24 / 57
二つの異能者組織
告白と吐露
しおりを挟む
本来なら祝砲が上がっていてもおかしくないハズの鷹宮家は、今までにないほどの重い静寂に包まれていた。
その内の一つは俺の肩に寄りかかるようにして眠っている桔梗だから良しとして、問題は、彩乃と結衣さんがこちらをガン見してくることだ。
「あの……桔梗、寝ちゃったんで。俺も寝てきて良いか?」
「…………」
グラウンドでの後始末を終えたところに、彩乃が「ちょっと話があるんだけど、来てくれるかなぁ?」と結衣さんら諸共強制帰宅されたのが、およそ二十分前の出来事。
それからずっと、不動のこの状態である。
ねぇ、その沈黙止めてもらっていい? せめて何か言って? 結衣さんもさ、じっと俺の方ばかり睨み付けてないでこの剣呑な空気をぶち壊してくれる?
といった俺の心の叫びが天に届いたのか、
「……あ、メリケンサック」
ふと、床にポロッと創造されたそれを見て、結衣さんが呟く。
……ねぇ、暴発だよね? いや、暴発でもメリケンサックは出ないか。
彩乃はサディスティックな笑みを浮かべながら、それをポンポンと自身の手のひらに打ちつけ出す。
「まさか、それで俺に拷問しようなどとは……?」
「そこはあんたの返答次第かなぁ」
うわ、お怒りですよお嬢様。どうしましょ。
だからといってこれ以上は俺が耐え切れない。正直言うと、眠いんでさっさと寝たい。
「……分かったよ、話せばいいんだろ」
「「最初からそうすれば良かったのに」」
「盛大にハモリやがってこの野郎」
しかも、これみよがしに二人して目薬さしやがって。だったら最初から自分で言い出せよって話。
……まぁ、いつかは言わなければならない内容ではあったのだから、遅かれ早かれとして。
「で、やっぱりあんたが《長》なのね?」
「あぁ。時期が来たら言っておこうかとも思ったんだが、如何せん発言の中にヒントが多すぎたからな。気が付いてたろ?」
「まぁ、マスターデータの話が出た辺りからね。何となく勘づいてた」
それに、と彩乃は付け加える。
「『魔弾の射手』は指定と定義の双方を併せ持ってる、っていうのも、大きなヒントかなー。かなーり分かりやすい問題だったけどね」
そう笑いながら言う彩乃。
……まぁ、それは俺の方にも言える話ではあるんだが。
「だとしたら、俺も一つ考察を。……単刀直入に言うが、お前は《鷹宮》の──《姫》だろ?」
「…………」
沈黙というのは、果たして否定か肯定か。
「会長である鷹宮清十郎の娘、《万物創造》、マスターデータ、結衣さんとの関わり。これらの立場、人員等を有するお前は、《姫》に他ならない。……違うか?」
それもこれも、ヒントが多すぎたんだ。お互いな。
そう言外に告げてみせれば、彩乃は嬉しそうに口の端を歪ませて、
「そう、正解っ! お互いにあからさまなヒントだけど、ね」
「まぁ、今更それが何だって話だよな。パートナーだし」
二人で笑いながら、俺は思い出す。久世との一件は解決したが、まだ解決していないもう一件があることを。
「……そうだ、堂本充の件についてだが、結論から言わせてもらう」
そう前置きして、俺は彩乃と結衣さんに、《仙藤》側が調べたことを告げた。
マスターデータを使用したが、手がかり一つ見つからなかったことを。そもそも、マスターデータの中に堂本充という人間が存在しなかったことを。
それを聞いた彩乃は暫し考えるようにして顔を伏せると、
「……やはり、一筋縄じゃいかないわね」
ゲームで負けた子供のように、苦笑いして言った。俺も、それに曖昧な笑みで返す。
──まぁ、とにかく。俺は今出来ることをやるだけだ。
堂本充の情報が入らないのなら、別のことに励むだけ。果報は寝て待て、とも言うしな。
ここ暫くは履修科目を受けられてなかったから、そこで単位を取り返すのもいいだろう。
「果報は寝て待て、だ。今は俺たちの出来ることをするだけだな」
「……そうね」
~This chapter is End.
その内の一つは俺の肩に寄りかかるようにして眠っている桔梗だから良しとして、問題は、彩乃と結衣さんがこちらをガン見してくることだ。
「あの……桔梗、寝ちゃったんで。俺も寝てきて良いか?」
「…………」
グラウンドでの後始末を終えたところに、彩乃が「ちょっと話があるんだけど、来てくれるかなぁ?」と結衣さんら諸共強制帰宅されたのが、およそ二十分前の出来事。
それからずっと、不動のこの状態である。
ねぇ、その沈黙止めてもらっていい? せめて何か言って? 結衣さんもさ、じっと俺の方ばかり睨み付けてないでこの剣呑な空気をぶち壊してくれる?
といった俺の心の叫びが天に届いたのか、
「……あ、メリケンサック」
ふと、床にポロッと創造されたそれを見て、結衣さんが呟く。
……ねぇ、暴発だよね? いや、暴発でもメリケンサックは出ないか。
彩乃はサディスティックな笑みを浮かべながら、それをポンポンと自身の手のひらに打ちつけ出す。
「まさか、それで俺に拷問しようなどとは……?」
「そこはあんたの返答次第かなぁ」
うわ、お怒りですよお嬢様。どうしましょ。
だからといってこれ以上は俺が耐え切れない。正直言うと、眠いんでさっさと寝たい。
「……分かったよ、話せばいいんだろ」
「「最初からそうすれば良かったのに」」
「盛大にハモリやがってこの野郎」
しかも、これみよがしに二人して目薬さしやがって。だったら最初から自分で言い出せよって話。
……まぁ、いつかは言わなければならない内容ではあったのだから、遅かれ早かれとして。
「で、やっぱりあんたが《長》なのね?」
「あぁ。時期が来たら言っておこうかとも思ったんだが、如何せん発言の中にヒントが多すぎたからな。気が付いてたろ?」
「まぁ、マスターデータの話が出た辺りからね。何となく勘づいてた」
それに、と彩乃は付け加える。
「『魔弾の射手』は指定と定義の双方を併せ持ってる、っていうのも、大きなヒントかなー。かなーり分かりやすい問題だったけどね」
そう笑いながら言う彩乃。
……まぁ、それは俺の方にも言える話ではあるんだが。
「だとしたら、俺も一つ考察を。……単刀直入に言うが、お前は《鷹宮》の──《姫》だろ?」
「…………」
沈黙というのは、果たして否定か肯定か。
「会長である鷹宮清十郎の娘、《万物創造》、マスターデータ、結衣さんとの関わり。これらの立場、人員等を有するお前は、《姫》に他ならない。……違うか?」
それもこれも、ヒントが多すぎたんだ。お互いな。
そう言外に告げてみせれば、彩乃は嬉しそうに口の端を歪ませて、
「そう、正解っ! お互いにあからさまなヒントだけど、ね」
「まぁ、今更それが何だって話だよな。パートナーだし」
二人で笑いながら、俺は思い出す。久世との一件は解決したが、まだ解決していないもう一件があることを。
「……そうだ、堂本充の件についてだが、結論から言わせてもらう」
そう前置きして、俺は彩乃と結衣さんに、《仙藤》側が調べたことを告げた。
マスターデータを使用したが、手がかり一つ見つからなかったことを。そもそも、マスターデータの中に堂本充という人間が存在しなかったことを。
それを聞いた彩乃は暫し考えるようにして顔を伏せると、
「……やはり、一筋縄じゃいかないわね」
ゲームで負けた子供のように、苦笑いして言った。俺も、それに曖昧な笑みで返す。
──まぁ、とにかく。俺は今出来ることをやるだけだ。
堂本充の情報が入らないのなら、別のことに励むだけ。果報は寝て待て、とも言うしな。
ここ暫くは履修科目を受けられてなかったから、そこで単位を取り返すのもいいだろう。
「果報は寝て待て、だ。今は俺たちの出来ることをするだけだな」
「……そうね」
~This chapter is End.
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
ひきこもり瑞祥妃は黒龍帝の寵愛を受ける
緋村燐
キャラ文芸
天に御座す黄龍帝が創りし中つ国には、白、黒、赤、青の四龍が治める国がある。
中でも特に広く豊かな大地を持つ龍湖国は、白黒対の龍が治める国だ。
龍帝と婚姻し地上に恵みをもたらす瑞祥の娘として生まれた李紅玉は、その力を抑えるためまじないを掛けた状態で入宮する。
だが事情を知らぬ白龍帝は呪われていると言い紅玉を下級妃とした。
それから二年が経ちまじないが消えたが、すっかり白龍帝の皇后になる気を無くしてしまった紅玉は他の方法で使命を果たそうと行動を起こす。
そう、この国には白龍帝の対となる黒龍帝もいるのだ。
黒龍帝の皇后となるため、位を上げるよう奮闘する中で紅玉は自身にまじないを掛けた道士の名を聞く。
道士と龍帝、瑞祥の娘の因果が絡み合う!
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる