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日常
第二百二十二話 ピザトースト
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「はーい、そこまでー。ペン置いて~」
テスト最終日、最後の時間。終わりを告げるチャイムと先生の言葉が聞こえたとたん、教室の空気が緩む。
自分の席に戻って廊下の人だかりが落ち着くのを待っていたら、前の席で勇樹が「はー、疲れた」と言ってため息をつき、俺の机にうなだれて来た。
「国語難しくなかった?」
「んー、どうかな」
「難しいっていうか、文章で答えなきゃいけないの多かったよな」
「まあ」
勇樹は再び長いため息をつくと、ゆっくりと上体を起こす。
「今日は掃除ないんだっけ?」
「そうだったかな」
「理系があと一時間あるらしいからなあ」
そういや咲良がそんなこと言ってたような。
「ま、だからといって帰れるわけじゃないけど」
グーッと伸びをしながら勇樹は立ち上がった。そろそろ廊下も落ち着いてきたようだ。理系のテストが始まったら移動しづらいし、さっさと帰らないと。
「部活?」
「いつも通りな」
勇樹は通学用の鞄とリュックサックの他に、有名スポーツブランドのエナメルバッグを抱える。
「じゃ、俺このまま行くわ。また来週なー」
「おう」
さっそうと立ち去る勇樹を見送り、自分も帰り支度をする。置いて帰れる教科書類はロッカーにしまい、シャーペンを筆箱に戻したところで予鈴が鳴った。
「帰るやつはとっとと帰れよー。それ以外のやつらは教室入れー」
試験監督の先生がやってきて声をかける。
言われなくても帰りますよ。
家に帰りつき、荷物を片付け部屋着に着替えたら、ゲームとスマホを持ってソファに座りクッションに埋もれる。こたつの上には漫画本が山積みだ。
「あー、疲れたー」
今日は徹底的にのんびりしてやる。
「わふっ」
のんびりしているというのが分かると、うめずはいそいそと近づいてくる。
「お、どしたー?」
「わう」
「お前ものんびりしな」
そう言えばうめずはこたつ布団の上で丸くなった。
「さて」
とりあえずスマホチェックして、そのあとゲームして、漫画も読んで。
あー、こんなに時間があると逆にどうすればいいか分かんねえなあ。でも幸せだなあ。部屋は暖かいし、お菓子もあるし、食材の買い置きもしてあるし。
昼飯は少し休んでからにしよう。
「お」
スマホゲームの通知にまぎれて、母さんからのメッセージがあった。
「わう」
「明日帰ってくるってさ」
冷蔵庫にあるもので明日は間に合うだろう。鍋でもなんでも、ある程度のものは作れるし。
というわけでゲームだ。
「体験版配信されてんだよなー」
買おうかどうしようか悩んでいるゲーム。体験版があるっていいよなあ。買ってみて思ってたのと違うってなるのはもったいないし。
「ふぁ……ふ」
にしてもなんだか今日は眠気がすごい。
ゲームしてたら目が覚めるかな。ま、別に寝てもいいんだけどさあ。なんかもったいない気がするんだよな。
ダウンロードにはちょっと時間がかかるのでその間は本を読むことにする。
買うだけ買って楽しみに取っておいた漫画が何冊もあるんだ。さー、読むぞ読むぞー。
「……ん、んん?」
目を開けば部屋は薄暗く、読んでいたはずの漫画が下に落ちている。うめずは窓際でお気に入りのおもちゃを引っ張り出してきて遊んでいるし、ゲームはとうにダウンロードを終え画面が暗くなっている。
「寝てたか……」
とりあえず部屋の明かりをつける。するとうめずはおもちゃを離し、大きくあくびをした。
「昼飯食いそびれた……」
めっちゃ腹減ったなあ。でも、今からがっつり準備するのはしんどい。
簡単にできて腹にたまるもの……うーん、腹が減ってたら考える気力もないな。こういう時は昼飯に何を食うはずだったか、というところから考えよう。
分厚過ぎず薄すぎずといった具合の食パン。これを焼いてバターでも塗って食うかと思ってたんだよな。でも、それだけだと物足りないよなあ。冷蔵庫になんかあったっけ。
ハム、ベーコン、ピーマン、玉ねぎ、チーズ……
「そうだ」
ピザトーストにしよう。
食パンにケチャップを塗って、薄くスライスした玉ねぎ、ピーマンをのせる。ハムかベーコンかで悩むところだが、今はベーコンの気分である。短冊切りにし、散らす。
チーズをたっぷりトッピングしたら、あとは焼くだけだ。
「いい感じ」
チーズがとろけて焼き目がついたら完成だ。
「いただきます」
パンの耳は苦手だというやつも一定数いる。でも俺は結構好きだ。
香ばしさもさることながら、カリッモチッとした食感。耳特有のこの感じが好きだ。
当然、耳じゃない部分も好きである。ふわふわとした口当たりと穏やかな香ばしさがいい。そこにチーズとケチャップの濃い味が加われば最高だ。
玉ねぎは加熱され甘く、ピーマンのほろ苦さと食感もおいしい。ベーコンはうま味たっぷりで、その塩気がチーズとよく合うのだ。
二枚目はちょっと冷めて、チーズがサクッとした感じの食感になる。
そんでここで味変、タバスコ。
少しかけるだけでほんとのピザを食っている気分になる。ピリッと爽やかに味が引き締まるのだ。
晩飯にトースト、とは何とも不思議な感じがするが、悪いもんじゃないな。
むしろ新鮮で楽しめるというものだ。
昼飯は食いそびれたが結果オーライ、うまいピザトーストが食えたので良しとしよう。
ふと部屋を見渡す。すっかりご飯を食べ終えのんびりとくつろぐうめず、ほったらかしのゲーム機、数時間爆睡していたにもかかわらず通知の一つもないスマホ。ずいぶん静かだ。
でも、これから二十四時間もしないうちに二人帰って来て賑やかになるのだから不思議なものだ。
漫画もほぼ読んでいない。だがまあ、誰かがいる空間で本を読むというのは幸せなものだ。
楽しみは長く続いた方がいい。テストも頑張ったことだし、良しとしよう。
「ごちそうさまでした」
テスト最終日、最後の時間。終わりを告げるチャイムと先生の言葉が聞こえたとたん、教室の空気が緩む。
自分の席に戻って廊下の人だかりが落ち着くのを待っていたら、前の席で勇樹が「はー、疲れた」と言ってため息をつき、俺の机にうなだれて来た。
「国語難しくなかった?」
「んー、どうかな」
「難しいっていうか、文章で答えなきゃいけないの多かったよな」
「まあ」
勇樹は再び長いため息をつくと、ゆっくりと上体を起こす。
「今日は掃除ないんだっけ?」
「そうだったかな」
「理系があと一時間あるらしいからなあ」
そういや咲良がそんなこと言ってたような。
「ま、だからといって帰れるわけじゃないけど」
グーッと伸びをしながら勇樹は立ち上がった。そろそろ廊下も落ち着いてきたようだ。理系のテストが始まったら移動しづらいし、さっさと帰らないと。
「部活?」
「いつも通りな」
勇樹は通学用の鞄とリュックサックの他に、有名スポーツブランドのエナメルバッグを抱える。
「じゃ、俺このまま行くわ。また来週なー」
「おう」
さっそうと立ち去る勇樹を見送り、自分も帰り支度をする。置いて帰れる教科書類はロッカーにしまい、シャーペンを筆箱に戻したところで予鈴が鳴った。
「帰るやつはとっとと帰れよー。それ以外のやつらは教室入れー」
試験監督の先生がやってきて声をかける。
言われなくても帰りますよ。
家に帰りつき、荷物を片付け部屋着に着替えたら、ゲームとスマホを持ってソファに座りクッションに埋もれる。こたつの上には漫画本が山積みだ。
「あー、疲れたー」
今日は徹底的にのんびりしてやる。
「わふっ」
のんびりしているというのが分かると、うめずはいそいそと近づいてくる。
「お、どしたー?」
「わう」
「お前ものんびりしな」
そう言えばうめずはこたつ布団の上で丸くなった。
「さて」
