一条春都の料理帖

藤里 侑

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日常

第百七話 カニクリームコロッケ

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 結局また、いろいろとお菓子を買ってしまった。

 当たりの分だけ交換しようと思ったけど、他にも食ってみたいのが見つかってしまった。

「ま、俺の胃袋はまだまだ若いってことだな」

「わうっ!」

 俺のつぶやきにうめずが応える。

 さて、改めて買ってきたのはまずゼリーだ。リンゴみたいな形の容器に入っていて、吸う感じで食べるんだ。緑、青、赤……いろいろあったけど、残り一つだったピンクにしてみた。

 味はたぶん桃だろう。何味とか書いてないからよく分からん。案外、かき氷のシロップみたいに全部同じ味とかいうオチもありうる。凍らせてもうまいんだ、これ。

 そんで、フライドチキン味とかあるポテトスナック。

 これ食うと結構のどが渇く。でもうまいから次々食べてしまう。他にもバーベキュー味やポテトフライ味も買ってきた。

 味の割には食感が軽いんだよなあ。

「ま、あとはとっとくか」

 まだ結構残っていたが、明日からの非常食としておこう。

 最後に一つだけ、飴玉を口に放り込む。いろんな味の中から選んだのはコーラ味。大きめの飴玉のまわりにはザラメがたっぷりついている。あまり食べ過ぎると口の中が痛くなるのでほどほどにしないとな。

 でもこういうちょっとしたお菓子をポケットとかに忍ばせておくのはいい。小腹空いたときに食える。

「甘……」

 それにしてもコーラ味ばっかり買い過ぎたか……。

 しょっぱいお菓子も、もうちょっと買っときゃよかったかなあ。

「ま、しばらくお菓子には困らねえな」

 買い物は夕方に行くから、しばらくゆっくりしよう。

 テレビでも見るか。

『さて、十月といえば、何が思いつきますか? ヒントは十月の末です』

『十月末ですか。十月末といったらやっぱり、あれですか?』

 なんだ。要領を得ない会話だな。あれってなんだ?

 十月末っつったら……ゲームの新イベントが配信になるほかになんかあったか?

 しばらくテレビを見ていると、中継の映像に切り替わった。あー、ここ。駅にある雑貨屋じゃん。

『十月の三十一日といえば、ハロウィーン!』

「あー、ハロウィーン」

 見れば確かに雑貨屋はハロウィーンらしい飾りつけになっている。こうもり、ゴースト、あとあれ。かぼちゃくりぬいた……ジャックオランタンだっけ。

『ハロウィーンの醍醐味といえば、仮装!』

 ああ、ちょっとあこがれるよな。でも都会のあの雑踏を見る限り、参加したいとは思わないけど。

 てか最近読んでるマンガ、軒並みハロウィーンとか他にも何かしらのイベントのタイミングで事件が起きてんだよな。

 だからハロウィーンって聞くとちょっとそわっとする。いろんな意味で。

『そしてここでは、世界各地のお菓子も取り揃えています!』

 俺としてはこっちの方が興味あるな。

 すげー色のお菓子があるんだ。レインボーのクッキーとか、真っ青なあめとか。ちょっと食ってみたい。

『最近動画でも話題の……』

 うーん、はやりものもいいけど、どっちかというと変わり種のやつがいいなあ。

 もちろん、味も要チェックだ。せっかくの食いものなんだから、おいしく食べたいよな。まあ、たまに当たるトンデモ味も食事の醍醐味か。

『そして、お菓子は手作りで! という方にはこちら。アイシングクッキーのキットなども取り揃えております』

 アイシングクッキーかあ。作ってみたいと思った時もあるけど、いかんせん美的センスがなあ……。それこそ百瀬が得意そうだ。

 推しモチーフのアイシングクッキーも発売開始だったっけ。キーホルダーセットだったけど、そういやあれ、ハロウィーンだったな。

「ハロウィーンか……」

 トリックオアトリート、だっけ。でも基本的に言ってるやつはお菓子目的で、いたずらのこととか全然考えてないんだよ。

 ま、俺にはあまり関係のない話か。



 さて、そろそろ買い物に行こう。

 今日の晩飯は何がいいかな。

「お、ここもハロウィーンか」

 スーパーにもハロウィーンらしい装飾が。

 それに、お菓子が山積みになっていたりかぼちゃが妙に誇張されて置いてあったりする。

「ハロウィーンにおすすめ! かぼちゃの煮物……」

 あれ、ハロウィーンってかぼちゃ食う行事だったか? いやそれは冬至か。

 特集とか報道番組を見る限り、仮装パーティーみたいだけど実際のところ何するのが正解なんだろうか。確か収穫祭とか聞いた記憶があるようなないような……。

「まあいいや」

 とりあえず今日の飯と、明日の弁当だ。

 なんかコロッケ食いてえなあ。うーん、でも作るのちょっとしんどいし、冷凍のやつ買っていこう。

 何コロッケがいいかなー。ジャガイモ、カボチャ……結構食うんだよな、この辺は。

「おっ」

 いいもん見っけ。



 というわけで今日はクリームコロッケにした。しかもカニクリームコロッケ。

 ボリュームもあるしおかずとして文句なしだ。

 さっそく料理開始――といっても冷凍なので、揚げるのみだ。まあ油もはねるから大変なんだけど、成形の手間がない分まだいい。

 じゅわわぁ……と油がはじける音はいつ聞いても飽きない。いっそ着信音にしてやろうか。いや、目覚まし音の方がいいか? 気分良く目覚められそうだ。

 付け合わせにはキャベツ……とタルタルソース。こないだテレビで見たんだ。クリームコロッケにタルタル。うまそうだったから、一度試してみたかったんだよなあ。

「いただきます」

 クリームコロッケの最大の特徴といえば、トロッとした中身だ。ザクリッと箸を入れると、カニのほぐし身が入ったクリーミーな中身があふれ出す。

 あっつあつのコロッケは、カニの風味がとんでもない。ざくっざくっという衣の食感に、とろーりとしたうま味。香ばしさとまろやかさの両方が楽しめる最強の料理だよな。

 さて、タルタルソースをかけてみる。

 ん、タルタルの酸味が際立ち、クリーミーさが増す。なるほど、お互いのうま味が増幅されるわけだ。玉ねぎのしゃっきしゃきとした食感も加わって楽しい。ちょっとさっぱりするんだな。

 ご飯にもよく合う。おいしい。

 クリームコロッケの食感、昔は苦手だったけど、今じゃかなり好きだ。ほんと、味覚とか感覚って変わるよな。

 今度はコーンクリームコロッケにしようか。あれも甘くてうまいんだ。

 そういやカニクリームコロッケはカニのつめが生えたような見た目のやつもあるよな。一度食べてみたいものだ。



「ごちそうさまでした」

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