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第5章 お猿と行く温泉旅行
もてなす側の朝は早い
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「おはよう。相変わらず着膨れしてるね」
「……どうも」
俺はダウンを着てもこもこになった風貌でそう答える。今度すごい軽くて薄いという奴を買おうと心に誓う。
ヤイさんは今日も着物だが、いつも着てる白い着物でなく紺色の着物に黒い羽織をまとっている。
「朝早くにすまないね」
時刻はまだ朝の六時。通勤通学で道行く人もいるが、人通りは少ない。
「いえ。大丈夫です。ヤイさん、今日って一日がかりって言われてましたよね?」
「ああ」
「でも考えたら、界渡りは時間制限がありますよね。今日はお昼前に終わるんじゃ?」
その問いに、ヤイさんは「いや、一日だ」と答えた。
「客は、お昼過ぎに来る」
「え?」
「車を呼ぶか」
彼が指を鳴らすと、大きなカエルが乗った空飛ぶ車がやって来た。それはこの間乗った人力車のような姿ではなく、先が尖った車だった。
「お久しぶりです、ヤイ様。タカヒロ様も」
「六矢さんだっけ。乗っけてってくれるんですか?」
「へぃ、どうぞ。ヤイ様、八矢には後で宿にご案内するように言ってます」
「ああ、その時はお迎え頼むよ」
「もちろんです」
そのやり取りに、疑問を抱く。
「依頼主の方と一緒に行かないんですか?」
「ああ。私たちは、もてなす準備をしなければいけない」
珍しい。なんとなく、今日接する妖怪はすごい存在なんだと感じた。
「失礼します」
俺はそう言って車の中に乗り込む。車は先は尖ってるものの、人が座れるスペースは十分にあった。座る部分はフワフワしていて、触ると気持ちいい。
「うわぁ、すごいコレ!」
俺が感動する傍ら、ヤイさんは淡々と告げた。
「じゃあ、出発してくれ」
「はい!」
その返事とほぼ同時に、豪速球で車は飛び立った。座ってはいるものの何も支えをつけてなかった為、盛大に揺らめく。
「ちょ、ちょっと待って……!」
俺の問いに答える事もなく、車は二時間弱飛び続けた。
「着いたよ」
言われ、自分が気を失っていた事を知る。車は止まり、どこかの地面に降り立っていた。
「気分はどうだい?」
「最悪です……」
俺の答えに、ヤイさんは笑った。その笑顔が、どこかツバキさんに似ている。結局彼女に、今日ヤイさんと会う事を伝えられなかった。
「ここは?」
周りを見渡す限り、緑いっぱいの自然溢れるところだ。
「九州のどこかの山だ」
「へー……って、九州!?」
そんな遠くまで行くから、あんな猛スピードだったのか。道理で酔った訳だ。辺りは一面緑で、すごく冷える。
「これは……」
そんな中、目の前にそびえ立つ御殿があった。赤い壁に、黒の屋根をもつその御殿は、横に面積がとても大きい。
「宿だよ」
ヤイさんの言葉に、俺はその表情を見る。彼はどこか、楽しそうに笑った。
「……どうも」
俺はダウンを着てもこもこになった風貌でそう答える。今度すごい軽くて薄いという奴を買おうと心に誓う。
ヤイさんは今日も着物だが、いつも着てる白い着物でなく紺色の着物に黒い羽織をまとっている。
「朝早くにすまないね」
時刻はまだ朝の六時。通勤通学で道行く人もいるが、人通りは少ない。
「いえ。大丈夫です。ヤイさん、今日って一日がかりって言われてましたよね?」
「ああ」
「でも考えたら、界渡りは時間制限がありますよね。今日はお昼前に終わるんじゃ?」
その問いに、ヤイさんは「いや、一日だ」と答えた。
「客は、お昼過ぎに来る」
「え?」
「車を呼ぶか」
彼が指を鳴らすと、大きなカエルが乗った空飛ぶ車がやって来た。それはこの間乗った人力車のような姿ではなく、先が尖った車だった。
「お久しぶりです、ヤイ様。タカヒロ様も」
「六矢さんだっけ。乗っけてってくれるんですか?」
「へぃ、どうぞ。ヤイ様、八矢には後で宿にご案内するように言ってます」
「ああ、その時はお迎え頼むよ」
「もちろんです」
そのやり取りに、疑問を抱く。
「依頼主の方と一緒に行かないんですか?」
「ああ。私たちは、もてなす準備をしなければいけない」
珍しい。なんとなく、今日接する妖怪はすごい存在なんだと感じた。
「失礼します」
俺はそう言って車の中に乗り込む。車は先は尖ってるものの、人が座れるスペースは十分にあった。座る部分はフワフワしていて、触ると気持ちいい。
「うわぁ、すごいコレ!」
俺が感動する傍ら、ヤイさんは淡々と告げた。
「じゃあ、出発してくれ」
「はい!」
その返事とほぼ同時に、豪速球で車は飛び立った。座ってはいるものの何も支えをつけてなかった為、盛大に揺らめく。
「ちょ、ちょっと待って……!」
俺の問いに答える事もなく、車は二時間弱飛び続けた。
「着いたよ」
言われ、自分が気を失っていた事を知る。車は止まり、どこかの地面に降り立っていた。
「気分はどうだい?」
「最悪です……」
俺の答えに、ヤイさんは笑った。その笑顔が、どこかツバキさんに似ている。結局彼女に、今日ヤイさんと会う事を伝えられなかった。
「ここは?」
周りを見渡す限り、緑いっぱいの自然溢れるところだ。
「九州のどこかの山だ」
「へー……って、九州!?」
そんな遠くまで行くから、あんな猛スピードだったのか。道理で酔った訳だ。辺りは一面緑で、すごく冷える。
「これは……」
そんな中、目の前にそびえ立つ御殿があった。赤い壁に、黒の屋根をもつその御殿は、横に面積がとても大きい。
「宿だよ」
ヤイさんの言葉に、俺はその表情を見る。彼はどこか、楽しそうに笑った。
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