とりあえずスマホチェックして、そのあとゲームして、漫画も読んで。
あー、こんなに時間があると逆にどうすればいいか分かんねえなあ。でも幸せだなあ。部屋は暖かいし、お菓子もあるし、食材の買い置きもしてあるし。
昼飯は少し休んでからにしよう。
「お」
スマホゲームの通知にまぎれて、母さんからのメッセージがあった。
「わう」
「明日帰ってくるってさ」
冷蔵庫にあるもので明日は間に合うだろう。鍋でもなんでも、ある程度のものは作れるし。
というわけでゲームだ。
「体験版配信されてんだよなー」
買おうかどうしようか悩んでいるゲーム。体験版があるっていいよなあ。買ってみて思ってたのと違うってなるのはもったいないし。
「ふぁ……ふ」
にしてもなんだか今日は眠気がすごい。
ゲームしてたら目が覚めるかな。ま、別に寝てもいいんだけどさあ。なんかもったいない気がするんだよな。
ダウンロードにはちょっと時間がかかるのでその間は本を読むことにする。
買うだけ買って楽しみに取っておいた漫画が何冊もあるんだ。さー、読むぞ読むぞー。
「……ん、んん?」
目を開けば部屋は薄暗く、読んでいたはずの漫画が下に落ちている。うめずは窓際でお気に入りのおもちゃを引っ張り出してきて遊んでいるし、ゲームはとうにダウンロードを終え画面が暗くなっている。
「寝てたか……」
とりあえず部屋の明かりをつける。するとうめずはおもちゃを離し、大きくあくびをした。
「昼飯食いそびれた……」
めっちゃ腹減ったなあ。でも、今からがっつり準備するのはしんどい。
簡単にできて腹にたまるもの……うーん、腹が減ってたら考える気力もないな。こういう時は昼飯に何を食うはずだったか、というところから考えよう。
分厚過ぎず薄すぎずといった具合の食パン。これを焼いてバターでも塗って食うかと思ってたんだよな。でも、それだけだと物足りないよなあ。冷蔵庫になんかあったっけ。
ハム、ベーコン、ピーマン、玉ねぎ、チーズ……
「そうだ」
ピザトーストにしよう。
食パンにケチャップを塗って、薄くスライスした玉ねぎ、ピーマンをのせる。ハムかベーコンかで悩むところだが、今はベーコンの気分である。短冊切りにし、散らす。
チーズをたっぷりトッピングしたら、あとは焼くだけだ。
「いい感じ」
チーズがとろけて焼き目がついたら完成だ。
「いただきます」
パンの耳は苦手だというやつも一定数いる。でも俺は結構好きだ。
香ばしさもさることながら、カリッモチッとした食感。耳特有のこの感じが好きだ。
当然、耳じゃない部分も好きである。ふわふわとした口当たりと穏やかな香ばしさがいい。そこにチーズとケチャップの濃い味が加われば最高だ。
玉ねぎは加熱され甘く、ピーマンのほろ苦さと食感もおいしい。ベーコンはうま味たっぷりで、その塩気がチーズとよく合うのだ。
二枚目はちょっと冷めて、チーズがサクッとした感じの食感になる。
そんでここで味変、タバスコ。
少しかけるだけでほんとのピザを食っている気分になる。ピリッと爽やかに味が引き締まるのだ。
晩飯にトースト、とは何とも不思議な感じがするが、悪いもんじゃないな。
むしろ新鮮で楽しめるというものだ。
昼飯は食いそびれたが結果オーライ、うまいピザトーストが食えたので良しとしよう。
ふと部屋を見渡す。すっかりご飯を食べ終えのんびりとくつろぐうめず、ほったらかしのゲーム機、数時間爆睡していたにもかかわらず通知の一つもないスマホ。ずいぶん静かだ。
でも、これから二十四時間もしないうちに二人帰って来て賑やかになるのだから不思議なものだ。
漫画もほぼ読んでいない。だがまあ、誰かがいる空間で本を読むというのは幸せなものだ。
楽しみは長く続いた方がいい。テストも頑張ったことだし、良しとしよう。
「ごちそうさまでした」
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