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日常
第二百二十一話 巻いたサンドイッチ
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今日から三日間テストかあ。早く帰れるのはいいけど気ぃ張っとかなきゃいけないのは面倒だなあ。
というわけでちょっとした楽しみを作っておくことにする。
用意するのはサンドイッチ用のパンにイチゴ、バナナ、生クリーム。クリームはすでにホイップされていて、絞るだけでいいやつだ。
イチゴは昨日のうちに準備しておいた。へたを取って洗い、しっかり水気を拭いている。
アルミホイルの上にパンを一枚置き、その上にクリームを絞る。そしてイチゴを三つのせたらさらに絞って、もう一枚パンを重ねたら……
「よ……っと」
うまく成形しながら丸める。よし、いい感じだ。
次はバナナ。同じ要領で作っていくが、バナナは切り分けない。だって丸々一本入ってた方がなんかワクワクするし、食べ応えもある。
クリームを絞るのは楽しい。工作をしている感覚に似ているだろうか。
だからといってまめにお菓子を作ることはないのだが。
「よし、いい感じ」
太巻きかってぐらいごっつくなった。ずっしりと重みもあるし、これはいい。
余ったイチゴと生クリームと一緒に冷蔵庫に入れておく。
さあ、頑張るとしますか。
テストのときは時間の割り振りがいつもと違う。休憩時間が十分ほど長いのだ。
その時間は基本、みんな勉強している。教室内に教科書を持って行ってはいけないので廊下はぎゅうぎゅうだ。
俺はテスト前に教科書をめくらない。なんか下手に見るとその部分だけ印象に残ってさっきまで覚えてたことを忘れちゃうんだよな。だから教室の、自分の席でぼーっとするのが常である。
で、それをいいことに絡んでくる奴がいるわけで。
「春都ぉ」
情けなく教室に入ってきたのは咲良だ。
「よく入ってきたな」
「えー? だってそういうルールないじゃん?」
「それはそうだが」
なんとなく雰囲気で入ってはいけないような気がするのは、俺だけだろうか。まあ、こいつに雰囲気とか関係ないか。
「そんなことよりさあ、どうしよう、春都」
「何がだ」
「テスト、やばい」
「やばいのか」
それはいつものことじゃないか、とは言わない。ここでそんなこと言ったらますます面倒なことになるだけだ。
「だってさ!」
人の少ない教室では声がよく響く。咲良はぐっとこぶしを握り締めた。
「絶対出すって言ってたところがあったからさ、そこはしっかり勉強してたわけ! でも、その配点低いじゃん!」
「いや……」
そこ以外も勉強するのがテスト勉強ではないのかと思ったが、言わない。理由は以下略。
「しかも次は英語だろー? もうやだよぉ、今回リスニングもやるんだろ~。リスニング嫌いなんだよ、眠くなるんだよ、あれは子守歌だろ~」
「テスト中に寝るなよ」
「寝るよ~。だって解けるところ限られてるし、諦めたら寝るしかないじゃん!」
「諦めるなよ……」
こいつはまったく、クラスは違うというのに手のかかるやつだ。
「お前、やればできるんじゃなかったのか?」
「時と場合による」
そう言って頭を抱える咲良だが、次の瞬間にはパッと顔を輝かせた。
「あ、でも国語は自信ある!」
「……そうか」
「というわけで春都、勝負だ!」
唐突に何を言い出すのかと思ったが、これが咲良だったと思いなおす。
「なぜだ」
「そっちの方がやる気出る!」
「だったら他の教科も勝負するか」
そう提案してみれば、咲良は屈託のない笑顔で言ったものだ。
「えー? 勝ち目のない勝負は面白くないだろー?」
こいつはネガティブなんだかポジティブなんだか分からん奴だな。
