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日常
第三百十九話 たこ焼き
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日曜日は自宅の方に戻ることにした。そのまま泊まる気満々だったのだが、あいにく、月曜の準備があったのだ。いつもであれば、金曜日の授業と被っている科目が多いから、店に行くときは月曜の準備もして学校に行くことができるのだがなあ。
時間割り変更さえなけりゃなあ。さすがに大量の教科書を持ち運ぶ気力はない。
「さて、これは……」
帰り際にもらったのは玉ねぎ。いくつかまとめて干してあったのを一束くれたのだ。
ベランダに干しとくか。風通しいいし、日陰になるとこに。
「わうっ」
「食べんなよ、うめず。お前には毒だからな」
「うぅ」
何に使おうかなあ。すぐに悪くなるものでもなし、のんびり考えよう。
ソファに座ってすぐ、スマホが鳴った。咲良だ。
『あ、春都さ、今日家にいる?』
「いるけど、何」
『実は近くまで来ててさ。今から行くねー』
おいおい、また急だな。まあ、こいつの突拍子のなさは今に始まったことではないか。
「お前、家にいなかったらどうするつもりだったんだ」
『えー? 待つか、帰るか』
「暇だな」
『珍しく予習がスムーズに終わったからなあ』
それじゃ、と咲良は通話を切った。
「……はぁ」
「わぅ」
「来客だ」
「おいーっす。元気~?」
「まったく。急だな、お前は」
「サプラ~イズ」
「いらん」
咲良は遠慮なく上がってくると、持って来ていた袋をテーブルに置いて、うめずに構い始めた。
「うめずも元気にしてるか~?」
「わうっ」
「お、いい返事だ」
うめずとじゃれあう咲良を横目に椅子に座る。まるで犬同士が遊んでいるようにも見える。それにしたって、何持ってきたんだこいつ。妙に冷気を放っているが……
「何しに来た?」
「や、特に理由ない」
咲良の手から逃れるように、うめずは俺の足元にすり寄ってきた。
「おーおー、よしよし」
「あー、うめずー」
「わうっ」
「よしよし。ゆっくり休んどけ」
そう言えばうめずはソファに向かい、軽々と飛び乗ると気持ちよさそうに丸まってふうっと息をついた。
「なんか飲む?」
向かいに座った咲良に聞きながら立ち上がる。
「あ、それならさ」
咲良は置いていた袋を開ける。そこに入っていたのは冷凍のたこ焼き徳用パックとジュースだった。
「買ってきたんだー。食おうぜ」
「おお、ありがとな。そんじゃ、準備すっか」
せっかくだし、いろいろやってみたいものだ。
「冷蔵庫に何があったかな」
「お、アレンジ? 期待通り~」
「なんだそれ」
「や、これ持ってったら、春都がなんかしてくれるかなーって思ってたから」
シンプルにネギとかつお節、それと、白だしも準備しよう。明石焼き……もどきだな。
耐熱皿をいくつか出して、その上に冷凍たこ焼きをのせる。レンジで温め、一つはなにもトッピングせず、一つはソース、ネギ、かつお節をトッピングする、そしてもう一つはとろけるチーズをのせて、少し温める。
その間に出汁の準備だ。水に白だしを入れ、温めるだけだが。ねぎを散らし、少しかつお節も入れる。これだけでずいぶん風味が変わるのだ。
「おおー、豪華」
ワクワクとのぞき込んでくる咲良に、たこ焼きがのった皿と取り皿、フォークを運ばせる。
「氷いる? ジュース」
「いる!」
コップに氷を入れ、テーブルに持っていく。ジュースはコーラとオレンジか……オレンジにしよう。
出汁を器に注いで……と、よし。
「食うか」
「待ってました!」
なんか咲良の前に置かれた皿、二つぐらいたこ焼きが減ってないか? まあいいけど。
「いただきます」
まずはシンプルにソースのやつから。
ぷわぷわの生地の口当たりがいい。ソースが染みて、かつお節の香りとネギのさわやかさがたまらない。冷凍たこ焼きって、バカにできないうまさがある。しっかり出汁もきいているのだ。たこはちょっと小さいけど、味はしっかりしている。
「んー、うまいなあ」
「ああ」
オレンジジュースとよく合う。
さて、次は出汁。たぷたぷと浸せば、ぼんやりとふやける。たっぷりと出汁を含んだたこ焼きはとてつもなくジューシーだ。これはたこの風味がよく分かる。
「出汁って結構うまいのな」
「だろ? かつお節絡めて食うといいぞ」
「なるほど……お、うま!」
チーズはどうだ。トロッと、もちっとしたチーズにソース味がよく合う。ものすごくこってりだ。がっつり系で、食べ応えがある。あ、たこ、入ってなかった。冷凍ってこういうこと、あるんだよな。それはそれでいいけど。生地に味染みてるし。
「あ、たこ二個あった」
「お前の方にいってたか」
「春都のに入ってなかった?」
結構たっぷりあったから食べきれるかなあ、と思ったが、案外いけるものだ。
「期待には応えられていたか?」
「期待以上だ!」
満足そうに笑う咲良に聞いてみる。
「で、このあと何するつもりだ?」
「んー、のんびりする」
こいつは、しばらく滞在するつもりらしい。
まあ、こんな休日も悪くない、か。
「ごちそうさまでした」
時間割り変更さえなけりゃなあ。さすがに大量の教科書を持ち運ぶ気力はない。
「さて、これは……」
帰り際にもらったのは玉ねぎ。いくつかまとめて干してあったのを一束くれたのだ。
ベランダに干しとくか。風通しいいし、日陰になるとこに。
「わうっ」
「食べんなよ、うめず。お前には毒だからな」
「うぅ」
何に使おうかなあ。すぐに悪くなるものでもなし、のんびり考えよう。
ソファに座ってすぐ、スマホが鳴った。咲良だ。
『あ、春都さ、今日家にいる?』
「いるけど、何」
『実は近くまで来ててさ。今から行くねー』
おいおい、また急だな。まあ、こいつの突拍子のなさは今に始まったことではないか。
「お前、家にいなかったらどうするつもりだったんだ」
『えー? 待つか、帰るか』
「暇だな」
『珍しく予習がスムーズに終わったからなあ』
それじゃ、と咲良は通話を切った。
「……はぁ」
「わぅ」
「来客だ」
「おいーっす。元気~?」
「まったく。急だな、お前は」
「サプラ~イズ」
「いらん」
咲良は遠慮なく上がってくると、持って来ていた袋をテーブルに置いて、うめずに構い始めた。
「うめずも元気にしてるか~?」
「わうっ」
「お、いい返事だ」
うめずとじゃれあう咲良を横目に椅子に座る。まるで犬同士が遊んでいるようにも見える。それにしたって、何持ってきたんだこいつ。妙に冷気を放っているが……
「何しに来た?」
「や、特に理由ない」
咲良の手から逃れるように、うめずは俺の足元にすり寄ってきた。
「おーおー、よしよし」
「あー、うめずー」
「わうっ」
「よしよし。ゆっくり休んどけ」
そう言えばうめずはソファに向かい、軽々と飛び乗ると気持ちよさそうに丸まってふうっと息をついた。
「なんか飲む?」
向かいに座った咲良に聞きながら立ち上がる。
「あ、それならさ」
咲良は置いていた袋を開ける。そこに入っていたのは冷凍のたこ焼き徳用パックとジュースだった。
「買ってきたんだー。食おうぜ」
「おお、ありがとな。そんじゃ、準備すっか」
せっかくだし、いろいろやってみたいものだ。
「冷蔵庫に何があったかな」
「お、アレンジ? 期待通り~」
「なんだそれ」
「や、これ持ってったら、春都がなんかしてくれるかなーって思ってたから」
シンプルにネギとかつお節、それと、白だしも準備しよう。明石焼き……もどきだな。
耐熱皿をいくつか出して、その上に冷凍たこ焼きをのせる。レンジで温め、一つはなにもトッピングせず、一つはソース、ネギ、かつお節をトッピングする、そしてもう一つはとろけるチーズをのせて、少し温める。
その間に出汁の準備だ。水に白だしを入れ、温めるだけだが。ねぎを散らし、少しかつお節も入れる。これだけでずいぶん風味が変わるのだ。
「おおー、豪華」
ワクワクとのぞき込んでくる咲良に、たこ焼きがのった皿と取り皿、フォークを運ばせる。
「氷いる? ジュース」
「いる!」
コップに氷を入れ、テーブルに持っていく。ジュースはコーラとオレンジか……オレンジにしよう。
出汁を器に注いで……と、よし。
「食うか」
「待ってました!」
なんか咲良の前に置かれた皿、二つぐらいたこ焼きが減ってないか? まあいいけど。
「いただきます」
まずはシンプルにソースのやつから。
ぷわぷわの生地の口当たりがいい。ソースが染みて、かつお節の香りとネギのさわやかさがたまらない。冷凍たこ焼きって、バカにできないうまさがある。しっかり出汁もきいているのだ。たこはちょっと小さいけど、味はしっかりしている。
「んー、うまいなあ」
「ああ」
オレンジジュースとよく合う。
さて、次は出汁。たぷたぷと浸せば、ぼんやりとふやける。たっぷりと出汁を含んだたこ焼きはとてつもなくジューシーだ。これはたこの風味がよく分かる。
「出汁って結構うまいのな」
「だろ? かつお節絡めて食うといいぞ」
「なるほど……お、うま!」
チーズはどうだ。トロッと、もちっとしたチーズにソース味がよく合う。ものすごくこってりだ。がっつり系で、食べ応えがある。あ、たこ、入ってなかった。冷凍ってこういうこと、あるんだよな。それはそれでいいけど。生地に味染みてるし。
「あ、たこ二個あった」
「お前の方にいってたか」
「春都のに入ってなかった?」
結構たっぷりあったから食べきれるかなあ、と思ったが、案外いけるものだ。
「期待には応えられていたか?」
「期待以上だ!」
満足そうに笑う咲良に聞いてみる。
「で、このあと何するつもりだ?」
「んー、のんびりする」
こいつは、しばらく滞在するつもりらしい。
まあ、こんな休日も悪くない、か。
「ごちそうさまでした」
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