75 / 854
日常
第七十五話 洋風弁当
しおりを挟む
「あ、しまった」
今日も今日とて重い荷物を背負って登校。
……したのはいいものの、教室後ろの黒板に書いてある時間割を見て気づいた。今日は午前中で学校終わりだった。
せっかく六時間目までの教科書を持ってきたというのに、こういうのを骨折り損のくたびれ儲けっていうんだな。
「……ま、いいか」
今更嘆いても仕方がない。
午後からは自由なんだ。ラッキーとでも思っておこう。
今日の昼飯は学食で食おうと思っていたので、弁当はない。まあ、学食ぐらいは開いているだろうと思って来てみたが、残念ながら閉まっていた。
「どうしよっかな~……」
家に帰って何か作るか。でもなんか今日は楽したい気分だ。
「あ、春都。今帰り~?」
「おう、咲良」
「なんか荷物多くね?」
隣に並ぶ咲良に事情を話すと、さぞ面白そうに笑ったものだ。
「えー、春都にしては珍しいミスするじゃん」
「まあ……だから昼飯どうしようかと思ってな」
そう言うと咲良は「ん~、そっかあ」と少し考えるそぶりを見せた。かと思えばぱっと笑って言ったものだ。
「じゃあさ、俺、春都のうち行ってもいい?」
「どうしてそうなった?」
あまりにも話が飛躍しすぎだろう。
「だってさー、もうすぐテストじゃん? 分かんないとこあるし、教えてもらいたいし、あと、十階からの景色が見たい!」
「それほぼ最後のやつが目的だろう」
「あ、ばれた?」
教えてほしいのは文系科目だから~、とへらへら笑う咲良。こいつ、もう来る気満々だな。
「まあ、いいけど」
「やったー! じゃあ、帰りにコンビニ寄って帰ろうぜ」
「コンビニかあ」
放課後のコンビニって、結構混んでるからやなんだよなあ……。
「あれ? 乗り気じゃない?」
「人多いだろ。スーパーの方がいい」
それもそうか、と咲良はすんなり納得した。
別に気にする必要ない、とでも言うかと思ったが、ちょっと意外だ。
「文系科目の範囲って、文理一緒だったか?」
「一組以外は一緒だったぞ」
「国語?」
「いや、英語。何のことやらさっぱり」
スーパーは思ったよりも混んでいなかった。青果コーナーを横目に、総菜コーナーへと向かう。
そういえば、ここの弁当、買ったことねえな。総菜は何回か買ったことあるけど。
「どれにしようかなー」
うーん、ハンバーグ弁当、チキン南蛮弁当、それに、焼き鮭弁当。結構バラエティ豊かだな。
「春都どれにする?」
「ハンバーグも、からあげも捨てがたい」
「分かるー」
なんかこう、ハンバーグとか、からあげとか、エビフライとか全部入ってるような弁当はないものだろうか。いわゆるファミレスにあるような……。
「あ、あった」
ハンバーグにからあげに、エビフライ。加えてウインナーやポテサラ、スパゲティまでついてる。
これはいい。これにしよう。
「あ、それいいな。俺もそれにしよう」
と、咲良も同じ弁当を手に取る。
「いいよな、これ」
「満足感ありそ~」
さっそく会計に向かう。途中、鮮魚コーナーを通ったところ、うちの制服を着たやつが二人いた。見れば寿司コーナーの前で何やら話している。
かと思えばおもむろに寿司のパックをそれぞれ手に取ると、談笑しながらレジへと向かって行った。
「……見た?」
咲良に聞かれ、頷く。
「寿司買ってたな」
「な、しかも結構いいやつ」
「金持ちだな」
確かに寿司は魅力的だが、俺は今食いたいものを手にしているのでいいのだ。
「お邪魔しまーす」
玄関で待っていたらしいうめずが咲良を見て少し戸惑ったように立ち上がる。しかしすぐに尻尾を振り始めた。
「お、うめずー。邪魔するぜ~」
「わふっ」
「邪魔するなら帰れってさ」
「ひでえや」
そんなことないよなあ? とうめずを撫でまわす咲良。まあ、こんだけしっぽ振ってじゃれついてくるぐらいだし、歓迎しているのだろう。
「麦茶でいいかー?」
「おお」
今日はローテーブルで食うことにしよう。
「いただきます」
出来立てだったらしい弁当は、まだほんのり温かい。ご飯にかかった黒ゴマが、買ってきた弁当って感じだ。
まずはデミグラスソースのハンバーグから。ちょっとかためだが、しっかり肉の味がしておいしい。下にひいてあるスパゲティにもデミグラスソースを絡めるのがいい。
「エビフライ、結構身があるな。こういう弁当のって、めっちゃ小さいイメージあった」
「そう、うまいよな」
タルタルソースがかかっているのがまたおいしい。
こういう弁当のウインナーって、普段買うようなのとはまた違う味がする。塩気が多いというか、結構うまい。ご飯に合うんだよなあ。
ポテサラもクリーミーでありながら、ごろっとイモの形も残っているのがいい。
からあげはちょっと衣が多い気もするが、スパイスの効いたその味は、家では味わえない代物だ。
なんか楽しいな、この弁当。
テストも、それのための勉強もなかなか体力がいるが、これなら十分頑張れそうだ。
「ごちそうさまでした」
今日も今日とて重い荷物を背負って登校。
……したのはいいものの、教室後ろの黒板に書いてある時間割を見て気づいた。今日は午前中で学校終わりだった。
せっかく六時間目までの教科書を持ってきたというのに、こういうのを骨折り損のくたびれ儲けっていうんだな。
「……ま、いいか」
今更嘆いても仕方がない。
午後からは自由なんだ。ラッキーとでも思っておこう。
今日の昼飯は学食で食おうと思っていたので、弁当はない。まあ、学食ぐらいは開いているだろうと思って来てみたが、残念ながら閉まっていた。
「どうしよっかな~……」
家に帰って何か作るか。でもなんか今日は楽したい気分だ。
「あ、春都。今帰り~?」
「おう、咲良」
「なんか荷物多くね?」
隣に並ぶ咲良に事情を話すと、さぞ面白そうに笑ったものだ。
「えー、春都にしては珍しいミスするじゃん」
「まあ……だから昼飯どうしようかと思ってな」
そう言うと咲良は「ん~、そっかあ」と少し考えるそぶりを見せた。かと思えばぱっと笑って言ったものだ。
「じゃあさ、俺、春都のうち行ってもいい?」
「どうしてそうなった?」
あまりにも話が飛躍しすぎだろう。
「だってさー、もうすぐテストじゃん? 分かんないとこあるし、教えてもらいたいし、あと、十階からの景色が見たい!」
「それほぼ最後のやつが目的だろう」
「あ、ばれた?」
教えてほしいのは文系科目だから~、とへらへら笑う咲良。こいつ、もう来る気満々だな。
「まあ、いいけど」
「やったー! じゃあ、帰りにコンビニ寄って帰ろうぜ」
「コンビニかあ」
放課後のコンビニって、結構混んでるからやなんだよなあ……。
「あれ? 乗り気じゃない?」
「人多いだろ。スーパーの方がいい」
それもそうか、と咲良はすんなり納得した。
別に気にする必要ない、とでも言うかと思ったが、ちょっと意外だ。
「文系科目の範囲って、文理一緒だったか?」
「一組以外は一緒だったぞ」
「国語?」
「いや、英語。何のことやらさっぱり」
スーパーは思ったよりも混んでいなかった。青果コーナーを横目に、総菜コーナーへと向かう。
そういえば、ここの弁当、買ったことねえな。総菜は何回か買ったことあるけど。
「どれにしようかなー」
うーん、ハンバーグ弁当、チキン南蛮弁当、それに、焼き鮭弁当。結構バラエティ豊かだな。
「春都どれにする?」
「ハンバーグも、からあげも捨てがたい」
「分かるー」
なんかこう、ハンバーグとか、からあげとか、エビフライとか全部入ってるような弁当はないものだろうか。いわゆるファミレスにあるような……。
「あ、あった」
ハンバーグにからあげに、エビフライ。加えてウインナーやポテサラ、スパゲティまでついてる。
これはいい。これにしよう。
「あ、それいいな。俺もそれにしよう」
と、咲良も同じ弁当を手に取る。
「いいよな、これ」
「満足感ありそ~」
さっそく会計に向かう。途中、鮮魚コーナーを通ったところ、うちの制服を着たやつが二人いた。見れば寿司コーナーの前で何やら話している。
かと思えばおもむろに寿司のパックをそれぞれ手に取ると、談笑しながらレジへと向かって行った。
「……見た?」
咲良に聞かれ、頷く。
「寿司買ってたな」
「な、しかも結構いいやつ」
「金持ちだな」
確かに寿司は魅力的だが、俺は今食いたいものを手にしているのでいいのだ。
「お邪魔しまーす」
玄関で待っていたらしいうめずが咲良を見て少し戸惑ったように立ち上がる。しかしすぐに尻尾を振り始めた。
「お、うめずー。邪魔するぜ~」
「わふっ」
「邪魔するなら帰れってさ」
「ひでえや」
そんなことないよなあ? とうめずを撫でまわす咲良。まあ、こんだけしっぽ振ってじゃれついてくるぐらいだし、歓迎しているのだろう。
「麦茶でいいかー?」
「おお」
今日はローテーブルで食うことにしよう。
「いただきます」
出来立てだったらしい弁当は、まだほんのり温かい。ご飯にかかった黒ゴマが、買ってきた弁当って感じだ。
まずはデミグラスソースのハンバーグから。ちょっとかためだが、しっかり肉の味がしておいしい。下にひいてあるスパゲティにもデミグラスソースを絡めるのがいい。
「エビフライ、結構身があるな。こういう弁当のって、めっちゃ小さいイメージあった」
「そう、うまいよな」
タルタルソースがかかっているのがまたおいしい。
こういう弁当のウインナーって、普段買うようなのとはまた違う味がする。塩気が多いというか、結構うまい。ご飯に合うんだよなあ。
ポテサラもクリーミーでありながら、ごろっとイモの形も残っているのがいい。
からあげはちょっと衣が多い気もするが、スパイスの効いたその味は、家では味わえない代物だ。
なんか楽しいな、この弁当。
テストも、それのための勉強もなかなか体力がいるが、これなら十分頑張れそうだ。
「ごちそうさまでした」
14
お気に入りに追加
253
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!


妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
「一晩一緒に過ごしただけで彼女面とかやめてくれないか」とあなたが言うから
キムラましゅろう
恋愛
長い間片想いをしていた相手、同期のディランが同じ部署の女性に「一晩共にすごしただけで彼女面とかやめてくれないか」と言っているのを聞いてしまったステラ。
「はいぃ勘違いしてごめんなさいぃ!」と思わず心の中で謝るステラ。
何故なら彼女も一週間前にディランと熱い夜をすごした後だったから……。
一話完結の読み切りです。
ご都合主義というか中身はありません。
軽い気持ちでサクッとお読み下さいませ。
誤字脱字、ごめんなさい!←最初に謝っておく。
小説家になろうさんにも時差投稿します。
サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜
野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」
「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」
この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。
半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。
別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。
そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。
学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー
⭐︎毎日朝7時に最新話を投稿します。
⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。
※表紙絵、挿絵はAI作成です。
※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる