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第7章 破滅の足音
城門
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ツバキは妖が行き交う道をかき分けて、兄が向かったであろう城を目指す。兄は、父の仇をとるつもりだ。物心ついた時には、母親と兄しかいなかったツバキにとって、父親はどんな顔だったか、どんな姿だったか思い出せなかった。したくなかったと言う方が正しいかもしれない。
母と自分が血が繋がっていない事は、なんとなく気づいていた。それは彼女の愛情が足りなかったからじゃない。彼女は私を愛してくれていた。でもそれ以上に、私に申し訳なさそうにしていた。人間界に連れてきて、良かったのかと。私は兄とは違って、人間に化けるのが下手だったから。
だから私は人間になろうと努力した。人間の男の子に恋をし、恋人になって、やがて家族になる。そうすれば、私は完璧に人間になれると思っていた。
でも、間違っていたんだろうか。
私が結局好きになったのは、妖力がある人だった。タカヒロさんには妖力があるからじゃないと言ったけど、本当だろうか。兄が私を蔑むように見てたのは、そのせいなのか。
頭の中でそんな思考が渦巻いたまま、人間とも妖姿とも言えない、犬耳と尻尾が生えた姿で道を行く。
赤と黒の柵で出来た城門が見えてきた。そこには複数の妖が門番として立っている。
「わぁぁっやめろー!」
門番の蛙が叫んでいる。見るとそこには、巨大な蛇がいた。門番の一匹はその蛇に丸呑みされ、残りの妖は逃げまどう。
私はその光景に絶句した。
この蛇は、普通じゃない。色んな妖力が固まってできた、まがい物だ。
混乱する城門の先に、二つの影が見えた。ムゴと。
「お兄ちゃん!!」
張り裂けるほどの思いで叫ぶと、兄がこちらを振り向いた。
母と自分が血が繋がっていない事は、なんとなく気づいていた。それは彼女の愛情が足りなかったからじゃない。彼女は私を愛してくれていた。でもそれ以上に、私に申し訳なさそうにしていた。人間界に連れてきて、良かったのかと。私は兄とは違って、人間に化けるのが下手だったから。
だから私は人間になろうと努力した。人間の男の子に恋をし、恋人になって、やがて家族になる。そうすれば、私は完璧に人間になれると思っていた。
でも、間違っていたんだろうか。
私が結局好きになったのは、妖力がある人だった。タカヒロさんには妖力があるからじゃないと言ったけど、本当だろうか。兄が私を蔑むように見てたのは、そのせいなのか。
頭の中でそんな思考が渦巻いたまま、人間とも妖姿とも言えない、犬耳と尻尾が生えた姿で道を行く。
赤と黒の柵で出来た城門が見えてきた。そこには複数の妖が門番として立っている。
「わぁぁっやめろー!」
門番の蛙が叫んでいる。見るとそこには、巨大な蛇がいた。門番の一匹はその蛇に丸呑みされ、残りの妖は逃げまどう。
私はその光景に絶句した。
この蛇は、普通じゃない。色んな妖力が固まってできた、まがい物だ。
混乱する城門の先に、二つの影が見えた。ムゴと。
「お兄ちゃん!!」
張り裂けるほどの思いで叫ぶと、兄がこちらを振り向いた。
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