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第二百四十九話 カツサンド
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今日は朝飯を食ったらやるべきことがある。昼飯の準備だ。
作る物は前日から決めていた。カツサンドである。
サクサクのカツにソース、パン、というのもいいのだが、今回はどうしてもしっとり系のカツサンドが食いたかった。
店で買ってしまえばすぐに済む話なのだが、せっかく休みだし。
それに、今日は店の方に行こうと思っていた。いつも飯作ってくれてるお礼に、なんか持って行こうと思ってたし。昼飯、一緒に向こうで食おう。
「さて、と」
まずはカツを揚げていく。
今日のために買っておいた豚ヒレ肉。ロースは結構こってりしてるからなあ。うまいんだけど、今日はヒレにした。
小麦粉をまぶし溶き卵にくぐらせ、パン粉をまとわせる。そうしたら熱した油で揚げていく。
この工程、説明したり検索したりするのは簡単だけど実際やるとなると結構手間だ。
小麦粉舞うし、卵つけるの結構大変だし、パン粉をまんべんなくまとわせるのも難しい。揚げるとなれば油は飛ぶし熱いし。片付けもなかなかだ。
でも、白かった衣がいい色になっていくのを見るのは楽しいものである。
しっかり揚げたら、皿にキッチンペーパーを敷いたその上にのせて油をきる。パンはどうしようかなあ。トーストするか、そのままか。
よし、軽くトーストすることにしよう。
パンの準備ができたらキャベツの千切りも出す。これはすでに切ってあるやつを買ってきている。
香ばしい香りがうっすらと立つパンにキャベツの千切りをのせる。市販のとかお店で出てくる千切りキャベツってどうしてこう細いんだろう。自分で切ってもいいんだけど、どうしても太くなるし、サンドイッチにするならこっちの方が収まりいいんだ。
キャベツにもソースをかけ、その上にカツをのせたらさらにソース。そしてパンをもう一枚。
軽くトーストしただけなのでなじみやすいだろう。ぐっと抑えて、半分に切る。
よし、いい感じだ。火もちゃんと通ってる。
弁当箱に詰めていく。サンドイッチが並んだ弁当箱はなんとなく見慣れないが、楽しそうだ。
喜んでくれるかなあ。
「あらー、ありがとう! これでお昼考えなくていいわ」
弁当箱を渡すや否や、ばあちゃんは嬉しそうに笑って言った。
「カツサンドだけど」
「それなら、からしを準備しなくちゃね」
ばあちゃんは弁当箱を台所に置いた。じいちゃんは表で仕事をしていた。昼飯にはまだ早い時間である。
「ゆっくりしてていいからね、うめずも」
「わふっ」
散歩がてら来たので、うめずも今日は一緒だ。
「泊まってくでしょ?」
「あ、いい?」
「もちろん。じゃ、晩ご飯は楽しみにしてて」
そう言ってばあちゃんは表に行ってしまった。忙しそうだなあ。
テレビを見てもよかったが、今日はなんだかぼーっとしたかったので裏に向かう。その後ろをうめずがついてきているのが足音で分かった。
裏は第二の居間、みたいな感じの空間である。大きな雨戸は開けられていて、網戸だけが閉められている。穏やかに風が吹き込んできて、日差しが暖かい。
ぼうっと立ったまま庭の眺めていたら、うめずが足元に横たわってあくびをした。
「眠いか」
「わうぅ」
「気持ちいいなぁ」
俺もちょっと横になろう。
ぴんと張ったカーペットはふわっとしていて、温かく、なんだかいい香りがした。
小さい頃はよくここで遊んでいたものである。昼寝をまったくしなかったらしい俺は、じいちゃんかばあちゃん、父さんか母さん、手が空いていそうな誰かを引き連れてきてはひたすら遊んでいたって。
でも、店が忙しいときとか両親が仕事で忙しいとかそういうことはざらだったので、一人遊びにも慣れていた。
そうそう。確か段ボール製の家もあったなあ。市販のと、手作りのやつと。
狭いところが好きだったから、その中に横たわっているだけで満足したっけ。それでたまに、本当にごくたまにだけど、寝落ちしてしまうこともあった。
そういう時は誰かが布団をかけてくれたり、広い場所に連れ出していてくれたりしてた。
それで目覚めるのはとても気持ちよかった。傍らに誰かがいればもっと嬉しかった。目が覚めてもそのままごろごろして、すっかり起きてしまったら散歩に行くとかして。
この部屋には温かい記憶が満ちている。だから居心地がいいんだなあ。
「んー……?」
いかん、寝てしまったか。ふと何かを感じて体に目を向ける。
あ、タオルケット。
「起きた?」
庭から声が聞こえ、そちらを見ればばあちゃんが草むしりをしているところだった。
「タオルケット……」
「いくら暖かくなってきたとはいえ、風邪ひくよ。そろそろお昼にしようと思うんだけど、どう?」
「あー」
そうしよう、と言葉を返そうとしたとき、一足先に起きていたらしいうめずが「わふっ」と一声吠えたのだった。
「お、うまそうだな」
仕事を終えて戻ってきたじいちゃんが机の上を見て言った。
カツサンドがぎっちりつまった弁当箱と、ちょっとしたサラダ。ばあちゃんが作ってくれたのか。
「さ、食べましょ」
「いただきます」
しっとりとしたパンがカツにしっかり吸い付いている。そうそう、これ、こんなカツサンドが作りたかったんだ。
軽くトーストしてあるのでほんの少しサクッとした食感もあるのがいい。もっちりとしたパンの向こうに、ソースがしっかりと染みてしっとりとしたカツがいる。でも、衣の香ばしさは健在だ。
肉はさっぱりしつつも噛み応えもうま味もあっておいしい。ロースもいいが、ヒレもうまい。甘辛いソースの味とよく合う。
ほんの少しからしをつければ、味がキリッと引き締まる。
「おいしいね」
「うん、上等だ」
カツサンド、食べきれるかなと思っていたけどじいちゃんもばあちゃんもよく食べる。すがすがしいな。
サラダはレタスとトマト。ドレッシングをかけただけのシンプルなものだがこれがうまいんだなあ。さっぱりして、次のカツサンドがさらにうまい。
二人とも、喜んでくれてよかった。
晩飯は何だろうなあ。楽しみだな。
「ごちそうさまでした」
作る物は前日から決めていた。カツサンドである。
サクサクのカツにソース、パン、というのもいいのだが、今回はどうしてもしっとり系のカツサンドが食いたかった。
店で買ってしまえばすぐに済む話なのだが、せっかく休みだし。
それに、今日は店の方に行こうと思っていた。いつも飯作ってくれてるお礼に、なんか持って行こうと思ってたし。昼飯、一緒に向こうで食おう。
「さて、と」
まずはカツを揚げていく。
今日のために買っておいた豚ヒレ肉。ロースは結構こってりしてるからなあ。うまいんだけど、今日はヒレにした。
小麦粉をまぶし溶き卵にくぐらせ、パン粉をまとわせる。そうしたら熱した油で揚げていく。
この工程、説明したり検索したりするのは簡単だけど実際やるとなると結構手間だ。
小麦粉舞うし、卵つけるの結構大変だし、パン粉をまんべんなくまとわせるのも難しい。揚げるとなれば油は飛ぶし熱いし。片付けもなかなかだ。
でも、白かった衣がいい色になっていくのを見るのは楽しいものである。
しっかり揚げたら、皿にキッチンペーパーを敷いたその上にのせて油をきる。パンはどうしようかなあ。トーストするか、そのままか。
よし、軽くトーストすることにしよう。
パンの準備ができたらキャベツの千切りも出す。これはすでに切ってあるやつを買ってきている。
香ばしい香りがうっすらと立つパンにキャベツの千切りをのせる。市販のとかお店で出てくる千切りキャベツってどうしてこう細いんだろう。自分で切ってもいいんだけど、どうしても太くなるし、サンドイッチにするならこっちの方が収まりいいんだ。
キャベツにもソースをかけ、その上にカツをのせたらさらにソース。そしてパンをもう一枚。
軽くトーストしただけなのでなじみやすいだろう。ぐっと抑えて、半分に切る。
よし、いい感じだ。火もちゃんと通ってる。
弁当箱に詰めていく。サンドイッチが並んだ弁当箱はなんとなく見慣れないが、楽しそうだ。
