『平凡』を求めている俺が、チート異能を使ったりツンデレお嬢様の執事になるのはおかしいと思うんだが

水無月彩椰

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手掛かりの1つ

《雪月花》会談──後日談

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「《雪月花》の、《姫》。会談の前に……《仙藤》の《長》より、言伝を預かっております」
「へぇ、何て?」
「只今より代読させて頂きます」


『月ヶ瀬美雪、《雪月花》の──《姫》。単刀直入に言わせてもらう。今回の一連の騒動について、我々は何も言わない。賠償金も、最高責任者による謝罪も、処分も。そんな事をするつもりは無い。

だが、その代わりに1つ。提案といこう。我々に協力する気はないかな?
 あぁ、勿論、強制はしない。そこは己の判断に任せよう。だが、断った場合……上には我々が居るのをお忘れなく。

いくらその存在が廃れしモノだとしても、わざわざ名を改め、最古の起を否定し続けるのなら。当然、無視は出来まい? 
 その存在を無視したとなれば、己の拠り所たるそれさえも無意味となるのだからね。

さて、2度目の問いかけだ。……どうする?
 言っておくが、我々は併合しようなどという考えは一切持ち合わせていない。ただ、こちらに手を貸してほしいだけだ』


「……以上となります。如何致しましょう?」

 





「あー……もうムリ」
「……分かりみ」


万年筆を胸ポケットに仕舞い、机に突っ伏して呟けば──正面から聞こえてくるは、呑気な彩乃の声。

隠蔽班と協力して現場の後片付けをし、《雪月花》との会談に出かける桔梗を見送り、部屋に帰ってからも書類仕事に追われる始末。
 おかげで夜の6時を回ってしまった。 


「ホンットにもうムリ。動きたくない。学校も行きたくない」
「それな」


そうこうしていると、ガチャっ……という扉の開閉音が部屋に響く。
 そして現れたのは、お盆の上に湯呑みと急須を載せた和風ロリ。


「お疲れ、だから。……お茶」

「ありがとね、彩。今ほど側近の素晴らしさを思い改めた事はなかったよ」
「……どう、も?」

 
背伸びをしつつ湯呑みを渡してくる彩にお礼を言いつつ、椅子に深く腰掛けて湯呑みの縁を口へと持っていく。
 いつものように芳醇な香りがし、程よい苦味が口の中に広がる──ハズ、だった。

「……ぶっ!?」
「きゃっ!?」


やべぇ、冗談抜きで吹いた。
 即座に彩が『開かずの小部屋』で防御してくれたから本人に火傷もなく、床も濡れることがなかったが……。


「彩、ゲホッ……! ゲホッ、何を……入れ、た……!?」
「センブリ、茶……ですが」
「「…………」」


咳き込みつつ問う俺に彩は1つの答えを出したのだが、今度は彩を除いた全ての人が凍り付いた。
 え、何。センブリ茶? そんなモノ食堂にあったっけ?


「《長》が疲労困憊で、可哀想……と言ったら──コック長が笑顔で、くれ……ました」
「あの野郎……完全に嫌がらせだろうが!」


まぁいい。彩のその気遣いは嬉しい。凄く嬉しい。
 だが問題は、そこでセンブリ茶を渡すコック長だ。普通センブリ茶渡す? 渡さないよね? 


「あー、2人とも少し待っててくれる? 厨房行ってくるから」
「コック長逃げて! 超逃げてー!!」
 

相も変わらず、我が周辺は騒がしい。   


~to be continued.
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