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第5章 お猿と行く温泉旅行
偶然ありまして!
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「タカヒロさん!」
更衣室で帰り支度をしていると、声をかけられた。ツバキさんだ。まだ呼び捨てで呼んだりはしていない。なにか決心したような表情をしている。
「おつかれさま」
「おつかれさまです。あ、あの……」
彼女はそう言いながら、ロッカーを開けカバンを取り出した。その中から、緑色の券を二枚差し出す。
「来週から、美術館で面白そうな展覧会があって! 偶然前売り券がありまして! 良かったら一緒に行きませんか!」
見ると、それは気になっていた展覧会のチケットだった。俺は思わず即答しそうになる。しかし、同時に躊躇いがうまれた。彼女は俺に好意がある。つまりこれは、デートになるんじゃないか。中途半端に応えていいものか。
「え、と……」
「興味なかったですか?」
「いや! 俺その作家さん好きで、気になってたんだ!」
答えると、ツバキさんの表情が一気に明るくなる。
「じゃああの! 来週の水曜日! 空いてますか? シフトは休みでしたよね」
「あ、水曜は……」
ヤイさんと約束が。そう言いかけて、「予定があって」と返す。ツバキさんは、さっきまでの表情から一転落ち込んだ表情になる。
「そうですよね。すみません……じゃあこれ、良かったら誰かと行ってください」
チケットを渡され、俺は困惑のまま受け取る。どうやら拒否されたと感じたらしい。彼女は身支度をさっさと済ませ、部屋を出て行こうとする。
「じゃあ、お疲れ様でした」
「ま、待って! えーと次……土曜は!? 俺、遅番だから!」
「え、でも」
「次いつタイミング合うか分からないしさ。ね!」
俺はなぜか早口でまくしたてる。ツバキさんからの「いいんですか?」という問いにも全力で頷く。
「うん、ぜひ!!」
そう言うと、また満面の笑顔に戻った。その事に俺は、内心安堵し嬉しくなる。
「じゃあ、あの! 連絡先教えてくださいませんか!」
ツバキさんはそう言ってスマホを取り出した。俺もスマホを取り出し、連絡先の交換を始める。
「うん。ツバキさん、携帯持ってるんだね。ヤイさんも持ってる?」
「お兄ちゃんは持ってないんです。人間らしい事を嫌うんで」
何の気なしに言われたその言葉には、トゲがあった。その事に驚いているうちに、連絡先を交換し終わる。
「有難うございました! また連絡します!」
ツバキさんはすごい上機嫌で去っていった。俺はそれに手を振りながら、なんで急いで引き留めたか考える。
「まぁ、行きたかった展覧会だし。断る理由もないもんな」
自分でそう結論づけて、ロッカーを閉める。昨日落ち込んだ気持ちが、少し晴れた気がした。
更衣室で帰り支度をしていると、声をかけられた。ツバキさんだ。まだ呼び捨てで呼んだりはしていない。なにか決心したような表情をしている。
「おつかれさま」
「おつかれさまです。あ、あの……」
彼女はそう言いながら、ロッカーを開けカバンを取り出した。その中から、緑色の券を二枚差し出す。
「来週から、美術館で面白そうな展覧会があって! 偶然前売り券がありまして! 良かったら一緒に行きませんか!」
見ると、それは気になっていた展覧会のチケットだった。俺は思わず即答しそうになる。しかし、同時に躊躇いがうまれた。彼女は俺に好意がある。つまりこれは、デートになるんじゃないか。中途半端に応えていいものか。
「え、と……」
「興味なかったですか?」
「いや! 俺その作家さん好きで、気になってたんだ!」
答えると、ツバキさんの表情が一気に明るくなる。
「じゃああの! 来週の水曜日! 空いてますか? シフトは休みでしたよね」
「あ、水曜は……」
ヤイさんと約束が。そう言いかけて、「予定があって」と返す。ツバキさんは、さっきまでの表情から一転落ち込んだ表情になる。
「そうですよね。すみません……じゃあこれ、良かったら誰かと行ってください」
チケットを渡され、俺は困惑のまま受け取る。どうやら拒否されたと感じたらしい。彼女は身支度をさっさと済ませ、部屋を出て行こうとする。
「じゃあ、お疲れ様でした」
「ま、待って! えーと次……土曜は!? 俺、遅番だから!」
「え、でも」
「次いつタイミング合うか分からないしさ。ね!」
俺はなぜか早口でまくしたてる。ツバキさんからの「いいんですか?」という問いにも全力で頷く。
「うん、ぜひ!!」
そう言うと、また満面の笑顔に戻った。その事に俺は、内心安堵し嬉しくなる。
「じゃあ、あの! 連絡先教えてくださいませんか!」
ツバキさんはそう言ってスマホを取り出した。俺もスマホを取り出し、連絡先の交換を始める。
「うん。ツバキさん、携帯持ってるんだね。ヤイさんも持ってる?」
「お兄ちゃんは持ってないんです。人間らしい事を嫌うんで」
何の気なしに言われたその言葉には、トゲがあった。その事に驚いているうちに、連絡先を交換し終わる。
「有難うございました! また連絡します!」
ツバキさんはすごい上機嫌で去っていった。俺はそれに手を振りながら、なんで急いで引き留めたか考える。
「まぁ、行きたかった展覧会だし。断る理由もないもんな」
自分でそう結論づけて、ロッカーを閉める。昨日落ち込んだ気持ちが、少し晴れた気がした。
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