喜んでくれるかなあ。
「あらー、ありがとう! これでお昼考えなくていいわ」
弁当箱を渡すや否や、ばあちゃんは嬉しそうに笑って言った。
「カツサンドだけど」
「それなら、からしを準備しなくちゃね」
ばあちゃんは弁当箱を台所に置いた。じいちゃんは表で仕事をしていた。昼飯にはまだ早い時間である。
「ゆっくりしてていいからね、うめずも」
「わふっ」
散歩がてら来たので、うめずも今日は一緒だ。
「泊まってくでしょ?」
「あ、いい?」
「もちろん。じゃ、晩ご飯は楽しみにしてて」
そう言ってばあちゃんは表に行ってしまった。忙しそうだなあ。
テレビを見てもよかったが、今日はなんだかぼーっとしたかったので裏に向かう。その後ろをうめずがついてきているのが足音で分かった。
裏は第二の居間、みたいな感じの空間である。大きな雨戸は開けられていて、網戸だけが閉められている。穏やかに風が吹き込んできて、日差しが暖かい。
ぼうっと立ったまま庭の眺めていたら、うめずが足元に横たわってあくびをした。
「眠いか」
「わうぅ」
「気持ちいいなぁ」
俺もちょっと横になろう。
ぴんと張ったカーペットはふわっとしていて、温かく、なんだかいい香りがした。
小さい頃はよくここで遊んでいたものである。昼寝をまったくしなかったらしい俺は、じいちゃんかばあちゃん、父さんか母さん、手が空いていそうな誰かを引き連れてきてはひたすら遊んでいたって。
でも、店が忙しいときとか両親が仕事で忙しいとかそういうことはざらだったので、一人遊びにも慣れていた。
そうそう。確か段ボール製の家もあったなあ。市販のと、手作りのやつと。
狭いところが好きだったから、その中に横たわっているだけで満足したっけ。それでたまに、本当にごくたまにだけど、寝落ちしてしまうこともあった。
そういう時は誰かが布団をかけてくれたり、広い場所に連れ出していてくれたりしてた。
それで目覚めるのはとても気持ちよかった。傍らに誰かがいればもっと嬉しかった。目が覚めてもそのままごろごろして、すっかり起きてしまったら散歩に行くとかして。
この部屋には温かい記憶が満ちている。だから居心地がいいんだなあ。
「んー……?」
いかん、寝てしまったか。ふと何かを感じて体に目を向ける。
あ、タオルケット。
「起きた?」
庭から声が聞こえ、そちらを見ればばあちゃんが草むしりをしているところだった。
「タオルケット……」
「いくら暖かくなってきたとはいえ、風邪ひくよ。そろそろお昼にしようと思うんだけど、どう?」
「あー」
そうしよう、と言葉を返そうとしたとき、一足先に起きていたらしいうめずが「わふっ」と一声吠えたのだった。
「お、うまそうだな」
仕事を終えて戻ってきたじいちゃんが机の上を見て言った。
カツサンドがぎっちりつまった弁当箱と、ちょっとしたサラダ。ばあちゃんが作ってくれたのか。
「さ、食べましょ」
「いただきます」
しっとりとしたパンがカツにしっかり吸い付いている。そうそう、これ、こんなカツサンドが作りたかったんだ。
軽くトーストしてあるのでほんの少しサクッとした食感もあるのがいい。もっちりとしたパンの向こうに、ソースがしっかりと染みてしっとりとしたカツがいる。でも、衣の香ばしさは健在だ。
肉はさっぱりしつつも噛み応えもうま味もあっておいしい。ロースもいいが、ヒレもうまい。甘辛いソースの味とよく合う。
ほんの少しからしをつければ、味がキリッと引き締まる。
「おいしいね」
「うん、上等だ」
カツサンド、食べきれるかなと思っていたけどじいちゃんもばあちゃんもよく食べる。すがすがしいな。
サラダはレタスとトマト。ドレッシングをかけただけのシンプルなものだがこれがうまいんだなあ。さっぱりして、次のカツサンドがさらにうまい。
二人とも、喜んでくれてよかった。
晩飯は何だろうなあ。楽しみだな。
「ごちそうさまでした」
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