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修学旅行《トリップ・ワン》

~修学旅行・Ⅱ~

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「ほぼ無計画でも割りとスムーズに行けるモノなんだな......運が良かったよ」

目的地としていた京都駅の改札をくぐり、俺は小さく呟く。ほぼほぼ計画を立てていないとは言え、これだけスムーズに事が進むとは思っていなかった。多少なりともハプニングはあると読んでいたのだが......。
  それなら緻密に計画を練ろって言われるかもだが、つまんないじゃんそういうの。行き当たりばったりがいいんじゃないか。

「で、志津二。これからどうするワケ?」

「寺社巡りと行きましょうか。まずは近場の三十三間堂です」

「「「おぉ......」」」

俺の脳内プロットを不安に思ったか、不安の色を多分に込めた表情で問うお嬢様。それは他のメンバーも同様らしかったが、行き先を聞いて安堵したようだ。

「えっと......こっちだ。徒歩ですぐだね」

グーグルマップで現在地を確認しつつ、方角やら詳細やらを調べる。この後は―清水寺でも行くか?と本格的にプロットを練りつつ、俺たちは歩いていった。



さて、三十三間堂と言えば『通し矢』で有名だ。軒下120mから矢を放ち、的へと当てる。つまり『狙撃』にも多少は関する寺社なのだ。
 1001体の観音像が鎮座されている本堂に入ると、俺たちは初めて見るその量に圧巻した。1001通りの表情を持つそれらだが......必ず1つは自分に似たような顔があると言われている。あ、あれなら雫とか彩の顔に似てるんじゃないか?この無表情さとか。
 というか、観音像を見てて気付いたんだが―多少なりとも彫刻には表情があるんだな。雫よりかは表情豊富だぞ。なんて事を思いつつ歩いていると、不意に左隣の2人から声をかけられた。

「志津二、様......。何か変な事、考え......てる?」

「私も、それ......思った」

「あー、気の所為だと思うよ。そんな事は考えてないからね?」

「「............」」

怖い!そのジト目と沈黙が怖い!というか、何故俺の周りの人間は心を読めるのだろうか。個人的七不思議の内の一つ。
 ハァ......とため息をついて右隣を見れば、キャッキャウフフなお嬢様と鈴莉。そういえば鈴莉って百合だったよね。お嬢様と一緒にいさせとけば良いんじゃね?
 なんて馬鹿な思考回路に変わってきたところで、三十三間堂の参拝はお終いとなった。すぐに終わっちゃうモノだね。さて、次は―

「......清水寺だね。バスで行こうか」

歩くのも面倒なので、バス移動にする事に。後悔はしていない。むしろ楽だった。



あの後......清水寺、金閣銀閣、仁和寺―と京都旅行の定番スポットを巡り巡って、気が付いたら夕方になっていた。問題と言えば宿泊先だが、そこは予めバスの中で決めておいたのだ。気が利く俺って優しいね。
 俺と彩、雫で旅館。鈴莉の強い要望により、お嬢様らはホテル。それぞれ予約を入れておいたので、あと必要なのは宿泊代だけだ。

しかし不意にお嬢様の事が心配になったので、少し皮肉りつつもファイナルアンサーの確認だ。

「じゃあ二つのグループに分かれるワケだけど、お嬢様は大丈夫ですか?私がいなければ何も出来なそうですが」

「バカにしやがって。私だって少しくらいは出来ますー、だ!」

「志津二くん、心配要らないよ。私が彩乃ちゃんのお世話をしてあげるから。手取り足取り、全部ねっ!」

あっかんべーをする(幼稚な)お嬢様とは対称に、鈴莉はうふふー、と何やら闇を感じさせる笑い方でそう言ってきた。やっぱりこの子に任せるの怖いけど......こ、これも教育。お嬢様に対してのね。

「それじゃあ鈴莉、お嬢様は任せたよ。じゃあ2人とも、行こうか」

不安を抱えつつも鈴莉を信じる事にし、俺たちは宿泊先の旅館まで移動を始めるのだった。


~Prease to the next time!
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