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《番外編 新しい常務がやって来た!!》

1.広報室広報誌係 広岡広史の場合 ⑰

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「女子社員からの情報提供なのですが。今、若手ナンバーワンの女優、麻美がインスタライブで常務のことを話題に出していたそうなんです。以前常務の事が掲載された『週刊経済』の記事と写真を見て、素敵だって思ったらしいんです」

「麻美……ああ、今度うちのCMキャラクターになった女優のことか」


常務が思い出したように口にする。


「そうです! 今、日本の男性の8割が彼女を好きだとまで言わしめている、そんな女優が常務と対談してみたいって言っているんですよ! 女優にロックオンされるお気持ちってどんなものなんですか? もう、一般民には想像もつかない世界です!」


相手はうちのCMキャラクターだ。勝手に『うちの常務をロックオンしている』なんて、広報誌とは言え公の紙面で記事にするわけにもいかない。
それで、広報誌係でボツにした質問なのに、勝手に三井が話題にしている……三井!


「うちに利益があると広報室が判断するなら、対談でもなんでもしよう。あくまでビジネスとして。それ以上でも以下でもない。それが質問に対する回答だが、うちと契約をしているタレントだ。この質問事項については、掲載されない方がいいでしょう」
「――はい。おっしゃる通りでございます。もちろん、そのつもりです! 完全なる三井の個人的質問です!」


もう、分かるだろ。
常務は、どんな美人が来ようが、どんな有名人が来ようが、関係ないんだって。


「本日は本当にありがとうございました。こちらの無理な質問にも真摯にお答えくださって、感謝します」


俺は、心かそう思って常務に頭を下げた。


「本当に感謝しかありません。こんなに答えてもらえるとは、正直なところ期待しておりませんでした」


これまで貝のように黙っていた室長が、ニヤニヤしながら言葉を挟んで来る。


「答えなくても良かった、ということですか――?」

「い、いえいえ。本当にありがたい限りです。社員も喜ぶことでしょう」


特に、女子社員がな――。


「では、これで終了ということで――」


一刻も早く俺たちを追い出したいのか、神原さんが終わらせようと必死になっているのに、またまた空気の読めない三井がアホなことを言い出した。


「き、記念に! みんなで、写真を撮りませんか?」

「記念って、何の記念ですか!」


こいつは、神原さんを苛立たせる天才かもしれない。

それはただおまえが榊常務と一緒の写真が欲しいだけだろ!


「常務、構いませんか?」


こういうところ、意外とずる賢い。
神原さんではなく、張本人に直接交渉するんだから。


「まあ、私は構わないが」

「あ、ありがとうございましっ」


”しっ”ってなんだよ。嬉しすぎて興奮して噛みやがった。


「じゃ、じゃあ草陰係長、写真、お願いします」


あっという間にカメラを係長に受け渡した。


「え、え? 俺?」

「はい、よろしくお願いします!」


ほんっと、ちゃっかりものだ。


というわけで。
常務のデスクの前で、
榊常務、神原さん、寺内さん、俺、三井、おまけに室長の6人が並ぶ。

並び順は……。


(寺内さん)(室長)(榊常務)(神原さん)
    (俺)      (三井)


微妙に女子の攻防があったが、この形に落ち着いた。


どこか不服そうな草陰係長が、二回ほどシャッターをおして、撮影は終わった。


「ではでは、本当に、お疲れ様でした。では、常務はこの後ご予定がありますので――」


神原さんが榊常務の前に出て来て、はっきりとそう俺たちに言い渡した。



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