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第9話 こう言う時に持病があると大変だよね

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 2024/11/21日、アウトブレイクから10日後。小谷の意味不明な突発的な裏切りから約1週間経ち橋本は遂に踏ん切りがついた、そして俺の考えていた裏切ったフリで助けてくれた線はほぼ無いと橋本は言い、理由は浮気の証拠などもあった為だ。そして橋本をブランが許した事もあり朔が2人を生涯かけて守る事になった。だが朔の手榴弾による火傷と裂傷は軽く済まずこの十日間は外での行動が不能であったが遂に行動を取らざる終えなくなる事態に。


 21日の朝9時頃

「両親に2人と藤原さんのおかげで深度Iの火傷はほぼ治ったし、ちょっと肉が裂けた傷も塞がった。これでやっと外に出れる......はず......」

「......でも、深度IIくらいのところは水膨れは治りかけだし、今返り血浴びたら皮膚の免疫力がないから即感染するよ......それに第一に痛むでしょ?」
 ブランは朔の顔に手を添えながら心配そうに言う。

「ありがとうね。だと言ってもどこのテレビ局はとうとう避難指示のループ映像すら放送しない、ライフラインはドミノ倒しの如く連続で突然全てダメになった。もう甘えていられないんだ、pcも3dプリンターも使えないと言うことは武器や防具を作るのも難しい、はんだごてだって基本は電気で熱くなっているし......」

「だとしてさ、朔が行く必要ないじゃん。私とサーシャで行くって!剣士と拳士を舐めてもらっちゃ困るね」
 付き合ってから下の名前を躊躇う事なく普通に呼ぶ様になった橋本未奈。

「未奈......何度も言うが必要なモノを網羅しているのは俺だけだ。君達が馬鹿と言いたいのではなく、作るのも直すのも基本的に俺だからだ......何ならサーシャは確実に俺より聡明だろう......。そのさ......気遣いは......本っ当に嬉しいよ............ありがとう。取り敢えず、頃合いを見て発電機とかを手に入れよう。気が早いけと冬が終わると直ぐに猛暑で熱中症で死ぬからな。まあ......幸いにもあのクソ裏切り野郎は自分の携帯と財布しか持っていかなかったから積荷がそこそこ乗る車を残して行ったからな............」
 全然、全く、まるっきり喜べない朔は寂しそうに言う。

「発電機かー......んーうるさいんじゃないかな?紐引っ張る奴でしょ?崖の何ちゃらってアニメで見た気がする」

「今はソーラー発電もあるから騒音は何とかなる......けどやっぱり燃料使う方がパワーはある......けど燃料いらずのソーラーの方が良い場合もある......けど夜は使えない......けど鉛蓄電池とかに貯めれば良い......」

「けどけど言うねえ......じゃあ私とサーシャでその......発電機?って奴を奪って来るよ、どうせホームセンターにあるでしょ?」

「馬鹿言うな、映画なら暴徒に2人とも強姦されて飽きたらバラされて食われちまう」

「二重の意味で食べられちゃうかー」
 呑気な未奈、だがこの調子に戻ってきた事に感動している朔、なんせ塞ぎ込んだりヒステリックになったり色々と苦労があったからだ。

「そうだね......もし助け呼ぼうったって携帯も電波ダメだしね」

「ここを基地継続させる為に、発電所と基地局復活させるかぁ?だが俺はパルクール出来ないぜ」
 とプレイした事があるゾンビゲームを思い出して言う。
 

「無茶だよ......それと基地で思い出したけど自衛隊の人間はここの家に人がいるって知っているし、基地の場所を移すべきじゃない?もうそろそろ物資が枯渇して運ぶも何も無いから」

「わざわざ記録しているかな?あのクソ小谷が居なくなれば位置なんてわからないでしょ。それにどこに行くのさ?」
 元カレを躊躇いなく流れる様にクソ呼ばわりする未奈。

「......映画なら刑務所とかだし、漫画で見たのは山の方に行ってそもそもゾンビがいないから快適みたいな感じのものあった気がするが......そもそも受刑者ってどうしたんだろう......」
 と無駄な心配をしながら朔が言う。

「ここから近い刑務所なんてわからない!電波ある時に考えておくべきだった......」

「いや、そもそも埼玉県って少年院しかないからな、確か川越の方に......それもここから20キロもしない所にあった気がするけど、その少年院の中で死体があったら処理に困るんだよね......あと映画の刑務所チョイスって海外だから治安悪くて、めちゃくちゃ塀が高いし何重にもなっていて見張り塔もあるし、めちゃくちゃ強いライトもある。だから拠点に向いているの。つまり、日本だと日本一大きい刑務所でも微妙かもしれないし、そこがどこにあるのかも知らんから終わり!もしかして網走か?もう無理!やっぱりゾンビの世界になったら完全一般市民は無力なんや......」

「そう言いなさんな今あんさんはハーレムなんやから」
 と未奈が朔の最後の口調に乗ってふざける。

「はぁ......まあ朔の通っている心療内科の横の薬局には今日絶対に行きましょ......もう残りは数日分なのだから」
 ブランはあんなに揉めて後から2番目で付き合ったのにハーレムだとか言い始めて、少しイラッとしたがポジティブになる事は良い事だからと己に言い聞かせる。それに逆の立場なら未奈も同じ事をしていただろうと共感もしている。そして、そんな事を思う自分に対して人の事言えない我儘だなと思うブランであった。

「じゃあ俺だけで......と言いたいが頼って良いか?使い勝手が悪いから封印していた武器がまだ残っているから」
 そういうと普通の3dプリンター製の銃を取り出して2人に渡す。自分はマスケットを持つ。

「いいよ!!わあ......装弾数3発のリボルバーもどきだ、弾丸は?」

「2人に9発ずつ、これは薬莢部分を鋳造で作った試作品だから使い回しは特に強度が不安なのでこれで終わり......まあ普通の薬莢もそんなに使い回す物では無いけどね。今回は邪魔なら銃も捨てて帰って来て良い。木刀とマチェーテは捨てないで......それと動けない間にチクチク作った胴着の布で噛まれても歯が刺さらないプロテクター?もある」
 そういうと服の上の噛まれやすい場所に装着する物を渡され2人は着ける。

「すごーい!動き難くない!でも、夏は無理だね」

「そう、だから夏は近距離でゾンビとやり合わなくて良い様にするか、飲食物を貯めに貯めて夏は乗り切るか。とにかく、冬の今はラッキーなんだ。腐臭も外に出てもそこまで酷くないしね......臭いはストレスになるし、付近が安定したら死体を集めて公園で燃やしたいなぁ............まあ、よし。行こう」

「車で行くのー?」

「いや、自転車にする。電動自転車で静かにスイスイと行こう、3人分あるから」

「そうだね、国家権力のワン公共に見つかっても嫌だしねぇ」
 と国家権力の犬に彼氏を殺されかけたので急に口が悪くなるブラン。

「......まあ、行こうか、親に話してくる」
 (ワン公......?聞き間違い?)

 朔は両親に経緯を話した。

「......確かに必要だが2人を巻き込むべきではない、お前の問題だ1人で行きなさい」
 と叱る父に母は言う。

「あんた、自分は肥満で腰も肩も悪いから物資集めは子たちに頼り切りにする気なのに随分と上からじゃないの」

「っ......だが今2人と付き合っているのだろう?そもそも日本は重婚は認められていないのに............」

「それはいま関係ないでしょ。それに2人は話してわかる程に良い子だし、やる気満々よ。それに朔は今万全じゃない事忘れているでしょう?だから1人じゃ無理よ、それに1人息子が大切じゃないの!??」
 と母はちょっと怒って言う。

「むぅ......ブランさん、橋本さんは良いんですか?本当に?」

「朔は私の命を救いました、その命を朔の為に使うだけです。任せてください」

「......こんな私を受け入れてくれた2人の恩に報いたいです。お義父さん、私は本気で朔を守りますっ」

「ま、また今度はこっちの子にお義父さんと............まあ、そのわかりました。お願いします」
 朔が女を彼女として連れて来るなんて考えておらず、熱烈な愛を自分の息子に向ける子供が2人も来て驚いている所に、追撃のお義父さん呼び。流石の昭和の男も怯む。

「前も似た流れ見たわよ、取り敢えず帰って来たらドアを3回速く連続で叩いて。声をこちらからかけるからそしたら......あんただけが名前を名乗って。何かしらで開けて欲しくない場合は彼女さん2人だけが名乗ってね、頼んだわよ」

「めんどくせぇ......まあ、わかったよ。感染したら自害せずゾンビとして徘徊する予定だからね。じゃあ行って来ます」
 よくわからない宣言をして出て行く3人。自転車にまたがり道路に出て右左を見る。

「......進行方向には3人くらいいる......反対には倒れているの含め5人............自転車もやめた方が良いねバッグに詰めれるだけ詰めようか......」

「う、うん......」

「映画や漫画でもあまり見ない、周辺のゾンビを根絶やしいにしてサンクチュアリ聖域もしくは保護区を作るのも良いかもね......」
 とブランが言う。3人は進行方向の3人を始末せずに音を立てずに横をコソコソ歩こうとする。

「ねぇ......あいつずっとこっち見てるよ、道路に出てからずっとだよ......何メートルあると思っているの......」

「前の経験からの憶測だがゾンビは平均的な奴から、何かを失う代わり特化している奴がいる気がする。あれは視力特化で別の五感や手足のどれかが無いのかも」
 そう言うと弓を持ち矢を放とうとする。

「それで倒せる?」

「違う、これに爆竹をつけてるから音で同じ場所に集まる様にする。そしてこれで集まらない奴は多分聴覚が死んでるんだ......多分............」
 そう言いながら放ち爆発音がするとガン見してくる奴以外が集まる。

「......本当にガン見してくるだけみたいだから集まったゾンビ2人を不意打ちで始末しようっ」
 そう言うとスレッジハンマーを出して走り、わざと転ぶように体重をかけて1人の背中を潰し倒す。

「ちょっと......連携が取れてないわよ............サーシャお願い!」
 そう言いながら木刀でもう1人の膝の裏を殴り跪かせて、剣道の体重移動やすり足で鍛えられた逞しい脚で蹴り倒してサーシャに頼む。

「えぇ!」
 容赦無いマチェーテによる斬撃で首が飛ぶ。幸い、全員イカれているのかグロには耐性がある。ただ罪悪感は全員感じているので、始まったばかりだがこの世界でもしっかりと人間である事を保ってはいる。

「こいつら大前提で死んでるからか血がほぼ巡ってないし、多分凝固しているからか返り血を浴びないで済むな。良かっったッよッ!!!」
 そう言いながら倒した奴の首をハンマーで叩き動かなくさせた。頭を潰そうとするとリアルでは難しい上に掃除が大変な為に首を砕くのである。

「はぁ......まだ家出てから数百メートルも......や、やばいっサーシャァッ!しゃがめッ!」

「えっ!?」
 言われた通りに即座にしゃがむとブランの後方に向けてマスケットを発砲し、ブランは何かが倒れる音がしたのが聞こえた。

「さ、さっきのガン見野郎だ......突然来やが............おい、こいつ......目玉飛び出て大きくなってるじゃねぇか......てっきり丸メガネかけてんのかと......」
 弾丸は首に脊椎を砕き、当たった反動で仰向けに倒れたゾンビの姿は異様なモノだった。

「ゲームみたいに本当に変異ゾンビって出るんだぁ......」
 (ああ!流石、騎士様♡また私を救ってくれた!もっと私も頑張って迷惑をかけないようにしないと!)

