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手掛かりの1つ
常軌を逸した──パズル
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「──長、どう言う事か説明を」
「文字通り、だ。そのままの意味だよ」
本部の《長》の部屋。その机に俺は腰かけ、隣に居る桔梗からの問いに返答する。
向かいにあるソファーには、彩乃と彩が座っている。
それを尻目に、さっきから桔梗は俺に不満をブチ撒けてきているのだが、
「そもそも、です。あの条件じゃ、私や彩乃ちゃんが手助け出来ないじゃないですか! あの小娘の能力は不明……なのに?」
「…………」
言われてみれば……至極真っ当な理論だ。
確かに、あの女──月ヶ瀬美雪の異能は不明だ。しかし《雪月花》という組織に属している以上、異能者なのは確定だとして。
頬杖を付き、暫し考える。桔梗はその様子を黙って見ていたが、その沈黙を打ち破る者が、1人。
ソファーに座っていた、彩乃本人だ。
「志津二。承諾したって事は……勝算はあるのかしら?」
「……ふむ」
勝算、ねぇ。てっきり、
「今夜のご飯は何かしら、かと思ってたんだが。意外だな」
「私ってそこまで食い意地ないからね!?」
──っと、話がズレた。
俺は未だ不満が隠し切れていない桔梗と、頬を紅潮させている彩乃、そして彩を一瞥して、茶目っ気満々でこう告げてやる。
「勝算なんて、手段を選ばなければ──無限にある」
「……無限? そんなこと──」
「さぁ、ルール確認を兼ねて条件を復唱。彩乃、何だったっけ?」
小首を傾げる彩乃に、俺は《雪月花》から出された『条件』を復唱させる。
これは作戦会議のためであり、ルール確認のためでもある。
「『時間と場所はあちら側が指定する』、『その他一切の縛りは設けない』、『失神するか、降参するかで敗北』」
「うん。諸君、これに気付くことはあるかな?」
俺のこの言葉に、部屋にいる全員が頭上にはてなマークを浮かべた。
……なら、ヒント。
「《雪月花》の2つ目の条件」
その他一切の縛りは設けない。つまり、手段は数限りない。
つまり、だ。
「あぁ……そういうこと」
小さく呟く桔梗にニッコリと笑いかけてやり、俺は再び口を開く。
「改めて聞いてみれば──穴だらけだろう? このルールは」
縛りはない。故に、
「俺が戦車で乗り込もうが、空爆をしようが、あの時見たく武器林を創ろうが──全て、構わない」
「え、戦車なんか持ってたの?」
「昔、はな。戦時中は自家用車並に戦車とか戦闘機とか保有してたし。そう考えれば、今の《仙藤》は平和だなー」
今は火器の規制が厳しくなってるからキツいけどね。 昔はバンバン生産してました。主に企業面の力で。
「といっても、《鷹宮》もそんなモンよね。戦争のための戦車や戦闘機を貰いたいって政府から話が来たことがあるらしいわよ。勿論、あげたみたいだけど」
「お前のところも大層なモノだな……」
まぁ、そこは良しとして。
「恐らく、美雪側は自分たちに有利な条件を突き付けて──事前に連絡してくる。『受け入れられないなら、この話はなかった事に』ってね」
だが、問題はここからだ。
「でも……どうするの、志津二。また武器林無双?」
「それはダメね。相手の異能が分からない分、闇雲に行動に移すのは危険。それに、相手が用意したフィールドに行くこと自体間違いだと思う」
「桔梗、正解だ。……そう。もしも相手が自身が用意したフィールドに来るとしたら、どうする?」
まぁ、まず。
「……罠、ですか」
そう。周囲に部下を配置するなり、それこそ武器林で奇襲を掛けるなり。
「なら、時間もそうなの?」
「古典的だが、地の利。太陽を背に、とか。真夜中に、とか」
「影を作ってその中を移動したり、ステルス系の異能なんて十分有り得ますね」
──地の利、時の利を美雪に与え、罠があるから近付けない。それをこちらはどうやって対抗するか。
無論、近付くなど思ってもいない。
「アンタとアタシの戦い……か」
──なるほど。本当に日本語ってのは難しい。そのニュアンス1つで、全く違う意味に思わせられる。
こんな簡単な罠に嵌るとは──。これを狙ってやったのなら、美雪は相当な策士だらうな。ウチに欲しいくらいだ。
幸か不幸か、対抗案は浮かんだ。常識という固定概念……それを、ぶち壊すほどの。
「《長》、楽しそうですが──案が浮かびましたか?」
「あぁ。美雪もあっと言うほどの、素晴らしいアイディアが浮かんだよ」
だがそれには、あと1つ。あと1つだけ、ピースが足りない。決行というパズルを完成させるだけの、ピースが。
そしてそれは、既に俺の手中にある。
「……水無月彩。お前が必要だ」
~to be continued.
「文字通り、だ。そのままの意味だよ」
本部の《長》の部屋。その机に俺は腰かけ、隣に居る桔梗からの問いに返答する。
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それを尻目に、さっきから桔梗は俺に不満をブチ撒けてきているのだが、
「そもそも、です。あの条件じゃ、私や彩乃ちゃんが手助け出来ないじゃないですか! あの小娘の能力は不明……なのに?」
「…………」
言われてみれば……至極真っ当な理論だ。
確かに、あの女──月ヶ瀬美雪の異能は不明だ。しかし《雪月花》という組織に属している以上、異能者なのは確定だとして。
頬杖を付き、暫し考える。桔梗はその様子を黙って見ていたが、その沈黙を打ち破る者が、1人。
ソファーに座っていた、彩乃本人だ。
「志津二。承諾したって事は……勝算はあるのかしら?」
「……ふむ」
勝算、ねぇ。てっきり、
「今夜のご飯は何かしら、かと思ってたんだが。意外だな」
「私ってそこまで食い意地ないからね!?」
──っと、話がズレた。
俺は未だ不満が隠し切れていない桔梗と、頬を紅潮させている彩乃、そして彩を一瞥して、茶目っ気満々でこう告げてやる。
「勝算なんて、手段を選ばなければ──無限にある」
「……無限? そんなこと──」
「さぁ、ルール確認を兼ねて条件を復唱。彩乃、何だったっけ?」
小首を傾げる彩乃に、俺は《雪月花》から出された『条件』を復唱させる。
これは作戦会議のためであり、ルール確認のためでもある。
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……なら、ヒント。
「《雪月花》の2つ目の条件」
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つまり、だ。
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