「それに、数学は範囲が違うし、英語も今回は違うだろ? 化学にいたっては俺ら基礎じゃないし、物理は春都たち無いじゃん」
それはそうだが。
「そこまでまともなこと言うぐらいなら勉強しとけ」
「えー、それとこれとは別じゃない?」
「別じゃない」
十分前の予鈴が鳴り、廊下にいたやつらが次々と教室に戻ってくる。咲良はそれを見て「じゃ、そういうわけで!」と帰って行った。
何だよ、マジで勝負するつもりか。
別に勝ち負けにこだわるわけじゃないけど、あいつに負けるのはなんだか癪だ。国語は最終日、最後の時間だっけ。
ちくしょう、負けてたまるか。
いい点数を取るためにも休息は大事だ。
「いただきます」
昼食は昨日ばあちゃんが作り置きしてくれていたスコッチエッグとたくあん炒め。今日のスコッチエッグはしっかり中まで火が通っている。これはこれでうまいんだ。
しっかりとした噛み応えの黄身もまた味わいがあるというものだ。肉のうま味も凝縮されているようで、サクサク感はあまりないが、ソースもしっかりなじんでうまい。
たくあん炒めも安定しておいしい。コリコリとした食感としょっぱさ、ゴマの香ばしさ。ご飯が進んでしょうがない。
そして今日はさらに楽しみが。
まずは……バナナの方から食うか。
でかい。どっからかぶりつけばいいだろうか。パンの方からちょっとずつ、クリーム、バナナに至る。
甘い。クリームもだが、バナナ自体も熟れている。トロトロで、クリームとよくなじんでおいしい。パンにちょっと塩気があるのでより引き立つのだろう。
さて、次はイチゴだ。
こっちはみずみずしく、爽やかにはじけるような酸味が心地いい。クリームとイチゴってなんでこんなに合うんだろうか。プチプチとした食感も楽しい。お、酸味だけじゃなく、ちゃんと甘い。
余っていたイチゴも食べる。このまま食ったら爽やかでいいが、クリームを絞ればちょっとしたパフェのようにもなる。
で、後のせイチゴとクリーム。食いづらいが、うまい。
やっぱテストみたいに、集中的に頭使った時は甘いものが染みる。
明日もなんか準備しとこうかな。
「ごちそうさまでした」
というわけでちょっとした楽しみを作っておくことにする。
用意するのはサンドイッチ用のパンにイチゴ、バナナ、生クリーム。クリームはすでにホイップされていて、絞るだけでいいやつだ。
イチゴは昨日のうちに準備しておいた。へたを取って洗い、しっかり水気を拭いている。
アルミホイルの上にパンを一枚置き、その上にクリームを絞る。そしてイチゴを三つのせたらさらに絞って、もう一枚パンを重ねたら……
「よ……っと」
うまく成形しながら丸める。よし、いい感じだ。
次はバナナ。同じ要領で作っていくが、バナナは切り分けない。だって丸々一本入ってた方がなんかワクワクするし、食べ応えもある。
クリームを絞るのは楽しい。工作をしている感覚に似ているだろうか。
だからといってまめにお菓子を作ることはないのだが。
「よし、いい感じ」
太巻きかってぐらいごっつくなった。ずっしりと重みもあるし、これはいい。
余ったイチゴと生クリームと一緒に冷蔵庫に入れておく。
さあ、頑張るとしますか。
テストのときは時間の割り振りがいつもと違う。休憩時間が十分ほど長いのだ。
その時間は基本、みんな勉強している。教室内に教科書を持って行ってはいけないので廊下はぎゅうぎゅうだ。
俺はテスト前に教科書をめくらない。なんか下手に見るとその部分だけ印象に残ってさっきまで覚えてたことを忘れちゃうんだよな。だから教室の、自分の席でぼーっとするのが常である。
で、それをいいことに絡んでくる奴がいるわけで。
「春都ぉ」
情けなく教室に入ってきたのは咲良だ。
「よく入ってきたな」
「えー? だってそういうルールないじゃん?」
「それはそうだが」
なんとなく雰囲気で入ってはいけないような気がするのは、俺だけだろうか。まあ、こいつに雰囲気とか関係ないか。
