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日常
第四百七話 パック寿司
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空に灰色と黒の雲が重くのしかかっている。風もなく、生ぬるい空気だ。いわゆる、嵐の前の静けさというものだろう。何せ台風が近づいているのだ。
「あ~、体が重い~」
図書館のテーブルにうなだれて、咲良がつぶやく。うなだれるのは構わんが、読んでいる本をいじってくるのは止めていただきたい。実に読みづらい。
「台風来るんだっけ? いつ?」
「予報じゃ明日だな」
「休校になんねえかなあ」
よいしょ、と咲良は体勢を立て直し、今度は椅子の背もたれに身を預ける。実に眠そうな表情だ。
「ああ……どうだろうな」
本を閉じ、ふと外に目をやる。
雨はまだ降っていないが、夜くらいから降るだろうと天気予報では言っていた。風もそれくらいから吹き始めるらしいし、そう考えると……
「明日の朝かな、連絡来るとしても」
「だよなぁ~」
頬杖を突き、不満げに咲良は言った。バタバタと動かす足が時々当たって地味に痛い。
「この辺のバスも電車も、めったなことじゃ止まんねーし。なかなか休校にはなんねえよなあ」
バスも電車も関係ない俺としては何とも言い難い問題である。学校に行こうと思えばどんな悪天候でも行けないことはない距離に家があるからなあ。
「でもまあ、分からんぞ」
思い出すのは去年の梅雨。
夜どころか、昼過ぎから尋常じゃない雨が降り始めて、それでもなお授業が決行されたときのことだ。まあ止むだろうという先生と早めに帰した方がいいという先生で意見が分かれ、会議の結果、前者が勝ってしまった時だ。
下校時刻になると雨は、バケツをひっくり返したような、という表現では生ぬるいほどの勢いで降りはじめ、学校横の道は川みたいになった。小康状態のタイミングで一斉に帰らされたが、時すでに遅しである。
あちこちの川が氾濫し、浸水もひどく、帰宅困難生徒が大勢出たのだ。確か咲良は、家に帰りついたのが翌日の午前一時か二時だったとか。実際、テレビでは緊急速報の音が絶え間なく鳴り続けていたし、被害状況がずっと放送されていた。
じいちゃんとばあちゃんの店も床下浸水で、片付けに数日は要した。
しかしそれでも学校は「翌日は朝課外中止で、通常授業」などと言ったものだから、苦情が殺到した。それで、休校や早めの下校なんかの判断が早くなったのだ。だから今回も、というのは淡い期待か。
「あんときは大変だったなあ。でもさあ、大雪降ったときはそうでもなかったじゃん?」
咲良は期待半分、諦め半分というように言った。
「休校にはならないし、途中で帰れるって決まったのはお昼だし」
「結果、草の味のポトフを食うことになったな」
そう言えば、咲良は、
「んっふふ」
と声を押し殺すようにして笑った。
あの調理実習は、今となってはいい思い出だ。しかし、雪といっても身動きが取れなくなるようなものでもなかったし、あの日も、来れる人は来い、という条件付きだった。
雨とは違う。……違う、はずだ。
「休校になるって祈っとけば案外、すんなりなるかもな」
「休校なれ~、休校なれ~」
祝詞のごとく咲良だったが、早々に飽きたらしい。
「はぁ~あ、雑誌読も」
「なんだそれ」
さて、明日はどうなることやら。
案の定、明日は休校となった。よっぽど、去年の苦情が効いたらしい。
となれば、今日やるべきは買い出しだ。寄り道をせずにすぐに帰れ、とのお達しだが、これは必要な行為だ。うん、そうだそうだ。
いつも通り花丸スーパーへ。
野菜類はある程度家にあるから良しとして、必要なのはそう。お菓子とジュース。
とりあえずお菓子だ。えーっと、ポテチとポップコーンは必須として、甘いものも買っておくか。クッキーとか、チョコとか、コーンフレークとか。コーンフレーク買うなら牛乳も……豆乳もいいなあ。あっ、ケーキの詰め合わせとかあるじゃん。プリンもいい。アラモードにするのもいいし、パフェを作るのもいい。アイスもいるよなあ。
昼飯はどうしようかなあ。まあうちにあるもので作れるか。パンだけ、なくなってたから買うとしよう。食パンと野菜、卵があれば何とかなる。米もあるし。肉があればなおよしだが……ああ、ローストビーフが冷凍されていたな。鶏肉も豚肉も必要な分はあるし、十分だろう。ハムとベーコン、ウインナーは買っておこう。弁当用だ。
カップ麺も買っておくかあ。そう、明日の休校は台風が来るからであって、楽しむための休みではないのだ。
あっ、今日の晩飯はどうしよう。何も考えてなかった。なんか作るのしんどいなあ。
総菜でも見ていこうか。からあげ、魚の煮つけ、塩焼き、春巻き、ハンバーグ。和洋中、一通りそろっているな。どれを買おうか。弁当っていう手もあるが……
「おっ」
鮮魚コーナーが少しにぎやかだ。どうやら、割引が始まったらしい。もうそんな時間か。なんか寿司、安くなってないかなあ。
うわ、やっぱお高い寿司はお高いままなのか。へーっ、海鮮丼とかあるんだ。しらす丼にぶつ切りの魚をのっけたやつ、サーモン丼、炙りもある。
大概半額だなあ。明日台風だし、店開けられるか分かんないから売り切っておけ、ということか。半額っつーことは、二倍食える、よな。
「……よし」
寿司八貫パックと、いなり寿司とサラダ巻のセットにしよう。この二つを買っても、普段売ってあるパック寿司の値段と変わらないか、それより安いくらいだ。
さ、早く帰ろう。
小皿に醤油、飲み物は麦茶でいいか。では、さっそく。
「いただきます」
まずは寿司からだな。卵、穴子、ウニ、サーモン、マグロ、イカ、たこ、つぶ貝。豪華だなあ。
卵はジュワッと出汁が染み出す。甘めで、巻いてあるのりの風味も際立つ。酢飯に合うように作られた卵焼き……いや、出汁巻きか。食べ応えがあるなあ。穴子はふわふわで、たれの甘味と香ばしさがいい。
次は何にすっかなあ。マグロ。赤身でさっぱりだなあ。わさび醤油がよく合うことよ。たこは噛み応えがいいなあ。吸盤はプチプチしていて、染み出すうま味がいい。
半分食べたところで、いなりずしを。
甘辛い味付けをたっぷり含んだ揚げと、酸味強めの酢飯。すいすい入っていく。魚の味の合間に、程よい甘さだ。
サラダ巻はまろやかなマヨネーズとみずみずしいレタス、かにかま、卵焼きのバランスがいい。酢飯は少なめで、のりの歯切れがいい。
さあ、次は……ウニいくか。軍艦巻きだ。ほのかな甘みと苦みがうまい。
イカも歯切れがいいな。プチプチッとした感じの歯ざわり、噛むほどに滑らかになっていく身、甘さとイカそのものの味が最高だなあ。
そんで、サーモン。脂がすごくのっている。醤油がつやっつやになった。サーモン特有の甘味とうま味、この味は、サーモン以外には出せない。まあどの魚もそうだろうけど。
そして最後のお楽しみ、つぶ貝! この食感、味、染み出すうま味。これがたまらないんだなあ。こりっこりで、醤油とわさび、酢飯のさわやかさがよく合うのだ。つぶ貝の刺身も好きだが、寿司もかなり好きだ。
はあ、うまかった。思いがけずぜいたくをしてしまった。
パラパラと雨の音が聞こえてくる。風も強いようで、少し怖いくらいだ。
ま、明日はおとなしくしていよう。
「ごちそうさまでした」
「あ~、体が重い~」
図書館のテーブルにうなだれて、咲良がつぶやく。うなだれるのは構わんが、読んでいる本をいじってくるのは止めていただきたい。実に読みづらい。
「台風来るんだっけ? いつ?」
「予報じゃ明日だな」
「休校になんねえかなあ」
よいしょ、と咲良は体勢を立て直し、今度は椅子の背もたれに身を預ける。実に眠そうな表情だ。
「ああ……どうだろうな」
本を閉じ、ふと外に目をやる。
雨はまだ降っていないが、夜くらいから降るだろうと天気予報では言っていた。風もそれくらいから吹き始めるらしいし、そう考えると……
「明日の朝かな、連絡来るとしても」
「だよなぁ~」
頬杖を突き、不満げに咲良は言った。バタバタと動かす足が時々当たって地味に痛い。
「この辺のバスも電車も、めったなことじゃ止まんねーし。なかなか休校にはなんねえよなあ」
バスも電車も関係ない俺としては何とも言い難い問題である。学校に行こうと思えばどんな悪天候でも行けないことはない距離に家があるからなあ。
「でもまあ、分からんぞ」
思い出すのは去年の梅雨。
夜どころか、昼過ぎから尋常じゃない雨が降り始めて、それでもなお授業が決行されたときのことだ。まあ止むだろうという先生と早めに帰した方がいいという先生で意見が分かれ、会議の結果、前者が勝ってしまった時だ。
下校時刻になると雨は、バケツをひっくり返したような、という表現では生ぬるいほどの勢いで降りはじめ、学校横の道は川みたいになった。小康状態のタイミングで一斉に帰らされたが、時すでに遅しである。
あちこちの川が氾濫し、浸水もひどく、帰宅困難生徒が大勢出たのだ。確か咲良は、家に帰りついたのが翌日の午前一時か二時だったとか。実際、テレビでは緊急速報の音が絶え間なく鳴り続けていたし、被害状況がずっと放送されていた。
じいちゃんとばあちゃんの店も床下浸水で、片付けに数日は要した。
しかしそれでも学校は「翌日は朝課外中止で、通常授業」などと言ったものだから、苦情が殺到した。それで、休校や早めの下校なんかの判断が早くなったのだ。だから今回も、というのは淡い期待か。
「あんときは大変だったなあ。でもさあ、大雪降ったときはそうでもなかったじゃん?」
