41 / 94
第4章 神社とご老人
これ以上
しおりを挟む
「じゃあね。寒いから、風邪引かないようにね。着いたら連絡してね」
「分かってるよ。送ってくれて有難う」
心配性な母さんに笑いつつ俺が礼を言うと、運転席の父さんが頷く。そうして走り去っていく車を見送った。
今日は三日。明日には、バイトが再開する。新幹線で揺られながら、明日から普段の日常に戻る事を実感する。それと同時に就職活動も再開するが、今の自分の思考はそれが中心ではなかった。
明日はツバキさんも出勤になってたはずだ。年末シフト通りに出ていたようだが、それは俺と被っていなかったからかもしれない。
ヤイさんも、もしかしたらもう目の前には現れないかもしれない。何故そう思ったか分からないが、お爺さんに話しかけられてからその思いは増した。
俺は少し、あやかしの世界に踏み込み過ぎなのかもしれない。
『気をつけなさい。あの者たちは、貴方が思うより複雑ですから』
ヤイさんも、そんな事を言っていた。
『妖怪皆あんな感じだと勘違いしない方がいい。人間を道具や食い物としか思ってない連中もいるからね』
ヤイさんは、どうなんだろう。俺は、あの人の手の上で転がされているんじゃないだろうか。
これ以上、踏み込むべきじゃないのかもしれない。
バスに乗り、家にたどり着く。
ドアの前には、誰もいなかった。当たり前と言えば当たり前だ。喜ぶべき事のはずなのに、どこか残念に思う自分がいる。
溜まっていた郵便物を見たり片付けをしたりするうちに、時刻は夕方になった。俺は夜ご飯にラーメンを作ろうと立ち上がる。その時、インターホンが鳴った。受話器を取り、応対する。
「はい」
「こんばんは。ヤイです」
俺はその言葉に、急いで玄関に向かった。
ドアを開けると、いつもの着物姿で爽やかに笑うヤイさんがいた。
「やあ。あけましておめでとう」
「分かってるよ。送ってくれて有難う」
心配性な母さんに笑いつつ俺が礼を言うと、運転席の父さんが頷く。そうして走り去っていく車を見送った。
今日は三日。明日には、バイトが再開する。新幹線で揺られながら、明日から普段の日常に戻る事を実感する。それと同時に就職活動も再開するが、今の自分の思考はそれが中心ではなかった。
明日はツバキさんも出勤になってたはずだ。年末シフト通りに出ていたようだが、それは俺と被っていなかったからかもしれない。
ヤイさんも、もしかしたらもう目の前には現れないかもしれない。何故そう思ったか分からないが、お爺さんに話しかけられてからその思いは増した。
俺は少し、あやかしの世界に踏み込み過ぎなのかもしれない。
『気をつけなさい。あの者たちは、貴方が思うより複雑ですから』
ヤイさんも、そんな事を言っていた。
『妖怪皆あんな感じだと勘違いしない方がいい。人間を道具や食い物としか思ってない連中もいるからね』
ヤイさんは、どうなんだろう。俺は、あの人の手の上で転がされているんじゃないだろうか。
これ以上、踏み込むべきじゃないのかもしれない。
バスに乗り、家にたどり着く。
ドアの前には、誰もいなかった。当たり前と言えば当たり前だ。喜ぶべき事のはずなのに、どこか残念に思う自分がいる。
溜まっていた郵便物を見たり片付けをしたりするうちに、時刻は夕方になった。俺は夜ご飯にラーメンを作ろうと立ち上がる。その時、インターホンが鳴った。受話器を取り、応対する。
「はい」
「こんばんは。ヤイです」
俺はその言葉に、急いで玄関に向かった。
ドアを開けると、いつもの着物姿で爽やかに笑うヤイさんがいた。
「やあ。あけましておめでとう」
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
狼神様と生贄の唄巫女 虐げられた盲目の少女は、獣の神に愛される
茶柱まちこ
キャラ文芸
雪深い農村で育った少女・すずは、赤子のころにかけられた呪いによって盲目となり、姉や村人たちに虐いたげられる日々を送っていた。
ある日、すずは村人たちに騙されて生贄にされ、雪山の神社に閉じ込められてしまう。失意の中、絶命寸前の彼女を救ったのは、狼と人間を掛け合わせたような姿の男──村人たちが崇める守護神・大神だった。
呪いを解く代わりに大神のもとで働くことになったすずは、大神やあやかしたちの優しさに触れ、幸せを知っていく──。
神様と盲目少女が紡ぐ、和風恋愛幻想譚。
(旧題:『大神様のお気に入り』)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
オレは視えてるだけですが⁉~訳ありバーテンダーは霊感パティシエを飼い慣らしたい
凍星
キャラ文芸
幽霊が視えてしまうパティシエ、葉室尊。できるだけ周りに迷惑をかけずに静かに生きていきたい……そんな風に思っていたのに⁉ バーテンダーの霊能者、久我蒼真に出逢ったことで、どういう訳か、霊能力のある人達に色々絡まれる日常に突入⁉「オレは視えてるだけだって言ってるのに、なんでこうなるの??」霊感のある主人公と、彼の秘密を暴きたい男の駆け引きと絆を描きます。BL要素あり。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる