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鷹宮家―その、真相

~リサ・ド・シャーレット~

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―あれから3週間が過ぎた。
本部の方でも警戒線は張っているのか、あの男に出くわす事は無かった。 

そんな事を、自室の椅子に座りながら思う。
桜も既に葉桜となり。暫くすれば梅雨の季節だ。

「......これも風情があっていいか」

東京湾の彼方―水平線から昇ってくる朝日を見つめながら呟いた。眩しくて直視出来ないけど。

さて。この3週間、俺が何をしていたか。 教えてあげよう。もちろん勉学に励んでいたワケだが、それだけではない。......え、聞いてない?気にするな。

「っと―これだね」

何で独り言したのかも分からないまま、自室のテーブルの下に置いておいた細長いケースを取り出す。
かなり大きい。

ケースの鍵を開け、目に飛び込んできたのは―木製のバットストックとハンドガード。すらりと細長い美しいフォルム。この銃こそ、

「SVDドラグノフ、だ」

セミオート狙撃銃。
AK系を参考にしたために、部品数などは少なく、信頼性も高い。長期の酷使が可能だ。
全長1225mm、重量4.31kg。有効射程600m。

だが使用する弾はゴム弾であり、そこら辺の改造は学園の『装備科』に任せた。頼んだら快く引き受けてくれたよ。

「......これか」

そのケースの中に折りたたまれていた紙を手に取り、開く。その内容は改造内容についてだった。

・内部の部品矯正
・拡張マガジン
・バレル交換.....などなど。

簡単にまとめると、

「ゴム弾専用の部品に替え、拡張マガジンを追加し、バレルを長くする事で射程を延ばした......と」

と言う事だ。
えっと、依頼金は―約10万、と。後で渡しとこう。

そう言えば、何でボルトアクションではなくセミオートを選んだのか。これには理由があってね。


―好・み・だ。


......冗談だ。
好みというのは抜きにしても、レバーアクションの狙撃銃はあまり好きじゃないから。複雑な操作をするより、簡単に済む方が良いからだ。
一々コッキングをしなくてもいい。常にスコープを覗いていられる。

ただ、整備は大変だけどね。そこはプラモデル感覚でやってこう。

ドラグノフをケースに収め。一応やる事は終わった。......ふと時計を見ると、時刻は7時へと近付いている。 じゃあ、

「朝食の準備だな」





ご主人様たちがここを出ていってから、生活はかなり変わった。始め1週間は何ともなかったのだが、その後のお嬢様に変化が出始めたのだ。

「さみしい......」

ってね。
まぁ、分からなくもない。親がいなくなったのだから。執事も、コック長もいない。広い館で2人きり。ハッキリ言って、俺も寂しいかな。

そんなお嬢様の気持ちに応えるかのように、ある出来事が起きた。その出来事と言うのはだな......

「あ、おはようございます。ご主人様!」

「おはよう」

一礼しつつ厨房へと入ってきた金髪ストレートの女の子。ご主人様、という単語からも分かるように。

―メイド、雇いました。

執事がメイドを雇うのには違和感しかないが、厳密には、雇ったのは俺ではない。

「材料は出しておいたから、コレと…コレを作っといてもらえる?後は俺がやっておくから」

「リサ・ド・シャーレット、ご命令承りました」

「......うん。よろしくね」

深くお辞儀をするリサ。それに合わせて、金髪の髪がしゃらしゃらと揺れる。

お嬢様の孤独感を何とか出来ないかとご主人様に相談したところ、わざわざフランスからメイドを呼んでくれたというワケだ。費用はあちら持ち。

やはりご主人様が選ぶだけあってかなりの逸材。
家事スキルは満点だね。どこかのラノベヒロインみたいな事は起きません。





「「いただきます」」

「はい、召し上がってください!」

いつも通り3人で席につき、手を合わせて食事開始。ここ数週間はリサに食事を作ってもらっているのだ。ありがたい事に洗濯から何からやってくれていて......ホントに俺の仕事がなくなりそう。

さて。メニューは、っと。
フレンチトーストにシーザードレッシングサラダ。それとコーヒー。

俺はフレンチトーストを手に取り、1口かじる。
サクッという食感の後、バターと蜂蜜の風味が口の中に広がっていく。美味しい。
そしてコーヒーを1口。

「......いつも悪いね。料理のみならず家事までやらせちゃって」

コーヒーを啜りつつ言うと、

「ご主人様が謝る事はありませんよ。むしろ当然の行為です」

と返ってきた。このメイド......出来るっ!

「でも、俺だって一応執事だけど―」

「アンタは今は家主でしょ?」

俺の言葉を遮るように言うお嬢様。マジレスしないで。お願いですから。

「......そう言えばお二人とも。今日は休日ですが、お出かけはなさらないのですか?」

「あ、今日休みなのか。外出か......どうします、お嬢様?」

「あ、じゃあ3区の大通りに新しいオムライス専門店が出来たらしいから―そこに行く?」

第3区......か。学園都市でも割りと人気だな。
じゃあ、

「行ってみますか。リサはどうする?」

「あ、私の事はお構いなく。お二人で思う存分楽しんできて下さい」

そうですか。少し残念だなー。
でもまぁ。

「開店までまだ時間あるし、お昼くらいまでゆっくりしてますか」

と言う事で、今は朝食を楽しもう。





―ピン・ポーン......

館内に、チャイムの音が響く。
数秒後、ガチャっ。とドアの開閉音がした。

「志津二、来たわよー」

玄関に響き渡る若い女の声。
その手にはバックが握られており、かなり厚い。

「......結衣さんか」

についてよ。詳細報告に来たの」

「OK。応接間で良いか?」

「構わないわ。後、ご飯頂戴。昨夜から何も食べてないから」

この人凄い......



「朝食、出来たぞ。『緑野菜のサンチュ風味~バジルソースを添えて~』だ」

「つまり、野菜だけね」

こくり。

「アンタ、1週間くらいは彩乃ちゃんにご飯作ってたんでしょ?もう少し料理偏差値上げなさいよ」

甘いなぁ、結衣さん。

「違うよ?お嬢様だから、本気なだけ―ちょ、痛い痛い!耳引っ張るな!」

「良いからパンくらい寄越しなさい!」

結衣さんに耳引っ張られたけど、ちぎれなくて良かった。うん。
......あ、ちゃんとトーストとコーヒーあげましたよ。さすがに青虫扱いは可哀想だからね。



「さて、と。この3週間の調査結果ね」

結衣さんは口元を拭くと、姿勢を正してファイルを幾つか取り出した。厚いものや薄いもの、様々である。

「端的に言うと―殆ど手がかりは無かったわ」

......何だと?


~Prease to the next time!
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