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異能者組織
~総本山~
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「これでよし、っと」
自室にいる俺は、手提げ鞄に数々の書類を仕舞いながら呟いた。これら全てが重要書類であり、それを確認したりなんなりするのが長の仕事だ。
それらはかなりの数であり、もし足元にでも落としたら悶絶するレベル―で重い。
首に掛けている懐中時計を見ると、10時16分。......約束までにはもう少し時間があるな。15分前行動しておいて良かった。
そして、姿見で身だしなみを確認する。
いつもの執事服、シワや埃。髪型に至るまで事細かく。うん、大丈夫だね。
そんな事を確認しつつ、俺は長ーい廊下を歩いてリビングまで行ったのだった。
「お嬢様ー、準備は出来てます?」
「バッチリ出来てるわ」
リビングの扉を開けつつ、ソファーに座っていたお嬢様に声をかける。んー、いつも通りだね。
「まだ少し時間あるし、それまで休んでよっか」
「そうですねぇ......あと15分ですか」
そうして、お嬢様はテーブルに突っ伏し。
俺は腕くみをして目を閉じた。
何分経ったろうか。
「......ご主人様、起きて下さいよ」
不意に、目が覚めた。リサに起こされた―というより、寝てしまってたのか。
「ん......ごめん」
心配そうにこちらの顔を覗き込んでくるリサだが、何か1つ。忘れているような......?
「車のクラクションの音がうるさいと近隣住民から苦情が―」
それは頂けないな。
「そりゃ困ったねぇ。ったく、人々の日曜日の午前中の休息を邪魔するとか―」
―日曜日の、午前中......。
あ。思い出した!
「リサ、今......何時だ?」
恐る恐る尋ねる。
頭では分かっているのだが、身体がそれを拒む。
「午前11時ジャストとなっておりますが」
「お嬢様、起きてくださいっ!約束の時刻を半時間も過ぎてますよ!?」
「ふぇ?」
寝落ちしてて、つい......だな。
状況が呑み込めていないお嬢様に、懐中時計の文字盤を見せる。
「時間が......飛んでる!?」
どんな形であれ、分かってくれれば今は良い。
俺はお嬢様を立たせ、先に玄関に行くように告げる。そして、
「リサ、お前も行くぞ!館の全ての鍵、施錠しろ!」
「えっ!?は、はい!」
リサに館中の鍵を閉めるように命令。
ったく、起きてこないならメールでも―って、
「不在着信が30件も!?」
始めは『さっさと来て。駐禁切られたくないから』なのに、『(黄泉への)ドライブって楽しそうよねー』だってさ。殺されるぅ......。
スマホをポケットに仕舞い、手提げ鞄を持ち、リサより先に玄関先へとダッシュだ。結衣さんって時間には厳しいからなぁ。
結衣さんの怒りメーターと待機時間は比例するのですよ。
「ご主人様、終わりましたっ!」
「行くぞ!」
流石は自慢のメイド。数分で全て終わらせた。
そんな彼女の手を引きつつ、俺たちは結衣さんの待つロールス・ロイスに乗り込んだのだった。
「......何処でしょうか、ここは」
不意に、リサが窓の外を見て呟いた。
人工浮島を抜けて東京郊外に出た車は、どんどん山の中腹へと走っていく。都心とは打って変わって、田畑しかない田舎町だ。
「そもそも、この車が何処に行くか知ってる?リサ」
「いえ。何処へ?」
リサが首を振ると、1拍遅れてその金色の髪がシャラシャラと揺れる。
こうしている間にも、車はどんどん山を登っていく。
「言わば鷹宮の総本山―異能者組織・鷹宮本部だ」
「異能者組織......?」
「行けば分かるよ。っと、そろそろ着くね」
ブレーキ音を立てて停まったロールス・ロイスから降り、リサ達にも降りるように促す。
さぁ、いつ見ても豪華な鷹宮本部のお出ましだ。
高級ホテルを彷彿とさせるロータリーに、全面ガラス張りの自動ドア。 そこを潜ると数歩先にいた結衣さんが恭しく頭を下げ、
「おかえりなさいませ―『長』」
と、挨拶してきた。そして。
「ようこそいらっしゃいました、リサ・ド・シャーロット様。古来より続く鷹宮家、その総本山......」
......異能者組織・鷹宮本部へ。
~Prease to the next time!
自室にいる俺は、手提げ鞄に数々の書類を仕舞いながら呟いた。これら全てが重要書類であり、それを確認したりなんなりするのが長の仕事だ。
それらはかなりの数であり、もし足元にでも落としたら悶絶するレベル―で重い。
首に掛けている懐中時計を見ると、10時16分。......約束までにはもう少し時間があるな。15分前行動しておいて良かった。
そして、姿見で身だしなみを確認する。
いつもの執事服、シワや埃。髪型に至るまで事細かく。うん、大丈夫だね。
そんな事を確認しつつ、俺は長ーい廊下を歩いてリビングまで行ったのだった。
「お嬢様ー、準備は出来てます?」
「バッチリ出来てるわ」
リビングの扉を開けつつ、ソファーに座っていたお嬢様に声をかける。んー、いつも通りだね。
「まだ少し時間あるし、それまで休んでよっか」
「そうですねぇ......あと15分ですか」
そうして、お嬢様はテーブルに突っ伏し。
俺は腕くみをして目を閉じた。
何分経ったろうか。
「......ご主人様、起きて下さいよ」
不意に、目が覚めた。リサに起こされた―というより、寝てしまってたのか。
「ん......ごめん」
心配そうにこちらの顔を覗き込んでくるリサだが、何か1つ。忘れているような......?
「車のクラクションの音がうるさいと近隣住民から苦情が―」
それは頂けないな。
「そりゃ困ったねぇ。ったく、人々の日曜日の午前中の休息を邪魔するとか―」
―日曜日の、午前中......。
あ。思い出した!
「リサ、今......何時だ?」
恐る恐る尋ねる。
頭では分かっているのだが、身体がそれを拒む。
「午前11時ジャストとなっておりますが」
「お嬢様、起きてくださいっ!約束の時刻を半時間も過ぎてますよ!?」
「ふぇ?」
寝落ちしてて、つい......だな。
状況が呑み込めていないお嬢様に、懐中時計の文字盤を見せる。
「時間が......飛んでる!?」
どんな形であれ、分かってくれれば今は良い。
俺はお嬢様を立たせ、先に玄関に行くように告げる。そして、
「リサ、お前も行くぞ!館の全ての鍵、施錠しろ!」
「えっ!?は、はい!」
リサに館中の鍵を閉めるように命令。
ったく、起きてこないならメールでも―って、
「不在着信が30件も!?」
始めは『さっさと来て。駐禁切られたくないから』なのに、『(黄泉への)ドライブって楽しそうよねー』だってさ。殺されるぅ......。
スマホをポケットに仕舞い、手提げ鞄を持ち、リサより先に玄関先へとダッシュだ。結衣さんって時間には厳しいからなぁ。
結衣さんの怒りメーターと待機時間は比例するのですよ。
「ご主人様、終わりましたっ!」
「行くぞ!」
流石は自慢のメイド。数分で全て終わらせた。
そんな彼女の手を引きつつ、俺たちは結衣さんの待つロールス・ロイスに乗り込んだのだった。
「......何処でしょうか、ここは」
不意に、リサが窓の外を見て呟いた。
人工浮島を抜けて東京郊外に出た車は、どんどん山の中腹へと走っていく。都心とは打って変わって、田畑しかない田舎町だ。
「そもそも、この車が何処に行くか知ってる?リサ」
「いえ。何処へ?」
リサが首を振ると、1拍遅れてその金色の髪がシャラシャラと揺れる。
こうしている間にも、車はどんどん山を登っていく。
「言わば鷹宮の総本山―異能者組織・鷹宮本部だ」
「異能者組織......?」
「行けば分かるよ。っと、そろそろ着くね」
ブレーキ音を立てて停まったロールス・ロイスから降り、リサ達にも降りるように促す。
さぁ、いつ見ても豪華な鷹宮本部のお出ましだ。
高級ホテルを彷彿とさせるロータリーに、全面ガラス張りの自動ドア。 そこを潜ると数歩先にいた結衣さんが恭しく頭を下げ、
「おかえりなさいませ―『長』」
と、挨拶してきた。そして。
「ようこそいらっしゃいました、リサ・ド・シャーロット様。古来より続く鷹宮家、その総本山......」
......異能者組織・鷹宮本部へ。
~Prease to the next time!
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