家から追い出されました!?

ハル

文字の大きさ
33 / 36
番外編

波乱?のクリスマスパーティー

しおりを挟む
 クリスマスというのは私の認識だとクリスマスプレゼントをもらってケーキを食べるイベントらしい。らしいというのは、生まれてこの方、クリスマスという行事をしたことがないからだった。クリスマスだからといって、父は会社が休みなわけではなく、休日でも両親でデートをしてきた終わっていた。小さい頃から、お留守番がクリスマスでの思い出だった。
 それを話すとジークだけでなく、彼の家族は驚愕していた。そして、なぜか、最高のクリスマスをと急に各々がいそいそとし始めて慌ただしくなった。電話をかけたり相談したり、私には付いていけない事態でぼうっと彼らの様子を眺めていた。

 それを話したというのも、クリスマス1週間前、リビングで彼の家族とお茶をしている時にジークの祖母が思い立ったように私に尋ねてきたのがきっかけだった。

「郁美さん、もうすぐクリスマスだけど、日本ではどんな風に過ごしていたの?イベントまでこちらに合わせることはないと思ってね。今年は郁美さんが過ごしていたクリスマスを再現できたらいいかと思ったの。どうかしら?」

 そんな風に尋ねられたものだから私の方が困惑してしまった。だから、思うがままに話して、

「こちらの仕様でジークさんたちが過ごしているところに便乗させてください。」

 と締めくくったのだ。
 それがいけないことだったのか、唖然とした一同。
 それを不思議に思ってみていると、彼らは冒頭のように慌ただしく何を始めたのだ。ただ、ウォーリーは普段通りに私のところにやって来た。

「郁美お姉さんはクリスマスにケーキを食べなかったの?お料理も?」
「ケーキは食べなかったよ。ケーキは今までで片手で数えるほどしか食べたことがないよ。料理は普通通りで変わらない食事だったよ。」
「そうなんだ。家族では過ごさなかったの?パートナーとか?」
「家族はイベントは全て家にいなかったよ。パートナー、恋人はできたことがないよ。平均的な感じだったからね。働ける年になってからはイベント関係なく仕事をしていたよ。」
「そうなんだ。寂しいね。」
「どうだろう。確かにウォーリー君ぐらいの年の時は、友達から聞くクリスマスの話とかバレンタインのこととか羨ましくて真似をしたこともあったけどね。大きくなってからは居ないのが当たりまえになっていたから、特にそんな感情はなかったよ。」

 すると、手を伸ばしてきたので、ウォーリーを抱っこして向かい合わせに膝に乗せた。そうかと思えば、彼は私の頭を撫でてきた。なんとも紳士的な対応だった。まさに外国人らしいと意識させられ苦笑が漏れた。
 どうも、私はこの小さな天使に心配をかけてしまったらしい。

「大丈夫だよ。私は今、そんな寂しさを埋めるぐらいには充実しているから。居候だけどね。」
「郁美お姉さんは家族だよ。」

 彼の言葉が自分の名前を呼んでくれる声が温かった。

「ストップ!!」

 また抱き合おうとした2人の間に入って来たのは隣に座っていたジークだった。彼はまたムッとした顔でこちらを見ていた。

「郁美が家族なのはウォーリーの言う通りだけど、ウォーリー、お前は郁美が来てから彼女との距離が近すぎると思うな。僕が彼女のパートナーなんだから、彼女との距離はもう少し見直しなさい。」
「パートナーならジークおじさんはもっと郁美お姉さんのことを大切にするべきだと思う。」
「大切にしているだろう・・・・・大切にしているよね?」

 ウォーリーに指摘されて不安になったのか、彼は私に尋ねてきた。その時の顔が捨てられた子犬のようで可愛らしくなり頷いてしまった。実際、彼にはとてもよくしてもらっている。

 それにしても、日本を出る前にジークへの返事で『傍に居る』なんて答えたけれど、あれはパートナーになると同義だったなんて知らなかった。男女の関係はよく分からない。

 とにかく、私が頷いたことで彼は安堵しつつ、自然とウォーリーを私の膝から下ろして自分の膝の上に移動させていた。それに少しだけ不服そうな顔をしたが、ウォーリーは決して嫌がらなかったので、内心は叔父であるジークに構われて嬉しいのだろう。これで彼の寂しさが少しでも緩和されればいいと願った。

 それから、1週間はあっという間に過ぎクリスマスイブになった。今日の夜からパーティーを開いてクリスマスになった時刻、夜の0時、にお互いにそれを祝うんだそうだ。私の知らないことはたくさんある。
 そのパーティーのためにドレスまで用意されてしまっており、それに着替えて街の方に向かった。なんと、家ではなく誰かの招待を受けたからそこにジークの家族は揃って出席というのが彼らの恒例だった。
 そこは大きなお屋敷でパーティー会場となる部屋の入り口に入ると、そのパーティーの主催者とその奥様に出迎えられた。ここはジークの母の実家らしい。
 ここでの会話はフランス語だった。このことを知ってクラウド一家に礼儀とか語学とか色々と教えてもらい、準備はしてきたつもりであり、そのかいあって、入り口で出迎えてくれた彼らの会話も聞き取れたし、礼儀に反して怒らせるようなことはしていないようだった。ただ、彼らは驚いてはいたのだが。
 その理由は分からない。

 出席しているのは顔なじみばかりなのだろう。彼らは各々すでに集まっていたパーティーの客人に話しかけられては談笑をしていた。ジークも話しかけられており、友人らしい人達に私を紹介したりしていた。それを見て彼らは驚いており、その場は引いたようだが、ジークに何か言いたげな顔をした。

「ジークさん、なんで皆私を見て驚いた顔をするのですか?私ってそんなに変な顔ですか?それとも、礼儀とかに問題がありましたか?先ほど紹介してくださった友人の方たちはジークさんの方を見て何か言いたげでしたけど。」

 一気に訊いてしまったせいか、彼は驚いた顔をしたものの苦笑した。
 はぐらかされるかと思ったが、そうでもないようだ。

「ああ、それは、君がとてもきれいだからだよ。それと今日のパーティーには僕の元婚約者候補も来るんだ。彼女は母方の祖母の知り合いの孫だから、このパーティーには家のつながりもあって毎年招待されるんだよ。昔色々あったけど、今はもう他人だけどこういう場では仕方ないよね。彼らはそんな場所に新しいそれも婚約者である君を連れてきたことに驚いているし、少しだけ物申したいだけじゃないのかな?君を危険な目に遭わせる気かと。」
「そうだったんですか。それにしてもジークさんの恋人だった方はやはりそんな方だったんですね。」
「そうだね。親のつながりの紹介となると、そういう人種ばかりだよ。」
「そうなんですね。ところで、私は婚約者だったんですね。」
「え?婚約していなかったの?僕ら。」

 ここでわざとらしく驚いたふりをする彼が憎たらしいのだが、許してしまいそうになるのはなぜだろう。しかし、ここは断固として言っておかなければならない。

「そうですね。あれは元家族から私を守るための言葉のあやだと思っていました。」
「パートナーっていうのは婚約者や妻のことを指すんだよ。だから、君は婚約者・・・・なんなら、帰りに教会に行って式場の相談でもする?」
「いいえ、結構です。」
「僕は今すぐしてもいいけど。僕の家族はみんな君が来てくれるのを待っているからね。」
「あなたのご家族がとても優しい人たちだということはよく分かりました。でも、今のままだと私、寄生虫になりそうで怖いんです。学力もなくお金を稼いでいるわけではなく、あなた方に頼りっぱなしで自分の足が地についていないフラフラとした感覚を時々感じます。」
「そうなんだ。不安だったんだね。でも、将来はゆっくり考えて行けばいいよ。」
「あなたの場合だと、籍だけ入れて一生を使って見つければいいとか言い出しそうですからその提案には賛成できません。だから、私、こちらの学校に通いたいと思います。」

 ずっと考えていた。自分が居候のように思うのはどうしてだろうと。元家族と住んでいた時も居心地の悪さを感じていたが、働いていた時間ができた高校生になってからはそれも無くなっていて、家無しになってからもきちんと自分の足で立っていられた。それなのに、ここに来てから温かいけど流されている感覚があった。

「学校に行って学んでいる時に自分の将来が見えてくることだってあると思うんです。」
「そうだね・・・・その件は後で話そう。例の女性が来た。」

 ジークが急に声を落としたかと思えば、私に囁いてきた。それは彼の元婚約者候補の来訪を知らせていた。ゴングが鳴った気がした。

 いや、別に対決しているわけではないんだけど。

「ジーク、久しぶりね。」

 英語で話しかけていた。ちゃんと英語も一応聞き取れる程度はマスターしていたので会話の聞き役に徹していた。
 そう挨拶をしてきたのは胸の開いたドレスを着た女性だった。気の強そうな、そして、自分が一番だと気が済まない人種のようだった。私が目線を下げなければならないけれど、茶髪に青い目、165センチぐらいの身長にグラマラスな体格で誰もが一度は振り返る美貌であり、最も特出すべきは妖艶な雰囲気だろう。彼女を見て私はジークが心を許した相手に選んだという女性イメージとはかけ離れていたので驚いてしまった。それに彼女の方はジークよりも結構年が上に見えた。30代だろうか。

「ああ、久しぶり。あの一件以来だから5年ぶりかな。ニューヨークの証券会社で働いているって聞いたよ。」
「ええ、そうよ。でも、もう少しで独立するわ。経験も十分積めたしね。」
「そっか。おめでとう。そうそう、僕の婚約者だ。一応紹介しておくよ。」
「初めまして、お会いできて光栄です。ミス。郁美です。」

 英語で自己紹介をして礼儀作法通りのカーテシーをした。
 それを見た瞬間、勝ち誇った笑みを浮かべていた。

「あら、よろしく。アマンダよ。アマンダ・ウィーレット。ジークが迷惑をかけているんじゃない?彼って、結構しつこいし、甘えたがりだから。」
「そういうことはこんな場所でいう物じゃないだろう。」

 周囲に野次馬が集まってきていた。好奇な視線と心配げな視線が入り混じっていた。心配そうに伺っているのはジークの家族と紹介された友人たちだ。

「そうですね。ジークさんは甘えたがりですけど、あなたに迷惑をかけているかを心配されるほどの関係性がないと彼から伺っておりますし、私にももちろんありません。それはもしかして、彼の元婚約者候補だったあなたからのアドバイスですか?それならご参考にさせていただきます。ジークさん、ストーカー行為だけは止めてください。」
「・・・うん、もちろんだよ。そんなことしないよ。」
「それなら安心です。」

 私が彼にアマンダの言葉を受けて注意をすると、彼はなぜか苦笑していた。それに不思議そうに首を傾げると周囲は噴出したり苦笑したりと空気が緩んでいたが、目の前にいる彼女1人が顔を真っ赤にしていた。

「アマンダさん、どうかしましたか?」

 そんな反応をするほどに彼に恥をかかせてしまったのかと心配になったのに、彼女は体を震わせて何も言わず人の中をくぐった。
 その後ろ姿を見送って、どっとその場が大笑いで包まれた。

 何なんだ?一体。私が何かそんなに笑うほどにおかしいことを言ったのかな?
 全く心当たりがなかった。

 その後、当事者の私だけが分からずに周囲から親しまれているのに付いていけないながらも挨拶を交わしつつパーティーは進んでいった。
 結局アマンダはそれから会場には戻らずに帰ってしまったらしい。というのは、後日、ジークから聞いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

アルファポリスとカクヨムってどっちが稼げるの?

無責任
エッセイ・ノンフィクション
基本的にはアルファポリスとカクヨムで執筆活動をしています。 どっちが稼げるのだろう? いろんな方の想いがあるのかと・・・。 2021年4月からカクヨムで、2021年5月からアルファポリスで執筆を開始しました。 あくまで、僕の場合ですが、実データを元に・・・。

処理中です...