『平凡』を求めている俺が、チート異能を使ったりツンデレお嬢様の執事になるのはおかしいと思うんだが

水無月彩椰

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二つの異能者組織

日常の中の非日常

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──ピリリリリッ……ピリリリリッ……

けたたましい目覚まし時計のアラーム音で、目が覚める。
 未だぼんやりとした意識の中、手探りでベッドの脇にあるキャビネットへスイッチを押そうと手を伸ばした。

真鍮の銃弾の冷たい感触が指先に伝い、幾つかがフローリングの床に落ちて金属音を上げる。それも厭わず、目覚まし時計のスイッチをカチッ、と押す。

ベッドから降り、落とした銃弾を拾い上げてから慣れた手つきでマガジンに込めた。ついでに予備弾倉である他の二本にも込めておく。

そしてマットブラックのベレッタM92Fに装填してから、一度銃を置いて朝食の準備のためにキッチンへと向かった。

「おはよ……」

誰もいないと分かっているのに、自然に声が出てしまう。またか、と思いつつも、無理に直そうとは思わなかった。

数十分で作れる、トーストとスクランブルエッグという簡易的な朝食を食べながら、いつもの様にテレビを付ける。
 
画面に映し出されたのは、何ら変わりないニュースの数々。人気アイドル復活、とか、都内某所で火災、とか一般的なモノだ。

当たり障りのない、極々普通の生活。俺が求めているのはコレなのに──

『東京湾に位置する学園都市・タレントゥムにて、武警による犯罪者の確保が、昨夜行われました。凶悪指名手配犯であったため、彼には──』

──俺の住むこの家と高校がある、学園都市。当たり障りのない生活を望んでいながらも、学園都市も、高校も、全て普通ではない。
 
……じゃあ何で居るのか、と自問自答しつつの朝食を終え、手早に家事を済ませる。実を言うと、そこは俺にも分からない。

そして、寝室に戻ってから校則で義務付けられている防刃・防弾制服と、銃剣類ベレッタ・ナイフ、名札を装着する。

──あーあ、普通じゃない。それもこれも、生まれ持った異能のせいか。

そう胸中で毒吐きながら、鞄に教材やらなんやらを詰め込み、ダラダラとテレビを見たりスマホを見たりしていたら──

「っと……ヤバいな」

ふと視線を向けた腕時計の文字盤を見て背筋が凍る。
 あっという間に、登校時間の七時五十分は訪れてしまった。あまつさえ、ダラダラしていたせいで十分近くも過ぎてしまっている。
 
しかも、今日は始業式。こんな日に遅刻なんてしてたまるかっ……!

──恐らく、生涯俺は悔やむことになるだろう。始業式の日に遅刻したことを。

何故なら、非日常が訪れてしまったのだから。

『鷹宮彩乃』による、日常への侵略者が。



~to be continued.
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