 と思いながら念の為、目玉ゾンビの首を刎ねるブラン。指示してもないのに無言で惨いが最適な事をするので頼もしさとちょっと怖くなってきた朔。

 
「こいつってさもしかして目を離すと襲ってくるんじゃない?安全そうだと思って後回しにしたけど、そこを狙ったかのようにいつのまにか近くにいたからさ」
 と未奈が自身の考えを言う。

「なんちゃら財団に収容しているコンクリート像みたいだな............ならば、訓練された自衛官や警官も死ぬのも無理は無いなぁ......クソ集団だが可哀想に。次それっぽいのを見かけたらそもそも気づかれない様にしよう。もし目と目が合ったら全員で遠距離で殺しちゃおう」
 そう恐怖しながら歩く3人、道中何度もゾンビに出会うが切り伏せ、殴り潰し、神経断裂を繰り返していると心療内科の近くのコンビニを見つけて立ち寄る事にした。

「あー疲れた......あれ?自動ドア閉まっている......なら何も漁られていない?」

「うーん......電気が生きていた時期にやりたい様にやられていると思うよ、内部を見るとそこそこ荒れてるしね......まあ、役に立つのあるか探そうかね」
 そう朔が言うとドアをこじ開け3人は中に入った。

「臭い......お弁当とかが......黒くカピカピのカビカビに......」

「酷いねー、おお酒が!それも数千円の瓶が普通にある!」
 そう言いながらリュックに詰めていく未奈。

「まあ癒しは必要だからね、とは言え程々にね。あとはジュースも綺麗なのは持って帰ろう。あ!それとカロリーも大切だからチョコとかもパクろうか......ってそれ言ったらカ⬜︎リーメイトみたいな奴も持って帰ろう。優秀な携帯食だからね」
 そう言いながら2人は飲食物を漁る中ブランは雑誌を見ている。

「ねぇ......この雑誌類はゾンビの話題ばかりだけど、あの例のJ-ウイルスって名前も書いてある......本当かわからないが自衛隊の人間からの大スクープとしての見出しで記事に......」

「な、なんと!?............これは飛沫、接触、媒介物によって恐らく感染するがウイルスの感染力は弱く、身体に多少なら入っても自然治癒する為に抗体が見つかるのも時間の問題か......と。分かりきった様な事しか無いな......JはJUDGMENT審判って書いてあるな?ばら撒いたのは隣国の大陸だとされている............これ以上は意味の無い事しか書いてないな。取り敢えず、持って帰ろうか。悪いけどサーシャお願い」

「うん!」
 そう言うとゾンビ発生後に出た雑誌を数冊リュックサックに入れた。そして大体は略奪したので外に出ようとする3人。

「お、重い............」
 ヨロヨロする男、朔。

「ほら、中身移して」
 と思いリュックを背負ってもピンピンしている女、未奈。

「大丈夫?怪我人なんだから疲れたら遠慮無く言ってね?休んでいる間は見張るから......」
 とオドオドしながら心配するブラン。

「力作業は男なんだがな......不甲斐ねぇ......」

「そもそもサーシャも言った通りそこそこ酷めの怪我人なんだから気にしない!気にしない!」
 そう言いながら未奈は座って物を整理していた朔を立たせて外に出ていく。

 (あれ?こう言うのって別の集団と鉢合わせして面倒な事になるけどセーフ?まあいちいちコンビニ如きでそんなイベント発生してたまるか)
 と朔は思いながら2人の空いている方の手を繋いでいる、危ない時でもイチャイチャのチャンスは逃さない3人。
 ブランとの身長差でその光景はさながらちび宇宙人とエージェント2人。まあ未奈とは2センチしか変わらないが他者が見たらそう見え、例の有名なコラ写真を思い出すだろう。そうして雑談して付近にゾンビがいるとは思えない程ゆるーく進んでいると心療内科に到着する。
 

「......やっと着いたー......2人とも本当に助かったよ、ありがとうな」
 と2人を笑顔で抱き寄せる。

「んー♡これからも守るからね、騎士様♡」

「まあ......気にしないで。でも、その礼の気持ちは受け取るよ♡」
 と安全じゃ無い場所で再度イチャイチャし始めた馬鹿たちは、薬局の中から音が鳴り一気に現実に引き戻され焦り黙り薬局の方をよく見る。

「......自動ドアは無理矢理開けられている、銃をみんな持って離れて遠くから内部を見......」
 そう言い途中に女が中から右左確認して出てきて、真正面の3人と鉢合わせし互いに驚く。

「キャ......」
 出て来た女は自分の口を押さえた。

「ぎゃあ......」
 2人は朔の口を押さえた。

「びっくりした~......ちょっと私は何も大したモノは持ってないわよ!」
 と手を挙げてきたので朔が言う。

「違う違う、別に貴女から何か奪う気はないです。貴女が出てきた薬局の中にある薬に用があるのです」
 そう言いながら朔は銃を下ろして2人にも下ろさせ、戦う気も襲う気も無い事を示す。

「よかったぁ......こんな世界になっても精神病の薬は必須だから嫌になるわよねー。まだ中に色々あるから求めているのがあると良いわね!......外にあまり居たくないのでそれでは~」
 そう安心して中にまだ在庫があると言うと走って立ち去って行く女。

「......やはり、無理してでも薬を取りに来るなんて心の病気はとても苦しいんだね......朔......本当に遠慮無く今後も頼ってね。漁って来ていいよ、見ているから」

「そうそう、私たちが出入り口に目立たない様にスタンバイしているからさ」

「ありがとよっ」
 そう言いながら薬局に入る。

「えーっと薬があるのは調剤室だったか、ここは待合場所から見えるからわかりやすくて助かる。......よしめちゃくちゃな種類の箱が大量にあるな............俺が必要なのは炭酸リチウム、クエチアピン、セパゾン、エスゾピクロン、エスタゾラム。あとロラゼパム............」
 と薬の名前を書いたメモを見ながらもう暫く来たくないので箱をリュックに片っ端から入れる。

「あとは......昔飲んでいた薬も持って行こう......一応全部は盗らないでおくか............終わったよ~」

「ok!出ましょうか............あら?なんだかうるさくないですか?」

「これ......は車じゃない?それも自衛官が乗っていた奴と同じくらいうるさい」

「この通りを通るかもしれないっ!2人とも薬局の調剤室に入ってっ!!」
 隠れる様に中に入り少しすると、低速で自衛隊の車と護衛対象が乗っているのか高級車が通り過ぎて行くのをこっそり見ていた。その中で徒歩で護衛しているであろう自衛官の話し声が聞こえてくる。

「お前結婚寸前の女捨てて浮気女と俺らのところに入ったのってマジ!?」
 と笑いながら誰かに聞く声。

「そうっすよ!ダチは良いんすけど女の方は何か顔だけ良くて居てて疲れるしキツかったっすよ~」
 それを聞いた未奈は反応する。

「~~っ!!!あ、あんにゃろう......」
 小声で怒るのブランが静かにする様にジェスチャーで伝え黙るとまた声が聞こえる。

「しかし、俺が入って即座にミッションだなんて人が本当に足りて無いんですね」

「ああ......反乱した勢力もいるし、ゾンビや化け物に食い殺されたりして1/4もいないんじゃないか............」
 話し声が遠のいて行く。ブランは終わったと思って立ちあがろうとするが、朔はかなり焦り急いで手を掴み目をガン開きして首を横に振る。
 (こう言う時は絶対にまだ奴らはいる!絶対に!ゲームならまだしもリアルで鉢合わせは蜂の巣で儚く散って行く......)

 そう思いながら数分待つと声が聞こえて来る。

「ほら、いないっすよ~気を張り過ぎですよぉ。俺はこの薬局漁ってブツブツ交換出来そうなもの探して来るっすわ~」
 それを聞いた一同は焦り銃を手に持ち撃てる様にするが女子2人は震えていた。

「貴方......くだらない事をしていないで行きますよ、もうすでにぐちゃぐちゃに漁られているじゃないですか。時間の無駄です、戻りなさい」

「......はぁ......流石に上手い事行かないかぁ......」
 そう言いながら調剤室のドアノブから手を離し立ち去る。そこからまた数分して朔が口を開く。

「ん......はぁ......はぁ。あ、危なかった......こんな間一髪避けられるなんてよかった......あいつだけなら殺せただろうが、どうせ周囲には自衛官だらけだろうしお前らを守れなかっただろうからさ」
 唇の水分が減っていた為に口を開く時、唇同士が引っ付いて少し痛かった。だがそれ以上の痛みは味合わなくて良かったとしょうもない事を思う朔であった。

「さ、朔の言う通り動かなくてよかった......」
 ブルブル震える未奈が言う。

「いや、本当に良かった。今は安心しな......」
 そう言いながら抱きしめる朔。ブランはそれを見ていた、ただ......見ていた。

「あ、サーシャも無事で良かったよ。その緊張で握り続けている拳の力を解きな......」
 そう言いながらブランも抱くと安心した様に脱力し、少しでも邪な事を考えた事を後悔するブラン。
 これによりブランの負の感情による錯乱殺戮バッドエンドルートを砕く朔。例えこの世界のモブでも目指すはハッピーエンドのみだ。

「安心して思い出したけど風邪とかの症状に対応した普通の病気に飲む薬も少しは持って帰ろう」
 そうして3人は確実に効能を覚えている薬だけ持ち帰り薬局を出る。

「............よし、あいつらはいない......が俺らの帰り道だから慎重に行こうか」
 そう言われて2人は返事をして動く。暫く歩くと射殺された遺体だらけであった。

「うわー......これ感染者だよね?まさか一般人を殺したわけじゃあ......」
 と恐る未奈。

「こちらの方......下半身の原型が......」

「血生臭さとは違う変な臭いがするし通り抜け......」
 そう朔が言いながら道を通ろうとすると、寝転んでいた死に損ないゾンビが足を掴み噛みつこうとする。

「ダメっ!い、嫌だッ‼︎」
 声を上げて思い切り蹴り飛ばしたブラン。更に追撃にマチェーテで首を刎ねるが朔が死ぬ所だったのが原因で錯乱してゾンビを無駄に傷つけるのを後ろから腕を持ち掴みかかる朔。その身長差20センチ以上。

「落ち着け、サーシャ!俺は無事だ!これはただのエゴだがっ!そのゾンビだって誰かに愛されていた1人の人間だったんだ!!既に首は刎ねたんだ、もう無力化されている!これ以上は無意味に傷つけるな!」
 そう言われて落ち着くブランは泣き始める。

「もう失いたくないの......ごめん............行こう」
 そう言い傷付け過ぎた遺体に頭を下げ手を合わせた。そして3人は自宅の付近にまで帰って来れたが異変を感じた。

「......風に乗った空気が腐敗臭では無く焦げ臭いぞ?......!マズい!家の近くが燃えていたら消火する事が出来ないっ!江戸時代みたいに破壊消火するしかないっ!!一番トロい俺が言う事じゃないがさっきの事は忘れて走れ!!」

「う、うん!」

「......ああ」
 未奈は通るルート全てに射殺された遺体があった事、朔の自宅の方からの焦げ臭さに嫌な予感を覚えた。

「爆発音っ!??や、やっぱり家が燃えている!それも人為的か!?早く近づかないと!............う、嘘?嘘だよね?母さんっ父さぁああん!!!!」
 朔が見たのは燃え盛る自宅や隣家であった。荷物を全て投げ捨て身体に紐でかけてあった武器だけで自宅に走り寄る。2人は呆気に取られフリーズしていたが朔を追いかける。

「は、早く!朔が1人だと危ないよ!それにご両親が外で避難しているはず!負傷しているかもしれない、だから......だから今度は失わない様に守らないと!!」
 ブランは自分と重ね急いで走り出す。それに次いで未奈も走り辿り着いた2人が見た光景。正にこれ地獄とは言わんばかりに朔の家は倒壊して業火の如く燃え盛る、罰せられる筈の輩に寄って家を破壊された罪無き朔は膝から崩れ落ちていた。そして、その頭に銃を突きつけるあの野郎の姿が......
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