「そんなことよりさあ、どうしよう、春都」
「何がだ」
「テスト、やばい」
「やばいのか」
それはいつものことじゃないか、とは言わない。ここでそんなこと言ったらますます面倒なことになるだけだ。
「だってさ!」
人の少ない教室では声がよく響く。咲良はぐっとこぶしを握り締めた。
「絶対出すって言ってたところがあったからさ、そこはしっかり勉強してたわけ! でも、その配点低いじゃん!」
「いや……」
そこ以外も勉強するのがテスト勉強ではないのかと思ったが、言わない。理由は以下略。
「しかも次は英語だろー? もうやだよぉ、今回リスニングもやるんだろ~。リスニング嫌いなんだよ、眠くなるんだよ、あれは子守歌だろ~」
「テスト中に寝るなよ」
「寝るよ~。だって解けるところ限られてるし、諦めたら寝るしかないじゃん!」
「諦めるなよ……」
こいつはまったく、クラスは違うというのに手のかかるやつだ。
「お前、やればできるんじゃなかったのか?」
「時と場合による」
そう言って頭を抱える咲良だが、次の瞬間にはパッと顔を輝かせた。
「あ、でも国語は自信ある!」
「……そうか」
「というわけで春都、勝負だ!」
唐突に何を言い出すのかと思ったが、これが咲良だったと思いなおす。
「なぜだ」
「そっちの方がやる気出る!」
「だったら他の教科も勝負するか」
そう提案してみれば、咲良は屈託のない笑顔で言ったものだ。
「えー? 勝ち目のない勝負は面白くないだろー?」
こいつはネガティブなんだかポジティブなんだか分からん奴だな。
「それに、数学は範囲が違うし、英語も今回は違うだろ? 化学にいたっては俺ら基礎じゃないし、物理は春都たち無いじゃん」
それはそうだが。
「そこまでまともなこと言うぐらいなら勉強しとけ」
「えー、それとこれとは別じゃない?」
「別じゃない」
十分前の予鈴が鳴り、廊下にいたやつらが次々と教室に戻ってくる。咲良はそれを見て「じゃ、そういうわけで!」と帰って行った。
何だよ、マジで勝負するつもりか。
別に勝ち負けにこだわるわけじゃないけど、あいつに負けるのはなんだか癪だ。国語は最終日、最後の時間だっけ。
ちくしょう、負けてたまるか。
いい点数を取るためにも休息は大事だ。
「いただきます」
昼食は昨日ばあちゃんが作り置きしてくれていたスコッチエッグとたくあん炒め。今日のスコッチエッグはしっかり中まで火が通っている。これはこれでうまいんだ。
しっかりとした噛み応えの黄身もまた味わいがあるというものだ。肉のうま味も凝縮されているようで、サクサク感はあまりないが、ソースもしっかりなじんでうまい。
たくあん炒めも安定しておいしい。コリコリとした食感としょっぱさ、ゴマの香ばしさ。ご飯が進んでしょうがない。
そして今日はさらに楽しみが。
まずは……バナナの方から食うか。
でかい。どっからかぶりつけばいいだろうか。パンの方からちょっとずつ、クリーム、バナナに至る。
甘い。クリームもだが、バナナ自体も熟れている。トロトロで、クリームとよくなじんでおいしい。パンにちょっと塩気があるのでより引き立つのだろう。
さて、次はイチゴだ。
こっちはみずみずしく、爽やかにはじけるような酸味が心地いい。クリームとイチゴってなんでこんなに合うんだろうか。プチプチとした食感も楽しい。お、酸味だけじゃなく、ちゃんと甘い。
余っていたイチゴも食べる。このまま食ったら爽やかでいいが、クリームを絞ればちょっとしたパフェのようにもなる。
で、後のせイチゴとクリーム。食いづらいが、うまい。
やっぱテストみたいに、集中的に頭使った時は甘いものが染みる。
明日もなんか準備しとこうかな。
「ごちそうさまでした」
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