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日常
第二百六十七話 オムライス
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明日はどうやって盛り付けようかとオードブルの皿を眺めていたら、ソファでうめずと戯れていた咲良がやってきた。
「うめずは?」
「なんか俺にはもう飽きたって」
見ればうめずは、日が照り始めた窓際で気持ちよさそうに横たわっていた。
「何やってんの?」
「あー、明日どうやって盛り付けようかなーと」
「お、いいねえ。真ん中に枝豆入れようぜ」
それはなんとなくわかる。なんでか知らないが、枝豆は真ん中だと思っていた。
オードブルの皿って、花みたいだよな。真ん中に丸いとこがあって、それを囲うように六つほど空白がある。何を入れるか考えるだけで楽しい。
「んで、からあげはここ」
「卵焼きはこっちだな。ポテサラどうする?」
「銀紙使おうぜ」
「枝豆の味は塩だけでいいか? にんにくで炒めるやつもあるらしいぞ」
なんやかんやと話していたら、聞きなれない音が聞こえて来た。なんだ。
「あ、俺だ」
どうやら咲良のスマホの通知音だったらしい。
「テレビ通話? え、誰。百瀬?」
「なんでまたテレビ通話」
「さあ……? あ、出てもいい?」
「どーぞ」
通話をつなぐや否や、スマホから『やっほー、見えてるー?』と明るい百瀬の声が聞こえて来た。
「どしたぁ、急に?」
『いやー、なんか気になってねー。一条の家にいるんでしょ? 仲良くやってる?』
「なんだ、そういうこと」
咲良は笑うと、スマホの位置を調整して俺も映るようにした。
『あ、一条が見える! 一条~』
「おう、百瀬」
「てかお前なにやってんの?」
咲良が聞けば、百瀬は「ふっふっふ」と、まるでいたずらを考えている子供の様な表情をした。
『俺は今ねー、ここにいまーす』
スマホの画面に映し出されたのは、やたらと広い台所だった。厨房と言ってもいいぐらいである。
てか、なんか見たことあるな。
そう思っていたらまたもや見覚えのあるやつが画面に現れた。
「あ、朝比奈だ」
『よぉ』
画面の向こうの朝比奈はいつも通り無気力な目をして、ひらひらと手を振った。その横に、にゅっと百瀬が出てくる。
『ほら、言ってたじゃん。饅頭作るって。それで最初は台所借りるだけのつもりだったんだけど、お前らが泊りがけって聞いてさあ。楽しそうだなーと思って、俺も泊まることにした!』
「マジかよ」
まあ、朝比奈の家だったら、部屋に困ることもなさそうだな。
『あのさあ、明日の弁当って何? もう仕込みした?』
「まあ、今日中にできる分はな。明日の朝しなきゃいけねえ作業の方が多いが」
『へーそうなん。井上は役に立ってるわけ?』
「超大活躍だっての! な、春都!」
咲良の問いかけに即答で同意しないでいると、画面の向こうで朝比奈がふっと吹き出して顔をそらしたのが見えた。
「え? 俺頑張ったよな?」
少し不安そうに聞いてくる咲良に、さすがに首を縦に振る。
「そうだな。頑張った頑張った」
『言わせてない?』
「ちげーよ、ホントに頑張ったし! そっちこそ朝比奈は役に立ってんのかよ!」
咲良がむうっとした表情で聞けば、朝比奈は表情一つ変えずピースサインをして言ったものである。
『いや、俺は場所提供だけであって、お菓子作りはそもそも戦力外』
「得意げな顔すんな」
『してない』
ずいぶんと盛り上がっていることで。
さて、今日の晩飯は何にしようかなあ。そろそろ決めて、準備したいものだが。
「なー、咲良。晩飯何がいい?」
「え? あー、何でもいい」
『それ一番困るやつ』
と、朝比奈と百瀬の声が重なる。咲良は「それ家でも言われたことある~」とへらっと笑った。
「じゃあー、オムライス!」
「おう。半熟じゃないぞ」
「いいよー」
昼に続いて、なんだかお子様ランチメニューな感じだが、たまにはいい。
百瀬の饅頭、楽しみだな。
チキンライスはナポリタンの作り方とほぼ同じだが、バターは入れない。
ささみ肉と玉ねぎ、余っていたピーマンを入れて炒め、ケチャップと塩コショウを投入してしっかり炒める。
酸味をよく飛ばしたらご飯を入れてなじませる。
卵は一人二つぐらいでいいか。切るように溶いて、油をひいたフライパンで焼いていく。
今日のソースはデミグラス。買い置きしていてよかった。デミグラスソースのオムライスはうまいのだ。
「ほれ、できたぞ」
「おーすげー、オムライスだ」
咲良はいそいそとお茶をコップに注ぐ。勝手知ったるなんとやら、だな。
「いただきます」
半熟ではないが表面には、やや火の通りが浅い部分がある。これがおうちオムライスらしくていい。
デミグラスソースをたっぷりと一緒にすくって食べる。コク深いソースにシンプルな味わいの卵。チキンライスは少し濃い目か。でもうまい。ちょうどいいバランスだ。
ささみのぱさっとした感じがソースといい感じなんだよな。ピーマンはちょっと苦い。子ども向きではないかな。でも、俺は好き。
玉ねぎは甘い。薄く透き通っているのを見るとなんだか楽しくなるのは何だろう。
「明日はさー、朝、何すんの?」
半分ほど食べたあたりで咲良が聞いてきた。口に含んでいたオムライスを飲み込み、ソースをスプーンでかき集めながら答える。
「おにぎり握って。からあげ、天ぷら、エビフライ、ポテトとチキンナゲットを揚げる。卵焼き焼いて、枝豆を茹でて……」
「……結構手間かかるな」
「おう。だから、できるだけ早起きしてくれよ」
「善処します」
しっかり食って、しっかり明日に備えるために、早く寝ることにしよう。
「ごちそうさまでした」
「うめずは?」
「なんか俺にはもう飽きたって」
見ればうめずは、日が照り始めた窓際で気持ちよさそうに横たわっていた。
「何やってんの?」
「あー、明日どうやって盛り付けようかなーと」
「お、いいねえ。真ん中に枝豆入れようぜ」
それはなんとなくわかる。なんでか知らないが、枝豆は真ん中だと思っていた。
オードブルの皿って、花みたいだよな。真ん中に丸いとこがあって、それを囲うように六つほど空白がある。何を入れるか考えるだけで楽しい。
「んで、からあげはここ」
「卵焼きはこっちだな。ポテサラどうする?」
「銀紙使おうぜ」
「枝豆の味は塩だけでいいか? にんにくで炒めるやつもあるらしいぞ」
なんやかんやと話していたら、聞きなれない音が聞こえて来た。なんだ。
「あ、俺だ」
どうやら咲良のスマホの通知音だったらしい。
「テレビ通話? え、誰。百瀬?」
「なんでまたテレビ通話」
「さあ……? あ、出てもいい?」
「どーぞ」
通話をつなぐや否や、スマホから『やっほー、見えてるー?』と明るい百瀬の声が聞こえて来た。
「どしたぁ、急に?」
『いやー、なんか気になってねー。一条の家にいるんでしょ? 仲良くやってる?』
「なんだ、そういうこと」
咲良は笑うと、スマホの位置を調整して俺も映るようにした。
『あ、一条が見える! 一条~』
「おう、百瀬」
「てかお前なにやってんの?」
咲良が聞けば、百瀬は「ふっふっふ」と、まるでいたずらを考えている子供の様な表情をした。
『俺は今ねー、ここにいまーす』
スマホの画面に映し出されたのは、やたらと広い台所だった。厨房と言ってもいいぐらいである。
てか、なんか見たことあるな。
