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学園都市と高等学校
~ |特別国立高等学校《異能者育成組織》~
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一際目立つ、モダンな雰囲気を醸し出している建物。それこそが―特別国立高等学校。鷹宮家が創った、異能者育成組織である。
「......広いわねぇ」
「ですね」
呟きながら、お嬢様と俺は、校門......と言うか、半自動の鉄柵をくぐる。
早い時間に登校したものだから、人なんか全然いない。遠くにチラホラいるだけで。
で、くぐったワケだが―ここホントに高校か?
校舎まで一直線に石レンガの道が並んでおり、左右には桜の樹が植えてある。
その向こうは芝生でベンチなどが置いてあり、森林公園のようだ。
しばらく進むと校舎が見えてきた。
噴水を横目で見つつ階段を上り、正面玄関へと入る。
階段の下と周辺は広場になっており、噴水もあるため、憩いの場......的なモノだろう。屋台もある。
年がら年中お祭り、ではなさそうだ。
下足箱に靴を入れ、用意されていた上靴を履く。
茶色のスニーカー?パンプス?と言うのか。
よく分からないが、そんな感じの靴だ。
「お嬢様、職員室はこっちですよ」
正反対の方向に行こうとしていたお嬢様を呼び止めて。案内図を見ながら、職員室の方まで歩く。
右手の窓を見ると中庭があり、夏は校舎が陰になって涼しそうだ。池もある。
それにしても、変わった構造だな。
三角形で、中庭を囲うように創られている。
......遊び心?
興味深そうにキョロキョロしていたお嬢様をチラ見しつつ、廊下を歩いていく。
すると、中年の男性に声をかけられた。
「おはようございます。鷹宮家のご令嬢と執事さんですよね?昨日欠席していた」
「はい、そうです」
「事情は鷹宮本部から聞いていますよ。さぁ、ご案内しますので」
その男性が職員室まで案内してくれるとの事なので、俺たちはその人について行く事にした。
「ここです。まずは校長先生にですね」
「ご案内、ありがとうございます。助かりました」
俺は一礼し、校長室の扉をノックする。
「はい、どうぞ」
返ってきたのは、やけに聞き馴染みのある―若い女性の声。それに、俺たちは顔を見合わせる。
「......失礼致します」
だが、入らない事には分からない。
そう思い、扉を開けて1歩。また1歩と踏み出す。
「えっ......?」
後ろで驚愕の声を上げるお嬢様。
それもそのハズ。なぜなら、
「おはよう。 そして、いらっしゃい。2人とも」
「な、何で......!」
何で、結衣さんがここにいる!?
結衣さんと話すこと10分。
やっと状況が飲み込めた。
「つまり。私たちが入学するにあたり、1番馴染みのある人を本家筋から選抜して校長にしたと」
「そう」
「私は兎も角、志津二が無能だから」
「そう」
「心配だから、お父様が手を回したと」
「そう」
「OK、理解した」
......えぇ。
どうしてこうなった。
「結衣さん、いくら何でも校長はないだろうに」
「だって本部の命令だし、やりたくなかったけど給料割り増しって言われたから」
「そこ!?」
結衣さんがゲスい。
人間としてゲスい。ゲスの極み○女。
「で、この学校のあれだけど......あれ、何だっけ」
あぁ、そうそう。
と何かを思い出したような結衣さん。頭大丈夫?脳年齢。
「ここが本家筋の集まりっていうのは知ってるわよね?」
「あぁ。知ってる」
「全国に本家筋って、何人いると思う?」
全国に......?
本家筋より分家筋の方が多いのは当たり前だが、具体的な数値までは分からないなぁ。
「んー、3000人くらい」
「ハズレ。全国の異能者が約10000人で、そのうちのおよそ9500人が分家筋なの」
「500人......、そんなに少なかったの!?」
結衣さんの返答に、お嬢様が目を見開く。
「そうよ。それが、本家筋が『万能』って呼ばれる所以。そして長は、神の力を有するってね」
結衣さんはそう言うと、こちらをチラッと見てくる。何だ、冷やかしか。
「まぁ、ここの生徒は全国から来てるわけよ。それでもおよそ500人っていう事を伝えたかったの」
「へー......」
「これでお話はお終い。あとは普通に授業受けてきなさいな」
結衣さんはそう言うと、手元にある書類をファイルに閉じた。そして、カバンに入れる。
「あたしはこれから鷹宮家に行ってくる。アンタの所の主人に話を聞きに行くからね」
「龍也についてか。いってらっしゃい」
「えぇ、いってきます。あ、アンタたちの教室は1年A組よ」
―ガチャッ、バタン。
......相変わらず忙しそうだなぁ。
さて、教室に行こうか。そろそろ誰かしら来てるハズだろう。
―ガララッ......
教室の扉を開ける。
あれ、まだ誰も来ていないのか。もう8時になるのにな。珍しいものだ。
お嬢様はお手洗に行くとか言ってた。
国立高等学校とは言え、内部構造は至って普通だ。
黒板があり、その前に生徒達の机がある。
「えっと......ここだ」
俺は自分とお嬢様の机を探し当て、座ろうとしたのだが―何やら異質な空気。
違和感を感じて後ろを振り返ると、
「......誰?」
女の子が後ろの席に座っていた。
いや、何で今まで気付かなかったんだ?
そこまで視力は衰えてないし、観察力も低い方ではない。だが、気付けなかった。
「............」
澄んだ蒼色の髪で、ボブカット。
鳶色の瞳は、真正面をボーッと見つめている。
かなり整った顔立ちなのだが、その顔は無表情だ。
「鷹宮志津二さんですか?」
「......そうですが」
無表情な上、抑揚のない声で告げてきた。
「そうですか。......本家筋に深く関与こそしているが、異能は持っていない。代わりに所持武器がコルト・ガバメント。ゴム弾使用」
「驚きましたよ。結衣さんと鷹宮家以外にそれを知っている者はいないと思ってたんですがね。......お名前は?」
「片川雫です。結衣さんに聞きました。『異能持ってない本家筋の人間なんて笑っちゃうわ』と言っていましたが」
......あとで殴ろうかな。ガバメントのグリップで。
「志津二ー、席見つかったー―って、アンタ!何で 他の女といるのよ!?」
お手洗から帰ってきたらしいお嬢様だが......何かをを。何かを誤解されている。
「お嬢様、何かを誤解されてませんかね。この子は先客で―」
「消えろッ!」
俺の説明も虚しく。
お嬢様の異能によって、俺の声は掻き消された。
~Prease to the next time!
「......広いわねぇ」
「ですね」
呟きながら、お嬢様と俺は、校門......と言うか、半自動の鉄柵をくぐる。
早い時間に登校したものだから、人なんか全然いない。遠くにチラホラいるだけで。
で、くぐったワケだが―ここホントに高校か?
校舎まで一直線に石レンガの道が並んでおり、左右には桜の樹が植えてある。
その向こうは芝生でベンチなどが置いてあり、森林公園のようだ。
しばらく進むと校舎が見えてきた。
噴水を横目で見つつ階段を上り、正面玄関へと入る。
階段の下と周辺は広場になっており、噴水もあるため、憩いの場......的なモノだろう。屋台もある。
年がら年中お祭り、ではなさそうだ。
下足箱に靴を入れ、用意されていた上靴を履く。
茶色のスニーカー?パンプス?と言うのか。
よく分からないが、そんな感じの靴だ。
「お嬢様、職員室はこっちですよ」
正反対の方向に行こうとしていたお嬢様を呼び止めて。案内図を見ながら、職員室の方まで歩く。
右手の窓を見ると中庭があり、夏は校舎が陰になって涼しそうだ。池もある。
それにしても、変わった構造だな。
三角形で、中庭を囲うように創られている。
......遊び心?
興味深そうにキョロキョロしていたお嬢様をチラ見しつつ、廊下を歩いていく。
すると、中年の男性に声をかけられた。
「おはようございます。鷹宮家のご令嬢と執事さんですよね?昨日欠席していた」
「はい、そうです」
「事情は鷹宮本部から聞いていますよ。さぁ、ご案内しますので」
その男性が職員室まで案内してくれるとの事なので、俺たちはその人について行く事にした。
「ここです。まずは校長先生にですね」
「ご案内、ありがとうございます。助かりました」
俺は一礼し、校長室の扉をノックする。
「はい、どうぞ」
返ってきたのは、やけに聞き馴染みのある―若い女性の声。それに、俺たちは顔を見合わせる。
「......失礼致します」
だが、入らない事には分からない。
そう思い、扉を開けて1歩。また1歩と踏み出す。
「えっ......?」
後ろで驚愕の声を上げるお嬢様。
それもそのハズ。なぜなら、
「おはよう。 そして、いらっしゃい。2人とも」
「な、何で......!」
何で、結衣さんがここにいる!?
結衣さんと話すこと10分。
やっと状況が飲み込めた。
「つまり。私たちが入学するにあたり、1番馴染みのある人を本家筋から選抜して校長にしたと」
「そう」
「私は兎も角、志津二が無能だから」
「そう」
「心配だから、お父様が手を回したと」
「そう」
「OK、理解した」
......えぇ。
どうしてこうなった。
「結衣さん、いくら何でも校長はないだろうに」
「だって本部の命令だし、やりたくなかったけど給料割り増しって言われたから」
「そこ!?」
結衣さんがゲスい。
人間としてゲスい。ゲスの極み○女。
「で、この学校のあれだけど......あれ、何だっけ」
あぁ、そうそう。
と何かを思い出したような結衣さん。頭大丈夫?脳年齢。
「ここが本家筋の集まりっていうのは知ってるわよね?」
「あぁ。知ってる」
「全国に本家筋って、何人いると思う?」
全国に......?
本家筋より分家筋の方が多いのは当たり前だが、具体的な数値までは分からないなぁ。
「んー、3000人くらい」
「ハズレ。全国の異能者が約10000人で、そのうちのおよそ9500人が分家筋なの」
「500人......、そんなに少なかったの!?」
結衣さんの返答に、お嬢様が目を見開く。
「そうよ。それが、本家筋が『万能』って呼ばれる所以。そして長は、神の力を有するってね」
結衣さんはそう言うと、こちらをチラッと見てくる。何だ、冷やかしか。
「まぁ、ここの生徒は全国から来てるわけよ。それでもおよそ500人っていう事を伝えたかったの」
「へー......」
「これでお話はお終い。あとは普通に授業受けてきなさいな」
結衣さんはそう言うと、手元にある書類をファイルに閉じた。そして、カバンに入れる。
「あたしはこれから鷹宮家に行ってくる。アンタの所の主人に話を聞きに行くからね」
「龍也についてか。いってらっしゃい」
「えぇ、いってきます。あ、アンタたちの教室は1年A組よ」
―ガチャッ、バタン。
......相変わらず忙しそうだなぁ。
さて、教室に行こうか。そろそろ誰かしら来てるハズだろう。
―ガララッ......
教室の扉を開ける。
あれ、まだ誰も来ていないのか。もう8時になるのにな。珍しいものだ。
お嬢様はお手洗に行くとか言ってた。
国立高等学校とは言え、内部構造は至って普通だ。
黒板があり、その前に生徒達の机がある。
「えっと......ここだ」
俺は自分とお嬢様の机を探し当て、座ろうとしたのだが―何やら異質な空気。
違和感を感じて後ろを振り返ると、
「......誰?」
女の子が後ろの席に座っていた。
いや、何で今まで気付かなかったんだ?
そこまで視力は衰えてないし、観察力も低い方ではない。だが、気付けなかった。
「............」
澄んだ蒼色の髪で、ボブカット。
鳶色の瞳は、真正面をボーッと見つめている。
かなり整った顔立ちなのだが、その顔は無表情だ。
「鷹宮志津二さんですか?」
「......そうですが」
無表情な上、抑揚のない声で告げてきた。
「そうですか。......本家筋に深く関与こそしているが、異能は持っていない。代わりに所持武器がコルト・ガバメント。ゴム弾使用」
「驚きましたよ。結衣さんと鷹宮家以外にそれを知っている者はいないと思ってたんですがね。......お名前は?」
「片川雫です。結衣さんに聞きました。『異能持ってない本家筋の人間なんて笑っちゃうわ』と言っていましたが」
......あとで殴ろうかな。ガバメントのグリップで。
「志津二ー、席見つかったー―って、アンタ!何で 他の女といるのよ!?」
お手洗から帰ってきたらしいお嬢様だが......何かをを。何かを誤解されている。
「お嬢様、何かを誤解されてませんかね。この子は先客で―」
「消えろッ!」
俺の説明も虚しく。
お嬢様の異能によって、俺の声は掻き消された。
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