咲良は期待半分、諦め半分というように言った。
「休校にはならないし、途中で帰れるって決まったのはお昼だし」
「結果、草の味のポトフを食うことになったな」
そう言えば、咲良は、
「んっふふ」
と声を押し殺すようにして笑った。
あの調理実習は、今となってはいい思い出だ。しかし、雪といっても身動きが取れなくなるようなものでもなかったし、あの日も、来れる人は来い、という条件付きだった。
雨とは違う。……違う、はずだ。
「休校になるって祈っとけば案外、すんなりなるかもな」
「休校なれ~、休校なれ~」
祝詞のごとく咲良だったが、早々に飽きたらしい。
「はぁ~あ、雑誌読も」
「なんだそれ」
さて、明日はどうなることやら。
案の定、明日は休校となった。よっぽど、去年の苦情が効いたらしい。
となれば、今日やるべきは買い出しだ。寄り道をせずにすぐに帰れ、とのお達しだが、これは必要な行為だ。うん、そうだそうだ。
いつも通り花丸スーパーへ。
野菜類はある程度家にあるから良しとして、必要なのはそう。お菓子とジュース。
とりあえずお菓子だ。えーっと、ポテチとポップコーンは必須として、甘いものも買っておくか。クッキーとか、チョコとか、コーンフレークとか。コーンフレーク買うなら牛乳も……豆乳もいいなあ。あっ、ケーキの詰め合わせとかあるじゃん。プリンもいい。アラモードにするのもいいし、パフェを作るのもいい。アイスもいるよなあ。
昼飯はどうしようかなあ。まあうちにあるもので作れるか。パンだけ、なくなってたから買うとしよう。食パンと野菜、卵があれば何とかなる。米もあるし。肉があればなおよしだが……ああ、ローストビーフが冷凍されていたな。鶏肉も豚肉も必要な分はあるし、十分だろう。ハムとベーコン、ウインナーは買っておこう。弁当用だ。
カップ麺も買っておくかあ。そう、明日の休校は台風が来るからであって、楽しむための休みではないのだ。
あっ、今日の晩飯はどうしよう。何も考えてなかった。なんか作るのしんどいなあ。
総菜でも見ていこうか。からあげ、魚の煮つけ、塩焼き、春巻き、ハンバーグ。和洋中、一通りそろっているな。どれを買おうか。弁当っていう手もあるが……
「おっ」
鮮魚コーナーが少しにぎやかだ。どうやら、割引が始まったらしい。もうそんな時間か。なんか寿司、安くなってないかなあ。
うわ、やっぱお高い寿司はお高いままなのか。へーっ、海鮮丼とかあるんだ。しらす丼にぶつ切りの魚をのっけたやつ、サーモン丼、炙りもある。
大概半額だなあ。明日台風だし、店開けられるか分かんないから売り切っておけ、ということか。半額っつーことは、二倍食える、よな。
「……よし」
寿司八貫パックと、いなり寿司とサラダ巻のセットにしよう。この二つを買っても、普段売ってあるパック寿司の値段と変わらないか、それより安いくらいだ。
さ、早く帰ろう。
小皿に醤油、飲み物は麦茶でいいか。では、さっそく。
「いただきます」
まずは寿司からだな。卵、穴子、ウニ、サーモン、マグロ、イカ、たこ、つぶ貝。豪華だなあ。
卵はジュワッと出汁が染み出す。甘めで、巻いてあるのりの風味も際立つ。酢飯に合うように作られた卵焼き……いや、出汁巻きか。食べ応えがあるなあ。穴子はふわふわで、たれの甘味と香ばしさがいい。
次は何にすっかなあ。マグロ。赤身でさっぱりだなあ。わさび醤油がよく合うことよ。たこは噛み応えがいいなあ。吸盤はプチプチしていて、染み出すうま味がいい。
半分食べたところで、いなりずしを。
甘辛い味付けをたっぷり含んだ揚げと、酸味強めの酢飯。すいすい入っていく。魚の味の合間に、程よい甘さだ。
サラダ巻はまろやかなマヨネーズとみずみずしいレタス、かにかま、卵焼きのバランスがいい。酢飯は少なめで、のりの歯切れがいい。
さあ、次は……ウニいくか。軍艦巻きだ。ほのかな甘みと苦みがうまい。
イカも歯切れがいいな。プチプチッとした感じの歯ざわり、噛むほどに滑らかになっていく身、甘さとイカそのものの味が最高だなあ。
そんで、サーモン。脂がすごくのっている。醤油がつやっつやになった。サーモン特有の甘味とうま味、この味は、サーモン以外には出せない。まあどの魚もそうだろうけど。
そして最後のお楽しみ、つぶ貝! この食感、味、染み出すうま味。これがたまらないんだなあ。こりっこりで、醤油とわさび、酢飯のさわやかさがよく合うのだ。つぶ貝の刺身も好きだが、寿司もかなり好きだ。
はあ、うまかった。思いがけずぜいたくをしてしまった。
パラパラと雨の音が聞こえてくる。風も強いようで、少し怖いくらいだ。
ま、明日はおとなしくしていよう。
「ごちそうさまでした」
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