そう思っていたらまたもや見覚えのあるやつが画面に現れた。
「あ、朝比奈だ」
『よぉ』
画面の向こうの朝比奈はいつも通り無気力な目をして、ひらひらと手を振った。その横に、にゅっと百瀬が出てくる。
『ほら、言ってたじゃん。饅頭作るって。それで最初は台所借りるだけのつもりだったんだけど、お前らが泊りがけって聞いてさあ。楽しそうだなーと思って、俺も泊まることにした!』
「マジかよ」
まあ、朝比奈の家だったら、部屋に困ることもなさそうだな。
『あのさあ、明日の弁当って何? もう仕込みした?』
「まあ、今日中にできる分はな。明日の朝しなきゃいけねえ作業の方が多いが」
『へーそうなん。井上は役に立ってるわけ?』
「超大活躍だっての! な、春都!」
咲良の問いかけに即答で同意しないでいると、画面の向こうで朝比奈がふっと吹き出して顔をそらしたのが見えた。
「え? 俺頑張ったよな?」
少し不安そうに聞いてくる咲良に、さすがに首を縦に振る。
「そうだな。頑張った頑張った」
『言わせてない?』
「ちげーよ、ホントに頑張ったし! そっちこそ朝比奈は役に立ってんのかよ!」
咲良がむうっとした表情で聞けば、朝比奈は表情一つ変えずピースサインをして言ったものである。
『いや、俺は場所提供だけであって、お菓子作りはそもそも戦力外』
「得意げな顔すんな」
『してない』
ずいぶんと盛り上がっていることで。
さて、今日の晩飯は何にしようかなあ。そろそろ決めて、準備したいものだが。
「なー、咲良。晩飯何がいい?」
「え? あー、何でもいい」
『それ一番困るやつ』
と、朝比奈と百瀬の声が重なる。咲良は「それ家でも言われたことある~」とへらっと笑った。
「じゃあー、オムライス!」
「おう。半熟じゃないぞ」
「いいよー」
昼に続いて、なんだかお子様ランチメニューな感じだが、たまにはいい。
百瀬の饅頭、楽しみだな。
チキンライスはナポリタンの作り方とほぼ同じだが、バターは入れない。
ささみ肉と玉ねぎ、余っていたピーマンを入れて炒め、ケチャップと塩コショウを投入してしっかり炒める。
酸味をよく飛ばしたらご飯を入れてなじませる。
卵は一人二つぐらいでいいか。切るように溶いて、油をひいたフライパンで焼いていく。
今日のソースはデミグラス。買い置きしていてよかった。デミグラスソースのオムライスはうまいのだ。
「ほれ、できたぞ」
「おーすげー、オムライスだ」
咲良はいそいそとお茶をコップに注ぐ。勝手知ったるなんとやら、だな。
「いただきます」
半熟ではないが表面には、やや火の通りが浅い部分がある。これがおうちオムライスらしくていい。
デミグラスソースをたっぷりと一緒にすくって食べる。コク深いソースにシンプルな味わいの卵。チキンライスは少し濃い目か。でもうまい。ちょうどいいバランスだ。
ささみのぱさっとした感じがソースといい感じなんだよな。ピーマンはちょっと苦い。子ども向きではないかな。でも、俺は好き。
玉ねぎは甘い。薄く透き通っているのを見るとなんだか楽しくなるのは何だろう。
「明日はさー、朝、何すんの?」
半分ほど食べたあたりで咲良が聞いてきた。口に含んでいたオムライスを飲み込み、ソースをスプーンでかき集めながら答える。
「おにぎり握って。からあげ、天ぷら、エビフライ、ポテトとチキンナゲットを揚げる。卵焼き焼いて、枝豆を茹でて……」
「……結構手間かかるな」
「おう。だから、できるだけ早起きしてくれよ」
「善処します」
しっかり食って、しっかり明日に備えるために、早く寝ることにしよう。
「ごちそうさまでした」
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