズルゲームじゃミス連発だし、物の配置がうまくいかない。
繋ぎなおしたり、設定しなおしたりしてみても、どうもうまくいかない。年末年始に使い過ぎたか。
「ああー、違う違う、そこじゃなくて」
「何言ってんの、さっきから」
「あー、それがさ……」
かくかくしかじか、父さんに事情を説明する。
「修理出そうかなあ、そろそろ。もう限界。見て」
何も触っていないのに、キャラクターは猛ダッシュしている。父さんはそれを見ると笑った。
「そうだね、それは出した方がいいだろうね」
「でも出してる間はゲームできないし」
「じゃあ、代わりのコントローラーを買えばいいじゃないの」
と言うのは母さんだ。
「そしたら何人かでゲームするときにも使えるでしょ」
「なるほど」
「修理に出すコントローラーの梱包なら任せて。得意分野よ」
母さんは「箱と緩衝材も買わないとね」と付け加えた。父さんはスマホを見ながら「修理依頼をまずは出さないとな」と言った。
安い買い物ではないが……まあ、初売りの手伝いしたおかげでお小遣いもらったし、買おうかな。
プレジャスのゲーム売り場は以前よりも縮小されていたが、コントローラーはちゃんと置いてあった。いろんな色があるんだよなあ。何色にしようか。修理に出すやつは右が黄緑で左がオレンジだから、別の色にしたいなあ。
無難な色もいいけど、奇抜な色も好きだ。ゲーム機本体が黒だから、派手な色が映えるんだよな。
「うーん……」
熟考している間、父さんと母さんはゲームのカセットを見ていた。
「いろんなゲームがあるのね」
「おっ、このシリーズまだ出てるのか」
やはりオレンジに惹かれるが、紫も捨てがたい。右と左で違う色を選べるので、右を何色にして左を何色にすべきかというのもある。うーん、何色がいいかなあ。紫、気になってんだよな。よし、右は紫に決定。
左はどうすっかなあ。紫に合う色か……暗めの色がいいのだろうか。いやいや、ここは派手にいこう。ピンクだ。
「決まったよ」
「お、何色にしたんだ?」
「紫とピンク」
「また派手なの選んだのねえ」
いいんじゃない? と、父さんも母さんも笑った。
ゲームのカセットも欲しいのがあるんだけど、さすがに予算オーバーかな。
「どうしたの、何か欲しいのある?」
つい、そのゲームカセットの前で立ち止まっていたら、母さんが聞いてきた。
「あ、いや、これずっとほしいなーと思ってて」
「これ? ああ、楽しそうね」
「CMで見たことあるぞ。父さんも実は気になってたんだ」
オンライン対戦が主なのかなと思っていたが、実はそうでもないと分かってから、欲しいなあと思うようになったのだ。ストレス発散になりそうな陣取りゲームだが、バトルフィールドに一人で落書きしまくれるモードもあるらしい。やりてえんだよな、それ。
「よし、じゃあこれは私たちが買おう」
「えっ」
思いがけない母さんの言葉に、父さんと母さんの顔を交互に見る。
「高いよ?」
「いいのいいの。春都はコントローラーだけ買いなさい」
「でも……」
「気にするな」
父さんは言って笑った。
「父さんたちもやりたいんだ」
そう言われては、何も言い返せない。ありがたく受け取っておくことにしよう。
「ありがとうございます」
まさしく、大吉な一年の始まりだ。
帰りにドライブスルーでハンバーガーを買って帰る。オンライン注文で頼んでいたから、すんなり買えた。すごいな、便利だなあ。
期間限定の焦がし醤油ソースたっぷりのハンバーガーにポテトとオレンジジュースを合わせてみた。チキンナゲットもたくさんだ。
テイクアウト商品を家で広げる時間って、なんか楽しい。
「いただきます」
ハンバーガー、でかいなあ。バンズがふわふわのカリカリだ。肉も分厚いし、レタス、トマト、玉ねぎがたっぷりだ。
香ばしい表面にふわふわの中身、まぶされたゴマの香ばしさもさることながら、焦がし醤油ソースの豊かな香りが鼻に抜ける。ほんの少しヒリッとするのもいいな。
分厚いパテは肉汁がすごい。焦がし醤油風味だというだけではなく、パテにも焦げ目がいい感じについていて、香ばしい。普段のハンバーガーよりもあらびきな感じの肉だから、食べ応えがある。
みずみずしいレタス、シャキッと爽やかな玉ねぎ、トマトの酸味がうまいこと口をさっぱりさせる。やっぱり、ハンバーガーには野菜が必要だよなあ。
ここにシロップの甘味の効いた、爽やかなオレンジジュースを流し込む。細かい氷で冷やされたオレンジジュースは、熱くなった口に程よい。
チキンナゲットにはバーベキューソースを。程よい香辛料の香りにわずかばかりの果実風味、焼き肉のたれに似て非なる味わいがたまらないな。マスタードの酸味は柔らかで、でも香りは抜群だ。
ポテトは塩が濃く、カリッと揚がっていて病みつきになりそうだ。ソースをつけて食うとまた変わっていい。
ピクルスを一枚食べて、ハンバーグを食べ進める。ほんのり暖かくなったピクルス、風味と食感がいいな。
包み紙に残ったソースも余すことなく食べたいものである。ハンバーガーの最後の一口で拭って食べる。パンがうまいことソースを吸ってくれて、おいしい。あっ、ピクルスもう一枚入ってた。なんかラッキー。
あーうまかった。さて、あとは残ったジュースを飲みながら、ゲームでもしようかな。
「ごちそうさまでした」
いい天気の中、家の中に引きこもってゲームをする贅沢。やらなければいけないことをやって、それからするゲームというのは、格別だ。スマホゲームもいいもんだが、カセットを入れて、セーブデータを選んでやるゲームもまた、良いのである。
「コントローラーが……」
今のところ少々……いや、だいぶ支障があるというか、不満というか、ゲームをするうえで気が散るのは、コントローラーの誤作動だろうか。勝手にキャラクターが動くんだよなあ。おかげでパズルゲームじゃミス連発だし、物の配置がうまくいかない。
繋ぎなおしたり、設定しなおしたりしてみても、どうもうまくいかない。年末年始に使い過ぎたか。
「ああー、違う違う、そこじゃなくて」
「何言ってんの、さっきから」
「あー、それがさ……」
かくかくしかじか、父さんに事情を説明する。
「修理出そうかなあ、そろそろ。もう限界。見て」
何も触っていないのに、キャラクターは猛ダッシュしている。父さんはそれを見ると笑った。
「そうだね、それは出した方がいいだろうね」
「でも出してる間はゲームできないし」
「じゃあ、代わりのコントローラーを買えばいいじゃないの」
と言うのは母さんだ。
「そしたら何人かでゲームするときにも使えるでしょ」
「なるほど」
「修理に出すコントローラーの梱包なら任せて。得意分野よ」
母さんは「箱と緩衝材も買わないとね」と付け加えた。父さんはスマホを見ながら「修理依頼をまずは出さないとな」と言った。
安い買い物ではないが……まあ、初売りの手伝いしたおかげでお小遣いもらったし、買おうかな。
プレジャスのゲーム売り場は以前よりも縮小されていたが、コントローラーはちゃんと置いてあった。いろんな色があるんだよなあ。何色にしようか。修理に出すやつは右が黄緑で左がオレンジだから、別の色にしたいなあ。
無難な色もいいけど、奇抜な色も好きだ。ゲーム機本体が黒だから、派手な色が映えるんだよな。
「うーん……」
熟考している間、父さんと母さんはゲームのカセットを見ていた。
「いろんなゲームがあるのね」
「おっ、このシリーズまだ出てるのか」
やはりオレンジに惹かれるが、紫も捨てがたい。右と左で違う色を選べるので、右を何色にして左を何色にすべきかというのもある。うーん、何色がいいかなあ。紫、気になってんだよな。よし、右は紫に決定。
左はどうすっかなあ。紫に合う色か……暗めの色がいいのだろうか。いやいや、ここは派手にいこう。ピンクだ。
「決まったよ」
「お、何色にしたんだ?」
「紫とピンク」
「また派手なの選んだのねえ」
いいんじゃない? と、父さんも母さんも笑った。
ゲームのカセットも欲しいのがあるんだけど、さすがに予算オーバーかな。
「どうしたの、何か欲しいのある?」
つい、そのゲームカセットの前で立ち止まっていたら、母さんが聞いてきた。
「あ、いや、これずっとほしいなーと思ってて」
「これ? ああ、楽しそうね」
「CMで見たことあるぞ。父さんも実は気になってたんだ」
オンライン対戦が主なのかなと思っていたが、実はそうでもないと分かってから、欲しいなあと思うようになったのだ。ストレス発散になりそうな陣取りゲームだが、バトルフィールドに一人で落書きしまくれるモードもあるらしい。やりてえんだよな、それ。
「よし、じゃあこれは私たちが買おう」
「えっ」
思いがけない母さんの言葉に、父さんと母さんの顔を交互に見る。
「高いよ?」
「いいのいいの。春都はコントローラーだけ買いなさい」
「でも……」
「気にするな」
父さんは言って笑った。
「父さんたちもやりたいんだ」
そう言われては、何も言い返せない。ありがたく受け取っておくことにしよう。
「ありがとうございます」
まさしく、大吉な一年の始まりだ。
帰りにドライブスルーでハンバーガーを買って帰る。オンライン注文で頼んでいたから、すんなり買えた。すごいな、便利だなあ。
期間限定の焦がし醤油ソースたっぷりのハンバーガーにポテトとオレンジジュースを合わせてみた。チキンナゲットもたくさんだ。
テイクアウト商品を家で広げる時間って、なんか楽しい。
「いただきます」
ハンバーガー、でかいなあ。バンズがふわふわのカリカリだ。肉も分厚いし、レタス、トマト、玉ねぎがたっぷりだ。
香ばしい表面にふわふわの中身、まぶされたゴマの香ばしさもさることながら、焦がし醤油ソースの豊かな香りが鼻に抜ける。ほんの少しヒリッとするのもいいな。
分厚いパテは肉汁がすごい。焦がし醤油風味だというだけではなく、パテにも焦げ目がいい感じについていて、香ばしい。普段のハンバーガーよりもあらびきな感じの肉だから、食べ応えがある。
みずみずしいレタス、シャキッと爽やかな玉ねぎ、トマトの酸味がうまいこと口をさっぱりさせる。やっぱり、ハンバーガーには野菜が必要だよなあ。
ここにシロップの甘味の効いた、爽やかなオレンジジュースを流し込む。細かい氷で冷やされたオレンジジュースは、熱くなった口に程よい。
チキンナゲットにはバーベキューソースを。程よい香辛料の香りにわずかばかりの果実風味、焼き肉のたれに似て非なる味わいがたまらないな。マスタードの酸味は柔らかで、でも香りは抜群だ。
ポテトは塩が濃く、カリッと揚がっていて病みつきになりそうだ。ソースをつけて食うとまた変わっていい。
ピクルスを一枚食べて、ハンバーグを食べ進める。ほんのり暖かくなったピクルス、風味と食感がいいな。
包み紙に残ったソースも余すことなく食べたいものである。ハンバーガーの最後の一口で拭って食べる。パンがうまいことソースを吸ってくれて、おいしい。あっ、ピクルスもう一枚入ってた。なんかラッキー。
あーうまかった。さて、あとは残ったジュースを飲みながら、ゲームでもしようかな。
「ごちそうさまでした」
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