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日常
第百一話 サンドイッチ
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今日はとてつもなく機嫌がいい。
学校に行く日だというのに目覚めがいいし、うまいこと時間を使えているし、体調もすこぶるいい。
多分これは、夢見がよかったからだ。
端的にいえば、まあ、あれだ。推しが夢に出てきたのだ。しかも一人ではなく、今まで見てきたアニメや漫画の推しが勢ぞろい。いやー、楽しかった、うん。会話できるとか、夢ならではって感じだ。
目覚めたときに若干の切なさはあったが、それ以上に心地が良かった。
「さて、今日の弁当は……」
戸棚から取り出すのは、十枚切りの食パン。
今日はこれで弁当作ろうと思って準備してたんだ。
「あとは~っと」
ハム、レタス、ベーコンにゆで卵。ツナもいいな。キュウリとトマトも。あ、スライスチーズも忘れちゃいけない。
今日の昼飯はサンドイッチだ。うちでは弁当のサンドイッチは巻いたものが常であるが、たまには一般的なサンドイッチも作る。
そして今日は機嫌がいいので、いろいろ作りたい気分だ。
「よーし」
まずは具材の準備をしよう。
ハムとスライスチーズはそのまま、レタスは洗ってちぎろう。トマトとキュウリは洗ってスライスする。ベーコンはカリカリに焼いて、ゆで卵はほぐしてマヨネーズとコショウと和える。あ、そうだ。ツナマヨには刻み玉ねぎを入れよう。
さあ、一つ目は何にしよう。ここはやっぱりハムとレタスか。マヨも添えて……よしいいな。
次はゆで卵。たっぷり挟もう。
ベーコンはチーズとトマトを一緒に。これ、ちょっと外国っぽい。
ツナマヨもたっぷり……おっと、こぼれそうだ。
野菜オンリーのも作ってみるか。レタス、キュウリ、トマト……うーん、みずみずしい。これもマヨネーズでオッケー。
耳を落として三角に切って……うんうん、結構いいんじゃないか。見栄えもいいし、うまそうだ。
「そして……」
サンドイッチ用のパンではなく、十枚切りの食パンを買ってきた理由がこれだ。
パンの耳。今日はこれでもう一品作る。
切り落としたパンの耳をさらに半分に切る。これを弱火で軽くフライパンで炒めて、そしてフライパンに砂糖を入れて溶かす。ああ、甘くて香ばしい香りだ。水を少し入れるときれいに溶ける。
きらめく琥珀色をまとった、パンの耳ラスクの完成だ。
熱々を一つ食べてみる。んー、甘くてうまい。歯にまとわりつくような、ねちっとしたあめの食感がいい。冷えるとカリカリサクサクになるから、これは出来立てならではの味と食感だな。
あめが分厚い部分は暴力的なほどのかたさになるが、それはそれでおいしいのでいい。
今日も楽しい昼飯になりそうだ。
十月とはいえ、昼間は暑い。最近はなんか真夏が戻ってきたんじゃないかというほど暑い。
昼休み。咲良を待つ間ぼんやりと外を眺める。
色は薄くなったものの、太陽がこれでもかときらめく青空。飛行機雲がめちゃくちゃきれいに伸びている。
あの飛行機、どこに行くんかなあ。
父さんも母さんも海外に行ったことがあるというのに、俺はまだない。まあ、めっちゃあこがれがあるわけではないけど。せめて英語が一通り話せるようになったら行ってみてもいいかなとは思う。ていうか飛行機に乗りたいから、別に国内でもいい。
国内ならどこ行きたいかな。やっぱ飯がうまいところに行きたいよなあ。そういやこないだ授業で先生が言ってたなあ。修学旅行で北海道行って食った海鮮丼がうまかったって。あ、沖縄もいいな。ソーキそば食いたい。
新幹線も乗ってみたい。京都とか、大阪とか行きたいなあ。ていうか駅でもいい。テレビでたまにお土産特集とかあってるけど、なんか楽しそうなんだよ。
「お待たせー……って、何黄昏れてんの」
「あー?」
窓の外から声のする方に視線をずらせば、弁当袋を引っ提げて咲良が来ていた。パイプ椅子を引っ張ってきて座り、机の上に水筒を置く。
「いや、なんか、天気いいなーって」
「なんだそれ。まあでも、確かに最近は晴れが多いよな」
「こういう日は外で飯食うとうまいんだろうなあ」
「ピクニックか。いいな、それ」
それならなおのことサンドイッチが似合いそうだ。果物も一緒に持って行くといいな。それこそ本で見た世界の様だ。
「いただきまーす」
最初は野菜から食べようか。
ちょっとパンがしなっとしているが、これがいい。みずみずしい歯触りのレタス、ポリっといい音を立てるキュウリ、酸味が程よいトマト。さっぱりしていておいしい。
「お、春都サンドイッチ?」
「ん」
「珍しいな」
「ラスクもあるぞ」
「ラスク?」
さて、次はハムのやつ。やっぱ肉っ気があるのはいいな。ハムはプチっとした感じの食感が好きだ。
卵はふわふわ、もこもこしている。まろやかでいて、ピリッとしたコショウが味を引き締めている。やっぱコショウ入れて正解だった。あらびきコショウ、いいな。
ツナと混ぜた玉ねぎはいい感じに丸くなっている。シャキッとした食感と、ツナの風味がよく合う。
そんでベーコン。噛み応えのある触感に、にじみ出るうま味たっぷりの脂。
ここまで食ってあと一通りあるっていいな。
「なあ、ラスクってなんだ?」
サンドイッチを食べ終わって、咲良が聞いてきた。
俺は言葉で答える代わりにラスクを入れた弁当箱を取り出す。
「お、パンの耳」
「作った」
「朝から? すげーなあ」
「食っていいぞ」
出来立てよりつやはあまりないが、サクッとしていていい。時々かりっとしたところがあって歯が持っていかれそうになる。でも、うまい。
「甘くておいしいな。べっこう飴みたい」
「まあ、砂糖だからなあ」
ああ、べっこう飴もいいな。今度作ってみよう。
大量にあるようで、サクサクと食べてしまうのがこのパンの耳ラスクだ。今度はうちで、牛乳と一緒に食おうかな。紅茶でもいいし……間とってミルクティーとか?
そうなると結構食べてしまうな。サンドイッチの分の耳だけでは足りなさそうだ。
今度はパン屋で、耳、買ってこようかな。袋いっぱいのパンの耳、ちょっとテンション上がるんだ。
「ごちそうさまでした」
学校に行く日だというのに目覚めがいいし、うまいこと時間を使えているし、体調もすこぶるいい。
多分これは、夢見がよかったからだ。
端的にいえば、まあ、あれだ。推しが夢に出てきたのだ。しかも一人ではなく、今まで見てきたアニメや漫画の推しが勢ぞろい。いやー、楽しかった、うん。会話できるとか、夢ならではって感じだ。
目覚めたときに若干の切なさはあったが、それ以上に心地が良かった。
「さて、今日の弁当は……」
戸棚から取り出すのは、十枚切りの食パン。
今日はこれで弁当作ろうと思って準備してたんだ。
「あとは~っと」
ハム、レタス、ベーコンにゆで卵。ツナもいいな。キュウリとトマトも。あ、スライスチーズも忘れちゃいけない。
今日の昼飯はサンドイッチだ。うちでは弁当のサンドイッチは巻いたものが常であるが、たまには一般的なサンドイッチも作る。
そして今日は機嫌がいいので、いろいろ作りたい気分だ。
「よーし」
まずは具材の準備をしよう。
ハムとスライスチーズはそのまま、レタスは洗ってちぎろう。トマトとキュウリは洗ってスライスする。ベーコンはカリカリに焼いて、ゆで卵はほぐしてマヨネーズとコショウと和える。あ、そうだ。ツナマヨには刻み玉ねぎを入れよう。
さあ、一つ目は何にしよう。ここはやっぱりハムとレタスか。マヨも添えて……よしいいな。
次はゆで卵。たっぷり挟もう。
ベーコンはチーズとトマトを一緒に。これ、ちょっと外国っぽい。
ツナマヨもたっぷり……おっと、こぼれそうだ。
野菜オンリーのも作ってみるか。レタス、キュウリ、トマト……うーん、みずみずしい。これもマヨネーズでオッケー。
耳を落として三角に切って……うんうん、結構いいんじゃないか。見栄えもいいし、うまそうだ。
「そして……」
サンドイッチ用のパンではなく、十枚切りの食パンを買ってきた理由がこれだ。
パンの耳。今日はこれでもう一品作る。
切り落としたパンの耳をさらに半分に切る。これを弱火で軽くフライパンで炒めて、そしてフライパンに砂糖を入れて溶かす。ああ、甘くて香ばしい香りだ。水を少し入れるときれいに溶ける。
きらめく琥珀色をまとった、パンの耳ラスクの完成だ。
熱々を一つ食べてみる。んー、甘くてうまい。歯にまとわりつくような、ねちっとしたあめの食感がいい。冷えるとカリカリサクサクになるから、これは出来立てならではの味と食感だな。
あめが分厚い部分は暴力的なほどのかたさになるが、それはそれでおいしいのでいい。
今日も楽しい昼飯になりそうだ。
十月とはいえ、昼間は暑い。最近はなんか真夏が戻ってきたんじゃないかというほど暑い。
昼休み。咲良を待つ間ぼんやりと外を眺める。
色は薄くなったものの、太陽がこれでもかときらめく青空。飛行機雲がめちゃくちゃきれいに伸びている。
あの飛行機、どこに行くんかなあ。
父さんも母さんも海外に行ったことがあるというのに、俺はまだない。まあ、めっちゃあこがれがあるわけではないけど。せめて英語が一通り話せるようになったら行ってみてもいいかなとは思う。ていうか飛行機に乗りたいから、別に国内でもいい。
国内ならどこ行きたいかな。やっぱ飯がうまいところに行きたいよなあ。そういやこないだ授業で先生が言ってたなあ。修学旅行で北海道行って食った海鮮丼がうまかったって。あ、沖縄もいいな。ソーキそば食いたい。
新幹線も乗ってみたい。京都とか、大阪とか行きたいなあ。ていうか駅でもいい。テレビでたまにお土産特集とかあってるけど、なんか楽しそうなんだよ。
「お待たせー……って、何黄昏れてんの」
「あー?」
窓の外から声のする方に視線をずらせば、弁当袋を引っ提げて咲良が来ていた。パイプ椅子を引っ張ってきて座り、机の上に水筒を置く。
「いや、なんか、天気いいなーって」
「なんだそれ。まあでも、確かに最近は晴れが多いよな」
「こういう日は外で飯食うとうまいんだろうなあ」
「ピクニックか。いいな、それ」
それならなおのことサンドイッチが似合いそうだ。果物も一緒に持って行くといいな。それこそ本で見た世界の様だ。
「いただきまーす」
最初は野菜から食べようか。
ちょっとパンがしなっとしているが、これがいい。みずみずしい歯触りのレタス、ポリっといい音を立てるキュウリ、酸味が程よいトマト。さっぱりしていておいしい。
「お、春都サンドイッチ?」
「ん」
「珍しいな」
「ラスクもあるぞ」
「ラスク?」
さて、次はハムのやつ。やっぱ肉っ気があるのはいいな。ハムはプチっとした感じの食感が好きだ。
卵はふわふわ、もこもこしている。まろやかでいて、ピリッとしたコショウが味を引き締めている。やっぱコショウ入れて正解だった。あらびきコショウ、いいな。
ツナと混ぜた玉ねぎはいい感じに丸くなっている。シャキッとした食感と、ツナの風味がよく合う。
そんでベーコン。噛み応えのある触感に、にじみ出るうま味たっぷりの脂。
ここまで食ってあと一通りあるっていいな。
「なあ、ラスクってなんだ?」
サンドイッチを食べ終わって、咲良が聞いてきた。
俺は言葉で答える代わりにラスクを入れた弁当箱を取り出す。
「お、パンの耳」
「作った」
「朝から? すげーなあ」
「食っていいぞ」
出来立てよりつやはあまりないが、サクッとしていていい。時々かりっとしたところがあって歯が持っていかれそうになる。でも、うまい。
「甘くておいしいな。べっこう飴みたい」
「まあ、砂糖だからなあ」
ああ、べっこう飴もいいな。今度作ってみよう。
大量にあるようで、サクサクと食べてしまうのがこのパンの耳ラスクだ。今度はうちで、牛乳と一緒に食おうかな。紅茶でもいいし……間とってミルクティーとか?
そうなると結構食べてしまうな。サンドイッチの分の耳だけでは足りなさそうだ。
今度はパン屋で、耳、買ってこようかな。袋いっぱいのパンの耳、ちょっとテンション上がるんだ。
「ごちそうさまでした」
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