46 / 843
日常
第四十六話 寿司
しおりを挟む
わずかに差し込む朝陽で目を覚ます。
学校が休みの日は目覚ましをつけない。が、日ごろの癖とは厄介なもので、平日のしかも朝課外に間に合う時間に目が覚めてしまう。
寝起きにすぐ行動するのではなく、ベッドでごろごろする時間が好きだ。ベッドシーツとタオルケットがいい感じにひんやりしていて気持ちがいい。今日はうめずも両親の部屋で寝ているので本当に静かだ。
なんだかまだ半分夢の中にいるような気がする。
「ん~……」
徐々に頭が覚醒していく中でスマホを手に取る。画面に表示されたのは、見慣れた待ち受け画面と今日の日付。
「……あ、今日。誕生日か」
八月十四日。
一年のうちでたった一回しか来ない日なんだよなあ。ま、ただの平日なんだけど。そうだ、確か今やってるゲーム、誕生日限定ログボがあったはず。ちゃんともらっとかないと損だな。
とりあえず、日付がでかでかと表示されたロック画面をスクショしておく。
なんとなく記念だ。
「おはよう、誕生日おめでとう!」
それからしばらくごろごろして居間に行くと、先に起きてきていた父さんと母さんにそう言われた。
「ん、おはよう。……ありがとう」
誕生日おめでとう、という言葉にはどうやって返すのが正解なのか、少し考えてしまう。
でも結局いつも「ありがとう」になってしまう。
「もう十七歳なんだなあ」
父さんがしみじみとつぶやいた。
「つい最近までちびっちゃかったのになあ」
「いや、そんなことはないでしょ……」
足元にぬくもりを感じて下を向けば、うめずがすり寄ってきてこちらを見上げていた。
「おはよう、うめず」
「わふっ」
「どうしたどうした」
いつにもまして、うめずが俺にまとわりついてくる。しかもめちゃくちゃしっぽ振ってる。え、なに。俺なんか匂う?
「うめずもおめでとうって言ってるんだよ」
母さんがそう言うと、うめずはもう一度吠えた。
「そうか、ありがとな」
「あ、そうだ春都。ケーキはどうする?」
「ケーキ……あぁ、ケーキ」
誕生日ケーキか。ホールで買うか、それとも好きなものをいくつか買うか。毎年のことながら悩んでしまう。
ホールケーキはまさしく誕生日という感じがする。ショートケーキ、チョコレート……いろんな味の寄せ集めみたいなのもあるよな。で、お誕生部おめでとうのプレートが付いてくるんだ。
小さいのをいくつか買うのもいい。確か小さいサイズのケーキが十個ぐらいセットになったのを見たことがある。ちょっとリッチなショートケーキでもいい。モンブランやティラミスも捨てがたい。
ロールケーキもいいんだよなあ。生クリームにイチゴのやつとか、バタークリームで周りはたっぷりチョコレートがかかってるやつとか。あれうまいんだよ。端っこが好き。
それはもう、悩む。悩みに悩む。しかしまあ、毎年結論は同じであるように思う。
「アイスケーキがいい」
俺の誕生日は夏だ。夏、真っただ中だ。そりゃあ冷たいものが食べたくなるに決まってる。
「味は?」
「……チョコレートのやつ。ナッツがあるのがいい」
「了解」
母さんは父さんに顔を向ける。
「じゃあ、お寿司を取りに行くついでに買いに行こうか」
「そうだね」
……ん? 待って、今なんかケーキとは違う単語が聞こえてきたんだけど。
「寿司?」
俺の問いに、父さんも母さんもさも当然のごとく笑って頷いた。
「昨日のうちに予約してたんだよ。だから今日の晩御飯はお寿司」
なんだかこの数日でとんでもない贅沢をしているような気がする。
大丈夫かな、俺。罰当たんない?
――まあいいか。考えてもどうしようもないし、今はこの幸せをおとなしく享受することにしよう。
思ったよりも豪華な寿司に、俺は思わずフリーズしてしまう。というか寿司が久しぶり過ぎて楽しみやらなんやらで感情が忙しい。
「回転寿司も結構豪華だよね」
「炙りも入ってる」
「すげえ……寿司だ……」
ここだけの話、昼飯のあと小腹が空いたのだが、晩飯が寿司だと分かっていたので何も食べなかった。だからもう、今はぺっこぺこなのだ。
「いただきます」
これはまさしくより取り見取り。まずは……イカにしよう。
淡白で少し歯ごたえがあるが、噛んでいけばとろっとした食感になる。付属している甘めの醤油がおいしい。淡白つながりで、タイも食べよう。小さいころは少し苦手だった食感は今ではむしろ好きになっている。
マグロも安定しておいしい。サーモンの炙りは脂がのっていて味が濃い。お、エンガワもある。エンガワってなんだっけ、確か、ヒラメ? タイの様なものかと思っていたが、以外にも脂がのっているんだ。
軍艦も好きだ。うに。きれいな色をしていて、特有の甘味がある。海苔の風味がまたよしだ。かっぱ巻きも結構好き。酢飯とキュウリのさっぱり感と食感が気に入っている。
煮穴子はふわふわで、これは別に甘いたれがすでにかかっている。
「春都、海老二つ食べていいよ」
「ネギトロも!」
父さんと母さんがそう言って俺の方に二つ押しやる。
「いいの?」
「いっぱい食べなさい」
海老は生海老と茹でてあるやつ。生海老はプリッと甘く、茹でられたものもまた違った良さがある。わさび醤油がよく合う。
ネギトロは最後に取っておこう。先にこれは……ハマチ? しっかりした歯ごたえがある。ハマチって、出世魚だったような。
そしてネギトロ。たたいてあるからご飯とよくなじんで、海苔の風味も相まっておいしい。
なんだかあっという間に食べてしまった。しかし今日はお楽しみがまだある。
そう、アイスケーキ!
チョコチップとバニラのアイスが半分ずつになっていて、チョコレートがかかった表面にはナッツが振りかけてある。冷凍される前に絞られたのであろう生クリームは規則正しく、丁寧な文字で俺の名前が書かれたプレートものっかっている。
「じゃ、歌うよ!」
「せーの」
ろうそくを立てて、父さんと母さんは例のごとくバースデーソングを歌いだした。ちょっとこの時間が恥ずかしい。でも二人はノリノリだし、何より心の底から祝ってくれているのがわかるので拒否できない。まあ、うれしいことに変わりはないのでいいのだが……。恥ずかしい気分を紛らすように俺も一緒に手拍子をする。
「はい、火、消して」
一息に吹き消したら、後は実食である。もともとから切れ目が入れてあるらしく、俺はチョコチップの場所をもらった。もちろん、プレート付きで。
アイスケーキはスプーンで食べる。トロッとしたくちどけの表面のチョコレート、冷たいアイスクリーム。ダブルチョコなので濃厚だ。プチプチとしたチョコチップがおいしい。クリームの所は少ししゃりっとしている。
プレートは写真を撮ってから食べた。なんかスーッとした味がするんだよなあ、これ。結構うまい。
まだまだ入るので今度はバニラを食べる。さっぱりとしていて、程よいバニラの風味がおいしい。チョコレートとよく合う。小さい黒い粒々はバニラビーンズだろう。ナッツもカリッと噛めば香ばしくておいしい。やっぱチョコレートと合うなあ。残りそうだし、明日も食べよう。
ああ、最高の誕生日だ。
――なんて。これ、毎年思ってるんだけどな。
「ごちそうさまでした」
学校が休みの日は目覚ましをつけない。が、日ごろの癖とは厄介なもので、平日のしかも朝課外に間に合う時間に目が覚めてしまう。
寝起きにすぐ行動するのではなく、ベッドでごろごろする時間が好きだ。ベッドシーツとタオルケットがいい感じにひんやりしていて気持ちがいい。今日はうめずも両親の部屋で寝ているので本当に静かだ。
なんだかまだ半分夢の中にいるような気がする。
「ん~……」
徐々に頭が覚醒していく中でスマホを手に取る。画面に表示されたのは、見慣れた待ち受け画面と今日の日付。
「……あ、今日。誕生日か」
八月十四日。
一年のうちでたった一回しか来ない日なんだよなあ。ま、ただの平日なんだけど。そうだ、確か今やってるゲーム、誕生日限定ログボがあったはず。ちゃんともらっとかないと損だな。
とりあえず、日付がでかでかと表示されたロック画面をスクショしておく。
なんとなく記念だ。
「おはよう、誕生日おめでとう!」
それからしばらくごろごろして居間に行くと、先に起きてきていた父さんと母さんにそう言われた。
「ん、おはよう。……ありがとう」
誕生日おめでとう、という言葉にはどうやって返すのが正解なのか、少し考えてしまう。
でも結局いつも「ありがとう」になってしまう。
「もう十七歳なんだなあ」
父さんがしみじみとつぶやいた。
「つい最近までちびっちゃかったのになあ」
「いや、そんなことはないでしょ……」
足元にぬくもりを感じて下を向けば、うめずがすり寄ってきてこちらを見上げていた。
「おはよう、うめず」
「わふっ」
「どうしたどうした」
いつにもまして、うめずが俺にまとわりついてくる。しかもめちゃくちゃしっぽ振ってる。え、なに。俺なんか匂う?
「うめずもおめでとうって言ってるんだよ」
母さんがそう言うと、うめずはもう一度吠えた。
「そうか、ありがとな」
「あ、そうだ春都。ケーキはどうする?」
「ケーキ……あぁ、ケーキ」
誕生日ケーキか。ホールで買うか、それとも好きなものをいくつか買うか。毎年のことながら悩んでしまう。
ホールケーキはまさしく誕生日という感じがする。ショートケーキ、チョコレート……いろんな味の寄せ集めみたいなのもあるよな。で、お誕生部おめでとうのプレートが付いてくるんだ。
小さいのをいくつか買うのもいい。確か小さいサイズのケーキが十個ぐらいセットになったのを見たことがある。ちょっとリッチなショートケーキでもいい。モンブランやティラミスも捨てがたい。
ロールケーキもいいんだよなあ。生クリームにイチゴのやつとか、バタークリームで周りはたっぷりチョコレートがかかってるやつとか。あれうまいんだよ。端っこが好き。
それはもう、悩む。悩みに悩む。しかしまあ、毎年結論は同じであるように思う。
「アイスケーキがいい」
俺の誕生日は夏だ。夏、真っただ中だ。そりゃあ冷たいものが食べたくなるに決まってる。
「味は?」
「……チョコレートのやつ。ナッツがあるのがいい」
「了解」
母さんは父さんに顔を向ける。
「じゃあ、お寿司を取りに行くついでに買いに行こうか」
「そうだね」
……ん? 待って、今なんかケーキとは違う単語が聞こえてきたんだけど。
「寿司?」
俺の問いに、父さんも母さんもさも当然のごとく笑って頷いた。
「昨日のうちに予約してたんだよ。だから今日の晩御飯はお寿司」
なんだかこの数日でとんでもない贅沢をしているような気がする。
大丈夫かな、俺。罰当たんない?
――まあいいか。考えてもどうしようもないし、今はこの幸せをおとなしく享受することにしよう。
思ったよりも豪華な寿司に、俺は思わずフリーズしてしまう。というか寿司が久しぶり過ぎて楽しみやらなんやらで感情が忙しい。
「回転寿司も結構豪華だよね」
「炙りも入ってる」
「すげえ……寿司だ……」
ここだけの話、昼飯のあと小腹が空いたのだが、晩飯が寿司だと分かっていたので何も食べなかった。だからもう、今はぺっこぺこなのだ。
「いただきます」
これはまさしくより取り見取り。まずは……イカにしよう。
淡白で少し歯ごたえがあるが、噛んでいけばとろっとした食感になる。付属している甘めの醤油がおいしい。淡白つながりで、タイも食べよう。小さいころは少し苦手だった食感は今ではむしろ好きになっている。
マグロも安定しておいしい。サーモンの炙りは脂がのっていて味が濃い。お、エンガワもある。エンガワってなんだっけ、確か、ヒラメ? タイの様なものかと思っていたが、以外にも脂がのっているんだ。
軍艦も好きだ。うに。きれいな色をしていて、特有の甘味がある。海苔の風味がまたよしだ。かっぱ巻きも結構好き。酢飯とキュウリのさっぱり感と食感が気に入っている。
煮穴子はふわふわで、これは別に甘いたれがすでにかかっている。
「春都、海老二つ食べていいよ」
「ネギトロも!」
父さんと母さんがそう言って俺の方に二つ押しやる。
「いいの?」
「いっぱい食べなさい」
海老は生海老と茹でてあるやつ。生海老はプリッと甘く、茹でられたものもまた違った良さがある。わさび醤油がよく合う。
ネギトロは最後に取っておこう。先にこれは……ハマチ? しっかりした歯ごたえがある。ハマチって、出世魚だったような。
そしてネギトロ。たたいてあるからご飯とよくなじんで、海苔の風味も相まっておいしい。
なんだかあっという間に食べてしまった。しかし今日はお楽しみがまだある。
そう、アイスケーキ!
チョコチップとバニラのアイスが半分ずつになっていて、チョコレートがかかった表面にはナッツが振りかけてある。冷凍される前に絞られたのであろう生クリームは規則正しく、丁寧な文字で俺の名前が書かれたプレートものっかっている。
「じゃ、歌うよ!」
「せーの」
ろうそくを立てて、父さんと母さんは例のごとくバースデーソングを歌いだした。ちょっとこの時間が恥ずかしい。でも二人はノリノリだし、何より心の底から祝ってくれているのがわかるので拒否できない。まあ、うれしいことに変わりはないのでいいのだが……。恥ずかしい気分を紛らすように俺も一緒に手拍子をする。
「はい、火、消して」
一息に吹き消したら、後は実食である。もともとから切れ目が入れてあるらしく、俺はチョコチップの場所をもらった。もちろん、プレート付きで。
アイスケーキはスプーンで食べる。トロッとしたくちどけの表面のチョコレート、冷たいアイスクリーム。ダブルチョコなので濃厚だ。プチプチとしたチョコチップがおいしい。クリームの所は少ししゃりっとしている。
プレートは写真を撮ってから食べた。なんかスーッとした味がするんだよなあ、これ。結構うまい。
まだまだ入るので今度はバニラを食べる。さっぱりとしていて、程よいバニラの風味がおいしい。チョコレートとよく合う。小さい黒い粒々はバニラビーンズだろう。ナッツもカリッと噛めば香ばしくておいしい。やっぱチョコレートと合うなあ。残りそうだし、明日も食べよう。
ああ、最高の誕生日だ。
――なんて。これ、毎年思ってるんだけどな。
「ごちそうさまでした」
24
お気に入りに追加
252
あなたにおすすめの小説
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。
誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。
でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。
「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」
アリシアは夫の愛を疑う。
小説家になろう様にも投稿しています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる