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手掛かりの1つ
《雪月花》──宣戦布告
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「分かりました、説明しましょう」
──彼らが発するは、肯定の意。
それをしかと見聞きした俺は、後ろにお彩乃を連れて部屋の最奥へと歩を進める。
そして後ろを振り返って全体を見渡し、
「……さて、話を聞こうじゃないか」
秘書である桔梗へと、視線を向けた。
◇
「《雪月花》が──だと……?」
「……はい」
一際目を引く大きな机。それに付属されている椅子に腰掛けた俺は、説明された内容を反芻しつつ、呟いた。
……だが、困った事になった。まさかアイツらが──こんなにも早く、こちらに来るとはな。正直、この早さは想定外だった。
『例の情報を奪取しに行く。せいぜい首を長くして待ってなさい、と電話が来ました。……それも、伊勢美雪本人からです』
そう、桔梗に説明してもらった。どうやら美雪直々に、手を下すらしい。
いやはや、未だに諦めていなかったとは。その心意気だけは認めたいが──こちらとて、みすみす渡すワケにはいかない。
《雪月花》が《仙藤》・《鷹宮》より上位の存在だと知らしめられる、その情報。関わらずに大人しく手を引いておけば良いものを。
「これは予測だが、限りなく事実に近い予測です。本部にいる複数の第六感持ちの異能者に聞いたところ、異戦雪原は隊を組んで襲撃してくる。恐らく3日で組み終わるかと。それもかなりの数と予測されます」
手元の資料を捲りながら、幹部の1人が告げた。
第六感、か。オカルト分野に入るが、それが何だ。こちとら異能を目の当たりにしてるんだから、それくらいでは驚かない。
腕を組み、どう動くべきかと対策を練る。
それは即座に、正確に。1つ読み間違えれば、こちらが不利になる可能性も大だ。
しっかりと読みを入れた後、俺は顔を上げて、
「──諸君は《雪月花》に対抗するために隊を結成! このことは《鷹宮》本部にも伝え、増援を要請しろ! 我々二大勢力が天下を取っていると言っても、相手は一端の異能者組織だ。舐めて掛からない方が良い」
あちらが3日で終わらすのなら、こちらもそれまでに終わらせてやる。双方の本部の人間全て集めて、ありったけの力を蓄えておこうではないか。
「隠蔽班は防御側に、その他の攻勢異能者は大規模隊を組んでおくこと!」
そして──と隣に居る彩乃を見、コクリと頷いたのを確認して、再度口を開く。
「これには、我々《長》らも参加することにした」
どよめく職員らの心中は分かっている。
……だから、だから俺は、少しでも彼らを心配させまいと言葉を紡いだ。
「《仙藤》始まって以来の、史上最年少の《長》だ。この事に不安を覚えた者も少なからずいるだろうね。何せ、まだまだ子供なのだから」
その事を知っている職員全員が、こう言っていたのを俺は知っている。『若いうちにしか出来ない事をさせてやりたい。《長》を煩わせる事なく』と。
その職員らの気持ちは凄く嬉しい。俺は確かに学生で、子供だ。でもそれでいて、《仙藤》最高責任者である、
「《長》だ。故に、命を預かっている立場である。そして、諸君らが我々の為に日々尽くそうと精一杯仕事をしているのは承知しているさ。だからこそ──」
──だからこそ、日々頑張っている諸君らに……何かしてあげたいと願っている。少しでも力になれないかと考えている」
未だ未熟な《長》でも、子供の俺たちでも構わないのなら、
「どうか、一戦力として受け入れてほしい」
そうして暫しの静寂が流れた。それは長いようで、数秒ほどだったのだろう。しかし、俺には長く感じた。
その静寂を打ち破る者が、1人。2人。それぞれが起立し、
「……何を仰りますか。仲間を受け入れない人間が何処にいると言うのですかね?」
「全くですよ。《長》もまだまだ子供ですね」
「お前が《長》に向かってその言い方は何だ!」
「まぁまぁ、落ち着いて……」
職員らが口々に話し出す。見ずとも分かる。その顔は、笑っていた。
皮肉混じりに、でもそれは……否定的ではなかった。
何だろう、泣きそうだよ。目尻に涙溜まりかけてるから実際涙ぐんでるんだろうけど。
「……みんな、ありがとう」
人間、本当に感謝してる時は、それしか言えないものだ。それ以外の選択肢は、俺の頭にはなかった。
「じゃあ、そういう事だから──諸君らの働きぶりに期待をしておくよ」
「「「了解です!!!」」」
相変わらず、返事だけは頼もしいんだから。
◇
「武闘派組織、《雪月花》──か」
桔梗ら上層部員による、月ヶ瀬美雪を初めとした第4戦科部隊の取り調べ。その調査報告書が、昨日処理した書類たちの1つに入っていたのだ。
それをリングファイルから取り出した俺は、再度情報を整理する。
彼女らの目論見は何かと問えば、『俺たちが保有している例の情報を奪取すること』と繰り返すのみ。
そしてその情報とは即ち、マスターデータに他ならない。
まぁ、《鷹宮》・《仙藤》の内部情報を見られたとはいえ。あそこは所詮支部だ。
あそこにあるのは表向きの情報のみ。本部に関わる情報は見られてないと考えるべきだろう。
そもそも、熱心さが度を越しすぎている。
天と地ほどの戦力差がある異能者組織に関係する支部に、普通、下準備もなしに襲うか? 1歩間違えば、刹那の時に首が飛ぶ。……そんな所に。
もっと気になるのは、彼女らに『《仙藤》・《鷹宮》には君たちの望む良い情報が眠っているよ?』と銘打った、例の人物。
マスターデータを閲覧出来るほどに有益な人物とコネがあるのなら、今後のためにも美雪たちは──その内通者を言うことはないだろう。
……いや、そもそも彼女らがその正体を知らないって線もあるな。
以前に考えたように、その人物が《雪月花》に信頼されていたのか、余程彼女らが切羽詰まっていたのか。
そこも、これからの取り調べで行うとしよう。この騒動が終わったあとの、な。
さて──と顔を上げた俺は、ソファーに座っている面々を視界に入れる。
彩と談笑している彩乃。黙々とスマホを弄っている桔梗。
俺は彩らに席を外すよう促し、渋々ながら出て行ったのを確認してから──
「桔梗、話がある」
ソファーで黙々と指を動かしている秘書に目を向ける。
「今、モンストやってるから。少し待ってて」
「解雇するぞ?」
「…………はぁ」
さぁ、彼女も渋々スマホをポケットに仕舞ったところで──本題だ。
「内通者の洗い出し。どうだった?」
「……サッパリ、です」
こちらに向き直り、ため息混じりに告げられたその言葉。表情からも、割りと深刻な問題である。
結果は言わずもがなと言わんばかりの桔梗に苦笑し、俺は続ける。
「それぞれ500人ずつを束ねる第1・2処理班班長。彩率いる隠蔽班。《長》の俺に、秘書の桔梗──中でも俺を除けば、本当に僅かな人数だ」
「あら、その内通者候補に調査を任せて構わないのですか?」
「何を今更。お前だって、やろうと思えばこんな回りくどい方法じゃなくてもいけるだろうにね」
「…………はぁ」
結衣さんはまたまた溜息を重ねるが、それ以上その話題を続ける事はなかった。
──今回の俺たちのみならず、異能者組織において事件が起こる事はそうそうない。
《長》が求めているのは、平穏と安定と現状維持。それを代々と続けてきたというのに……今世紀最大の揺らぎだよ。
それも、俺が長に着任してから。何、疫病神なの? 俺は。
まぁ、それ故に。それを生むための存在は排除していかないといけない。今後の平穏と、俺の精神が崩壊しないためにもね。
◇
いつもなら静寂を包むハズの会議室は、夕食前にも関わらず前代未聞の大騒ぎ。
そんな中、俺と彩乃指揮を執っていた内の1つの班から声が上がった。
「《長》、電話繋がりました!」
「こっちに」
受話器を耳に当て、彩乃も同じように別の受話器をくっつける。音声は共有されているから、彩乃が声を出せば向こうに通じるワケだ。
さて、先は、《雪月花》第4戦科部隊。その隊長である──月ヶ瀬美雪。
「……やぁ。悪いねー、忙しいところ」
『アンタ、あの時の……! まさか、組織間の交渉に出向く部隊長レベルの人間とはね。驚いたわ』
あの時の怠そうな声は何処へやら。1番に聞こえたのは、驚愕の声。
まぁ、彼女らにはそう思ってもらった方が都合はいい。《長》は本来、表に出るべき存在ではないしな。
で、と受話器の向こうで美雪は続ける。
『アタシ達の動きに気付いて、慌てて連絡を寄越したのかしら?』
「まぁね。あと必要なのは時間だけだろう?」
『あら、分かってるじゃない。本部を襲撃するための人材集めと、移動のための時間よ』
やはり、ここを襲うつもりか。……性懲りも無く。そしてそれは、宣戦布告に他ならない。
続いて、舐めたような美雪の声が聞こえてくる。
『まぁ、アンタ達が情報を差し出せば……動いてやらないこともないけど?』
「舐めてかかりやがって。その程度の戦力でこっちが怯えるって思ってるなら、大間違いだぞ?」
『……どこまでも生意気な小僧ね。じゃあ、そういうことよ。さようなら──卑怯な狙撃手さん』
皮肉げに言う美雪は、それだけ言い残すと電話を切ってしまった。
それと同時に、職員の1人が恐る恐るといった感じで、こちらに告げてくる。
「あのー、《長》。……彼女らの自信、どうやらはったりではなさそうです。それも、規模に於いては」
「詳細は?」
「攻勢異能者が──400です」
「──っ……!?」
その数値に、俺は思わず息を呑む。俺だけではない。ここに居る、全員が。
──《雪月花》。武闘派組織とは聞いていたが、それが400とは……恐るべき数値だ。
そんな数で襲われれば、
「……危ういな」
~to be continued.
──彼らが発するは、肯定の意。
それをしかと見聞きした俺は、後ろにお彩乃を連れて部屋の最奥へと歩を進める。
そして後ろを振り返って全体を見渡し、
「……さて、話を聞こうじゃないか」
秘書である桔梗へと、視線を向けた。
◇
「《雪月花》が──だと……?」
「……はい」
一際目を引く大きな机。それに付属されている椅子に腰掛けた俺は、説明された内容を反芻しつつ、呟いた。
……だが、困った事になった。まさかアイツらが──こんなにも早く、こちらに来るとはな。正直、この早さは想定外だった。
『例の情報を奪取しに行く。せいぜい首を長くして待ってなさい、と電話が来ました。……それも、伊勢美雪本人からです』
そう、桔梗に説明してもらった。どうやら美雪直々に、手を下すらしい。
いやはや、未だに諦めていなかったとは。その心意気だけは認めたいが──こちらとて、みすみす渡すワケにはいかない。
《雪月花》が《仙藤》・《鷹宮》より上位の存在だと知らしめられる、その情報。関わらずに大人しく手を引いておけば良いものを。
「これは予測だが、限りなく事実に近い予測です。本部にいる複数の第六感持ちの異能者に聞いたところ、異戦雪原は隊を組んで襲撃してくる。恐らく3日で組み終わるかと。それもかなりの数と予測されます」
手元の資料を捲りながら、幹部の1人が告げた。
第六感、か。オカルト分野に入るが、それが何だ。こちとら異能を目の当たりにしてるんだから、それくらいでは驚かない。
腕を組み、どう動くべきかと対策を練る。
それは即座に、正確に。1つ読み間違えれば、こちらが不利になる可能性も大だ。
しっかりと読みを入れた後、俺は顔を上げて、
「──諸君は《雪月花》に対抗するために隊を結成! このことは《鷹宮》本部にも伝え、増援を要請しろ! 我々二大勢力が天下を取っていると言っても、相手は一端の異能者組織だ。舐めて掛からない方が良い」
あちらが3日で終わらすのなら、こちらもそれまでに終わらせてやる。双方の本部の人間全て集めて、ありったけの力を蓄えておこうではないか。
「隠蔽班は防御側に、その他の攻勢異能者は大規模隊を組んでおくこと!」
そして──と隣に居る彩乃を見、コクリと頷いたのを確認して、再度口を開く。
「これには、我々《長》らも参加することにした」
どよめく職員らの心中は分かっている。
……だから、だから俺は、少しでも彼らを心配させまいと言葉を紡いだ。
「《仙藤》始まって以来の、史上最年少の《長》だ。この事に不安を覚えた者も少なからずいるだろうね。何せ、まだまだ子供なのだから」
その事を知っている職員全員が、こう言っていたのを俺は知っている。『若いうちにしか出来ない事をさせてやりたい。《長》を煩わせる事なく』と。
その職員らの気持ちは凄く嬉しい。俺は確かに学生で、子供だ。でもそれでいて、《仙藤》最高責任者である、
「《長》だ。故に、命を預かっている立場である。そして、諸君らが我々の為に日々尽くそうと精一杯仕事をしているのは承知しているさ。だからこそ──」
──だからこそ、日々頑張っている諸君らに……何かしてあげたいと願っている。少しでも力になれないかと考えている」
未だ未熟な《長》でも、子供の俺たちでも構わないのなら、
「どうか、一戦力として受け入れてほしい」
そうして暫しの静寂が流れた。それは長いようで、数秒ほどだったのだろう。しかし、俺には長く感じた。
その静寂を打ち破る者が、1人。2人。それぞれが起立し、
「……何を仰りますか。仲間を受け入れない人間が何処にいると言うのですかね?」
「全くですよ。《長》もまだまだ子供ですね」
「お前が《長》に向かってその言い方は何だ!」
「まぁまぁ、落ち着いて……」
職員らが口々に話し出す。見ずとも分かる。その顔は、笑っていた。
皮肉混じりに、でもそれは……否定的ではなかった。
何だろう、泣きそうだよ。目尻に涙溜まりかけてるから実際涙ぐんでるんだろうけど。
「……みんな、ありがとう」
人間、本当に感謝してる時は、それしか言えないものだ。それ以外の選択肢は、俺の頭にはなかった。
「じゃあ、そういう事だから──諸君らの働きぶりに期待をしておくよ」
「「「了解です!!!」」」
相変わらず、返事だけは頼もしいんだから。
◇
「武闘派組織、《雪月花》──か」
桔梗ら上層部員による、月ヶ瀬美雪を初めとした第4戦科部隊の取り調べ。その調査報告書が、昨日処理した書類たちの1つに入っていたのだ。
それをリングファイルから取り出した俺は、再度情報を整理する。
彼女らの目論見は何かと問えば、『俺たちが保有している例の情報を奪取すること』と繰り返すのみ。
そしてその情報とは即ち、マスターデータに他ならない。
まぁ、《鷹宮》・《仙藤》の内部情報を見られたとはいえ。あそこは所詮支部だ。
あそこにあるのは表向きの情報のみ。本部に関わる情報は見られてないと考えるべきだろう。
そもそも、熱心さが度を越しすぎている。
天と地ほどの戦力差がある異能者組織に関係する支部に、普通、下準備もなしに襲うか? 1歩間違えば、刹那の時に首が飛ぶ。……そんな所に。
もっと気になるのは、彼女らに『《仙藤》・《鷹宮》には君たちの望む良い情報が眠っているよ?』と銘打った、例の人物。
マスターデータを閲覧出来るほどに有益な人物とコネがあるのなら、今後のためにも美雪たちは──その内通者を言うことはないだろう。
……いや、そもそも彼女らがその正体を知らないって線もあるな。
以前に考えたように、その人物が《雪月花》に信頼されていたのか、余程彼女らが切羽詰まっていたのか。
そこも、これからの取り調べで行うとしよう。この騒動が終わったあとの、な。
さて──と顔を上げた俺は、ソファーに座っている面々を視界に入れる。
彩と談笑している彩乃。黙々とスマホを弄っている桔梗。
俺は彩らに席を外すよう促し、渋々ながら出て行ったのを確認してから──
「桔梗、話がある」
ソファーで黙々と指を動かしている秘書に目を向ける。
「今、モンストやってるから。少し待ってて」
「解雇するぞ?」
「…………はぁ」
さぁ、彼女も渋々スマホをポケットに仕舞ったところで──本題だ。
「内通者の洗い出し。どうだった?」
「……サッパリ、です」
こちらに向き直り、ため息混じりに告げられたその言葉。表情からも、割りと深刻な問題である。
結果は言わずもがなと言わんばかりの桔梗に苦笑し、俺は続ける。
「それぞれ500人ずつを束ねる第1・2処理班班長。彩率いる隠蔽班。《長》の俺に、秘書の桔梗──中でも俺を除けば、本当に僅かな人数だ」
「あら、その内通者候補に調査を任せて構わないのですか?」
「何を今更。お前だって、やろうと思えばこんな回りくどい方法じゃなくてもいけるだろうにね」
「…………はぁ」
結衣さんはまたまた溜息を重ねるが、それ以上その話題を続ける事はなかった。
──今回の俺たちのみならず、異能者組織において事件が起こる事はそうそうない。
《長》が求めているのは、平穏と安定と現状維持。それを代々と続けてきたというのに……今世紀最大の揺らぎだよ。
それも、俺が長に着任してから。何、疫病神なの? 俺は。
まぁ、それ故に。それを生むための存在は排除していかないといけない。今後の平穏と、俺の精神が崩壊しないためにもね。
◇
いつもなら静寂を包むハズの会議室は、夕食前にも関わらず前代未聞の大騒ぎ。
そんな中、俺と彩乃指揮を執っていた内の1つの班から声が上がった。
「《長》、電話繋がりました!」
「こっちに」
受話器を耳に当て、彩乃も同じように別の受話器をくっつける。音声は共有されているから、彩乃が声を出せば向こうに通じるワケだ。
さて、先は、《雪月花》第4戦科部隊。その隊長である──月ヶ瀬美雪。
「……やぁ。悪いねー、忙しいところ」
『アンタ、あの時の……! まさか、組織間の交渉に出向く部隊長レベルの人間とはね。驚いたわ』
あの時の怠そうな声は何処へやら。1番に聞こえたのは、驚愕の声。
まぁ、彼女らにはそう思ってもらった方が都合はいい。《長》は本来、表に出るべき存在ではないしな。
で、と受話器の向こうで美雪は続ける。
『アタシ達の動きに気付いて、慌てて連絡を寄越したのかしら?』
「まぁね。あと必要なのは時間だけだろう?」
『あら、分かってるじゃない。本部を襲撃するための人材集めと、移動のための時間よ』
やはり、ここを襲うつもりか。……性懲りも無く。そしてそれは、宣戦布告に他ならない。
続いて、舐めたような美雪の声が聞こえてくる。
『まぁ、アンタ達が情報を差し出せば……動いてやらないこともないけど?』
「舐めてかかりやがって。その程度の戦力でこっちが怯えるって思ってるなら、大間違いだぞ?」
『……どこまでも生意気な小僧ね。じゃあ、そういうことよ。さようなら──卑怯な狙撃手さん』
皮肉げに言う美雪は、それだけ言い残すと電話を切ってしまった。
それと同時に、職員の1人が恐る恐るといった感じで、こちらに告げてくる。
「あのー、《長》。……彼女らの自信、どうやらはったりではなさそうです。それも、規模に於いては」
「詳細は?」
「攻勢異能者が──400です」
「──っ……!?」
その数値に、俺は思わず息を呑む。俺だけではない。ここに居る、全員が。
──《雪月花》。武闘派組織とは聞いていたが、それが400とは……恐るべき数値だ。
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作者のtwitterアカウント↓
https://twitter.com/tobeitsuki?t=CzwbDeLBG4X83qNO3Zbijg&s=09
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しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
青い祈り
速水静香
キャラ文芸
私は、真っ白な部屋で目覚めた。
自分が誰なのか、なぜここにいるのか、まるで何も思い出せない。
ただ、鏡に映る青い髪の少女――。
それが私だということだけは確かな事実だった。
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