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日常
第四百一話 チキンライス
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花火大会も終われば、後は二学期の始まりを待つばかりだ。
「あ~、夏休みが終わる~」
ソファにうなだれてなんとなく言ってみる。
「まあほとんど学校行ってたし、今更って感じだけど」
「なに一人で言ってるのよ」
母さんが笑いながら言った。灼熱の日差しと熱い風にさらされた洗濯物は早々に乾き、母さんの手によってきれいにたたまれていく。
「私たちもそろそろ、本格的に仕事が始まるわ」
「あー、いつごろから?」
「九月入って少しして、ってところかな」
そっかあ、もうそんな時期か。ぼんやり天井を眺めながら思えば、父さんが言った。
「今度はちょくちょく帰ってくるよ」
「お土産期待してます」
「はは、何かおいしいものでも買ってこようね」
ゲームでもしようかと体勢を立て直したところで、うめずがやって来てゴロンと寝そべった。腹を見せ、こちらをじっと見ている。
「なんだぁ、うめず」
「わう」
おりゃーっと撫でてやれば、満足そうに目を細め身をよじらせて好みの場所へ手を誘導させる。そうかそうか、そこがいいか。
ひとしきり撫でてやったら立ち上がる。漫画を取りに行こうと部屋へ向かえば、うめずも体を摺り寄せながらついて来た。歩きにくいが、かわいいのでまあ良しとしよう。えーっと、何読むかな。ああ、これにしよう。
ローテーブルに漫画を山積みにし、ソファに横になってさっそく読む。年に一回しか出ない単行本だ。書き込みがすごくて、くっきりとした絵柄でありながらどこかやわらかい。これ、観月に貸してもらってからはまったんだよな。で、自分で買ったというわけだ。
数冊読んだところで口寂しくなり、台所へ向かう。この漫画は、飯や飲み物の描写が秀逸なので、食欲が刺激されるんだ。
なんか炭酸が飲みたい気分だ。しかし、冷蔵庫にはない。
「買いに行くかぁ」
本屋にも行こうかと思っていたので、そこの自販機で買おう。うめずもついてくる気満々だったが、この暑さである。アスファルトも灼熱だろうし、ここは留守番してもらわないと。
「うめずは留守番な」
「わふっ」
「火傷するぞ」
さすがにこの巨体を抱えて歩くのはしんどい。
まあ、うめずも外の気温を感じて居間に戻ろうとしているので、いいだろう。
そうそう、これこれ。今月末に新刊が出るって忘れてたなあ。
来月も新刊出るんだったか。ほしい本って、なんかまとめて出るんだよなあ。ほんと、誕生日に図書カード貰えてよかった。
紙の袋に本を入れてもらい、外に出る。じりじりと何かが焦げるような匂いがするほどに日差しが強い。これで暦の上では秋なのだというから、不思議なものである。一度、季節に対する認識を改めないといけないかもしれないなあ。
「これこれ」
自販機で買うのは目にも鮮やかなメロンソーダ。ペットボトルの中で揺れる蛍光色のグリーンには、炭酸がパチパチとはじけている。これには緑というより、グリーンという単語の方が合う。
あとはお菓子だが……何を調達しようかな。
「おぉ、クリームソーダじゃないか」
台所でおやつを作っていたら、父さんがのぞき込んできて言った。
結局あの後、バニラアイスを買って帰った。暑さで溶ける前にと急いだので、とても疲れた。
口が広めのガラスのコップに氷を入れ、メロンソーダを注ぐ。そして上に、アイスをのせる。クリームソーダのできあがりだ。
「いただきます」
ソファに深く腰掛け、まずはメロンソーダを飲む。このわざとらしい甘みがいい。メロンらしさはあるかと言われると少々言葉に詰まるが、そこがこのメロンソーダの醍醐味だろう。確かに香料の気配はあるがメロンかといわれればなんともいえず、色が緑だし、パッケージにメロンソーダと書いてあるんだし、だったらメロン味だろう、とまあそんな感じの楽しみ方だ。
アイスはひんやり、バニラの風味がいい。氷に触れたところは少ししゃりっとしている。混ぜて飲めば、もったり、まったり、とした口当たり。腹にたまりそうだ。
「あ~、体が冷える~」
ここにサクランボがあればさらに鮮やかなのだろうが……まあ、今回はこのひんやりを味わえるだけで十分だ。
「ごちそうさまでした」
今日は晩飯も鮮やかな色合いだ。
「チキンライスだ」
オレンジがかった赤色に染まった米、紛れ込む緑と黄色の野菜、ほのかに色づいた鶏肉、皿の白。オムライスもいいが、チキンライスもかなり好きである。
「いただきます」
スプーンですくって、一口。
強烈な甘みではなく、やってくるのは穏やかな甘み。まろやかな口当たりに少しふやけたような食感の米の甘味がいい。酸味はしっかりとんでいて、鼻に抜けるケチャップの風味がほどよい。
コクのある味は、バターのおかげだろうか。バターは苦手だと思っていた時もあったが、香りが強すぎなければ、好きだ。
具材にはピーマンとコーン、それに鶏肉がある。
「コーン入れたんだ」
「彩りがいいでしょ」
と、母さんは言った。
確かに、赤に緑、黄色はよく映える。味もいい。プチッとはじけるコーンの甘味にピーマンのほのかな苦み。ナポリタンより苦みを感じやすいのは、細かく切っているからだろうか。
鶏肉はもちもちのほろほろだ。ジュワッと染み出す味がなんともいえないおいしさである。
ケチャップ味は、うまくやればどんな食材もおいしくまとめ上げてしまう。
ナポリタンもうまいんだよなあ。今度、作ってもらおうかな。目玉焼きでも乗せて。
「ごちそうさまでした」
「あ~、夏休みが終わる~」
ソファにうなだれてなんとなく言ってみる。
「まあほとんど学校行ってたし、今更って感じだけど」
「なに一人で言ってるのよ」
母さんが笑いながら言った。灼熱の日差しと熱い風にさらされた洗濯物は早々に乾き、母さんの手によってきれいにたたまれていく。
「私たちもそろそろ、本格的に仕事が始まるわ」
「あー、いつごろから?」
「九月入って少しして、ってところかな」
そっかあ、もうそんな時期か。ぼんやり天井を眺めながら思えば、父さんが言った。
「今度はちょくちょく帰ってくるよ」
「お土産期待してます」
「はは、何かおいしいものでも買ってこようね」
ゲームでもしようかと体勢を立て直したところで、うめずがやって来てゴロンと寝そべった。腹を見せ、こちらをじっと見ている。
「なんだぁ、うめず」
「わう」
おりゃーっと撫でてやれば、満足そうに目を細め身をよじらせて好みの場所へ手を誘導させる。そうかそうか、そこがいいか。
ひとしきり撫でてやったら立ち上がる。漫画を取りに行こうと部屋へ向かえば、うめずも体を摺り寄せながらついて来た。歩きにくいが、かわいいのでまあ良しとしよう。えーっと、何読むかな。ああ、これにしよう。
ローテーブルに漫画を山積みにし、ソファに横になってさっそく読む。年に一回しか出ない単行本だ。書き込みがすごくて、くっきりとした絵柄でありながらどこかやわらかい。これ、観月に貸してもらってからはまったんだよな。で、自分で買ったというわけだ。
数冊読んだところで口寂しくなり、台所へ向かう。この漫画は、飯や飲み物の描写が秀逸なので、食欲が刺激されるんだ。
なんか炭酸が飲みたい気分だ。しかし、冷蔵庫にはない。
「買いに行くかぁ」
本屋にも行こうかと思っていたので、そこの自販機で買おう。うめずもついてくる気満々だったが、この暑さである。アスファルトも灼熱だろうし、ここは留守番してもらわないと。
「うめずは留守番な」
「わふっ」
「火傷するぞ」
さすがにこの巨体を抱えて歩くのはしんどい。
まあ、うめずも外の気温を感じて居間に戻ろうとしているので、いいだろう。
そうそう、これこれ。今月末に新刊が出るって忘れてたなあ。
来月も新刊出るんだったか。ほしい本って、なんかまとめて出るんだよなあ。ほんと、誕生日に図書カード貰えてよかった。
紙の袋に本を入れてもらい、外に出る。じりじりと何かが焦げるような匂いがするほどに日差しが強い。これで暦の上では秋なのだというから、不思議なものである。一度、季節に対する認識を改めないといけないかもしれないなあ。
「これこれ」
自販機で買うのは目にも鮮やかなメロンソーダ。ペットボトルの中で揺れる蛍光色のグリーンには、炭酸がパチパチとはじけている。これには緑というより、グリーンという単語の方が合う。
あとはお菓子だが……何を調達しようかな。
「おぉ、クリームソーダじゃないか」
台所でおやつを作っていたら、父さんがのぞき込んできて言った。
結局あの後、バニラアイスを買って帰った。暑さで溶ける前にと急いだので、とても疲れた。
口が広めのガラスのコップに氷を入れ、メロンソーダを注ぐ。そして上に、アイスをのせる。クリームソーダのできあがりだ。
「いただきます」
ソファに深く腰掛け、まずはメロンソーダを飲む。このわざとらしい甘みがいい。メロンらしさはあるかと言われると少々言葉に詰まるが、そこがこのメロンソーダの醍醐味だろう。確かに香料の気配はあるがメロンかといわれればなんともいえず、色が緑だし、パッケージにメロンソーダと書いてあるんだし、だったらメロン味だろう、とまあそんな感じの楽しみ方だ。
アイスはひんやり、バニラの風味がいい。氷に触れたところは少ししゃりっとしている。混ぜて飲めば、もったり、まったり、とした口当たり。腹にたまりそうだ。
「あ~、体が冷える~」
ここにサクランボがあればさらに鮮やかなのだろうが……まあ、今回はこのひんやりを味わえるだけで十分だ。
「ごちそうさまでした」
今日は晩飯も鮮やかな色合いだ。
「チキンライスだ」
オレンジがかった赤色に染まった米、紛れ込む緑と黄色の野菜、ほのかに色づいた鶏肉、皿の白。オムライスもいいが、チキンライスもかなり好きである。
「いただきます」
スプーンですくって、一口。
強烈な甘みではなく、やってくるのは穏やかな甘み。まろやかな口当たりに少しふやけたような食感の米の甘味がいい。酸味はしっかりとんでいて、鼻に抜けるケチャップの風味がほどよい。
コクのある味は、バターのおかげだろうか。バターは苦手だと思っていた時もあったが、香りが強すぎなければ、好きだ。
具材にはピーマンとコーン、それに鶏肉がある。
「コーン入れたんだ」
「彩りがいいでしょ」
と、母さんは言った。
確かに、赤に緑、黄色はよく映える。味もいい。プチッとはじけるコーンの甘味にピーマンのほのかな苦み。ナポリタンより苦みを感じやすいのは、細かく切っているからだろうか。
鶏肉はもちもちのほろほろだ。ジュワッと染み出す味がなんともいえないおいしさである。
ケチャップ味は、うまくやればどんな食材もおいしくまとめ上げてしまう。
ナポリタンもうまいんだよなあ。今度、作ってもらおうかな。目玉焼きでも乗せて。
「ごちそうさまでした」
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