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異戦雪原
~はぐれ組織~
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「―そう言えば、結衣さん」
「何かしら」
お茶会も終わり、皆で楽しく談笑しているところ。
とある1件に疑問を見出したので、俺は結衣さんに質問する事にした。
「前、学園の狙撃棟で『診断』って言ってたけど......結局何だったんだ?それらしい事もしてないが」
「あぁ、あったわねぇ―嘘よ、嘘」
「はぁ?」
この話題はお嬢様たちは知らないか。キョトンとしてるのも無理はない。
「志津二、診断って?」
「以前、狙撃棟に行った時......何やかんやあって、終わり際に結衣さんに声かけられたんですよ」
「何やかんやって何よ。......で、嘘っていうのには理由があるワケ。無能な長さん、何か分かるかしら?」
執事から長にグレードアップだぁ。やったぁー。
最早、地位の差は関係ないって言うね。結衣さん解雇しよっかな。
「長は無能なので分かりません。だから教えてください」
駄菓子菓子。仕方なく頭を下げ、希う。
結衣さんはそれを見て溜息をつきつつも、答えた。そして俺は、驚愕に目を見開いた。
「理由は、アンタがいつも淡々としててつまんないからよ。動揺する事がないからね」
「バカ言ってんなー、この人!」
ホントに。俺にだって感情あるよ?
いつだったか執事さんにも言われたなぁ。
「志津二様、落ち......着いて」
「うん。落ち着いてるから大丈夫......大丈夫。大丈夫」
「自己暗示になってますよ、ご主人様」
彩に宥められ、リサに何か言われ。結衣さんはサディスティックな笑みを浮かべ、それを見たお嬢様は若干引いてて。
―何だコイツら。
いや、俺の身内と側近だけどね。
「ねーねー、志津二。ちょっと質問するけど良いかしら?」
「......何ですか?」
お嬢様は俺の袖をクイクイと引っ張ってくるが、今は話すのもめんどいかも。でもそういうワケにはいかず。
「さっきの話を聞いてて思ったんだけど『鷹宮』は全国を乗っ取ってるようなモノでしょ。なのに他の異能者組織とかいるの?」
「「......え?」」
「......え?私、何か間違った?」
......結衣さん、あなたもか。忘れてたか。
俺と結衣さんはお互いを凝視し、お嬢様はキョドってあたふたしてる。
そして俺は、思い出した。
「お嬢様、箱入り娘だった―!」
という事に。
―お嬢様は鷹宮家の直系であり、本家筋の異能者でもある。しかし家系がお嬢様家庭な事に、箱入り娘なのだ。元家主の清十郎様が鷹宮家の殆どを仕切っていたため、お嬢様はそれらに触れることがなかったのだ。財閥でも、異能者組織でも。
例えば......他の異能者に触れる機会があまり無かったために、それに関する事を詳しく知らない。覚えてきたのはここ最近の話だ。
「日本を牛耳ってるっぽい鷹宮以外に、他の異能者組織なんてあるの?」
と言うくらいに。
これは、説明が必要だねー。
「日本の異能者は『鷹宮』の人間が殆どです。そしてそれらの人たちは、余程の事がない限りは、こちら側に付くんですよ」
そう。現はぐれ異能者―久世颯みたいな人間を除いては。
「日本には『鷹宮』以外にも、異能者の系譜は幾らか存在する。そいつらは独自に組織し、独自のルールを作って活動しているんだ」
民間に報じられていないところは、我々と同じ、自身の危険性を分かっているようだが。
「......この間起きた事件。あの主犯は、『鷹宮の反体制派』。つまり、鷹宮をよく思っていない人物の集まりが起こしたモノです」
そうすれば、自ずとグループが出来る。
「『鷹宮』と、その『はぐれ・反体制派』のグループにね」
異能者の元を辿れば、最終的には『鷹宮』に行き着く。そう考えている人間は少なくない。寧ろ多数派だ。だが、『鷹宮』以外の名を名乗って作られた組織があるのも事実だ。
「我々の主な本拠地は、東日本―関東地方。それらの組織があると確認されているのは、今のところ関西や中国地方辺りだから......お嬢様が1番気にするべきは、やはり鷹宮の一般職員ですよ」
とは言え、多少のいざこざは起きるのではないか?
そう考えた本部は、それらの組織とある協定を結んだんだ。
「不干渉協定。それがある限り、いざこざや組織同士での勃発は起きないと考えていいでしょうね」
「何だ......」
安心したように胸を撫で下ろすお嬢様。
まぁ、実際そんな事は今までなかったから心配の必要もなかったかな。
「さて............と」
呟きつつ懐中時計を手に取る。針は既に4時を指していた。意外と留まってたんだな。
「お嬢様、リサ。そろそろ帰ろうか。夕食の仕込みとかしないと」
「はーい」
「承知しましたー」
時計を内ポケットに収めつつ、2人を見据えて立ち上がる。それに合わせて、2人も立った。
だが、
「もう......行く、のですか?」
彩が少しばかり悲しそうな表情をするから行こうに行けない。まぁ、これは。
「そう、だね。......あぁ、またすぐに来るよ。これからは頻繁に顔出そうと思ったからねー」
「......良かった。それでは、また」
何とか了承してくれた。あ、そうだ。
「お茶っ葉を家に送ってね、と言ったが。住所は結衣さんに聞けば分かるよ。美味しいお茶を期待してる」
「......はーい」
一変、僅かだけど明るい顔になった。他の人が見たら分からないだろうけど、長く付き合ってきた俺たちだから分かる。
「結衣さん、仕事頑張ってねー」
「書類押し付けんぞワレ」
おぉ、怖い怖い。(笑)
じゃあ、そろそろ行こうかな。
「それでは、失礼」
一礼して、部屋を出た。
運転はいつかのドライバー、御園がしてくれるとか。......今日の夕食、何にしようかなぁ?
そんな事を考えつつ、帰路についた俺たちだった。
~Prease to the next time!
「何かしら」
お茶会も終わり、皆で楽しく談笑しているところ。
とある1件に疑問を見出したので、俺は結衣さんに質問する事にした。
「前、学園の狙撃棟で『診断』って言ってたけど......結局何だったんだ?それらしい事もしてないが」
「あぁ、あったわねぇ―嘘よ、嘘」
「はぁ?」
この話題はお嬢様たちは知らないか。キョトンとしてるのも無理はない。
「志津二、診断って?」
「以前、狙撃棟に行った時......何やかんやあって、終わり際に結衣さんに声かけられたんですよ」
「何やかんやって何よ。......で、嘘っていうのには理由があるワケ。無能な長さん、何か分かるかしら?」
執事から長にグレードアップだぁ。やったぁー。
最早、地位の差は関係ないって言うね。結衣さん解雇しよっかな。
「長は無能なので分かりません。だから教えてください」
駄菓子菓子。仕方なく頭を下げ、希う。
結衣さんはそれを見て溜息をつきつつも、答えた。そして俺は、驚愕に目を見開いた。
「理由は、アンタがいつも淡々としててつまんないからよ。動揺する事がないからね」
「バカ言ってんなー、この人!」
ホントに。俺にだって感情あるよ?
いつだったか執事さんにも言われたなぁ。
「志津二様、落ち......着いて」
「うん。落ち着いてるから大丈夫......大丈夫。大丈夫」
「自己暗示になってますよ、ご主人様」
彩に宥められ、リサに何か言われ。結衣さんはサディスティックな笑みを浮かべ、それを見たお嬢様は若干引いてて。
―何だコイツら。
いや、俺の身内と側近だけどね。
「ねーねー、志津二。ちょっと質問するけど良いかしら?」
「......何ですか?」
お嬢様は俺の袖をクイクイと引っ張ってくるが、今は話すのもめんどいかも。でもそういうワケにはいかず。
「さっきの話を聞いてて思ったんだけど『鷹宮』は全国を乗っ取ってるようなモノでしょ。なのに他の異能者組織とかいるの?」
「「......え?」」
「......え?私、何か間違った?」
......結衣さん、あなたもか。忘れてたか。
俺と結衣さんはお互いを凝視し、お嬢様はキョドってあたふたしてる。
そして俺は、思い出した。
「お嬢様、箱入り娘だった―!」
という事に。
―お嬢様は鷹宮家の直系であり、本家筋の異能者でもある。しかし家系がお嬢様家庭な事に、箱入り娘なのだ。元家主の清十郎様が鷹宮家の殆どを仕切っていたため、お嬢様はそれらに触れることがなかったのだ。財閥でも、異能者組織でも。
例えば......他の異能者に触れる機会があまり無かったために、それに関する事を詳しく知らない。覚えてきたのはここ最近の話だ。
「日本を牛耳ってるっぽい鷹宮以外に、他の異能者組織なんてあるの?」
と言うくらいに。
これは、説明が必要だねー。
「日本の異能者は『鷹宮』の人間が殆どです。そしてそれらの人たちは、余程の事がない限りは、こちら側に付くんですよ」
そう。現はぐれ異能者―久世颯みたいな人間を除いては。
「日本には『鷹宮』以外にも、異能者の系譜は幾らか存在する。そいつらは独自に組織し、独自のルールを作って活動しているんだ」
民間に報じられていないところは、我々と同じ、自身の危険性を分かっているようだが。
「......この間起きた事件。あの主犯は、『鷹宮の反体制派』。つまり、鷹宮をよく思っていない人物の集まりが起こしたモノです」
そうすれば、自ずとグループが出来る。
「『鷹宮』と、その『はぐれ・反体制派』のグループにね」
異能者の元を辿れば、最終的には『鷹宮』に行き着く。そう考えている人間は少なくない。寧ろ多数派だ。だが、『鷹宮』以外の名を名乗って作られた組織があるのも事実だ。
「我々の主な本拠地は、東日本―関東地方。それらの組織があると確認されているのは、今のところ関西や中国地方辺りだから......お嬢様が1番気にするべきは、やはり鷹宮の一般職員ですよ」
とは言え、多少のいざこざは起きるのではないか?
そう考えた本部は、それらの組織とある協定を結んだんだ。
「不干渉協定。それがある限り、いざこざや組織同士での勃発は起きないと考えていいでしょうね」
「何だ......」
安心したように胸を撫で下ろすお嬢様。
まぁ、実際そんな事は今までなかったから心配の必要もなかったかな。
「さて............と」
呟きつつ懐中時計を手に取る。針は既に4時を指していた。意外と留まってたんだな。
「お嬢様、リサ。そろそろ帰ろうか。夕食の仕込みとかしないと」
「はーい」
「承知しましたー」
時計を内ポケットに収めつつ、2人を見据えて立ち上がる。それに合わせて、2人も立った。
だが、
「もう......行く、のですか?」
彩が少しばかり悲しそうな表情をするから行こうに行けない。まぁ、これは。
「そう、だね。......あぁ、またすぐに来るよ。これからは頻繁に顔出そうと思ったからねー」
「......良かった。それでは、また」
何とか了承してくれた。あ、そうだ。
「お茶っ葉を家に送ってね、と言ったが。住所は結衣さんに聞けば分かるよ。美味しいお茶を期待してる」
「......はーい」
一変、僅かだけど明るい顔になった。他の人が見たら分からないだろうけど、長く付き合ってきた俺たちだから分かる。
「結衣さん、仕事頑張ってねー」
「書類押し付けんぞワレ」
おぉ、怖い怖い。(笑)
じゃあ、そろそろ行こうかな。
「それでは、失礼」
一礼して、部屋を出た。
運転はいつかのドライバー、御園がしてくれるとか。......今日の夕食、何にしようかなぁ?
そんな事を考えつつ、帰路についた俺たちだった。
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