44 / 57
手掛かりの1つ
決闘の刻──後編
しおりを挟む
「正義はアタシたち《雪月花》。……神の裁きを受けなさい」
──直後、辺りは真昼の如く光に包まれた。
天から飛来するようにして降り立つ一筋の雷。それが地に達すると同時、蜘蛛の巣が張り巡らされるように、スパークが走った。
電流が流れたのは瞬間的ではあるが、それでも今までにないほどの手足の痺れ。
脳や三半規管辺りも少なからず影響を受けたのか、目眩が酷い。
そんな症状と共に、彩乃の手を引きつつ周囲を見渡せば、
「っ……!」
彩乃は何とか無事だったが、問題は──当初の人数とは程遠い程に減らされていた、処理班の面々だ。
彼らはよろめきつつ立ち上がるが、その身体には微塵も力がこもっていない。
そして地面を埋め尽くすは、先程の雷電を受けて失神している数多の黒服たち。
そして圏外からそれを睥睨しているのは、戦科部隊部隊長の月ヶ瀬美雪。
先程までの焦りの色は何処へやら、と言いたくなるくらいに、勝ち誇った表情だった。
そして、その後ろに待機している戦科部隊。彼らの人数が──先程の人数よりも、増えている。
それは恐らく、伏兵。満を持して登場した、損耗ない戦科部隊の集合体。
……あぁ、どうりで簡単だと思ったんだ。彼女は初めから全ての人員を動員していたワケではない。『切り札』である程度一掃してから、残りの総動員した戦科部隊で鎮圧しようとしたのだろう。
「無事とは驚いたわね……。で、どうするの? まだ反抗するのかしら」
「もちろん……だ。客がわざわざ出向いてくれたというのに、それに最後まで応じなくて──どうする」
やっと治まってきた痺れと目眩に苛立ちを覚えつつも、俺は美雪を睨みつつ姿勢を正す。その後ろには、今となっては多すぎる《雪月花》の姿があった。
「それが、《雪月花》の──お前の……切り札か」
「そう、『神の裁き』。それがアタシの異能名」
それはまさに切り札とも言える異能であり、実にイレギュラーな異能でもあった。
その効力は、地に伏している数多の処理班の人間が証明している。
「抵抗しないのなら、見逃してあげるけど? アタシたちの目的は、本部に眠っている情報の奪取。それだけだから」
……ふむ。そのために彼女らにとって邪魔な存在である戦闘部隊を、俺は前線へと動員してしまった。
だから──
「……なるほど。本部を手薄にする、という罠にまんまと嵌ったワケか。俺は」
「そうね、さすがにアウェイで戦う気はないから。それに《仙藤》は本部での迎撃戦を嫌って、戦闘部隊を総動員して来るだろうと読んでたからね」
「それが本当なら、大した策士じゃないか。是非ともこちらに招き入れたい」
「丁重にお断りするわ。アタシは《雪月花》の月ヶ瀬美雪よ」
キッパリとかぶりを振った美雪は、再び問う。
「この状況、まともに戦えそうなのはアンタだけっぽいわね。どうする? 数人じゃあ何も出来ないじゃない。降伏する?」
随分と上から目線でモノを言ってくれるねぇ、月ヶ瀬美雪。
だが、そう言われるのも仕方がない。この状況なら。
戦闘の要である、処理班の殆どが再起不能。美雪の言に従えば、残るは俺や彩乃含める数人──
「たった数人、ねぇ……」
ちょっとこれは、訂正を求めようか。
「……広範囲鎮圧型の異能。確かに強力だ。故に、自信を持つのも分かる。切り札にするのも分かる」
少しばかり声色が変わった俺に、美雪は──《雪月花》の異能者たちは、怪訝な顔をし、身構える。
それは今までの経験則で、危険だと判断したが故の行動。
「全域を攻撃し、戦力を削いだ。たったそれだけで勝ち誇るとは、何と楽観的なモノの見方だろうか」
お前は気付いてないんだよ。
「──で、それだけか?」
「……はぁ?」
あまりの問いかけに思わず間抜けな声を漏らす美雪。まぁ、その気持ちは分からんでもない。
だって彼女は、自身が正攻法で負ける可能性を全く考慮していないのだから。
「これ以上に打つ手が無いというのなら、お前たちは敗北確定だ。何故なら自身が負ける可能性を考慮していないのだし──」
先に本命を投入し、後で畳み掛けるという考えが出来ていたのに……どうして。どうして、それを防げる人員が居ないと判断した?
「──何より俺たちが対抗する、という事を分かっていないからだ」
月ヶ瀬美雪、ご苦労さま。だが、ツメが甘かったな。
「お前はまだ、分かっちゃいないんだよ。そして、俺を1人にすらすることも出来ない」
「何を、言って……?」
ここまで言っても気付かないとは。
「お仲間なら最初からずーっと。……そこにいたのだからね」
そう嘯き、 俺はそれを指さす。
辺りが吹き飛ばされているにも関わらず、一切の傷すら負っていない建物を。
「……ッ! 各員、攻撃準備!」
流石は武の異戦雪原。俺がそれを指さした時にはもう、攻撃態勢に入っていた。
遠距離攻撃に敵した焔、氷など数多の異能がその建物へと殺到していく。
それらは建物の外壁を壊し、本体を壊し、見る間に瓦礫へと変えていく。
──安全圏から、一方的に攻撃を。そんな彼女の考えが、頭の中に過ぎる。
「撃ち方やめ! ……何、で……!?」
指令を出した直後、美雪は驚愕に目を見開く。彼ら彼女らの攻撃は確かに直撃していた。それはあの瓦礫の山からも明らか。
だが、1箇所だけ。立方体状にぽっかりと空いており、全くの被害を受けていない箇所があった。
露になったそこに立つのは、隠蔽班班長──水無月彩。
そして足場がないにも関わらず浮いている、黒服は……《鷹宮》処理班。
「広範囲型の、防御壁……!?」
「当たらずとも遠からず、だな」
美雪の呟きに、正解は教えずとも答えを促しておく。ペラペラと詳細を話すのは、漫画の中とバカだけで充分。
そしてこれが、彩が提案してきた作戦であった。『隠蔽班と《鷹宮》処理班を戦闘が始まる前に待機させておき、本来の意味での危機に陥るまで、前線を守る』というね。
『開かずの小部屋』の本質は、万物全ての物質を遮断する事。
つまり、あの雷でさえ通さない。数百という大人数を密室に入れて、内部での酸素の消費は激しかっただろう。
そもそも姿が見えないと分かっていても、敵の傍で息を潜めているのはどれ程の恐怖か。
「あの時から、広範囲型の異能はあると予測していたんだよねぇ」
俺が一方的に狙撃した時。あの時のフィールドは今回と同じ、『開けた』グラウンドだった。
そして罠を仕掛けられていたとはいえ、その痕跡は一切なかった。
つまりそれは、使わなければ痕跡が残る事のない──異能だ。
前回は使用しなかったと言えど、前線へと赴くのなら。それを使わない手はないだろうね。
────さて、第2回戦と行こうではないか。
「アレを上回るイレギュラーな異能は? 更なる増援は? 俺たち《仙藤》と《鷹宮》を完全に抑え込める方法は? それが無いというのなら──」
美雪は知る由もないが、久瀬の時と同様に。
「──さぁ、本番の開幕だ。これだけの数……消耗した状態で、全てを相手出来るかな?」
「それでも、よ。伏兵はお互い。まだ負けたワケじゃ、ないわ!」
力強く言い切る美雪だが、今はそれが『切り札はもう無い』と示唆してしまっている。
それもそのハズ。普通、あの雷は防げない。彩のような異能ではない限り、防ぐ事はまず不可能だ。
だから、《仙藤》処理班が見事に全滅させられたんだ。
……いや、正確には『《鷹宮》処理班を除いて』 か。
そして、あれだけの広範囲鎮圧型の異能。1人で組織を相手出来る、実に強力な異能。
あれをポンポンと連発出来るハズがない。だとすると、
「『神の裁き』の発動までにかかる時間は60分前後といったところか」
その前に片をつけてしまえれば1番良かったのにね。
まぁ、それが失敗した以上は普通にいくか。
「先程同様、各々隊を組んで各個撃破を旨としろ!」
「《鷹宮》も《仙藤》と合わせて隊を組むこと! 各個撃破を目標にして!」
俺たちの叫びによって形作られるは、これまた3人1組の小隊。
それらが水球に焔槍、と数多の異能を駆使して《雪月花》へと襲いかかる。
しかし、その量は先程よりも遥かに多い。
「今まで通り、各個撃破! 挙動不審な者は倒して構わないわ!」
美雪の叫びに応じて駆けるは、戦科部隊。それらは俺たちより数は少ないと言えど、力量では僅かに上。
──互いに狩り、狩られ、戦力が削がれ、精神が喰われていく。
そんな中、1人の異能者がこちらに向かって駆けてきた。
「指揮官さえ、潰せば……!」
まぁ、敵の大将を先に倒すのが集団戦の定石だろう。
鈍色の手の先を揃え、貫手のようにしてこちらに突き出してくる。『硬化』系の異能者か。
……だが俺は、それを避けるような事はしない。
「ッ……!?」
敵である異能者の手の動きが、突如空中で止まる。見えない壁に阻まれ、こちらに攻撃が通らない。
そう、彩の『開かずの小部屋』だ。絶壁の強度を誇るそれは、次々と迫り来る敵の貫手を一切進ませる事はなかった。
……『開かずの小部屋』。その密室の中で暴れれば、それほど内部の酸素消費量は増えていく。
それは彼も同様に。だんだんと動きが鈍り、意識が朦朧としていく。
そして向かった先は──ブラック・アウト。酸欠による失神だ。
といった俺の読み通り。辺りを見渡せば、各地では突如躓く《雪月花》の人間が。
またあるところでは、見えない壁にぶつかって伸びてしまっている人間が。
またまたあるところでは、顔を真っ青にして酸欠で倒れ込む人間が。
「まだまだ、出す……よ」
その声はいつもとは違いどこか誇らしげで、自信に満ち溢れているモノだった。
彩の『開かずの小部屋』は彼女が認知出来るだけ創り出されていく。それは使用者が出している、という事を分かっているが故。
「……そろそろか」
辺りを見回して確認したところ、残る《雪月花》の人員は百にも満たないだろう。
それなら──俺たちも、加勢しますか。
「彩乃」
「……はぁ」
互いに掛ける言は短く。
だが、それだけでも意味は通じたハズだ。その証拠に、グラウンドの中央には──円状の影が差しているのだから。
それだけで状況を察した処理班と隠蔽班はすぐさま退避し、防御壁を張る。
逆に無慈悲な武器の雨を予測できなかった《雪月花》には、それらが裁きとして襲いかかる。
それは俺たちにとっては2回目。
そして《雪月花》にとっては最も凶悪なモノとなる。
それらは重力に引かれて落下し、グラウンド全体に刺さり、散らばっていく。
俺は中央へと駆けつつ、傍らにあった日本刀を片手で引き抜いた。
今回は多種多様なモノを創る必要もないので、かなり余裕があるらしい。
その証拠に、範囲は前よりも格段に大きかったから。
「──っ!」
突如戦場に乱入したといえど、それは《雪月花》からしたらただの的。
「……ただの異能者が。調子に乗るな」
四方八方から、焔弾や水レーザー。土塊や氷が襲いかかってくる。
それでもなお、俺は防御の姿勢をとらない。とる必要がない。
それらは『開かずの小部屋』によって全て防がれ、霧散されて。
僅か数秒の間に、俺はベレッタを抜き、『魔弾の射手』を適応させる。
アキレス腱へ向かうように指定された銃弾は、トリガーを引くだけで、寸分違わずの場所へと着弾した。
迫り来る攻撃を銃弾で去なし、相殺させ、一瞬の隙を見計らってカウンター攻撃をする。
機械的な動作を繰り返すうち、残る《雪月花》の人員も、数十人。
俺は周囲を見渡し、《仙藤》と《鷹宮》へ聞こえるように告げる。
……さて、最後は。
「諸君。焔槍、構え」
俺たちの得意とするモノで。
「水球、圧縮よ」
──華麗に、フィナーレを飾ろうじゃないか。
「「……発射!」」
僅か10にも満たないほどに減っていた《雪月花》。
それを散らせるにはこれだけで充分。また、お前たちの負けだよ。
──直後、閃光と轟音を以て。この一連の出来事は、幕を閉じた。
◇
「さぁ、これで分かって頂けたかな?」
「ここまでしておいて、今更……投降なんか……!」
「今更? ……いやはや、何を言う」
グラウンドの傍らで脱力しきったように座り込み、こちらに向かって叫ぶ月ヶ瀬美雪。
しかしその言い分には、可笑しな点があった。
「この結果はお前自身が招き、望んだ事だろう?」
ほぼ重症を負っているであろう戦科部隊をずらりと見渡す。
この惨状、これを望んだのは、他の誰でもない。美雪本人だ。
「お前がしたかったのは、模擬戦か? それとも、決闘か?」
どちらにしろ、美雪が望んだんだ。この結果は。
本部に眠る情報の奪取の為、彼女は動いた。
そして俺たちは、それを阻止しようとしただけの事。
「それにしても、やけに合点がいくと思ったよ。《雪月花》、《月ヶ瀬美雪》──言わばそれは、詞遊び。自身の異能と名前と……更には、その本拠地に準えて付けたワケか」
「…………」
「その歴史は《鷹宮》や《仙藤》より僅かに少なかれど。今や廃れし──古来より続く《雪月花》の総本山。源流か」
月ヶ瀬美雪は、言わば《雪月花》の姫だろう。イレギュラーで強力な異能者というのも、頷ける。
しても、ここまでの人間が流罪の如く我々のお膝元に居するとは……皮肉なモノだ。
──さて、これは思わぬ拾いモノだな。
そう内心で少しほくそ笑みつつ、俺は質問を戦科の姫へと投げかける。
「さて、どうする?」
この問いかけも何度目か。
「今回も、お前たちの……負けだ」
各々仕事を済ませ、俺の後ろへと整列する処理班と隠蔽班の面々。
攻勢異能者と戦闘に不向きな隠蔽班が現れたという事は、それはある1つだけを指す。
──即ち、戦の終結。
「ただの一手。戦場ではその読み違いでさえ、大きな影響を及ぼす」
『神の裁き』が破られたら?
その可能性を考慮していなかったのが、彼女らの敗因だ。
切り札を始めに出したのが仇となったね。それこそ考えられていたら──こちらが負けていたかもしれない。
「まぁ、その一手を創り出してくれたのは──年端もいかない、1人の少女だが」
そう言って、俺は後ろに控えている彩へと視線を移す。今回の勝利の女神は──
「……この子、だね」
~to be continued.
──直後、辺りは真昼の如く光に包まれた。
天から飛来するようにして降り立つ一筋の雷。それが地に達すると同時、蜘蛛の巣が張り巡らされるように、スパークが走った。
電流が流れたのは瞬間的ではあるが、それでも今までにないほどの手足の痺れ。
脳や三半規管辺りも少なからず影響を受けたのか、目眩が酷い。
そんな症状と共に、彩乃の手を引きつつ周囲を見渡せば、
「っ……!」
彩乃は何とか無事だったが、問題は──当初の人数とは程遠い程に減らされていた、処理班の面々だ。
彼らはよろめきつつ立ち上がるが、その身体には微塵も力がこもっていない。
そして地面を埋め尽くすは、先程の雷電を受けて失神している数多の黒服たち。
そして圏外からそれを睥睨しているのは、戦科部隊部隊長の月ヶ瀬美雪。
先程までの焦りの色は何処へやら、と言いたくなるくらいに、勝ち誇った表情だった。
そして、その後ろに待機している戦科部隊。彼らの人数が──先程の人数よりも、増えている。
それは恐らく、伏兵。満を持して登場した、損耗ない戦科部隊の集合体。
……あぁ、どうりで簡単だと思ったんだ。彼女は初めから全ての人員を動員していたワケではない。『切り札』である程度一掃してから、残りの総動員した戦科部隊で鎮圧しようとしたのだろう。
「無事とは驚いたわね……。で、どうするの? まだ反抗するのかしら」
「もちろん……だ。客がわざわざ出向いてくれたというのに、それに最後まで応じなくて──どうする」
やっと治まってきた痺れと目眩に苛立ちを覚えつつも、俺は美雪を睨みつつ姿勢を正す。その後ろには、今となっては多すぎる《雪月花》の姿があった。
「それが、《雪月花》の──お前の……切り札か」
「そう、『神の裁き』。それがアタシの異能名」
それはまさに切り札とも言える異能であり、実にイレギュラーな異能でもあった。
その効力は、地に伏している数多の処理班の人間が証明している。
「抵抗しないのなら、見逃してあげるけど? アタシたちの目的は、本部に眠っている情報の奪取。それだけだから」
……ふむ。そのために彼女らにとって邪魔な存在である戦闘部隊を、俺は前線へと動員してしまった。
だから──
「……なるほど。本部を手薄にする、という罠にまんまと嵌ったワケか。俺は」
「そうね、さすがにアウェイで戦う気はないから。それに《仙藤》は本部での迎撃戦を嫌って、戦闘部隊を総動員して来るだろうと読んでたからね」
「それが本当なら、大した策士じゃないか。是非ともこちらに招き入れたい」
「丁重にお断りするわ。アタシは《雪月花》の月ヶ瀬美雪よ」
キッパリとかぶりを振った美雪は、再び問う。
「この状況、まともに戦えそうなのはアンタだけっぽいわね。どうする? 数人じゃあ何も出来ないじゃない。降伏する?」
随分と上から目線でモノを言ってくれるねぇ、月ヶ瀬美雪。
だが、そう言われるのも仕方がない。この状況なら。
戦闘の要である、処理班の殆どが再起不能。美雪の言に従えば、残るは俺や彩乃含める数人──
「たった数人、ねぇ……」
ちょっとこれは、訂正を求めようか。
「……広範囲鎮圧型の異能。確かに強力だ。故に、自信を持つのも分かる。切り札にするのも分かる」
少しばかり声色が変わった俺に、美雪は──《雪月花》の異能者たちは、怪訝な顔をし、身構える。
それは今までの経験則で、危険だと判断したが故の行動。
「全域を攻撃し、戦力を削いだ。たったそれだけで勝ち誇るとは、何と楽観的なモノの見方だろうか」
お前は気付いてないんだよ。
「──で、それだけか?」
「……はぁ?」
あまりの問いかけに思わず間抜けな声を漏らす美雪。まぁ、その気持ちは分からんでもない。
だって彼女は、自身が正攻法で負ける可能性を全く考慮していないのだから。
「これ以上に打つ手が無いというのなら、お前たちは敗北確定だ。何故なら自身が負ける可能性を考慮していないのだし──」
先に本命を投入し、後で畳み掛けるという考えが出来ていたのに……どうして。どうして、それを防げる人員が居ないと判断した?
「──何より俺たちが対抗する、という事を分かっていないからだ」
月ヶ瀬美雪、ご苦労さま。だが、ツメが甘かったな。
「お前はまだ、分かっちゃいないんだよ。そして、俺を1人にすらすることも出来ない」
「何を、言って……?」
ここまで言っても気付かないとは。
「お仲間なら最初からずーっと。……そこにいたのだからね」
そう嘯き、 俺はそれを指さす。
辺りが吹き飛ばされているにも関わらず、一切の傷すら負っていない建物を。
「……ッ! 各員、攻撃準備!」
流石は武の異戦雪原。俺がそれを指さした時にはもう、攻撃態勢に入っていた。
遠距離攻撃に敵した焔、氷など数多の異能がその建物へと殺到していく。
それらは建物の外壁を壊し、本体を壊し、見る間に瓦礫へと変えていく。
──安全圏から、一方的に攻撃を。そんな彼女の考えが、頭の中に過ぎる。
「撃ち方やめ! ……何、で……!?」
指令を出した直後、美雪は驚愕に目を見開く。彼ら彼女らの攻撃は確かに直撃していた。それはあの瓦礫の山からも明らか。
だが、1箇所だけ。立方体状にぽっかりと空いており、全くの被害を受けていない箇所があった。
露になったそこに立つのは、隠蔽班班長──水無月彩。
そして足場がないにも関わらず浮いている、黒服は……《鷹宮》処理班。
「広範囲型の、防御壁……!?」
「当たらずとも遠からず、だな」
美雪の呟きに、正解は教えずとも答えを促しておく。ペラペラと詳細を話すのは、漫画の中とバカだけで充分。
そしてこれが、彩が提案してきた作戦であった。『隠蔽班と《鷹宮》処理班を戦闘が始まる前に待機させておき、本来の意味での危機に陥るまで、前線を守る』というね。
『開かずの小部屋』の本質は、万物全ての物質を遮断する事。
つまり、あの雷でさえ通さない。数百という大人数を密室に入れて、内部での酸素の消費は激しかっただろう。
そもそも姿が見えないと分かっていても、敵の傍で息を潜めているのはどれ程の恐怖か。
「あの時から、広範囲型の異能はあると予測していたんだよねぇ」
俺が一方的に狙撃した時。あの時のフィールドは今回と同じ、『開けた』グラウンドだった。
そして罠を仕掛けられていたとはいえ、その痕跡は一切なかった。
つまりそれは、使わなければ痕跡が残る事のない──異能だ。
前回は使用しなかったと言えど、前線へと赴くのなら。それを使わない手はないだろうね。
────さて、第2回戦と行こうではないか。
「アレを上回るイレギュラーな異能は? 更なる増援は? 俺たち《仙藤》と《鷹宮》を完全に抑え込める方法は? それが無いというのなら──」
美雪は知る由もないが、久瀬の時と同様に。
「──さぁ、本番の開幕だ。これだけの数……消耗した状態で、全てを相手出来るかな?」
「それでも、よ。伏兵はお互い。まだ負けたワケじゃ、ないわ!」
力強く言い切る美雪だが、今はそれが『切り札はもう無い』と示唆してしまっている。
それもそのハズ。普通、あの雷は防げない。彩のような異能ではない限り、防ぐ事はまず不可能だ。
だから、《仙藤》処理班が見事に全滅させられたんだ。
……いや、正確には『《鷹宮》処理班を除いて』 か。
そして、あれだけの広範囲鎮圧型の異能。1人で組織を相手出来る、実に強力な異能。
あれをポンポンと連発出来るハズがない。だとすると、
「『神の裁き』の発動までにかかる時間は60分前後といったところか」
その前に片をつけてしまえれば1番良かったのにね。
まぁ、それが失敗した以上は普通にいくか。
「先程同様、各々隊を組んで各個撃破を旨としろ!」
「《鷹宮》も《仙藤》と合わせて隊を組むこと! 各個撃破を目標にして!」
俺たちの叫びによって形作られるは、これまた3人1組の小隊。
それらが水球に焔槍、と数多の異能を駆使して《雪月花》へと襲いかかる。
しかし、その量は先程よりも遥かに多い。
「今まで通り、各個撃破! 挙動不審な者は倒して構わないわ!」
美雪の叫びに応じて駆けるは、戦科部隊。それらは俺たちより数は少ないと言えど、力量では僅かに上。
──互いに狩り、狩られ、戦力が削がれ、精神が喰われていく。
そんな中、1人の異能者がこちらに向かって駆けてきた。
「指揮官さえ、潰せば……!」
まぁ、敵の大将を先に倒すのが集団戦の定石だろう。
鈍色の手の先を揃え、貫手のようにしてこちらに突き出してくる。『硬化』系の異能者か。
……だが俺は、それを避けるような事はしない。
「ッ……!?」
敵である異能者の手の動きが、突如空中で止まる。見えない壁に阻まれ、こちらに攻撃が通らない。
そう、彩の『開かずの小部屋』だ。絶壁の強度を誇るそれは、次々と迫り来る敵の貫手を一切進ませる事はなかった。
……『開かずの小部屋』。その密室の中で暴れれば、それほど内部の酸素消費量は増えていく。
それは彼も同様に。だんだんと動きが鈍り、意識が朦朧としていく。
そして向かった先は──ブラック・アウト。酸欠による失神だ。
といった俺の読み通り。辺りを見渡せば、各地では突如躓く《雪月花》の人間が。
またあるところでは、見えない壁にぶつかって伸びてしまっている人間が。
またまたあるところでは、顔を真っ青にして酸欠で倒れ込む人間が。
「まだまだ、出す……よ」
その声はいつもとは違いどこか誇らしげで、自信に満ち溢れているモノだった。
彩の『開かずの小部屋』は彼女が認知出来るだけ創り出されていく。それは使用者が出している、という事を分かっているが故。
「……そろそろか」
辺りを見回して確認したところ、残る《雪月花》の人員は百にも満たないだろう。
それなら──俺たちも、加勢しますか。
「彩乃」
「……はぁ」
互いに掛ける言は短く。
だが、それだけでも意味は通じたハズだ。その証拠に、グラウンドの中央には──円状の影が差しているのだから。
それだけで状況を察した処理班と隠蔽班はすぐさま退避し、防御壁を張る。
逆に無慈悲な武器の雨を予測できなかった《雪月花》には、それらが裁きとして襲いかかる。
それは俺たちにとっては2回目。
そして《雪月花》にとっては最も凶悪なモノとなる。
それらは重力に引かれて落下し、グラウンド全体に刺さり、散らばっていく。
俺は中央へと駆けつつ、傍らにあった日本刀を片手で引き抜いた。
今回は多種多様なモノを創る必要もないので、かなり余裕があるらしい。
その証拠に、範囲は前よりも格段に大きかったから。
「──っ!」
突如戦場に乱入したといえど、それは《雪月花》からしたらただの的。
「……ただの異能者が。調子に乗るな」
四方八方から、焔弾や水レーザー。土塊や氷が襲いかかってくる。
それでもなお、俺は防御の姿勢をとらない。とる必要がない。
それらは『開かずの小部屋』によって全て防がれ、霧散されて。
僅か数秒の間に、俺はベレッタを抜き、『魔弾の射手』を適応させる。
アキレス腱へ向かうように指定された銃弾は、トリガーを引くだけで、寸分違わずの場所へと着弾した。
迫り来る攻撃を銃弾で去なし、相殺させ、一瞬の隙を見計らってカウンター攻撃をする。
機械的な動作を繰り返すうち、残る《雪月花》の人員も、数十人。
俺は周囲を見渡し、《仙藤》と《鷹宮》へ聞こえるように告げる。
……さて、最後は。
「諸君。焔槍、構え」
俺たちの得意とするモノで。
「水球、圧縮よ」
──華麗に、フィナーレを飾ろうじゃないか。
「「……発射!」」
僅か10にも満たないほどに減っていた《雪月花》。
それを散らせるにはこれだけで充分。また、お前たちの負けだよ。
──直後、閃光と轟音を以て。この一連の出来事は、幕を閉じた。
◇
「さぁ、これで分かって頂けたかな?」
「ここまでしておいて、今更……投降なんか……!」
「今更? ……いやはや、何を言う」
グラウンドの傍らで脱力しきったように座り込み、こちらに向かって叫ぶ月ヶ瀬美雪。
しかしその言い分には、可笑しな点があった。
「この結果はお前自身が招き、望んだ事だろう?」
ほぼ重症を負っているであろう戦科部隊をずらりと見渡す。
この惨状、これを望んだのは、他の誰でもない。美雪本人だ。
「お前がしたかったのは、模擬戦か? それとも、決闘か?」
どちらにしろ、美雪が望んだんだ。この結果は。
本部に眠る情報の奪取の為、彼女は動いた。
そして俺たちは、それを阻止しようとしただけの事。
「それにしても、やけに合点がいくと思ったよ。《雪月花》、《月ヶ瀬美雪》──言わばそれは、詞遊び。自身の異能と名前と……更には、その本拠地に準えて付けたワケか」
「…………」
「その歴史は《鷹宮》や《仙藤》より僅かに少なかれど。今や廃れし──古来より続く《雪月花》の総本山。源流か」
月ヶ瀬美雪は、言わば《雪月花》の姫だろう。イレギュラーで強力な異能者というのも、頷ける。
しても、ここまでの人間が流罪の如く我々のお膝元に居するとは……皮肉なモノだ。
──さて、これは思わぬ拾いモノだな。
そう内心で少しほくそ笑みつつ、俺は質問を戦科の姫へと投げかける。
「さて、どうする?」
この問いかけも何度目か。
「今回も、お前たちの……負けだ」
各々仕事を済ませ、俺の後ろへと整列する処理班と隠蔽班の面々。
攻勢異能者と戦闘に不向きな隠蔽班が現れたという事は、それはある1つだけを指す。
──即ち、戦の終結。
「ただの一手。戦場ではその読み違いでさえ、大きな影響を及ぼす」
『神の裁き』が破られたら?
その可能性を考慮していなかったのが、彼女らの敗因だ。
切り札を始めに出したのが仇となったね。それこそ考えられていたら──こちらが負けていたかもしれない。
「まぁ、その一手を創り出してくれたのは──年端もいかない、1人の少女だが」
そう言って、俺は後ろに控えている彩へと視線を移す。今回の勝利の女神は──
「……この子、だね」
~to be continued.
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ひきこもり瑞祥妃は黒龍帝の寵愛を受ける
緋村燐
キャラ文芸
天に御座す黄龍帝が創りし中つ国には、白、黒、赤、青の四龍が治める国がある。
中でも特に広く豊かな大地を持つ龍湖国は、白黒対の龍が治める国だ。
龍帝と婚姻し地上に恵みをもたらす瑞祥の娘として生まれた李紅玉は、その力を抑えるためまじないを掛けた状態で入宮する。
だが事情を知らぬ白龍帝は呪われていると言い紅玉を下級妃とした。
それから二年が経ちまじないが消えたが、すっかり白龍帝の皇后になる気を無くしてしまった紅玉は他の方法で使命を果たそうと行動を起こす。
そう、この国には白龍帝の対となる黒龍帝もいるのだ。
黒龍帝の皇后となるため、位を上げるよう奮闘する中で紅玉は自身にまじないを掛けた道士の名を聞く。
道士と龍帝、瑞祥の娘の因果が絡み合う!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる