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学園都市と高等学校
~依頼人~
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薄暗い部屋の中、2人の男がいた。
1人の男は窓際の椅子に腰掛け、大きな机を挟んだ先を見ている。
「貴様が請け負い人か?」
声の先は、細身で小柄な男へと向かっている。
その男は無言で頷くと、スーツの内ポケットから折りたたまれている紙をオーク材の机へと放り投げた。そして、
「これだけでは情報不十分だ。詳細を」
と無機質な声で言った。
機械的な口調に、感情を感じさせない声。そんな男に不気味さを覚えつつも、椅子に腰掛けていた小太りの男は笑った。
「ふっ......確か貴様は高校中退だったか?それなら仕方あるまいな」
安っぽい挑発も何処吹く風で、細身の男は繰り返して言った。
「詳細を求む」
漸く小太りの男は笑いを引っ込め、棚から『機密書』と判の押された封筒を取り出した。
それと同時に、細身の男のプロフィールを反芻する。
「『鷹宮家』と『長』の関係については把握しているな?」
「把握している」
小さく頷く細身の男。
さらにその男のプロフィールを反芻していく。
その中に『元・鷹宮』の肩書きがあった事も、だ。
「ならば、これに関しての詳細はいらん。重要なのは、表面に一切現れず、その存在すら完璧に秘匿された本家筋―『長』を排出する本家筋の1人が、網に掛かった事だ」
小太りの男は封筒から書類を取り出し、クリップに留められていた写真を指さした。
「......これが本家筋の1人だと」
「そうだ。故に、殺せ。殺しさえすれば、後はワシが何とかする」
「了解した」
「どういった因果か、本家筋の1人が表へと出てきたのだ。これを逃すと次はないだろうな」
だが、と小太りの男は続けた。
「分かっているようだが、『長』にはバレぬようにな」
「了承しかねる」
「............何だと?」
淡々と告げる細身の男の返事に、思わず硬直してしまった小太りの男。そして、「了承しかねる」と言うのには真っ当な理由があった。
「元・鷹宮の人間なら分かっているハズだろう!『長』だ!全てを掌握するあの、『長』!」
小太りの男は火がついたようにまくし立てる。
「ヤツに目をつけられたら最後、瞬きの間に首が飛ぶ!文字通り、だ!貴様も知っているだろう?本家筋の人間は『万能』だと。『万能』の中の『万能』こそが、『長』なのだ!!」
「長の危険性は把握している。故に、保証しかねる」
激高する男とは対称に、細身の男は冷静に答えた。
「それでは失礼する」
男は呟くと資料も何もかもを放置したまま、踵を返して出ていってしまった。
それを黙って見ていた小太りの男は、
「与えられた役目を成せ―暗殺者、久瀬」
とだけ、呟いた。
1人の男は窓際の椅子に腰掛け、大きな机を挟んだ先を見ている。
「貴様が請け負い人か?」
声の先は、細身で小柄な男へと向かっている。
その男は無言で頷くと、スーツの内ポケットから折りたたまれている紙をオーク材の机へと放り投げた。そして、
「これだけでは情報不十分だ。詳細を」
と無機質な声で言った。
機械的な口調に、感情を感じさせない声。そんな男に不気味さを覚えつつも、椅子に腰掛けていた小太りの男は笑った。
「ふっ......確か貴様は高校中退だったか?それなら仕方あるまいな」
安っぽい挑発も何処吹く風で、細身の男は繰り返して言った。
「詳細を求む」
漸く小太りの男は笑いを引っ込め、棚から『機密書』と判の押された封筒を取り出した。
それと同時に、細身の男のプロフィールを反芻する。
「『鷹宮家』と『長』の関係については把握しているな?」
「把握している」
小さく頷く細身の男。
さらにその男のプロフィールを反芻していく。
その中に『元・鷹宮』の肩書きがあった事も、だ。
「ならば、これに関しての詳細はいらん。重要なのは、表面に一切現れず、その存在すら完璧に秘匿された本家筋―『長』を排出する本家筋の1人が、網に掛かった事だ」
小太りの男は封筒から書類を取り出し、クリップに留められていた写真を指さした。
「......これが本家筋の1人だと」
「そうだ。故に、殺せ。殺しさえすれば、後はワシが何とかする」
「了解した」
「どういった因果か、本家筋の1人が表へと出てきたのだ。これを逃すと次はないだろうな」
だが、と小太りの男は続けた。
「分かっているようだが、『長』にはバレぬようにな」
「了承しかねる」
「............何だと?」
淡々と告げる細身の男の返事に、思わず硬直してしまった小太りの男。そして、「了承しかねる」と言うのには真っ当な理由があった。
「元・鷹宮の人間なら分かっているハズだろう!『長』だ!全てを掌握するあの、『長』!」
小太りの男は火がついたようにまくし立てる。
「ヤツに目をつけられたら最後、瞬きの間に首が飛ぶ!文字通り、だ!貴様も知っているだろう?本家筋の人間は『万能』だと。『万能』の中の『万能』こそが、『長』なのだ!!」
「長の危険性は把握している。故に、保証しかねる」
激高する男とは対称に、細身の男は冷静に答えた。
「それでは失礼する」
男は呟くと資料も何もかもを放置したまま、踵を返して出ていってしまった。
それを黙って見ていた小太りの男は、
「与えられた役目を成せ―暗殺者、久瀬」
とだけ、呟いた。
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