あやかし観光専属絵師

紺青くじら

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最終章 ヒトとアヤカシ

君がいないなかで

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「タカヒロ、なに緊張してんのよ」
「そっ、そりゃ緊張しますよ!まさかテレビなんて」
「心配すんな、堂々としてりゃいい」

 店長は俺の肩を叩き、恵理さんはにこりと微笑んだ。リニューアルオープンした店は大盛況で、今日取材が来る事になっている。その中で、店内の装飾にも触れてくれる予定で、俺もインタビューを受ける事になった。

 絵の仕事は諦め、俺はこの店で働く事にした。そんな俺に、店長はこの仕事の中で絵を描くことを提案してくれた。店内の壁や、メニュー表、表に置く看板。はじめは萎縮していた俺だったが、絵をかわいいと言ってくれるお客さんも多く、SNSで写真をアップしてくれる事も増え、店内は可愛く料理も美味しい!と評判になっていった。

 自分は人を惹きつけるインパクトの強い絵に憧れていたが、優しいタッチが向いてると気づき、それはお店の雰囲気に合っていた。
 絵一本で仕事ができる、憧れてたそんな未来ではなかったが、今の自分はとても充実している。

「かまないように気をつけろよ」
「ふぁいと!」

 大瀬さんと長谷川さんからの応援に、コクリと頷く。やばい、リラックスしなければ。

「タカヒロさん、テレビで取材なんてされちゃったら、モテちゃうんじゃないですか」
「まさか」

 勇也のからかいに、苦笑で返す。

「まだツバキちゃんのこと好きなんすか?音信不通なんでしょ?」
「こら、勇也!」
「あ、すみません」

 勇也の言葉を、恵理さんは慌てて制す。俺はそれに、笑って返すしか出来なかった。
 ツバキは妖の世界に行く前に、店長に家庭の事情で辞めないといけないかもしれないと連絡していたらしい。俺がそれを知ったのは、こちらの世界に帰ってきてからだった。
 
 ツバキの覚悟に比べ、俺は全部が中途半端だった。

 鬼神様が倒れたまま帰ってきてしまい、目覚めたのかすら分からない。人間界と妖界が繋がらないのも、何か関係があるのか。ノラさんに聞いても、分からなかった。すべては、謎のままだ。

「さぁ、今日も一日がんばるぞ!」
「はい!!」

 店長の掛け声に、スタッフ全員が気合を入れた。

 ツバキ、どうしてる?
 
 ヤイさん、俺のことを、恨んでいますか?
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