あやかし観光専属絵師

紺青くじら

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第8章 破壊と守り

叶えてあげてもいい

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「鬼神!」

   ムゴは怒りを滲ませた声で、強く叫んだ。鬼神はそれにニコリと笑う。

「君がこの奇襲の首謀者?   なんか前も謀反起こしたらしいね」
「あの時は、良くもゾイ様を……!」
「いたねぇ、そんな雑魚妖怪が。隣がその雑魚の子供?   おかしいなぁ、皆殺ししたはずなのに。あ、そっか、人間界に逃げてたのか」

   鬼神はそう言ってクスクス笑う。ムゴは顔を真っ赤にし、球を前に出す。

「そう笑ってられるのも今のうちだ。くらえ!」
「!   ムゴ様、いけません!」

   止めようとしたが間に合わず、ムゴは球から妖力を放出させる。見えない壁を突破して赤く眩しい光が、鬼神の体を突っ切った。そうして彼の体は、分裂する。

「やっ、やった!   やったぞ!」
「何をするんですか、隣にはタカヒロが……!」

   言いかけて、口を噤む。自分は何を言ってるんだ。あんな駒、どうなったっていいはずなのに。タカヒロは光との衝突は避けられたようだ。彼の鎖を持っていた鬼神の左手はピクピク動いている。
   こんなものか。妖界の王というものは。

「ふーん、そんなもんか」

   鬼神はそう言って笑う。首から下が離れているのにその姿は、どこか楽しそうだ。ゾッとする。砕け散ったはずの体は、みるみる繋がっていく。

「つまらないね」

    化け物だ。ヤイは、そう思ってしまった。そうして考える。自分はこうなりたいのかと。

「それにしてもひどいね。君が隣にいるのに。あいつら、攻撃してきたよ」

   鬼神はタカヒロにそう語りかける。彼はグッタリしている。鎖に繋がられる前に、抵抗したのかもしれない。

「ヤイさん……」

   タカヒロがこっちを見て、名を呼んできた。その瞳があまりにも真っ直ぐで、気圧される。なんだ、なんだコイツは。

「こんな事、辞めましょう。俺が悪かったです。俺が貴方を、止めれていたら」
「何を自惚れた事言ってるんだ、お前は」

   苛々する。ツバキもノラも、タカヒロも。皆イライラする。どうして、ここに来た。

「俺はお前を利用したんだ」
「へー。じゃあコイツ、殺してもいい?」

   鬼神が、笑いつつ鎖を強く引く。もう体は、元に戻っている。ムゴが持つ球には、もう妖力はほとんど残っていないのに。

「この子が言ってたよ。君の望みは、この妖界に戻って来る事らしいじゃないか」

   言われ、心臓が強く脈を打つ。違う。俺の望みは、自分たちを無下に扱った世界への復讐だ。こんな世界、来たくはない。今ある世界は壊して、新しい世界を作るんだ。

「それなら、叶えてあげてもいい。ただし、一つ条件があるけどね」

   鬼神はそう言って、タカヒロを縛る鎖を持ち上げる。痛がっている声が聞こえる。

「この人間を、今ここで殺してごらんよ」
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