あやかし観光専属絵師

紺青くじら

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第6章 願うのは君との一瞬

助けを呼ぶ声

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 展示会を見に行った次の日、俺は家から歩いて十分ほどの所にある郵便局に来ていた。昨日書いた履歴書を、簡易書留で送る為だ。
 郵便局を出て欠伸をする。家に書いてから夢中で履歴書を書いて、その勢いでここまで来た為一気に疲れが出る。これからバイトに行かないといけないのに。
 送ったのは、昨日見たギャラリーの運営スタッフへの応募だ。自分でもなんでこんなに強い思いに駆られたか分からない。家に帰ってホームページも見た。見れば見るほど、興味を惹かれた。給料だって悪くない。自分にとって魅力的な求人だ。
 もちろん実際に働いてみたら想像と違う事があるかもしれないが、こんなに興味を持ったのは久々だ。経験者優遇と書かれてたから、自分は可能性が低いだろう。それでも、応募した事に後悔はない。
 これに落ちたら、レストランの話を受けよう。
 踏ん切りがつく。きっと俺はやっていける。俺は気持ちを切り替えて、バイトに行く前に少しだけ仮眠を取ろうと家に戻っていた。

「おい!」

 声をかけられ、顔をあげる。そこには、猫がいた。白い体に黒の斑点。見覚えがあった。

「ノラさん?」

 俺が尋ねるも、彼は「来い!」とだけ叫び、走っていく。

「えっどうしたんですか?」

 俺は戸惑いながらも走ってついて行く。彼は何も答えない。だがその慌てた様子に、胸騒ぎがする。
 彼は一軒家に入って行った。そめさんの家だ。ドアは開いていて、俺は躊躇いながらも足を踏み入れた。
 ノラさんは家に入っても走っていき、中に入っていく。そこは庭が見える、絵を描いた部屋だ。

「そめさん。失礼します……」

 言いながら見た光景に、息をのむ。そめさんが、床に倒れていた。顔は白く、苦しそうな表情だ。

「そめさん! 大丈夫ですか!? えっと救急車……」

 俺はパニックになりながら、生まれてはじめて救急車を呼んだ。
 ノラさんはその間、ずっとそめさんの側にいた。
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