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ちょっぴり消毒薬がしみたり、傷薬がしみたりしたけど、響が言ったようにさほど痛くはない。
「手首は少し腫れてんな。熱持ってるから湿布だけしとくけど」
こちらも手際良く手首に湿布をあて、包帯をくるくると巻いていく。
少しきつめなのは、関節をわざと動きにくくするためなのだろう。
「お前、名前は?」
半ばまで巻き終えたところで、響が不意に尋ねてきた。
「リル……藤谷リル」
「俺は……って、もう名前知ってんだよな?」
「うん。響……京くん」
「そう、当たり」
ちっとも嫌そうでなく、むしろ響は柔らかく笑ってみせる。
「はい、完了。もし酷いようなら病院行って診てもらえよな」
「うん。ありがとうございます」
離された手をもう一方の手で大事に包み込んで、リルは頬を赤らめてはにかんだ。
そんなリルの前髪を指先で払いのけて、響はおでこを突く。
「え? なに?」
バッと飛び退ったリルは、真っ赤になって両手でおでこを隠した。
響は獲物を狙うように、ジリジリとにじり寄ってくる。
「ひ……響……くん?」
「擦りむいてる。そこ」
「え? え?」
「おでこんトコ」
まったくと響は吹き出した。
「こんなトコまで擦りむくって、どんなコケ方したらそうなんの? 信じらんねー」
ケタケタと笑いながら、傷を見ようと顔を寄せ、リルの手をどかせる。
―――って、顔近いし!
笑ってる、笑ってる、響くんが!
うわぁッ、シャッターチャンス!!!!!
パシャリ。
鳴ったと同時にフラッシュが光った。
「うわっ、なんだ今の!?」
突然の光に驚き、手で眸を覆った響が声をあげる。
ポケットからデジカメを取り出し、撮影完了までわずか0.8秒。
1秒足らずの早業を成し遂げたリルは、手に入れたばかりの画像を確認。ほくほくと顔をほころばせていた。
そんなだから気づかなかったのだ。
響の異変に……。
「お前なぁーっ」
ゆらりと立ち上がる。眸は完全に座っていた。
遅まきながら気づいたリルは、響の様子に冷や汗を流す。
「あ、あれ? なに?」
「『なに?』じゃねーよ! 勝手に人の顔、撮ってんじゃねーッ!!」
怒り心頭。
響はリルの手から、自分の姿が映るデジカメを奪い取った。
慌ててリルがワタワタと手を伸ばす。
「ダメー! ダメだよ、返してー!!」
「俺の写真、消してからな」
「ヤダーッ! ダメ、ダメ、絶対ダメ!! それ、僕の宝物なんだからぁ!!!」
「なーにが『宝物』だよ」
フンとばかりにデジカメのボタンに指をかける。が、寸前で留まった。
とある重要なことを思い出したのだ。
「そうだ、お前に聞きたいことがあったんだった」
泣きべそをかくリルに、響はニヤリと笑って詰め寄った。
「これ返して欲しいなら、質問に答えな」
「質問……って、どんな?」
「まずお前、なんで俺のこと知ってた?」
「―――……同じ大学だから」
「はぁ? 同じ大学ぅ?」
どう見ても高校生か、悪くすれば中学生にしか見えないリルに、響は眸を丸くする。
「マジかよ~?」
こんな風に驚かれるのはリルには慣れっこだった。
まず年相応には見られたことがなく、下手をすると小学生とまで言われかねないほどなのだ。
そんなことよりもと、リルはデジカメに向け手を伸ばす。
「返してぇ~」
「まだ、ダメだ」
響はピシャリと言い放った。
「手首は少し腫れてんな。熱持ってるから湿布だけしとくけど」
こちらも手際良く手首に湿布をあて、包帯をくるくると巻いていく。
少しきつめなのは、関節をわざと動きにくくするためなのだろう。
「お前、名前は?」
半ばまで巻き終えたところで、響が不意に尋ねてきた。
「リル……藤谷リル」
「俺は……って、もう名前知ってんだよな?」
「うん。響……京くん」
「そう、当たり」
ちっとも嫌そうでなく、むしろ響は柔らかく笑ってみせる。
「はい、完了。もし酷いようなら病院行って診てもらえよな」
「うん。ありがとうございます」
離された手をもう一方の手で大事に包み込んで、リルは頬を赤らめてはにかんだ。
そんなリルの前髪を指先で払いのけて、響はおでこを突く。
「え? なに?」
バッと飛び退ったリルは、真っ赤になって両手でおでこを隠した。
響は獲物を狙うように、ジリジリとにじり寄ってくる。
「ひ……響……くん?」
「擦りむいてる。そこ」
「え? え?」
「おでこんトコ」
まったくと響は吹き出した。
「こんなトコまで擦りむくって、どんなコケ方したらそうなんの? 信じらんねー」
ケタケタと笑いながら、傷を見ようと顔を寄せ、リルの手をどかせる。
―――って、顔近いし!
笑ってる、笑ってる、響くんが!
うわぁッ、シャッターチャンス!!!!!
パシャリ。
鳴ったと同時にフラッシュが光った。
「うわっ、なんだ今の!?」
突然の光に驚き、手で眸を覆った響が声をあげる。
ポケットからデジカメを取り出し、撮影完了までわずか0.8秒。
1秒足らずの早業を成し遂げたリルは、手に入れたばかりの画像を確認。ほくほくと顔をほころばせていた。
そんなだから気づかなかったのだ。
響の異変に……。
「お前なぁーっ」
ゆらりと立ち上がる。眸は完全に座っていた。
遅まきながら気づいたリルは、響の様子に冷や汗を流す。
「あ、あれ? なに?」
「『なに?』じゃねーよ! 勝手に人の顔、撮ってんじゃねーッ!!」
怒り心頭。
響はリルの手から、自分の姿が映るデジカメを奪い取った。
慌ててリルがワタワタと手を伸ばす。
「ダメー! ダメだよ、返してー!!」
「俺の写真、消してからな」
「ヤダーッ! ダメ、ダメ、絶対ダメ!! それ、僕の宝物なんだからぁ!!!」
「なーにが『宝物』だよ」
フンとばかりにデジカメのボタンに指をかける。が、寸前で留まった。
とある重要なことを思い出したのだ。
「そうだ、お前に聞きたいことがあったんだった」
泣きべそをかくリルに、響はニヤリと笑って詰め寄った。
「これ返して欲しいなら、質問に答えな」
「質問……って、どんな?」
「まずお前、なんで俺のこと知ってた?」
「―――……同じ大学だから」
「はぁ? 同じ大学ぅ?」
どう見ても高校生か、悪くすれば中学生にしか見えないリルに、響は眸を丸くする。
「マジかよ~?」
こんな風に驚かれるのはリルには慣れっこだった。
まず年相応には見られたことがなく、下手をすると小学生とまで言われかねないほどなのだ。
そんなことよりもと、リルはデジカメに向け手を伸ばす。
「返してぇ~」
「まだ、ダメだ」
響はピシャリと言い放った。
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