家から追い出されました!?

ハル

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番外編

自活しようと思ったら、突然のフィナーレ!!

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 ジークに自分の成長のために教育のことを相談して、2年の月日が経ち、私はジークの第二秘書という役割になっていた。2年という月日はあっという間だった。多くのことを学んで実践していったことで経験を積んでいたからさらに短く思えた。その間に自分なりにビジネスを起こしたり、株で資産構築をしてみたりと苦労と楽しさを学んでいけた。ちなみに、海外は副業している人がほとんどだし、個人事業主が半分を超えているらしい。リオウは多くのビジネスを運営しており、すでに働かなくても一生困らないほどの財を築いているのだとか。
 あと、今イタリア在中の日本人の恋人?がいるらしい。疑問形なのはリオウの片思いというか、ごり押しで付き合ってくれている関係だからだ。一度、仕事でイタリアに行った際、私とジーク、それとリオウとその彼女と食事をする機会があった。彼女は日本人だけど両親の離婚していて両方に家族ができたから、留学したイタリアにそのまま滞在しているらしい。すごくはきはきと話す自分スタイルのある人であり、小説家として活躍しているらしい。彼女が原作の映画やドラマもヨーロッパでは放映されていた。
 その食事の時、あのリオウの笑みをスルーし、彼の容姿には一切興味もなく、リオウに向かって
「鬱陶しい。」
「しつこい。これ以上酷くなるなら、警察呼ぶ。」
 なんて言っていて、私は唖然、ジークは隣でお腹抱えて爆笑していた。
 他には、ウォーリーはよく私に連絡をくれます。携帯を持たせてくれるようになったとかで、それでメールや電話をしてくれます。とても気遣いができるし、そんな風に気にかけてくれることに少しだけ嬉しさがあった。学校のとこや友人とのこと、そんな些細なことを話してくれる、その会話がとても心を温かくさせられた。
 幼い頃にできなかったことを今、今度は姉や母のような心境で実践できてその時間を取り戻しているような感覚です。

 2年間色々とこんな風に周囲の変化もあったが、仕事もプライベートも落ち着いてきたから私の目標はこの贅沢な環境を脱却しようと考えいてた。今までそういうことにどっぷりはまってこられたのは、この家では自分のことは自分できるが、家事と呼ばれるものは全て使用人がしてくれた。それに洋服を購入するのもジークの祖母や母が担ってくれて、本当に学習に集中するにはこれ以上ないほどの環境だった。だから、今度は自活しながら仕事をできる女性になりたいのだ。

「あの、ジーク、それからご家族の皆さんお話があるんだけどいいですか?」

 仕事が休みの日に一家そろったランチの際にそう切り出した。

「あの、私、色々とお世話をおかけしましたが、落ち着いて来ました。本当に皆さんの、そして、この家で世話をしてくださった使用人の方のおかげで感謝しています。本当にありがとうございました。だから、私、恩返しのために働きますが、これ以上ご迷惑をおかけすることはできませんので、この家を出ようかと思っています。」
 ・・・・・・・・

 場が固まった。クリスマス休暇でジークの姉夫婦も揃い本当に一家が揃っている場なのだが、周囲にいる使用人も驚いてお皿を落としていた。ウォーリーでさえも口を半開きにしていた。
 さすがに、予想外の状況に私はどうしていいかと困惑していた。

「ええっと、今言うタイミングではなかったですね。すみません。また、改めてお話します。」
「いや、改めてお話は要らないよ。」
「じゃあ。」
「君の引っ越しは認められませんから。」
「ええ!?」

 私の言葉にいち早く反応したのはジークだった。彼はかぶせ気味に私の提案をあっけなく却下した。
 期待を持たせておいて却下だと気落ちは最初から却下されるより倍以上の影響があった。

「なんで、そんなに驚くの?というか、なんで家を出ようなんて発想になったのか教えてくれない?」
「それは、こんな環境にいたら贅沢過ぎて私が駄目になってしまうのかと思ったからです。」
「??それはこの家が居心地良すぎてという話?ちょっと僕には意味が分からないんだけど、良い環境ならそのままでいいんじゃないの?なんでそれを出る必要があるの?」
「あります。独り立ちができませんから。」
「君の言う独り立ちってどういうことかな?」

 彼は本当に分からないようでなおも質問を続けていた。

「自分の稼いだお金で自活できることです。」
「・・・なるほど。つまり、君は自分の稼ぎ以上のことをここではしてもらっているから、迷惑をかけて申し訳ないと考えて家を出て行こうっていうんだね。」
「そう、それです!!理解が早くて助かります。」

 ジークの方を礼儀知らずと言われるかもしれないが、指で指してしまった。それほどに彼の要約は私が言いたいことだったからだ。

「じゃあ、別にこの家を出て行く必要なんてないよ。」
「え?」

 私が首を傾げていると、彼はニコッと笑みを浮かべて続けた。

「だって、君は仕事で出張とかでこの家を出ることが最近多いだろう?」
「そういえば、1年のうち半分ぐらいは出ていますね。」
「その間、生活はホテルだし、それは会社から費用で出ていて、それは君の仕事への対価だろう。」
「そうですね。」
「そして、こういう長期休暇の時は実家に帰ってきていると思ったらいいよ。この家の主人は僕の祖父で彼がしたいようにしているんだ。君だって、長期休暇で行っていたという親戚の家で家事した?」
「いいえ、していません。」
「じゃあ、そう言うことだよ。そう思ったら自分の稼ぎで生活しているのと変わらなくない?」

 なんだか、彼の言っていることが正しいように思えてくるのだが、ここはもとよりジークの家であって私は居候だということを忘れてはいけない。

「ですが、私は居候という身で。」
「居候でなければいいの?」
「え?ええ、まあ、そうですね。」

 彼の疑問に曖昧に答えた。それ以外に私に付く身分ってあっただろうか?

 私は彼の考えが心底読めなかった。

「ねえ、日本を発つ前に僕と交わした言葉を覚えている?」
「はい。それがあったからここに来たわけなので。」
「じゃあ、その時、僕が君を捨てることはないと証明するために君に傍にいることを望んだことも?」
「はい、そうですね。」
「僕は証明することをこの2年間怠らなかったつもりだったけれど、まだ足りないかな?」
「ええっと・・・・もう十分だと思います。」

 私はしどろもどろになりながらも何とか答えた。
 すると、ジークは嬉しそうに笑って私の手を取った。

「その褒美として僕から強請ってもいい?」
「えっと何をですか?」
「一生傍に居てくれるっていう証が欲しい。」
「それは一生傍にいて証明してほしい、と。」

 私が盛大な褒美だと思っていると、彼は苦笑してさらに私に顔を近づけてきた。
 
「違うよ。家族になってほしいんだ。僕の家族、生涯を共にするパートナーに。」
「・・・・・ええ?」
「なってくれるかい?」
「・・・はい。こんな私でよければ。」
「ありがとう。」

 驚いて頭真っ白だったから、彼の言葉がすんなりと私の体に入って溶けた。そして、本心が私の口から出てこられたのだ。そして、家族と使用人に見られているにも関わらず、初めて彼とキスをした。

 温かさを分けてもらえた感覚があった。
 これが、幸福だと思えた。そして、これ以上の幸福はないとも思えた。

 ジーク、あなたが私に心を与えた。ありがとう。

 私は感謝しかなかった。その恩返しはジークのパートナーとして一生かけて返していく。

 完

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これで、完結です。
本当に今まで読んでいただきありがとうございました。
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