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第7章 破滅の足音
ついてこい
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「ノラさん!」
歩道橋の階段を駆け上がり、先を行くノラさんに声をかける。彼は振り返ったが、その顔は驚いてはいなかった。
「やっぱり来たか」
ため息まじりのその声に、俺が来るのを歓迎していないのが伝わる。
わかってる。ツバキもノラさんも、俺の事を思ってくれてる。行っても足手まといになるだけだ。それでも俺は、ここに来てしまった。
「お願いです。俺も一緒に行かせてください」
「……帰って来れねぇかもしれねぇぞ?」
「帰ってきます」
その返答が意外だったのか、ノラさんは目を丸くする。
「扉の時空が歪む前に、帰って来ればいいんですよね。五時間でしたっけ」
「それは確実に安心だとされる時間だ。それ以降は、いつ歪むのかはハッキリしない」
「行かせてください。俺、じゃないと一生後悔する気がします」
「後悔する事になっても、生きてるだけ良いだろ。さっきの話聞いてなかったか? お前みたいに力がある人間は、妖怪によっては最高の食材だ」
その言葉に、背筋に悪寒が走る。今まで出会った妖怪みたいに、人間に優しい妖怪ばかりじゃない。でも。
「……行きます!」
「頑固な奴だな。いいさ、ついてこい」
ノラさんはそう言うと、真っ暗な闇で出来た扉に飛び行った。
「え、ノラさん! 待って!」
言ってる間に、ノラさんの姿は闇にのまれていく。その光景を見ていると、また気分が悪くなってきた。やっぱりやめとくべきか。
「待ってください!」
悩んでる間に、体は闇の中に入って行った。突如強い風が、体全部を駆け抜けていく。
目を開くとそこは、石で出来た橋の上だった。
歩道橋の階段を駆け上がり、先を行くノラさんに声をかける。彼は振り返ったが、その顔は驚いてはいなかった。
「やっぱり来たか」
ため息まじりのその声に、俺が来るのを歓迎していないのが伝わる。
わかってる。ツバキもノラさんも、俺の事を思ってくれてる。行っても足手まといになるだけだ。それでも俺は、ここに来てしまった。
「お願いです。俺も一緒に行かせてください」
「……帰って来れねぇかもしれねぇぞ?」
「帰ってきます」
その返答が意外だったのか、ノラさんは目を丸くする。
「扉の時空が歪む前に、帰って来ればいいんですよね。五時間でしたっけ」
「それは確実に安心だとされる時間だ。それ以降は、いつ歪むのかはハッキリしない」
「行かせてください。俺、じゃないと一生後悔する気がします」
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その言葉に、背筋に悪寒が走る。今まで出会った妖怪みたいに、人間に優しい妖怪ばかりじゃない。でも。
「……行きます!」
「頑固な奴だな。いいさ、ついてこい」
ノラさんはそう言うと、真っ暗な闇で出来た扉に飛び行った。
「え、ノラさん! 待って!」
言ってる間に、ノラさんの姿は闇にのまれていく。その光景を見ていると、また気分が悪くなってきた。やっぱりやめとくべきか。
「待ってください!」
悩んでる間に、体は闇の中に入って行った。突如強い風が、体全部を駆け抜けていく。
目を開くとそこは、石で出来た橋の上だった。
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